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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第六章
163/227

行軍

 ララークの外には沢山の騎士が整列しており、悠魔は少し離れた所でコトナと共に立っていた。


「すごい数ですね」


「今から起源龍の討伐ですからね。最低限の兵だけ残して出陣ですからそりゃあすごい数になりますよ」


 今から始まるのは起源龍の討伐で、これはその為の兵でその人数に投入されるのはエストア王国だけで千人近い、これから行軍してダイナモ帝国、アリテール王国の軍とも合流して地の起源龍グラウが存在する場所に向かう。


「動きがないのが幸いですね」


「はい、アリテール王の話では今の所目立った動きはなく眠ってる様ですから」


 奇妙な事にグラウは一ヵ所に止まり眠ってる。移動してないなら移動は簡単で作戦も立てやすい。


「悠魔君と私は後方の補給部隊の警護ですね」


「補給部隊の護衛も大切ですからね」


「私としてはこっちでよかったです。攻撃手段が大したものないですから……」


 コトナの剣も魔法も悠魔が知ってる中で上位に入るほどの腕だが、どれも平凡なもので決定打に駆けるものばかりだった。


「それにしても悠魔君は前線に出なかったですか?」


「アリスさんに止められました……」


 初めは前線に立つつもりだった。今の悠魔なら純粋な力ならその辺の騎士など足元にも及ばない、しかしアリスは彼を後方の補給部隊の護衛に行くように言った。


「納得は出来てませんが、筋は通ってるですよあの人の話は」


 補給部隊の護衛はどうしても手薄になりがちだった。話ではアリテール王国のステールとイオも補給部隊の護衛になっている。


 起源龍との戦闘になれば黒い地龍も沢山出て来る。それから物資を守るのにもそれなりに強い人がいる。


「雷槌があるとはいえそれだけでは不安ですからね」


 雷槌――悠魔が作り出した魔道具で、先日リボーズに名前を決めておけと言われて考えた名前が雷槌、炸裂する時落雷の様な音が聞こえるからそう名付けた。


「エリクサーに雷槌出来る準備はしたつもりです」


「がんばりましょう。今回はジェンガ君も出ますから、前線の主力になるのは彼とアリスさんですね」


「それとリボーズ様と四獣士のアウラさんとウィズさん、さらに三各国の騎士達」


 この戦力ならそう簡単には負けない、いや負けられない。


「どうやら移動が始まったみたいですね」


 前線に立つ兵が動き出す。その集団から抜けアリスがこちらに歩いて来る。


「こっちに来てよかったんですか?」


「問題ない、少なくと各国の軍と合流すまでは特別前線に居る必要はない」


 今の彼女の姿は、アリテール王国の騎士服を着て黒い髪を金色にしており、魔女として目立たない様にしている。


「ほら行くよ、なるべく早く合流しないといけないんだから」


 悠魔もコトナもそんな彼女の言葉を聞き歩き出す。


「ダイヤスの兵て海路でアリテールの方に行くんですよね?」


「そうですね、そこでアリテールの軍と合流して進軍して私達と途中で合流です」


「行軍速度から六日から七日くらいで合流出来ますかね?」


「そのくらいで出来るのが理想だね」


 歩きながら悠魔は地図を取り出し確認をする。今回の戦地はどの国の領地でもない場所で、岩と枯れ木しかない所だった。




 数日でアリテール王国に到着する。すでにダイヤス帝国の軍も到着していた様で、草原には沢山のテントが張られ、物資が積み込まれた馬車などが置かれていた。


「さて、明後日には戦いですね」


「ああ、僕は前線に出るから君の傍を離れる事になる……少し不安だ」


「大丈夫ですよ。物資の護衛ですから起源龍との直接戦闘はないですし、黒い地龍の対策も幾つも考えてます。僕より心配なのはアリスさんです」


 二人は夕暮れの中焚火を見ながら話をする。どちらが危険かと言えば明らかに起源龍との直接戦闘をするアリスの方が危険だった。


「何とかするさ、僕もいくつか対策は考えてるからね」


「……ジェンガさん、コトナさん、リボーズ様、四獣士の皆さん……それでアリスさんこれだけの強者が集まっても不安がぬぐえないです」


 今回集まったメンバーは悠魔があった中でも強者ばかりで、さらにダイヤス帝国が大量に量産してくれた魔道具の数々がある。


「安心しろ何が何でも勝つよ、だから心配するな」


「……アリスさんて時々男前ですよね」


 そんなアリスの態度に少し安心し、火にかけてた料理を取り分けて行く。




 夜が明け前線のメンバーはすでに行軍を開始していた。悠魔の隣に立っていたコトナが指示をだし順番に場所が動いて行き、悠魔もコトナもその馬車に足並みをそろえて歩き出す。


