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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第七章
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騒がしい王

 クランド達エストア王国組は夕食後すぐに帰って行った。サリア達ダイヤス帝国組はそのまま悠魔の屋敷に泊まって行く事に決め、悠魔も別に異議を唱える事無く許可をする。


 リボーズもサリア達に便乗して屋敷に泊まろうとしたが、クリルに引っ張られて帰って行き残るはシルヴェスト達フォルスティア王国組だけになったが……。


「嫌だ僕も泊まって行く!」


「我が儘を言わないでください陛下。ほら用意された王宮の部屋に行きますよ!」


「い~や~だ」


「エドナさんそんな無理に……」


「ほら悠魔君もこう言ってるし」


「いいえダメです。貴方も陛下を甘やかさないでください」


 シルヴェストに対して鬼の様に厳しいエドナは、自らの王の襟元を掴んで引っ張るが、彼女は悪あがきとばかりにテーブルの脚にしがみつき抵抗をする。


「見苦しいですよ! そんな外見をしてますけど貴方は王なのですからもう少しそれらしい行動をしてください!」


「エドナちゃん言ってはいけない事を言った! 誰が子供だ幼児体型だ!」


「今まさにやってる事は子供のそれですよ! 体型の事を気にしてるならもっと大人の行動をしてください!」


 いい加減に我慢の限界が来たのか、エドナは魔力で肉体を強化して勢いよくテーブルの脚にホールドしているシルヴェストの両腕を引き離す。


「ほら行きますよ!」


「悠魔君ぅ助けて!」


 エドナに引っ張られながらなおも悪あがきをするシルヴェストは悠魔に助けを求めるが、エドナの鋭い眼光によって悠魔は言葉を発せられなく、シルヴェストがエドナに引っ張られて部屋を出て行こうとした時、先程までと打って変わりシルヴェストの表情が泣き顔からいたずらをする子供の様な顔になった。


「悠魔君もし泊めてくれるならこれをあげる」


 彼女が懐から濃い緑色魔力石を取り出して悠魔に見せる。


 それを見て悠魔の態度も変わる。先程まではどちらでもいいと思っていたが、正直な所あれほど濃い色の魔力石はアリスでも作れなく、喉から手が出るほど欲しいものだった。


「間違いなく()()悠魔君には必要な物だとおもうだけどな」


 彼女の言葉はまるで悠魔が魔力兵装を習得した事を知ってる様だったが、魔力兵装の事は少なくとアリスにしか知らないはずでシルヴェストが知ってる訳ない少し不審に思うが、あれ程の濃い色をした魔力石は欲しかった。


「知ってるよね? 魔力石は色が濃いほどその濃度が高い、これほど濃い色の魔力石ならかなりの魔力を内包してると思うよ?」


「わかりました。エドナさん泊っていてください、申し訳ないですけどそれが貰えるのなら僕には得しかないので」


「……はぁ~分かったわ」


 しばらく思考し額を抑え了承してしまう、初めは積極的に泊める気がなかった悠魔に悪いと思って帰ろうと思っていたが、彼からシルヴェストの味方に付いてしまったので、これ以上は徒労に終わると思い折れる事にした。




 夕食は済んでいたのでどうせ後は寝るだけと思い、メイド達に客間の用意を頼み悠魔は受け取った魔力石をアリスに見せる為に彼女の部屋を訪れた。


「この魔力石は本物だよ。少なくとも僕が作る物より濃度も品質もいい、間違いなく魔力兵装で使えば大きな力を得られるし、魔法石に加工すれば魔法の威力も大きくなるのは間違いない僕が保証する」


 彼女の鑑定眼は本物なのは悠魔もよく知ってるので、彼女が言うなら間違いはないと思いアリスから魔力石を受け取る。


「どうやって手に入れたかは知らないけどあの王には気を付けておけよ。本当に知ってるか知らないけど君が魔力兵装を使えるのを知ってるなら、相当高度な情報網を持ってるぞ明らかに汚れた黒い情報網を……」


 少なくともアリスはシルヴェストが魔力兵装の事を知ってるなら彼女が魔女教団と繋がってる可能性があると悠魔に話す。そもそも魔力兵装はミーアが色彩の魔女が作り出した一般には知られてない物で、それを知ってると言う事は少なくとも魔女教団もしくはミーアとのつながりがあるものだと思った。


