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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第六章
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戦いの後

 壁に激突した悠魔は土煙の中考えていた。今のままじゃ確かに足手まといにしかならない、今の攻撃も回避出来なくもなく、目の前から一瞬にして消えたステールに驚き動けなかった。


「……ダメだ……こんなんじゃ」


 ステールは悠魔が立ち上がって来るまで待っており、次に悠魔が取る行動を予測しており、ステールの予想は見事的中する。


 土煙の中が光ると同時に龍のブレスが放たれ、あらかじめその攻撃を予想していたステールは飛び退き回避する。いくら魔力に耐性がある体とはいえ、流石にあれほどの攻撃を真っ向から受けてやるつもりはなく、回避を選択した彼だったがそれは愚策で、今度は彼の背後に悠魔が現れ魔力を纏った拳でステールを力一杯殴り飛ばす。


 まさか金剛の体を直接殴りに来るとは思わなく、ステールはそのまま吹き飛ばされ、今度は彼が訓練場の壁に激突する。


 意表をついた攻撃だったが、金剛で覆われたステールの体を殴りつけたため悠魔の拳は砕け、所々皮膚は敗れて赤い血を流している。


「痛っまさかこの体を馬鹿正直に殴って来た奴はお前で二人目だ」


 若干呆れた様子でステールは瓦礫をのけて立ち上がって来る。多少のダメージはあるが今の状態の彼にしてみれば石で出来た壁は豆腐とそう変わりなかった。ちなみに一人目はリボーズで、自慢の金剛の体は砕かれた。


「がんばった所悪いが物理の防御も中々あるんでな」


「わかってますよ、僕の目的は貴方をそこに飛ばす事ですから」


「……なに?」


 よく見るとこの場所は悠魔が初めにステールに飛ばされた場所で、ステールは嫌な感じがしたのでその場から離れようとするが、その時にはすでに遅く瓦礫に紛れて悠魔が撒いておいた魔法石が悠魔の合図と共に発動し、その場に大量の爆発を起こす。


 いくら魔法への耐性、物理の耐性があるとはいえ、中身は普通の生物と変わりない、その為爆風による衝撃は防げなくステールは吹き飛ぶ。


 さらに悠魔は逃がすまいと、ステールの傍に飛び上がり龍の尾を振り下ろし彼を地面に叩きつけ、ステールが着弾した場所に手加減なしに魔力砲撃を打ち込み追い打ちをかける。


「いくら魔法に耐性があっても……衝撃までは防げませんよね」


 肩で息をしながら悠魔はすてーステールが立ち上がるのを待つ、今の攻撃で悠魔も大量に魔力を消費し、片手もつぶれている。正直これでステールが戦闘不能になってなければこの後の戦闘は厳しい。


 頭を振りながら体を起こすステールは少しふらついているが、その顔には笑みが浮かんでおり、悠魔は心の中で悪態をつくが、すぐに次の行動を起こす。


 これ以上の接近戦は危険だと判断したため、取り出した魔法石を投げそれらに込められた魔法を発動させる。


 発動した魔法は中級魔法の地獄の業火(インフェルノ)で、幾つもの同じ魔法が発動した事で炎の津波がステールを襲うが、魔法耐性の高い彼は炎の津波を恐れずに走り抜ける。悠魔も初めからこの魔法に大した期待はしてなく、彼の目的は眼くらましでステールが炎を抜けた先には悠魔はいなく、ステールは悠魔を捜す様にキョロキョロするがいなく。


「何処行った!」


「此処ですよ!」


 突如地中から現れた悠魔が、ステールの顎を蹴り上げる。今の悠魔の状態からてっきり遠距離戦を仕掛けて来ると思ったステールは距離を詰めたが、その行動が仇となった。全く痛くはなかったが、脳が揺らされて足がふらつき、何とかバランスを取ろうとするがそれを許す悠魔ではなく、魔法石を彼目掛けて投げる。