「悠魔君昨日はよく眠れましたか?」


「いえ、正直そこまでは……寝不足ですか?」


「ふぁい、どうも緊張しすぎて……前線で戦う訳じゃないんだけど」


 眠そうに欠伸をするコトナを見ると、彼女は普段化粧をしないが、今はうっすらとされておりどうやら隈を隠してる様だった。


「うんん、こんな事じゃいけないと分かってるだけど、どうしても緊張して」


 伸びをして眠気を飛ばそうとする彼女の顔にはふ不安が見られた。それは彼女だけではない、辺りを見るとどの人の顔にも不安の色が見られた。


「それでもやるしかないです」


「……そうだね。うん頑張ろう」


 そんな会話をして歩いてると、悠魔は後ろからいきなり肩を組まれる。誰かと思い視線を向けると、そこに開いたのはステールだった。


「おう! 悠魔緊張はしてないか!」


「そこそこには緊張してます。持ち場を離れて大丈夫なんですか?」


「イオに任せて来たから大丈夫だ」


 それは大丈夫ではないのではないだろうかと思が、この人にそれを言った所で仕方ない、目的の場所までまだだいぶあるし悠魔も何も言わないことにした。


「辺りに目を光らせとけよ。敵は起源龍やその眷属だけじゃないぞ、特に盗賊には気をつけとけよ」


「いや、こんな完全武装の集団を襲うほどの度胸がある盗賊はいないでしょ」


「……そりゃあそうだな」


 大笑いをするステールを見て少し安心する。彼ほど気楽には馴れないが、確かに考えすぎてもダメだと思い少し肩の力を抜く。


「そうですね。出来る事はしたんですから後はどうやって結果を出すかだけです」


「さて、俺は戻るな! イオを怒らせると開戦前に離脱する事になるからな!」


 そう言い残し大笑いをしながら悠魔達から離れて行くステールを見て、悠魔は一体何をしに来たのだと思う。


「暇人なんですかね」


「そうじゃないと思いますよ。多分悠魔君の緊張をほぐしに来てくれたんですよ」


「大雑把なあの人がそこまで考えますかね?」


「あはは……辛辣ですね悠魔君」


 コトナは悠魔のステールの評価に乾いた笑いをする。




 行軍は順調で、天気も崩れる事無く余計な邪魔も入らない。このまま行けば明日の夜までには目的の場所の手前には着く、そこで一晩を過ごし明け方に攻撃を仕掛ける手はずになってる。


「天気は心配でしたけど、この様子なら大丈夫そうですね」


「はい」


 小休憩中に悠魔は空を見上げる。快晴とまではいかないが雨が降る心配もない、順調すぎて怖いくらいに運に恵まれていた。


「ん?」


 悠魔は何か気が付いた様に勢いよく立ち上がる。コトナもそんな悠魔に釣られて立ち上がり、何事かと思い悠魔に視線を送ると、彼は急に駆けし彼女も慌ててこの場を休んでいた別の兵に任せて悠魔を追いかける。


 見晴らしの良い丘から辺りを見渡すと、前線の部隊が何かと戦ってる様子が見られた。


「何と戦ってるんだ?」


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァー、どうしたんですか急――何かと戦ってる?」


 息を整え悠魔の隣に立ち彼と同じ方向に視線を向けると、彼女も異変に気が付き指を輪っか上にして覗き込み遠見の魔法を発動させる。


「あれは黒い地龍との戦闘です!」


「見せてください!」


 コトナの手を掴み彼女の指の輪を覗き込む、コトナは急な事で慌てるが今はそんな状況ではないと思い気を引き締める。


「すぐに戻って指示を出してきます! 悠魔君は此処で見張っていてください! 万が一打ち漏らしがこっちに来たら無理をせずにすぐに逃げて来てください!」


 もし戦闘になれば面倒な事になる。前線の部隊が打ち漏らすと思えないが、万が一のこともあるのでコトナは慌ててそれを報せに行く。


「一匹二匹なら僕一人でもなるが、それ以上なら逃げた方がいいな」


 悠魔は雷槌を片腕に装備して、もう片手に魔法石を握る。いつでも打ち漏らしが来てもいいように戦闘態勢を取る。

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