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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第七章
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屋敷の改造

 エストア王国の王宮の一室では、ミルクが一人テーブルで真剣な表情をしながら何か書き物をしており、書き終わると彼女は綺麗な封筒に入れてしっかりと口を閉じる。


「さて、これでいいですね。急いでユミナ様の所に送らないと」


 彼女は部屋の窓を開けて自身の掌に魔法陣を展開し、その上に手紙を置くと手紙が光の鳥に変化して空高く飛んでいく。


 光の鳥が見えなくなるまで見送った彼女は窓を閉めると、それとほぼ同時に部屋のドアが開きメイドが入って来て出発の準備が整った事を教えてくれる。


「わかりました。すぐに行きます」


 壁に掛けてあった帽子をかぶりメイドについて行く。




 豪華な馬車に揺られ付いた先は悠魔の屋敷で、馬車を降りるとこの屋敷でメイド長をしているアヤとスコア出迎えてくれて、馬車から降りたメイドからミルクの荷物を受け取る。


「またお世話になります」


「お部屋の方は以前使用していた方でよろしいでしょうか?」


「はい、お願いします」


「それでは私がご案内いたします」


 荷物を受け取ったスコアがミルクを先導して行き、残ったアヤは王宮からついて来たメイドと話をし始める。どうやらミルクについての引継ぎがあるようだった。


「ふぁ何だか少し屋敷の中の雰囲気が変わりました!」


「はい、悠魔様が帰って来てから色々と装飾を始めましたので」


 悠魔は屋敷に帰って来てから屋敷の改装を始めた。まず悠魔が取り掛かったのは一部の部屋に冷暖房の魔道具を取り付け始めた。おかげでこの屋敷の生活水準は上がり皆大喜びだった。 


「あ、あの、悠魔さんに挨拶をしたいんですけど」


「今なら多分大広間に居ると思います」


「ありがとうございます」


 お礼を言いミルクは駆けて行く、慌ててそんな彼女を追うスコアだった。





 今悠魔は大広間の天井に大きな魔道具を設置していた。


「すいませんそこの道具取ってもらえませんか?」


「こちらでよろしいでしょうか?」


「はい、ありがとうございます」


 脚立に乗りメイドのカリンに頼み道具を取ってもらい、その道具を使い魔道具を天井に固定して行く。


「よし、これで終わり」


「こちらも各部屋に設置した魔道具と同じ物なのでしょうか?」


「はい、この部屋は他の部屋に比べて大きめなので大きな方がいいと思いまして、後は魔力を通す回路を引いて……」


「悠魔さん!」


 部屋のドアを勢いよく開けてミルクが飛び込んでくる。以前はこの屋敷にお世話になっていたミルクだが、悠魔とアリスが起源龍の討伐に向かった際に防犯上の都合で王宮の方に移動してもらった。彼女に何かあればこの国が滅びかねないので、彼女の扱いを徹底してもらった。


「今日からまたお世話になります!」


「はい、よろしくお願いします」


「おぉぉ! また悠魔さんのお料理が食べられる!」


 どうやら彼女は悠魔の料理がまた食べられる事に歓喜の雄叫びを上げる。王宮の方でも豪華な料理を食べていたが、やはり悠魔の料理には勝てなかった。


「それ! 大型の冷暖房の魔道具ですか⁉」


「はい、この部屋は大きいので」


「でも、この大きさのものを動かすのはそれなりに大きな魔力石が必要になると思いますけど」


「そっちは解決してます」


 実際悠魔が作った冷暖房の魔道具は高性能だが、起動し続けるのにはそれなりに大量の魔力が必要になり、小型の冷暖房の魔道具を動かすのもアリスに頼んで作ってもらった高純度の魔力石で、彼女依存でしかこの魔道具は動かせなかった。


「流石にアリスさんに頼りすぎはいけないと思いましてね。ついて来てください」


 悠魔に連れられミルクは屋敷の裏口から出ると、ナナの管理する畑の隣に明らかにこの世界では見られない大きな給水タンクの様なものが置かれていた。


「おぉぉ! これなんですか⁉」


「大気中に漂う魔力を集める装置です」


 純度の高い魔力石を使い続けるのは非効率だと思い悠魔が考えたのは、大気中に漂う魔力を上手く利用できないかと思って考えた。


 殆ど無限と言ってもいいほどの魔力、アリスが作る魔力石にはかなり劣り粗悪品と言っていいほどのものだが、量だけをあるので何とか使えないかと考えた。そのまま魔道具に流し込んでも魔道具を起動は出来なかったが、一つ思い付いたことがあった。


「見てください」


「ほぇ?」


 タンクの小窓を開けて中をのぞく二人、中には大きな水晶の様な物があり、それを中心に大気中から集めた魔力が渦を巻いていた。


「魔力を集めてる?」


「正確には集めて精錬して圧縮して凝固させて純度の高い魔力石を常に作り続けてるんです」


 ヒントは魔力兵装の魔力の圧縮を利用した魔力石の生成方法だった。精錬するので効率はいい方ではないが、実際この純度の高い魔力石を作るだけならこんな大きな装置を作る必要は全くない。


 それこそ少し優秀な魔導士なら簡単に作る事が出来るので、ここまで時間、装置を作り作り出すのは非効率きわまりない。


「アリスさんの作る魔力石程の純度には劣りますが、この魔道具を動かすならこの程度純度の魔力石でいいですし、今回の目的は継続性ですから」


 この装置の良い所は、常に魔力を集めて魔力石を生成し続ける。その為わざわざ魔力石を交換する必要はなく、定期的な簡単な点検だけで交換という手間が省ける。この世界の魔力石を使った魔道具は基本魔力石の交換が当たり前で、悠魔の様に大掛かりな装置を作ってまで継続供給する事はない。


「後は屋敷の中にある魔道具にこれを接続するだけです。ここからは地味で面倒な作業になるんですよね……ミルクさん手伝ってもらえませんか……」


「はい、何を手伝えばいいですか?」


 魔力を魔道具に流す方法は簡単で、この魔道具から動かしたい魔道具まで魔力の流す刻印を描けばいいだけだが、この屋敷は広く魔道具の数も多いので面倒な作業で、自分一人だと一日はかかる。アリスも怪我で手伝いを頼むのは気が引けるし、ナナはこの様な精密な作業をは苦手で頼んでも戦力にならなく、困っていた所にちょうどミルクが帰って来た。


 ミルクに一通りの説明をすると、彼女は気合十分とぐっと手を握り腕を上げ屋敷の方に駆けて行った。




「これで最後――疲れた」


 最後の刻印を引き悠魔は床に座り込む、すでに夕暮れになっており殆ど作業には丸一日かかった。作業が終わり大広間に行くと、そこには疲れてテーブルでだらけ涼んでいるミルクがおり、彼女はカリンが用意したお菓子や紅茶を楽しんでいた。


「悠魔様の分もすぐに用意いたします」


「お願いします」


 流石に一日中作業をしていて疲れており、彼には珍しく行儀はよくないがテーブルに突っ伏して、カリンが用意してくれるお茶を待つことにした。

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