魔女
悠魔がアリスとの待ち合わせ場所に向かうために大通りを歩いていると人混み出くわした。
「何かあったんですか?」
「ん、何だあんた知らないのか魔女が捕まったんだよ」
悠魔が近くに立っていた男性に話を聞くとどうやら王都内に入り込んだ魔女が捕まったと聞き遠目に騎士団に拘束されて連れていかれる女性が見えた人混みからは「捕まってよかった」「怖かった」など、安堵の声が聞こえて来た。
「……アリスさんとの待ち合わせ場所に行かないと」
悠魔は連れていかれる魔女の女性を遠目で見た時女性が泣いていたのを見て思う所があったが自分じゃどうしよもないと思いその場を立ち去った。
「おや、今日は浮かない顔をしているね」
「そ、そうですか?」
「そうだよ、何かあったのかい?おねーさんに話して見ると言い」
「……実は」
悠魔は少し考えたが結局アリスにここ最近の迷いを話した魔女について今日捕まっていた魔女についてアリスは冷やかしせずに微笑みを浮かべて話を聞いていた。
「ん~君は連れていかれる魔女を見てどうしたいと思ったんだい?助けたかったのかい?」
「わかりませんその魔女が悪さを働いてるなら捕まって当然だと思いますがもしただ魔女だからと言うだけで捕まったのならひどく悲しくて魔女すべてを悪とするのは……」
「……」
「アリスさん?」
アリスは悠魔の話を聞いて考える様に目を閉じしばらくすると目をゆっくり開き。
「悠魔……君は優しいんだね……うん、ただ単に優しいだけなんだ」
「優しいですか?」
「大抵の人間は魔女なんて聞いたら悪と決めつけるからね…………だけど君は違う」
「…………」
「悠魔その気持ちを大切にするんだ」
「……はい」
「さて、それじゃあ昨日の続きをしようか」
悠魔が昨日と同じように魔法の練習を開始した、だが何度してもアリスの様に魔力を球体状に固定することが出来なく時間だけが過ぎて行った。
「ハァ……ハァ……くっそ」
「……少し休憩しよう……ほら魔力ポーションだ」
アリスがポーションを悠魔に飲ませた。
「そう気を落とすな魔力の固定はコツさえ掴めば簡単に出来る……まぁそのコツを掴むのは難しかもしれないが」
「……」
「うむ、仕方ないな余り手取り足取りして指導すると本人のためにならないからよくはないんだが……まぁいいか」
「え、」
「悠魔魔力を放出して」
「は、はい」
アリスが魔力を放出している手を少しの間両手で包み放すと悠魔の手の平で魔力が渦を巻き球体状に変化した。
「これは?」
「どうだい? コツはつかめたかな次は一人でやってみて」
固定されていた魔力が霧散すると悠魔は再び魔力を放出して固定をし始めたそうするとさっきまで全く変化なく垂れ流されていた魔力が手の平で渦を巻き始めた、それに驚いた悠魔は集中力を切らしてしまい渦を巻いていた魔力が霧散してしまった。
「今!?」
「よし、ちゃんと今度は集中して」
「……」
悠魔の手の平で魔力が渦巻き球体状に固定された。
「で、出来た、出来ました!」
「よし、最後は威力だ、まぁこれは簡単だ」
「威力?」
「イメージはそうだなその球体をさらに小さく圧縮するんだ」
「小さく圧縮……」
手の平の球体が徐々に小さくなりBB弾くらいの大きさになった。
「うん、これまでの工程放出、固定、圧縮がこの魔法一連の流れだまぁ、あとはこれをいかに早く出来るかだ後は練習次第だ」
「何か色々ありがとうございます」
悠魔が手の平の魔力を霧散させ頭を下げてお礼を言ったそれを見たアリスは顔を赤くして恥ずかしいのかそっぽを向いてしまった、この四日で見た事もない反応を示したアリスを見て悠魔笑ってしまいそんな悠魔を見てアリスは恥ずかしそうに悪態をついていたしかし、その顔は楽しそうで笑顔だった。
