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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第六章
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戦いの準備

 悠魔、コトナ、ステールと数十名の騎士は雨の中森の中を走っており、全員体中泥だらけで大小体中に傷を負っており、そんな中息を切らしながら必死に大量の地龍から逃げていた。


「くそ、そく、くそ! もっと早く気づいていれば!」


「前線とは完全に切り離されてしまいましたね」


 嘆くように叫ぶ悠魔と、自身たちが置かれた状況を分析するコトナは、息を切らして必死に雨でぬかるむ山道を走る。


「おい! 口を動かす暇があったら足を動かせ! 追いつかれたら終わりだぞ!」


()()があれば、あの数でも相手に出来るのに……」


「仕方ねぇだろ! 襲撃された時に積み荷が殆ど破壊されたんだから、無い物の事は考えずに今は逃げるぞ!」


 ステールの怒鳴るような声を聞き、現状を打破する事だけを悠魔は走りながら思考して行くが、何も思い付かなく必死に足だけを動かしていく。


 すべての始まりは、数か月前に起源龍の力を目の前に心を折られてしまった悠魔だったが、ステールとの会話でこれから自分が進むべき道を決めた時だった。




 アリテール王国からエストア王国にある自分の家に帰って来た悠魔達は、いつも通りの生活に戻っておりナナは畑仕事に、悠魔はフィオナとブロントの二人と冒険に、アリスは特別何かをする事もなく過ごしていた。


 悠魔はアリスに起源龍の件から完全に手を引くと言ってしまったため、どう話したらいいか考えていたが結局真正面から話すことにした。


「もう一度起源龍の件に関わろうと思います」


「……」


 読書をしていたアリスは、視線だけを動かし悠魔を長い時間見つめ続ける。


 彼女は何も喋らず悠魔もそんな彼女を見て何も言わず、唯々二人の間には沈黙が訪れており、先に言葉を発したのはアリスだった。


「……君のしたいようにすればいい、僕は君の為に動くだけだ」


 そう言い残して彼女は再び読書に戻ってしまう、悠魔は反対されるかと思ったが簡単に承諾した事を不思議に思ってしまうが、アリスは初めからこうなるような感じがしていた。


 自分の様などうしようもない魔女を助けた人間だ、口ではどう言おうと最終的には手を出そうとするだろうと思っていた。


「えっと……いいんですか?」


「良いも何も、よく考えた結果だろ? なら僕は何も言わないしそれに協力するだけだ」


 本から視線を外さずにアリスはそう言う、彼女は悠魔以上に悠魔の事を知っている、出来れば起源龍には関わりたくないと彼女も思っているが、この少年は最終的は関わるそう踏んでいた為に心の準備はしていた。


 ここ数日悠魔は冒険から帰って来ると、決まって工房に籠り起源龍について調べて、それはアリスも気がついていたが、彼が自分で言い出すのを待ってた。


「協力してくれるのでしたら少し相談があります」


「何だい?」


 悠魔が考えていたのは起源龍もそうだが、地の起源龍が生み出す地龍の対処方法で、対峙する以上避けられない問題だった。


「アリスさんが使用していた虚無の力を刻印魔法とかで発動できますか?」


「無理だ、君も見ただろ、()()僕が使えばあれほど疲弊する魔法だ、刻印魔法や魔道具じゃ無理だよ」


 無理という結果を聞いた悠魔だったが、特別落胆した様子はなく、次に大きめの用紙に書かれた何かの設計図を彼女の前にだす。


 アリスは本を閉じ用紙を広げて目を通し始め、しばらくして悠魔に今のままだと設計図の魔道具を作るのは不可能だと告げる。


「これじゃあ無理だ、ようは君の使う拳銃と同じ原理の武器だろ? 一度戦った身としてはあれの皮膚を貫くのには威力不足だ」


「となると、魔法を組み込んだ方が良さそうですね……」


 設計図を見て悠魔は唸りながら考える、機能は簡単なもので鉄杭を火薬で打ち出す武器のパイルバンカーだったが、これなら起源龍は無理でも黒い地龍を倒す事が出来ると思った。


