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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第五章
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破壊の爪痕

 王宮の戦いは終わりアリスも眠ってしまったため、どうしようか途方に暮れていた三人の前に、瓦礫を押しのけミアハが現れる。


「皆様大丈夫ですか⁉」


「はい、僕たちは、ただ……アリスさんが僕達の替わりに戦って……」


 眠ってるアリスを抱き抱えた悠魔は、細かく事情を説明すると、ミアハは無事だった部屋に案内してくる、眠っているアリスをベットに寝かせて四人は一息つき、これからどうするかを話し始める。


「ユミナ様が向かってくれたので封印の方は大丈夫だと思うのですが……」


「そうですか、分かりました、私は都市の警備を固めます、これ以上の侵入者を許すわけには行けません」


 彼はそう言い残し部屋を出て行き、沈黙が部屋を支配する。


 ミルクはどうしていいのか分からずオドオドしており、ナナも怪我をしているせいか疲労の様子が見れる、彼女らにこれからの事を聞いてこれ以上負担をかける訳にはいかないと思い、これからどうするべきか悠魔は考えだす。


(取り合えず目の前の障害はアリスさんが取り除いてくれた、これからどうするべきか……)


 天使は他にもいる事が襲撃して来た天使の青年の言葉でわかる、なら、他にもこの都市に入り込んでいる可能性があると考えて動いた方がいいのか、それとも此処で大人しくしているべきか、どうしようか考えていると、悠魔は袖を引っ張られていることに気がついた。


「悠魔さん」


「ミルクさん、どうかしましたか?」


「いえ、この都市はどうなるのでしょう?」


 ミルクは生まれたのは外の世界だが、ある理由によりユミナと知り合い友人になってこの都市に移り住んだ、彼女にとってはこの都市はとても大切な場所で、今までこの都市では今回の様な争いが起こった事はなく、目の前であのような戦いを見ると不安になってしまうのも無理はなかった。


「大丈夫ですよ、すぐにいつも通りの生活に戻れます、今は休んでください」


「あぃ…」


 力なく頷く彼女の頭に手を置き撫でる、どうやら少しは効果があったのか彼女は少し笑顔になり、部屋に置いてあった椅子にちょこんと座る。


「今僕に出来る事は彼女達を守ることくらいしかないですね」


 取り合えずナナとミルクにポーションを渡し、悠魔も少し休憩を取ることにした。




 悠魔は声を掛けられ目を覚ます、どうやら休んでいるうちに眠ってしまっていた様で、すぐに立ち上がり現状を把握しようと部屋を見渡そうとした時。


「痛ぃ!」


「っっっ!」


 何かにぶつかり悶絶するが、どうやらぶつかったのは声でナナだと言う事がすぐに分かった。


「す、すいません、大丈夫ですか?」


「もう、そんなに慌てなくても、あの後は侵入者も何もなく平和よ」


 どうやら、王宮の人が簡単な食事を運んで来てくれたみたいで、それで彼女は悠魔に声を掛けたようだった。


「食事にしましょ、食べないと何かあった時に動けないわよ」


「ええ、ありがとうございます」


 悠魔は食事を始める前にアリスに視線を送るが、どうやら彼女は今も眠ったままのようで、普段は黒い髪も今だに真っ白のままだった。


「大丈夫よ、アリスさんは眠ってるだけだから、ただ魔力を使いきったみたいで、ある程度まで回復しないと目を覚まさないのだと思うわ」


 魔女の力の源は魔力で、どうやら今は魔力を使いすぎただけで回復に専念するために眠ってるのだと、ナナは推測を立ててくれる、髪が白くなったのもその影響だと思うから必要以上に心配はいらないと教えてくれた。


