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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第五章
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魔王と魔女教団

 悠魔が現場に駆け付けた時にはすでに荒事は終わった後の用で、ユミナがお礼を言われてる所だった。


 人の群れから離れた所に立っていたミアハの傍に行き、今回の事件の経緯を聞くと、どうやら魔獣が都市に入り込んだようで、少し大きな被害が出たと教えてくれる。


「魔獣ですか」


「はい、サーペントドラゴンですね、稀に出現する魔獣ですね」


 サーペントドラゴンは上位の魔獣で知識はないが、一匹で船を沈めたと言う話を聞くほどの魔獣で、討伐の際は国が軍を動かすほどのもので、どうやらそのサーペントドラゴンはユミナが退治したようで、すぐそこに亡骸が転がっていた。


「死体の状況を見ると殴り倒した見たいですね」


「あの方にかかれば、あの程度の魔獣でしたら素手で倒せますからね」


 サーペントドラゴンは殴られたように頭が歪んでおり、どうやらあの強力な魔獣はユミナが殴り殺した様で、あのような幼気な少女の姿をしていても魔王なんだと納得する。


「それにしても、ここ最近は妙ですね……ミルク様の事と言い、サーペントドラゴンの事と言いこれほど問題が続くとは……」


 色々疑問に思う所があるのか考え込むミアハは苦悩する。


「ミルクさんを襲った虫は見た事ない種類だったんですよね」


「はい、この海底都市に存在しない虫ですね」


「虫ですか……虫虫虫……蟲ですか……」


 何か思う所かあるのか悠魔は虫を連呼し、ある一人の人物が悠魔の頭の中に浮かび上がる。


「まさか……ね」


「どうかしましたか?」


「いえ、何でもないです、僕は先に戻りますね」


 そう言い残しその場を後にして一人王宮に向かう悠魔だった。




「それで、僕に何か用かい?」


 悠魔が王宮に戻り真っ先に向かったのはアリスの所で、彼女は悠魔が残した手紙を読んだのか、落ち着いた様子で本を読んでいた。


「ミルクさんを襲った虫について何か心当たりありませんか?」


「うむ、確信がないから推測で良いかい?」


 アリスは片目を閉じ面白そうに悠魔の振り向く、どうやら何か彼女自身心当たりはあるようだが確信が無い様で、少し自信がなさげだった。


「ミルクだっけ、彼女を襲ったの虫は、多分だけど蟲毒の魔女シリカが作った蟲だろうね」


「シリカさんがですか?」


「ああ、いつだったか言ってたよ、新たな毒蟲を作るのに成功したと、現物を見た訳ではないから確証はないけどで」


 彼女は今回のミルクの件は、魔女教団八席の魔女の蟲毒の魔女シリカがしたのではないかと考えており、シリカはその名の通りに蟲を使う魔女で、特に毒蟲等を好んで使い相手を毒殺する魔女で、悠魔も何度か話した事はある。


「まぁ、帰ったら本人にでも聞いてみろ、エルフェリアよりは遥かに単純な奴だから、簡単に教えてくれると思うよ」


「そうですか……それと――」


「今街で起こってる事件は魔女教団と関係ないよ、いくら頭の狂った馬鹿のエルフェリアでもこうも真正面から蒼海の魔王にちょっかいはかけないよ」


 アリスの言葉を聞くと、真正面でないならちょっかいを掛けると言う意味にも聞こえ、ミルクの件はますます魔女教団の仕業に思える。


 しかし、そうなるともう一つの事件が分からない、偶然と言えばそれで終わりだがミアハの言葉が頭に引っ掛かって離れなかった。


(そう言う事か……エルフェリアめ蒼海の魔王をどうにかするのではなく、悠魔に恩を売らせることで敵対を防いだと言う事か)