「これで終われ!」


 魔法石に込められていた悠魔オリジナルの魔法の破城対を発動させる。破城対の衝撃によりステールは吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れる。


 ステールが起きてこないのを見て、イオは悠魔の勝利を宣言する。


「ほら、さっさと起きなさいこのボンクラ」


 倒れて目を回しているステールをイオは蹴り起こす。頭をさすりながら起き上がり今だ意識がはっきりしないのか頭を左右にふる。


「あー頭がフラフラする」


「まったく四獣士とあろうものが情けない」


「いや、そう言われても……結構強いぞ悠魔の奴」


 彼はそう言い沢山の兵士に囲まれ、質問攻めになってる悠魔に視線を送る。確かにこれは模擬戦で、お互いに命の取り合いならステールが勝っていただろう、悠魔に大きな一撃を入れたのは彼が先だった。


「言い訳になるが、少なくとも俺は手を抜いてはいなかったしな」


「……そんなにですか?」


「アイツはまだまだ伸びるぞ」


 困った様に今も兵達の質問に答える悠魔を見てステールは微笑する。彼は同僚のイオの顔を見ると、彼女はチロりと舌を出し好戦的な表情をしており、その表情を見たステールは悠魔に対し心の中で、ご愁傷さまと思うのだった。




 悠魔は今ニアに傷の治療をしてもらっており、彼女の顔はぷりぷり怒っていた。


「痛っ」


「悠魔様! 怪我をするなといいませんが、もう少し自身の体を気遣ってくださいアリス様にも頼まれてるのですから」


「はい、すいません」


 傷はそれほど大したものではなく、そもそも小さな傷はすでに治ってる。龍族の治癒能力はかなりものだが、潰れた拳はすぐには治らなく、今ニアに治療してもらっていた。


 訓練で怪我をするのは仕方ない事だが、今回の悠魔の怪我は流石に酷く、訓練でする怪我ではなかった。


「……明日も訓練するんですよね」


 ジト目を向けて来るニアから顔を逸らす悠魔だったが、仕方なく頷くと彼女はため息をはき、これ以上大きな怪我はしないでくださいと言い、悠魔の怪我を治療を終える。


 治療を終えた悠魔はニアの頭を撫でると、彼女は頬を赤らめうっとりした表情をする。こんな事をしていると、勢いよく扉が開きリボーズが乱入して来る。


「悪い悪い、少し遊び過ぎた……お邪魔だったか?」


「っ――し、失礼します!」


 悠魔は兎も角ニアははっとして慌てて立ち上がり、部屋から逃げる様に出て行く。リボーズはそんな彼女を見て、気まずそうな表情をして悠魔に視線を送る。


「……別にお邪魔じゃなかったですよ、それで何処に行ってたんですか?」


「いや、少し街の方で……少し遊んでいて」


 こういう性格なのはよく知っている、ここ最近悠魔の中での彼の評価は少しづつ下がりだしてる。もうこの人に敬語を使う必要はないんじゃないかとも思える。


「それで、どうだった? ステールは……」


 何処か楽しそうに悠魔の肩を掴みいやらしい笑みを浮かべる。どうやら評価を聞きたいようだった。


「強かったですよ、命の取り合いなら負けてます」


「だろうな、アイツと坊主に大した力の差は実際ないぜ、これが坊主に足りないものだ」


 確かに武芸の事を失念していた。もし上手く対応できたなら結果は変わっていたかもしれない、今の悠魔には決定的に戦闘の経験値が足りなかった。


「幸い此処には経験値を稼ぐのに好都合な奴らがゴロゴロいるからな」


 そう言いリボーズはバンバンと悠魔の背中を叩き部屋を出て行くと、廊下の方から怒るようなクリルの声が聞こえて来て、その後すぐに言い訳をするような声が聞こえて来る。


 まぁ怒られるよなと思いベットに寝転がる。潰れた拳は明日には治るだろう、そうなれば次の相手は誰だれにしようと考えた。

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