めんどくさい奴ら……
悠魔が目を覚ますと、そこは自室で昨日は確かエリクサーの研究をしていた所で、自室で眠りについた記憶はなく、誰に運ばれたのかは分からないが部屋を出て行き、昨日の惨状を目にする。
「あのまま寝てしまったのか……ナナさんいないのか?」
彼女の気配がなく家の中は静まり返っており、チノもミルクもまだ眠っているのだろうと思い、昨日の研究成果の確認をする。
「これ以上は下手な調合をしない方がいいか……取り合えず量産出来る様にはなったな、ミルクさんの推測が当たってよかった」
悠魔は調合を記した紙を、ロール状に丸めて金色の糸で縛る、この糸には魔法が掛けられており、解呪方法を知らないと外すことが出来なく、さらに紙を守る効果があり、それを三組作り懐にしまう。
「これでよし、後は渡すだけだな……そういえばアリスさん何処行ってるんだろ、帰って来てからは会ってないな」
ちょっと寂しく思い、一通りのやる事はやったので昼の用意を始める。
しばらくして、ちょうど昼食が出来上がる頃にアリスが現れる、彼女の帰宅に気がつかなかった悠魔は驚く。
「おはよう……」
寝起きの為か、彼女は眠そうに眼を細めて眠そうに欠伸をし、体をほぐす様にのびをする。
「帰ってたんですか?」
「ん、君達を部屋に運んだのは僕だよ、昨晩は頑張っていたようだね、成果は出たかい?」
「出ましたよ、エリクサーは完成しましたし安定した量産も出来ました……」
「どうかしたのかい?」
せっかくエリクサーが完成したのに、何処かくらい様子の悠魔を、アリスは心配そうに見る。
「実は一応飲んでみたんですけど、残念ながら僕の魔力回路は治らなかったんですよ……どうやら物理的な破損なら治せるようですが、エリクサーは霊体は治せないようです」
「……そうか」
「僕は飲みました、アリスさんも……」
「断る、君を傷つけた腕なんかいらない」
何処までも頑固な彼女に、仕方ないと悠魔は今回は諦め、彼女に昼食を出す、さらに昼食の匂いを嗅ぎつけて、ミルクとチノも起きて来る。
悠魔は此処に居ないナナが気になったが、彼女の行方は誰も知らなく、仕方なく彼女抜きで昼食を開始する。
「君はこの後どうするんだい?」
「王宮にこれを持っていこうかと思います」
悠魔は三つのロール状に丸められた用紙を並べる。
「魔法の糸で括ってあると言う事は、これがエリクサーの調合が書かれた用紙か」
「はい、チノさん帰るときにこれを持って行ってください、リボーズ様なら解除方法を知っています」
「わかったわ、明日の朝此処を発つわ」
明日の朝一で帰ると言われ、今夜はえ彼女の送別会になると思い、悠魔は後で買い物に行くかと思い、取り合えず昼食後にエリクサーの事をフェレクスに伝え、王宮に向かうことにした。
悠魔はサレーナ家に着くと、そこにはナナがおりどうやらレイラに会いに来ていた様で、二人はフェレクスを交えて雑談をしていた。
「それじゃこの中にエリクサーのレシピが書かれてるんですね」
「はい、少々僕のアレンジも入ってますが、材料と調合手順を間違わなければ誰でも作れます、僕はこの後王宮にこのレシピを持っていきますが、フェレさんはどうしますか?」
「一緒に行こう、ダイヤス帝国の時は一緒に行けなかったからね、例の魔道具の件も聞きたいし、エリクサーの事も興味があるから」
「でも、すごいね、流石は悠魔っち、伝説の秘薬を完成させるなんて!」
レイラのそんな言葉を聞き、フェレクスの目は少し嫉妬を宿して悠魔を見る。
「そんな目で見ないでください……」
「……ごめん」
素直に悠魔に謝るフェレクスので、そんな彼を見てレイラは微笑する。
「フェレクス様には感謝してますよ、あたしの働くところや治療に手を尽くしてくれました」
