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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第六章
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ダイヤス帝国に向かおう

 ダイヤス帝国に向かう為に悠魔は船に乗っており、潮風に当たりながら大海原を眺めていた。


「結構暖かくなって来たな」


 季節は移り替わりここ最近は暖かくなって来たので、そろそろ薄着の服を用意しないといけないなと考えながら、春の陽気当てられ大きく欠伸をする。


「全く……しまりがないわね」


 悠魔の隣に居るのは珍しくアリスではなく、無気力そうな表情をするハーフエルフの少女のチノ・カレーラで、彼女は悠魔にエリクサーの作り方を聞くためにアリテール王国からやって来た。


「何で、チノさんが此処に居るんですか? エリクサーの作り方は教えたのですから国に帰ったらどうですか?」


「あら、対起源龍用の魔道具を作りに行くのでしょ? なら私にも見る権利はあるはずよね」


 確かにアリテール王国は起源龍の討伐に協力してくれてるので、王宮に出入りしてる彼女が見る権利はある。


「そうですよ! 私も興味があります」


 同じくその隣でドヤ顔をするのは、蒼海の魔王ことユミナ・アルルカントの友人のミルク・デイズ、悠魔の技術を学ばしたいと悠魔の元に預けられ、今回の話を聞きついて来た。


 本来はフェレクスもこの旅に同行する予定だったが、貴族の集まりがあり、どうしても一緒に行く事が出来なくなり、彼が一人で向かうはずだった。


「ハァ、ゆっくり出来ると思ったのに……」


 今回の旅は大きな危険がないと言う事もあり、今の悠魔ならある程度の魔獣は対処できるとアリスには同行を断られてしまい、ナナは一言、悠魔君と出かけると絶対面倒に巻き込まれると言われ断られた。


 今回の旅は大きな危険があるとは思えないが、チノは最小限の自衛しか出来なく、ミルクに至ってはまともに戦う事すら出来ない、クランドが馬車を手配してくれたが何事もなく、ここまでの道中無事に来れたのだと悠魔は心の中で思った。


「なんだ、なんだ!」


「どうかしたんですか?」


 ミルクが声を上げ甲板から身を乗り出して海の彼方を指さす。


 そんな彼女の指先を見ると、無数に跳ねる魚の群れが見れた。


「あれは、ただの魚の群れですよ」


「光ってますよ! 光ってます!」


 彼女は深海都市で長い事暮らしており、外の世界で暮らしていた記憶が殆どない為、深海都市では見れなかった色々な物に興味津々で、悠魔は彼女に逐一説明をして行く。


「ほへぇ……綺麗ですねぇ」


「確かに深海では見られない光景ですからね」


「それでもうすぐ着くけど、それからどうするの?」


 チノは自分の長い髪が潮風に煽られるのを抑え、この先の予定を悠魔に聞いて来る。


 ダイヤス帝国にはすでに連絡が行っており、港には迎えが来てくれる事を説明すると、彼女は納得して船内に歩いて行った。


「おぉぉ! 悠魔さん! 悠魔さん!」


「今度は何ですか! って一角鰻ぃ!」


 ミルクの声を聞き悠魔が振り返ると、彼女の目と鼻の先に巨大な一本の角を持つ鰻がおり、悠魔は慌てて彼女を抱え大剣を取り出し、一角鰻を両断してその場から飛び退き距離を取る。


 首を落された一角鰻は、その断面から血飛沫を振りまきから落ちて行き、ゆっくりと海面に浮かび上がって来る。


「あ、危なかったぁぁぁ」


「うぉぉぉ! ビックリした!」


 悠魔は驚き反射的に一角鰻を両断したが、この魚は肉食という訳でもなく別に危害を加えなければ危険がある魚ではなかった。

  

 疲れたようにその場にミルクを下ろし、咄嗟の事とはいえ先走った行動をした事に反省をする。


「……やってしまったな」


 甲板は静まり返り悠魔に視線が集まる、この空気をどうするか考えるが急に如何にも海の男の雰囲気をした男が悠魔の背中を叩く。


「よくやった! おい! 引き揚げろ大物だぞ!」


 その男の声に反応して次々と動き出す人たちは、海の上に浮かんでいる一角鰻の体を引き上げにかかる。


「あはは……まぁ結果よしか……」


 引き揚げられた一角鰻は綺麗に捌かれて行き、甲板で次々と焼かれて行き配られて行く。


「ほら、嬢ちゃんたちも食べな! 一番いい部分だ!」


 どうやら一番の功労者の悠魔には一番良い部位が配られるが、どうやら目の前の男は、悠魔の性別を勘違いしてるようだが、もう訂正するのも面倒なので何も言わずに蒲焼きにされた一角鰻を食べる。