 ここまでの推測がまとまる様に、もしミルクの件が魔女教団の仕業なら、すべて話が繋がり納得がいく。


 実際エルフェリアの目論見通りすべてが動いている、ユミナと悠魔の関係は良好で、これならこの二人が敵対する事は無いだろう、しかし、何故エルフェリアは悠魔に龍の魔眼を与え、これほどまで面倒な手段で悠魔を守るのかが疑問だった。


(僕の知ってるアイツは人間嫌いで、悠魔を守るために動くとは思えない、何か別の目的があるのか……)


 頭を悩ますが、結局いくら考えても答えは出ずに、仕方なく考えるのをやめる。


「僕の言える事は、あまり問題に深く関わる事はやめとけ」


「別に僕が関わらなくても、ユミナ様一人いればすべてかたがつきますよ」


 最強と称される魔王が居る以上、何が来ようと彼女はその力で解決してしまうだろうし、下手に手を出して足を引っ張るわけにはいかない。


「……力が強すぎるのも問題なんだが」


 ぼそりとアリスが呟いた言葉は悠魔に聞こえなく、彼女の声は部屋の端を流れる水にかき消されて行く。




 その夜夕食は、昼間にユミナが討伐したサーペントドラゴンのステーキで、それを食した悠魔は何か思う所があったのか厨房を借りていた。


「何を作ってるのですか?」


 普通はこの場に決して訪れない人物のユミナに、厨房の掃除や明日の仕込みをしていた人達はどう対応したものかと考えており、そんな彼らを無視してユミナは悠魔の調理を見ていた。


「小さく切り分けますね」


 悠魔は手際よく肉をに切って行き、その肉を幾つかの調味料を刷り込む様に混ぜ合わせ、小麦粉をまぶしていき油で揚げて行く。


「いい匂いですね」


「もうすぐできますから少し待ってくださいね」


 香ばしく揚がった肉を見て、ユミナだけではなく厨房を掃除していた料理人達も集まって来る。


「出来上がりです、唐揚げです」


 皆大好き唐揚げを作った悠魔は早速一つ口にすると、思った通り鶏の肉を使ったより美味しく出来たと思い、二つ目を口に運ぼうとして、その光景をガン見するユミナ、料理人にの視線に気がつく。


「えっと……どうぞ」


 一番最初に食べたのはユミナでどうやら美味しかったのか、すぐに他の人に勧める様に唐揚げが盛り付けられた皿を差し出す。


「美味しいです、これの作り方を王宮の料理人に教えておいてください」


「構わないですけど……」


「もちろんタダとは言いません、昼間に討伐したサーペントドラゴンの素材を全て差し上げます」


 サーペントドラゴンの素材は、牙一本から鱗の一枚までそれなりに高価で取引される、その為悠魔自身欲しいとは思っていたが、まさかこんな形で手に入るとは思ってなかった。


「ぜ、全部ですか!」


「はい、足りないのでしたら、もう二、三匹仕留めてきます、何なら私の鱗か牙でも構いません!」


「い、いえ、結構で今日の分だけで――ユミナ様の体の一部なんてもらえません」


 本音を言えば蒼海の魔王の体の一部などの素材は欲しいが、流石に生々しすぎて受け取りを拒否する。


「それじゃあ、レシピを記したメモを作って置きます、今日は遅いですし明日でもいいですか?」


「構いません、ありがとうございます」


 そう言い残しユミナは厨房を出て行く、その手にはちゃっかり取り分けた唐揚げを皿にのせていた。


 悠魔も片づけをして帰ろうかと思ったが、片づけは料理人達がしてくれると言う事で、手伝おうと思ったが、ユミナのお客様にそのような事はさせられないと言事で、その場を追い出されるように厨房を後にする。


 その話を聞いたナナとアリスは、何故その場に自分達を呼ばなかったのかと文句を言われてしまい、この世界の人達は食にうるさいなと思うが、基本的に手の込んだ料理が無い為、悠魔は今度作る事を約束してその場を収めた。

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