「そう思うなら、僕の求婚を受けてくれてもいいんじゃないかな?」
「それとこれとは別です」
相変わらずの彼らの状態にナナと悠魔は二人に聞こえない様にヒソヒソ話す。
「この二人は相変わらずですか?」
「相変わらずよ、いい加減レイラちゃんも観念したらいいのにね」
レイラは相変わらずフェレクスの求婚から逃げてるようで、少し昔の事を思い出し二人に視線を送る。
「コレットさんが生きていたら、僕も……」
今は亡き思いを寄せていた不器用な女性の事を思い出し、二人のやり取りに自分を重ねてしまう。
「もう、あんなことはごめんだ」
「悠魔君?」
「何でもないです」
ナナはボソッと呟いた悠魔の言葉は聞こえていたが、あえて聞こえないふうを装い彼に視線を向けた。
悠魔とフェレクスのは馬車で王宮に向かい、レイラは仕事を再開して、ナナはそんな彼女の邪魔をしない様に帰路についた。
王宮に着いた二人は、早速国王のクランドに面会をしてエリクサーのレシピを渡す。
すごく感謝され、今は何故か姫のエリスとゲーム――チェスをしており、フェレクスは二人の勝負を横から眺めていた。
「くっ負けました……」
「あのう、そろそろやめませんか、もう、十回以上してますよ」
「まだです、もう一度」
この姫様は相変わらず負けず嫌いだと思い、ため息を吐き駒を並べて行く。
しかし、結果はまたも悠魔の勝利で、彼女は悔しそうに拳を握りしめる」
「別のゲームをしましょう、フェレさんもいるんですから」
今度はトランプを取り出しそう提案し、しぶしぶだがその提案に彼女は納得してくれた。
今度はトランプでババ抜きをするが、エリスは基本無表情で顔に出ず、悠魔は最近色々な経験から学び表情を変える、フェレクスはと言うと、残念な事に顔に出てしまい先ほどから再開続きで、エリスは無表情ながらもドヤ顔で、背景にドヤと言う文字は見えるほどに得意げにしており、悠魔は二人を見て微笑するしかなかった。
「悠魔さんもう一度だ」
今度はフェレクスが、何度も勝負を仕掛けて来て、エリスも何だかんだ悠魔に勝てないため、下手をしたらこの二人は勝つまで続けるんじゃないかと思い、何でこの家系はクランド然りエリス然りフェレクス然り何故こうも負けず嫌いなのかと思い、少々途方に暮れてしまう。
「ハァ、もう日も傾いて来てますから、今度で最後にしますよ、明日一でチノさんが帰るので、今夜は豪勢に料理を作る―」
「何⁉ 悠魔さんの料理! そのパーティー僕も参加する!」
「ずるいです、私も参加したいです」
二人共悠魔の料理の腕は知ってるので、そのパーティーに参加したいと言い出す。
「いやいや、何を言ってるですか? 無理に決まってるでしょ、二人は王族です! 夜に出歩くなんて」
「そんなの、悠魔さんの料理が食べれるなら些細なことだ! 僕は何度か悠魔さんの家に行ってる、問題はない!」
「そうです、悠魔さんの料理の前では些細な事です!」
フェレクスの意見は最もだが、エリスの意見は殆ど意味の分からない言葉で、面倒な事になったと思ってると、扉が開き先程の悠魔の言葉を聞いたのか、クランドが部屋に勢いよく乱入して来る。
「私もそのパーティー参加しよう!」
「いいわけないでしょ! 仮にも王様をあんなボロ小屋に招くなんて出来ません……言っていて悲しくなってきた、ハァ……」
疲れたように項垂れる、別に今の家が気に入ってないわけではなく、此処に比べてしまうとどうしてもそう思ってしまう、しかし家の守りはアリスが魔法で施した結界に守られており、下手な屋敷よりは強固だった。
「しかし、悠魔殿の料理となると……」
「この際王だろうとと貴族だろうと関係なく言います、馬鹿ですか貴方達は⁉ どれだけ食にこだわりがあるんですか!」
悠魔の声は部屋中に響き渡り、彼らの態度に悠魔は頭を悩ませる。