「そうだ、悠魔今からはもう遅いから明日その魔法の実戦練習をしようこの辺の森ならちょうどいい相手もいるだろう」
「でも、大丈夫ですか? 二人じゃ危険なんじゃ?」
「安心してくれ君は僕が守るから問題ないこれでも僕は上級魔法まで使える魔法師なんだよこの辺の魔物位遅れをとる事はないよ」
「……わかりました」
悠魔は少し考えてまぁ、アリスさんとなら大丈夫だろうと判断した悠魔は自己紹介の時にアリスが魔法以外も剣術が得意と聞いてたので大丈夫だと判断した。
「よし、なら明日準備して朝門の前に集合だ」
「わかりました」
その後悠魔のお腹が鳴りそれを聞いたアリスが悠魔に背を向けて笑いを堪えたそんなアリスを見て悠魔はアリス背中をポコポコ叩きだした羞恥のせいからしくなくない行動をとったアリスは「ごめん、ごめん」といいお詫びに夕食を奢るといい少し早い夕食をとるために近くの店に入った。
「おや、君は飲まないのかい?」
「お酒は苦手なんですよ」
アリスは水を飲む悠魔を見てお酒を飲まないのか聞くと悠魔は酒が苦手だといい料理を口に運んだ。
「こんなに美味しいのにもったいない」
蜂蜜酒を飲みベーコンを食べお酒で火照った顔で悠魔を直視し視線に気づいた悠魔は「どうかしました?」と視線を送り。
「君って見れば見るほど綺麗な顔をしているね」
「……酔ってるんですか?」
悠魔はアホな事を言い出したアリスをジト目で見てフォークをテーブルの上に置いた
「ああ、安心してくれ、酔ってはないから、僕はお酒には強い方だからね」
「そうですか、それで急に何ですか?」
「ああ、これはこれでありかなと思って」
「ぐっ! ケホケホ」
悠魔が水を飲んでる時に爆弾発言をするので咳き込んでしまいそれを見たアリスは「冗談だ」とハハハと笑い蜂蜜酒をぐっと飲みジト目の悠魔を無視して食事を再開した。
「アリスさんの冗談はよくわかりません」
「ん、よく言われるね」
「勘弁してください」
そして、夕食終了後二人はそれぞれの宿に戻ろうと歩いているて。
「今日は中々楽しかったよ、たまには人と一緒に食べるのもいいね」
「ごちそうさまでした」
「それじゃあ、僕はこっちだから」
「送らなくて大丈夫ですか? 結構飲んでましたけど」
「ああ、大丈夫だ言っただろお酒には強い方だって」
「なら、いいですが」
「じゃあ、お休み」
「おやすみなさい」
二人は分かれ歩き出したしかし、悠魔は何か思いついたのか王宮の方に歩き出した。
「やぁ、おはよう」
「おはようございます、待たせてしまいましたか?」
「ああ、気にしなくていいよ、僕もついさっき来たところだから……さて、行こうか」
「はい」
アリスと悠魔が門をくぐり森に向けて歩き出した昼頃になる頃には森が見えて来たので森に入る前に近くにある平原で昼食をとる事にした。
「ん、このサンドイッチ美味しい」
「それは、よかったです朝早く起きて作ったかいありましたよ」
「君料理上手だね」
雑談も交え昼食をとり森に入った時の打ち合わせをし始めた。
「よし、打ち合わせもしたし行こうか」
「はい」
二人は森に入り手ごろな獲物を探し始めたしばらく歩くと一匹のゴブリンが木の実を食べており。
「ゴブリンか、ちょうどいい獲物だな、行くよ」
「はい」
アリスと悠魔が茂みから飛び出すとゴブリンが気づきこん棒を構えた悠魔は幻弾の魔法を用意しゴブリンめがけて放った。
「生成時間はまぁ、及第点だけど」
「あれ、」
「まぁ、初めはそんなものだよね」
幻弾はゴブリンの足元に当たり弾けた。
「もう一回」
「は、はい」
再び幻弾を生成しようとするがゴブリンが走り出し接近してきた。
「やば!」
「……仕方ないなぁ」
