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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第七章
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魔女の訪問者

 悠魔の屋敷を訪ねて来た女性がおり、彼女は魔女帽子、黒いローブをつけており、魔女ですと言ってるような恰好をしていた。悠魔は彼女と対面した時まるで魔女の様な格好をした女性だなと思ったが、女性の顔を見て目を細める。


「初めまして貴方が悠魔君ですね」


「初めまして貴方は?」


 彼女の目は金色で魔女帽子を取ると、その中から腰辺りまである長い黒い髪が流れて来る。


「私は魔女教団の第四席のミーアです。知識の魔女さんに頼まれて此処に来ました」


「エルフェリアさんに……」


「貴方に特訓をするために来させてもらいました」


 一瞬疑問に思った悠魔だったが、ミーアの言葉でエルフェリアに頼んだ事を思い出す。


「遅くなって申し訳ありません。流石にこの街中にバレなく入るのには少々準備に時間がかかりまして」


 悠魔は無礼だと思ったがミーアを頭の上から足元まで見る。容姿は大人しそうな文学系の容姿をしており、身長も悠魔より少し低いくらいの女性で、転生前に住んでいた日本なら図書館で本を読んでいるような女性だった。


「さて、早速授業を始めましょうか」


 彼女は魔女帽子を頭に乗せて、胸もとで両手を合わせる。


「此処じゃ邪魔になりそうですから、何処か邪魔にならない部屋とかありませんか?」


「それなら僕の部屋でいいですか?」


「はい」


 ミーアを連れて自分の部屋に行くと、ミーアは魔女帽子の中に手を入れる。中をゴソゴソと何かを捜す様な素振りをし、少しして大きなフラスコを取り出す。


「ありました」


「これは……ディオラマ魔導箱ですか?」


「よく知ってますね。その通りですこの中なら私も魔力を使えますから」


 フラスコの中にはアリスが所有してる物に似た感じになっているが、アリスの持ってる物とは少し違い大きな山、密林、ナイアガラの滝の様なものまであった。


「アリスさんのものより色々ありますね」


「剣姫の魔女さんにあれを差し上げたのは私ですからね。ちなみに作ったのは私です」


 ディオラマ魔導箱と一緒に取り出した台座の上に置き、さぁ行きましょうと言い悠魔の手を取りディオラマ魔導箱の中に入って行く。




 彼らが降り立った場所は海に面したロッジで、ロッジ中の作りはアリスが持ってる物と同じ作りになっていた。


「それでは早速開始しましょうか」


 砂浜に移動しお互いに向かい合うように立つ、ミーアは腕を組み悩むような仕草を少しの間をして、何か決めた様に頷く。


「悠魔君の腕の魔力回路は壊れている。それで魔法を戦闘で使えるレベルではない、間違いないですか?」


「はい」


「それなら今の悠魔君にうってつけのものがあります。まずはそこで見ていてください」


 ミーアは海面を歩いて行き、少し離れた場所で止まる。


「それじゃあいきますよぉ! よく見ておいてくださいね!」


 そんな彼女の言葉を聞き頷くと、彼女はゆっくり構える。彼女の正面にあげられた掌に赤く輝く魔力が放出されるが、その魔力はすぐに展開された魔法陣に球体状に集まって行く。


「装填――魔力兵装紅蓮の姫服」


 勢いよくその球体状に圧縮された魔力を握りつぶすと、彼女の体全体から炎が噴き出す。赤い灼熱のドレスを纏い、揺れ動く髪の間から時々炎が漏れ出し、腕や足からは燃える装飾品が光輝いていた。


 彼女はゆっくり海面を歩くと、水が蒸発する音を発して水蒸気を上げる。


「これが魔力兵装と言うもので、全身を魔力の鎧で包むもので、これは火の魔力を摂り込んだもので、攻撃力に特化した魔力の鎧です」


「火の魔力って事は他の属性の魔力でも可能なんですか?」


「はい、それぞれが違う強化を得れます」


「その時その時で使い分け出来るんですか……でも僕属性変換が出来ないんですけど」


 申し訳なさそうに悠魔が答える。確かにすごい技法だが、残念ながら悠魔は魔力の属性変換が出来ない。


「わかってますよ。ですからこれを使います」


 彼女の全身の炎が一ヵ所に集まり、赤い魔力石を作り出す。


「火の魔力石です。これなら同じ効果が得れます」


 悠魔は渡された赤い魔力石を眺める。先程彼女が魔力兵装を使用したのを見て、その使用のやり方は分かった。ミーアのやった事はそれほど難しい事ではないが、簡単に真似出来るかといえば簡単には出来なく、取り合えず彼女がやったのを真似して魔力石を握り砕く。


 先ほどミーアが展開した魔法陣が悠魔の掌にも展開し、砕けた魔法石が気化し赤い魔力を生み出す。先程見た様に悠魔は霧散した魔力を球体状に圧縮して行く。


「収束は問題ないようですね。問題はこの次ですね……ダメですか」


 離れた所で悠魔を眺めていたミーアだったが、彼女の視線の先には収束した魔力が弾けて吹き飛ばされる悠魔がおり、彼女は吹き飛ばされ倒れてる悠魔に近づいて行く。


「よい線は行ってましたね」


「この魔法陣に魔力を収束圧縮するのが難しいですね」


 魔力兵装は魔法陣を使用するが、魔法より魔力技術に近く魔法陣全体に魔力を通す必要はなく、ただ必要なだけの魔力量を魔法陣サイズに圧縮注入するだけで特別難しい技術ではく、魔力の収束、圧縮などは並の魔導士なら誰でも出来る。


「魔力兵装でしたっけ? これ下手をすれば魔法より難しくないですか?」


「そんな事ないですよ。魔法の様に精密な魔力操作を必要としませんし、ただ圧縮して魔力を注入するだけですから」


 笑顔でミーアは言い放つが、一度体験して見て悠魔は分かったが兎に角難しい、目の前の魔女は何気なしに息をするように収束、圧縮、注入までをしていた。


「なれればこれほど使いやすいものはないですよ。取り合えず練習をしましょうか」


 そう言いミーアは魔女帽子から大きな木箱に入った大量の色とりどりの魔法石を取り出す。この時悠魔は魔力兵装より、寧ろ彼女の持っている魔女帽子の方が気になった。


「その帽子どうなってるんですか……猫型ロボットですか……」


 魔女が持ってる物なので普通の帽子ではないのだが、木箱を取り出した時の動きが未来から来たロボットがポケットから道具を取り出す動作に似ていたのに少しシュールだった。




 魔力兵装の訓練を初めてミーアは顔には出さないが内心驚く、かれこれ十時間ほど経つが彼女が思っていたほど早く悠魔がコツを掴むのが早かった。


「ここまで来るのに十時間ちょっと……思っていたより早いですね」


 悠魔の腕は炎の衣の様なものが纏っており、まだまだだがまさかここまで早く進むとは彼女は思ってなかった。すぐに炎の衣は霧散してしまうが、これも徐々に維持する時間は伸びており範囲も広がって来ている。


「剣姫の魔女さんに渡した物と違い、このディオラマ魔導箱の中は四倍の時間が流れますから、外はまだ明るいですね。ここで一度休憩を入れた方が良いかもしれませんね」


 アリスが持つディオラマ魔導箱は外での一時間が倍の時間をかけて流れるのに対してミーアの持つものは四倍の時間が流れるので、外はたいして時間が経過してないが、ディオラマ魔導箱の中はすでに日がくれて薄暗くなっていた。


 この中なら時間はたっぷりあるし、悠魔の疲れもそろそろ限界だと思い一度休憩を取る事にした。

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