「君が作った魔法を組み込んでみるのはどうだい?」


「僕が作った魔法ですか……」


 これの製作に使える魔法はすぐに思い付いく、破城対の魔法で、あの魔法の力で鉄杭を打ち出す構造にすればいいのではないかアリスは提案してくれる。


 それなら火薬で打ち出すより威力は上昇し、構造もすごく簡単に作ることが出来て量産も簡単だ。


「取り合えず王宮にでも持っていったらどうだい? 何か良い案を出してくれるかもしれないよ」


 彼女にそう言われたので、悠魔はすぐに王宮に向かう事にした。




 王のクランドと、魔道具を自身で製作するフェレクスの前に設計図を広げ、改良して行く点、製作に掛かる費用の相談をしていく。


「確かにこれなら騎士達でも黒い地龍を倒す事が可能化もしれないね」


「ただ、どうしても構造上に問題がいくつかあるんです」


「ふむ、私は魔道具には詳しくないが、それならダイヤス帝国に行って見るといいかもしれないな」


 ダイヤス帝国の魔道具の技術力は世界でも随一で、クローン兵や鉄の人形兵など数々のものを生み出している。


「確かにそれはよい考えかもしれませんね」


「ダイヤス帝国ですか……」


 噂で聞いた程度だが、ここ最近のダイヤス帝国は評判が良くなってるようで、サリアは頑張ってるのだと思う悠魔だった。


「どうだい悠魔さん?」


「そうですね……ここで少人数で案を出すよりは多くの案を聞き入れた方がいいかもしれませんね」


「それならすぐに船を手配しよう、早ければ明日には手配出来るがどうだい?」


「お願いします、早い方がいいと思います」


 深海都市アルカトラズでの事は彼らにも報告した、すでに起源龍が三体も復活した事と天使たちの存在に、急いで対策を取らなければ取り返しがつかない事になると思い、クランドもすぐに動いてくれた。


「悠魔さん僕も同行していいかな?」


「ありがとうございます、心強いです」


 この申し出には悠魔としてはありがたいもので、フェレクスがいれば自分が説明すより、分かりやすくダイヤス帝国の技術者に説明してくれる。


 この設計図自体知識の書を使い製作したため、詳しい構造を説明するとなると自身がなかった。


 実際に拳銃の構造を知っているアリスはすぐに理解してくれたが、フェレクスやクランドに説明するのは難しく、とても時間がかかりすでに外は暗くなりだしていた。




 船の手配はクランドがしてくれたので、悠魔は自宅に帰るとそこで思わぬ人物と出くわす。


「悠魔、君に客だ」


 夕食の用意をしてくれていたアリスは、ナナと一緒にテーブルについていたチノを手に持っていた木製のお玉でさす。


「……お邪魔してるわ」


「チノさん、どうして此処に?」


「お願いがあって来たのよ……」


 この前の事もあり少しばつの悪そうな顔をして、彼女は悠魔の方に振り向く、あの後一応和解はしたがそれでもまだ半月ばかり程度の日数しかたって無く、二人の関係は少し微妙な雰囲気だった。


「お願いですか? 構いませんが僕に出来る事でしょうか?」


「そうよ、寧ろ貴方にしか出来ない――っ」


 真面目な顔をして話していたチノのお腹が空腹で可愛らしい音を立てると、彼女は顔を赤くして俯き、悠魔は微笑してテーブルにつく。


「取り合えず夕食を食べてからにしましょうか、お腹が減った状態ではろくに話し合いも出来ませんからね」


 少ししてアリスが作った夕食がテーブルに並び食事を開始する、食事の時は雑談程度の話しか出ずすぐに過ぎて行き、再びチノは悠魔の方を振り向き頭を下げてくる。


「お願いエリクサーの作り方を教えて……」


「……エリクサーですか、あれは自分で作るって」


「もう、時間がないの……私は陛下の決めた期日までには間に合わなかった、だからお願い」


 彼女は自身のプライドをまげて、今回悠魔に教えを請いに来た。


 今回の行動は彼女にとってとてつもなく、自分を許せない行動で、それでもこの行動を取ったのは国の為だった。


「あの薬があるのとないのでは戦闘で助かる命の数が圧倒的に違うわ、だからお願いっ!」


 よく見ると血がにじむほど拳を握り込んでおり、頭を下げてる為顔は見えないが、小さな雫がテーブルを濡らしていた。


「ちょっと落ち着いてください! そんな事をしなくても教えますから、これじゃ僕が泣かしてるみたいじゃないですか!」


「やーい泣かした!」


「泣かした!」


「少し黙っていてください! 酔っ払いども!」


 ナナとアリスは少し離れた所でお酒を飲み、その顔は赤くなってすでに出来上がっており、悠魔に絡みだす。


「大丈夫です、教えます……別にもう隠しておく必要もないですから……」


「っ、あり、ありがとう……」


 全く何でこんな目にあってるのだと思い、悠魔はため息をはき疲れたように項垂れる。

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