アリスが前に出るとその手には魔力で作られた魔法剣が握られておりそれを使いゴブリンのこん棒を捌き隙を見てゴブリンを蹴り飛ばし。
「悠魔!」
「っ」
再び幻弾を放ち今度はゴブリンに命中してゴブリンが痙攣して動かなくなった。
「ふ~」
「うん、合格かな、まぁ生成時間の短縮と命中精度はもう少し練習する必要があるけど取り合えず合格だ」
「何ですかその剣?」
「ああ、これは魔法剣だ魔力で生み出した剣だよ固定した魔力の形状を変化させた物だよ……そうだな町に戻ったら形状変化の仕方を教えてあげるよ」
「アリスさんありがとうございます……ん?」
「どうかしたのかい?」
悠魔が巨木の根元をに生えていた薬草を摘んだ。
「薬草だね」
「はい、ポーション作るのに必要ですから」
「君はポーションを作れるのか」
「はい、まだそれほど品質の良い物は出来ませんけど」
「ふむ、なら……あった」
アリスがキョロキョロして何かを見つけたのかジャンプして木の枝を足場に巨木を登って行き何かを掴んで降りて来た。
「何ですかその木の実?」
「増加の実て言って魔法薬の効果を高める力がある木の実だよそれと……」
アリスが赤い木の実を悠魔に渡し巨木の根元に生えていた草を取り悠魔に渡した。
「これは魔霊草で魔力ポーションを作る材料になるから集めておいて損はないよ」
「アリスさん色々知ってますね」
「まぁ、そこそこにねも少し時間もあるしもう少し薬草採取しようか」
「はい」
悠魔は巨木の上の木の実を採ろうと木の枝に足をかけた時悠魔は木の実の方に視線がいっていて足をかけた所が苔で覆われているのに気が付かなく足を滑らして巨木から落ちてしまいそれに気が付いた別の木の実を採ろうとアリスが手を伸ばすが僅かに届かなく悠魔は落下先にあ空洞に落ちてしまった。
「痛いな、咄嗟に強化の魔法を使ったから大したケガをしなくて済んだが此処からどうしよう?」
悠魔が空洞を見渡すとかなり広くて天井を見上げると悠魔が落ちたと思われる小さな穴から光が漏れていたどうするか悠魔が思考しているとアリスの声が空洞内にこだました。
「悠魔!」
「アリスさん!大丈夫です!」
「今からそっちに降りられる道を探すから、そこを動かなく待っていてくれ!」
「わかりました!」
しばらくその場に止まっていると魔法剣で天井から垂れて道をふさいでいたツタを切り裂きアリスが歩いて来たアリスは悠魔を見つけると走り出し悠魔に詰め寄った。
「大丈夫か!?ケガとかないか!?」
「は、はい平気です落ちた瞬間に強化の魔法を使ったので擦り傷くらいです」
「よ、よかった」
悠魔のケガが大した事ない事を確認すると安心したのかその場に座り込んでしまった。
「お願いだから気をつけてくれよ」
「すいません」
「もういい、無事だったんだし」
「それにしても此処は何でしょうねかなり広い空間ですけど」
悠魔が空洞を再び見渡すとアリスが何かに気が付いたのか立ち上がり壁の一面をぺたぺた触り始めた。
「アリスさん?」
「……これ、人工物だ……魔法陣?」
「魔法陣」
悠魔もアリスの隣まで歩いて行き壁を見るとそこには魔法陣や文字が記されていた。
「これ、何て書いてあるんでしょうか?」
「古代文字の一種だねちょっと待って」
アリスが考えるそぶりをしながら文字を指でなぞり始めた時々独り言の様な小声を発していたが悠魔にはその意味は分からなかった。
「……ダメだ、わからない」
「そうですか(知識の書を使えばわかるかもしれないが)……ん?」
「どうしたんだい?」
「アリスさんこれって?」
魔法を起動させるための魔法陣があり悠魔が魔法陣に手を出そうとした時アリスの手が悠魔の手首を掴み行動を制止した。
「アリスさん?」