「まぁ、ただの推測だけどね、多分大丈夫よ、それより今は悠魔君よ!」


「ぼ、僕ですか⁉」


「そうよ、結構無茶をしたわよね、守ってもらった手前私は生意気な事は言えないけど、しっかり休んでね、何でもかんでも一人で抱え込まないでね……悪い癖よ、それ」


「はい、すいません」


 お姉さんぶる目の前の少女を見て、実際年上なのだが、そんな彼女を見て少し楽になり食事をとる事にした。


「ミルクちゃん、お手伝いお願い」


「ほほやぁ」


 独特の返事をして手際よく用意をして行くミルクを見て、この子は独特の返事をするなと思い席につき、彼女達と食事を開始する。




「そういえばユミナ様からの連絡はありましたか?」


「ないです、ただ大きな振動が偶にするので、現在も戦ってるのだとおもいます」


 ミルクの話では定期的に大きな振動が都市を襲っており、外では今も戦いは続いてるのだと思ったが、此処は海の底で悠魔一人の力では都市を出る事すら出来ない。


 魔力を探ってみると、大きな魔力がぶつかってるような感じは分かるが、どうもよく分からなく探るのをやめる。


 食事を終え、どうするか考えてると眠っていたアリスが目を覚ます。


「アリスさん⁉」


「うるさい……頭に響くから、もう少し静かにしてくれ……」


 頭痛がするのか頭を押さえて体を起こす彼女は、まだ回復しきってないのか辛そうで、眠っていた間の様子を聞いて来たので簡単に話す。


「そうか……面倒な事になってるな」


「でも、あの天使は倒しましたよね?」


「いや、倒してないよ」


 アリスは悠魔の言葉を否定して首を横に振り、忌々しそうに表情を歪める。


「寸前の所で逃げられた、どうやら外からあの天使を転移させた奴がいるようだ、状況を整理するに敵は今の所三人以上だ」


 この王宮を襲撃した天使青年、遺跡を襲撃した者、そして外から天使の青年を助け出した者の、それが何人か分からないが最低三人だとアリスは指を三本立てる。


 彼女は話し終え一息つくと、魔力ポーションを数本取り出し飲み干す、そうすると次第に彼女の白かった髪の毛が黒く染まりいつも通りの彼女に戻る。


「さて、今出来る事は特段ない、蒼海の魔王が帰って来るまで大人しく待ってる事ぐらいだ」


 どうやらアリスも海底を移動する手段を持って無い様で、ため息をつきミルクが運んで来たスープを飲み出す。


 この空いた時間に悠魔はずっと気になっていた、アリスの使用した魔法について質問をし始める。


「ああ、魔剣の狂乱の事か……」


 彼女の話ではあの魔法はアリスのオリジナル魔法で、この世界に既存する魔法ではないようで、原理としては簡単なもので、とある魔力現象を利用して開発した魔法だと教えてくれた。


「……まぁいいか、教えたからといって出来るものでもないしね」


 彼女にしては珍しく悠魔に魔法を教えるのを躊躇するが、最終的には原理を解説してくれる。


 原理としては中和増幅により肥大化した魔力を一ヵ所に集中し高濃度の魔力球を作り出す、これを剣の形にしたのがアリスの魔法剣で、この魔法はその先にあり球体状にした魔力を一気に抜き取る。


 悠魔には彼女の言ってる意味が理解出来なく、ミルクも悠魔の横で首を傾けていた、ただナナだけは顔を青くして震えだす、どうやら心当たりがある見たいだった。


「いいかい? これがその魔力球だとする」


 彼女の掌に小さな魔力球が出現する、何の変哲もないただの魔力の塊で、アリスは分かりやすく実演し始める。


「魔力とは不思議なものでね、相反する属性同士をぶつけ合うと増幅し肥大化する、ここまではいいね?」


 悠魔は頷く、これを利用した魔法技術を元に悠魔は魔法を作り出している、アリスのようには無理だが、威力だけなら悠魔の使える魔法の中で一番で、中和増幅についてはよく知っている。


「そして高濃度の魔力を一ヵ所に集めるとね、世界の一部を歪める事が出来るんだ」


 悠魔は虹色の魔力球の周辺が歪んでいたのを思い出す、光の錯覚で見間違いかと思ったがどうやら気のせいではなかったようだ。


「小さな歪みならすぐに修復される、例えば僕が使う魔剣の様な小さな歪みならね」


 徐々に理解して行く悠魔とは裏腹に、ミルクはチンプンカンプンで頭を悩ましていく。


「あの黒い球体は、歪めて繋げた世界の外から流れ込んだ物だ、僕はそれを虚無とよんでるよ」


 悠魔自身信じられない話だが、目の前で見た光景は信じるほかなく、アリスはそんな悠魔の心境など気にせずに説明を続けて行く。


「例えるなら、水の溜まった桶に穴をあけると流れ出るように、世界に穴を開けると同じ事が起こり虚無がこちらの世界に流れ込むんだ」


「でも、さっき歪みは修復されるって、それに穴を開けるなんて……」


「確かに小さな歪みは修復されるが、穴の修復は少し時間がかかるんだ、それこそ虚無が流れ込むほどにはね」


「世界に穴なんてどうやって?」


「簡単な事だ、世界が耐えられない程の衝撃を与えればいい、今回の場合なら、歪め不安定な場所にちょっと衝撃を与えれば簡単に穴が開く」


 アリスの説明では、歪める為に作り出した魔力球を着火剤として、一気にその場から抜き取るとその衝撃で世界に穴が開く。


 とても荒唐無稽な話だが、そこでナナが話に割り込む。


「ちょっと待って、それって何処かの国が研究していて、失敗して街一つが消滅したとか」


「ああ、あったね、そんな話、直接は見てないから知らないけど、たぶん虚無の渦に巻き込まれたんだろうね、あれは人間にはすぎた力だからね、正直僕もあの暴風から自分の身を守るので精一杯だからね」


 彼女自身完全には虚無は操れない、あの時彼女が出来た事は、その暴力的な力から悠魔達を守るために僅かに操っただけだった。


「あの力は僕も出来るだけ使いたくはなかったんだけどね、被害は最小と言ってもこの王宮の、この階層より上を消滅させてしまったからね」


 実際彼らがお茶をしていた階層は王宮の四階で、それより上の階層は跡形もなく消滅しており、幸いと言うか重傷者は出たが死人は出てなく、その事を聞いた時は悠魔は安堵した。


 ちなみにアリスも僅かながらホッとしていたが、多分蒼海の魔王の部下を殺したとなれば彼女との敵対の恐れもあったからで、別に他の人の身を案じていたとは悠魔自身思えなく、複雑な気持ちになる。


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