「……美味しい」


「ほふ、ほふ、美味しいです!」


 取り合えず先走った行動を咎められはしなかったが、これはこれで面倒な事になったなと思い海を見ると、遠くにダイヤス帝国が見えて来た。




 無事にダイヤス帝国に到着すると、悠魔は二人を連れて下りようとするが呼び止められる。


「嬢ちゃんこれ持っていけ!」


 悠魔は先ほど背中を叩かれた男に大きな包みを渡される、中身は先ほど悠魔が討伐した一角鰻の残りの切り身で、どうやら残りを貰えるようだった。


「いいのですか?」


「良いも何もお前さんが討伐したものだ、後これは報奨金だ」


 さらに木箱の上に重めの麻袋をのせて来る、じゃらりと音がする所を見ると中には相当な金額が入ってるのがわかった。


「こんなものいりませんよ、僕も美味しいものが食べられましたから」


「いや、そうなんだがな……悪かったな、確認も取らずに皆に振舞ってしまって、それの詫びも入ってる」


 その場の勢いで討伐者の悠魔の許可も取らずに、調理をして他の人に振舞ってしまった事を少し後ろ暗そうに語って来る。


「そんな事気にしないでいいですよ、あれを引き上げるのは僕には無理でしたから」


「まぁ、そうかもしれないが受け取って置いてくれ、一番の功労者は討伐した嬢ちゃんなんだから」


 どれだけ言っても引かない相手に、折れたのは結局悠魔だった。


「分かりました、ありがとうございます」


 男はそんな悠魔に挨拶をして仕事に戻って行く、それと入れ違いに自分達の荷物を持ったミルクとチノが船から降りて来る。


「何を持ってるの?」


「一角鰻の切り身です」


「あのお魚さんの切り身ですか!」


 一角鰻の切り身と聞きミルクはハイテンションになる、どうやら船の上で食べた蒲焼きが相当美味しかったのか、包みに視線が行く。


「後で料理してあげますから、今は王宮に向かいましょう」




 案内に馬車に案内されるとそこには、悠魔の良く見知った人物が座っていた。


「久しぶりです悠魔さん」


「まさか国のトップが迎えに来るとは……」


 馬車の中に座っていたのは、この国の皇帝のサリア・ダーマン・ダイヤスで、本来ならこの様な場所に居る人物ではない。


「久しぶりに会えると思えたら居てもたってもいられなくて……つい」


 可愛らしく笑みを浮かべる彼女を見て、少し呆れるが皇帝になっても今まで通りに接してくれる友人に安堵する。


「そちらの二人が手紙に書いてあった、アリテール王国のチノ・カレーラさんと深海都市アルカトラズのミルク・デイズさんですね、ようこそダイヤス帝国に」


「初めまして、悠魔から話は聞いてます、チノ・カレーラです」


「は、初めまして、ミルク・ディズです」


 簡単な挨拶をして、王宮に案内された三人はそれぞれ別室を与えられる。


 悠魔は早速要件に取り掛かるために王宮の工房を訪れると、そこには沢山の人達がおり、それぞれが魔道具の制作に取り組んでいた。


「初めまして、ここの主任をしている、マクス・フローラだ、マクスと呼んでくれ、皇帝陛下から話は聞いてる、遠い所からよく来たね」


「悠魔です、申し訳ありません忙しい所に時間を取っていただき」


「気にする事はないよ、起源龍に対抗するための魔道具なら、寧ろこちらから協力のお願いをしたいよ」


 悠魔は持って来た設計図を広げ、マクスの意見を聞いてみると、やはり自分とは違う意見を幾つも出してくれる。


「この構造だと、使用者への負担が大きいね、重さもかなりのものになる」


「このままだと製作は無理そうですね」


 彼と二人で話していると、チノも合流して来る。


「問題点としては、装置が大きすぎるという点ね、この杭を引き戻す場所に改良をくわえられないかしら?」


「改良を加える……」


「例えばあなたの使用する、拳銃だっけ? それと同じように杭を使い捨てにするのよ、そうすれば装置自体もずっと軽量化出来るし射程範囲が伸びるは、まぁその分離れれば離れるほど威力はおちるけど」


 彼女の言ってる事には一理あった、確かに杭を弾頭に見立てて打ち出す様にすれば、装置の軽量化に射程の問題を一挙に解決できる。


「しかし、打ち出すと言ってもどうするんだい? それなりの威力を出せる推進剤が必要になるだろ、魔法を使うにしても、火薬を使うにしてもそれなりに手間のかかる物になる、大量生産には向かないじゃないかな?」


「それでしたら……」


 悠魔は道中で考えた、杭を打ち出すための構造の案を書いた用紙を取り出し、それを踏まえて話を再開させ、三人は日が暮れるのも忘れ魔道具の制作に取り掛かって行った。

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