「……ダメだこの魔法は何だか嫌な感じがする」
「嫌な感じ?」
「ああ、これでも僕の感は当たるんだ」
真面目なアリスの顔と手首を掴む力から本気で止めてるのだとわかり悠魔は魔法陣に触れるのをやめた。
「さぁ此処を出ようそろそろ戻らないと日暮れまでには帰れなくなるよ」
「そうですね」
遺跡を後にしてアリスが切り開いた道を上り地上に出た森を出る為に歩いていると森が途切れていて巨大な谷があり悠魔が底を覗くと霧がはっていて底が見えなく悠魔は落ちたら助からないなと思い谷から離れた。
「すごい谷ですね」
「ああ、これは死の谷だね」
「死の谷?まぁこれだけ深い谷なら落ちたら助かりませんよね」
「いや、普通の谷なら落ちても割と死なないよ君もあれだけの高さから落ちてもかすり傷で助かったろ」
「そう言えば」
「この谷の怖い所は底に行けば行くほど魔法が使えなくなるんだ」
「魔法が使えなくなる?」
アリスはこの谷は理由は分からないが魔法が使えない事を悠魔に説明して気を付ける様に忠告をして谷の底向けて魔弾を放つと放たれた魔弾が徐々に弱くなり消滅してしまった。
「ね」
「……」
「まぁ、気を着けなよ……っ」
「アリスさん?」
「そこにいるのは誰かな?出て来てもらえると助かるのだが」
アリスが怖い顔をして巨木を見つめた少しして悠魔のよく知る人物が出て来た。
「ジェンガさん、それにコトナさんどうして此処に?」
巨木の陰から出て来たのはジェンガとコトナだった悠魔は二人がどうしてこんな所にいるのかがわからなくまた、二人とも前にあった時は基本的に笑顔を絶やさなかったのになぜか険しい顔をしていたアリスの顔を見るとこちらも険しい顔をして二人を見ていた。
「えっと……」
「悠魔彼らは知り合いかい?見た所騎士の様だが」
「え、は、はい」
アリスは一見いつも道理だが雰囲気が冷たい感じがして少し委縮してしまった。
「悠魔彼女から離れるんだ」
「ジェンガさん?どうしたんですか」
「彼女は魔女だ」
「!?」
「……」
悠魔がアリスをチラッと見るとアリスは何も言わずに無言のまま騎士二人を見ていた。
「……ジェンガさん、僕は昨日」
「うん、分かっている昨日王宮で君がおこなったことは僕達の常識を覆す事だった」
「……昨日?」
悠魔は昨日アリスと別れてから王宮に行き無理を言って捉えられた魔女と話をしていた結果彼女は別に悪さをしたわけではなく魔女になったのも今はもういないが病気の息子を助けるためだと教えてもらい定期的に住んでいる場所を変えて今はひっそり暮らしてるのだと教えてもらった嘘ではない事を王妃エレンの異能で確認隅で魔女もその後釈放されて王都から別の町に移り住んでいる。
「君は、そんな事をしていたのか」
「魔女だからって事ですべてを悪だと決めつけるのは嫌なんです」
「…………そうか」
アリスは安心するように微笑み何かを決意したかのような表情をした。
「でもだ悠魔彼女はダメなんだその魔女は昨日の魔女とは違い!」
「アリスさんは」
悠魔は今までの出来事をジェンガとコトナに話ただが二人とも険しい顔をくずさず。
「それが魔女の手口だそうやって人に取り入り目的を達成する魔女教団やり方なんだ、そして彼女は魔女教団の十人の幹部の一人剣姫の魔女なんだ!」
「魔女教団……アリスさんが?」
「…………」
「そうだ、彼女は過去に都市も滅ぼした事もある魔女だそれもたった一人で」
「そんな……嘘……アリスさんが……っ!」
「悠魔!」
「悠魔君!」
「どう……して……」
悠魔の腹部から魔力で作られた剣の刃が出ておりそれをしたのがアリスだと悠魔はすぐに分かり振り向こうとした時アリスが剣を抜くと同時にその場に倒れ込んでしまった。