「君から見てあの王は信用出来る人物なのかい?」


「わかりません。正直今日会ったばかりですから……」


「そうか……なら警戒だけはしておけよ。まぁ一国の王が他国で問題を起こすとは思えないが……」




 悠魔は自身の部屋に戻り色々な魔道具の設計図や魔法陣が描かれた紙なのが乱雑に置かれてたテーブルにつき資料を片付け始める。


「さて、これどうするか……魔力兵装に使うならこのままでもいいけど、魔法石にするなら刻印を入れる必要があるし、さてどうしたものか」


 貰った魔力石をテーブルの上で転がす。次にこれほどの魔力石が手に入るのはいつになるか分からない、そもそも手に入るかも分からない。入手ルートをシルヴェストに聞いても素直に教えてくれないと思うし、もし魔魔女教団と繋がっていて魔女教団経由で手に入れたのならエルフェリアに頼めば手に入るかもしれない。


「今度エルフェリアさんに会ったら確認してみるか――」


 咄嗟に悠魔は背後を見るがそこには誰もいなく、ここ最近やたらと自分の周りをうろついてる魔女の顔を浮かべる。


 前々からうろついていたが最近エルフェリアが現れる頻度が多くなってる気がしたので、名前を出した時咄嗟に背後を見てしまったがそこには誰もいなかった。


 テーブルに置かれた魔力石に目を向けると同時にノック音が響き、悠魔は魔力石を椅子に掛けてあったローブの中にしまい、返事をするとメイド長のアヤが立っており入浴の用意が出来た事を教えに来てくれた。




 屋敷のお風呂はそこそこ広めで浴槽も四人程度なら入れるが、残念ながらこの屋敷の男性は悠魔一人でいつもこの広々した空間を独り占めしていた。


「ん~一日の疲れが取れる。やっぱり風呂はいいな」


 前の家は狭くて作れなかったので、仕方なく体を拭くだけや外にあった井戸で水浴びをするだけで済ましていたので、この屋敷を貰ってからは最初に取り掛かったのは風呂の改装だった。


「この世界お風呂を沸かすのは面倒な作業だからな」


 徐々にこの屋敷は悠魔の現代の知恵により快適になっている。


「今度は何作ろうかな。お風呂にクーラーにアリスさんの魔力石に頼らなくても屋敷の魔道具を動かせる魔道具も作ったし、後は何が必要か――なんか騒がしいな」


 独り言をつぶやいていた悠魔だったが、何やら脱衣所が騒がしい事に気が付き視線を向けると、勢いよくドアが開き元気よく全裸のシルヴェストが乱入して浴槽に飛び込んでくる。


「悠魔君一緒に入ろう!」


「待ちなさい陛下! いい加減にしてください!」


 一瞬何が起ったのか分からなかった悠魔の目は点になり言い合いをしてる二人を見る。言い合いと言っても一方的にエドナが怒鳴ってるだけで、風呂場に乱入して来たシルヴェストは笑いながら悠魔の傍に近寄って来る。


「いい湯だこの屋敷色々な魔道具のお陰で快適に過ごせるから居心地がいいね」


「こっちに来てください入浴は彼の後で皆で入ろうと決めたじゃないですか!」


「僕は悠魔君と入る。エドナちゃんも一緒に入ろ!」


「入りません! 貴方からも何か言ってください!」


「すいません一瞬何が起ったのか理解できなくて放心状態になってました。シルヴェスト様早く出て行ってください。自分で言うのもなんですがこんな外見でも僕は男なんですから」


「僕は気にしないよ~」


 にゃははと笑いながらのんびり湯に浸かる彼女に頭を抱える二人。


「早く出て行ってください」


「いいじゃんほら見て見て僕の体ナイスバディーでしょ!」


 ざばぁと浴槽から立ち上がり一糸纏わず姿を見せるが、その姿は子供のそれで彼女の性格に低身長に薄い胸板に一部の男性なら大絶賛するかもしれないが、悠魔は全くそっちに興味がないので幼子と一緒に入ってる気分でしかなかった。


「ほら行きますよ陛下彼に迷惑が掛かりますから!」


 浴槽の傍に来てエドナはシルヴェストの腕を引っ張って浴槽から引っ張ってお風呂場から連れ出して行きドアを勢いよく閉めて行く。

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