街を歩く
現在ミルクに案内され都市を歩く悠魔、ナナ、アリス、ユミナは、人通りの多い道を歩いていた。
「何で、ユミナ様までついて来るんですか……」
案内が必要ないユミナがついて来てる事に、一番先頭を歩いていたミルクは不満そうに呟く、しかし、ユミナは全く気にせずにニコニコ笑顔で悠魔達と歩いている。
「結構沢山の人が住んでるんですね」
悠魔の言葉を聞き、ミルクはこの通りの説明をし始める。
この通りは、この都市で一番大きく多くの店が並び沢山の物が集まる、もちろん物が集まると言う事は人も集まるために、日中は沢山の人が行きあう。
「見た事のない物が多いな」
「すごい綺麗な石ね」
アリスとナナは露店に並べられた見た事もない道具や宝石に目を奪われ、悠魔もそんな彼女らに引かれ魔道具と思われるものが並べられてる、他の店より大きな石造りの店に興味を出す。
「これって水樹? ダイヤス帝国で見た者より大きい……」
店に置かれていた水を生み出す魔道具の水樹は、ダイヤス帝国で見た物より一回り程大きい物で、眺めているとユミナが声を掛けて来る。
「悠魔さんは水樹に興味がありますか?」
「興味があると言うか、前に見た物より大きかったので」
この街では水樹はそれほど珍しい物ではないが、日常生活には欠かせない物で、食用から農業など幅広く使われている。
「水に囲まれてると言っても、海水は飲み水や農業には向いてませんからね」
この都市アルカトラズは海底に存在してる為、周りの水はすべて海水でそれを利用するのは難しく、水を生み出す魔道具は生活に欠かせないものだった。
「確かに水は大切ですからね、僕の家も井戸がありますけどそのまま飲むことは出来ませんから」
井戸があるとはいえ水に困らないわけではなく、飲むためには一度魔法で浄水してから飲んでいる、その点水樹から流れ出る水はそのまま飲むことが出来るため、長い事悠魔は購入を考えてる。
「そうですね……それでしたら良い物があります、後程お見せします」
「いいものですか?」
彼女がそういうならと水樹は購入せずに、他に気になった青い金属のインゴットと他にも幾つかの見慣れない魔道具を購入を考えるが、生憎この都市のお金を持っていなく購入までは少し時間がかかってしまった。
「よかった、手持ちの金貨で買えて」
金貨を店員に見せると、店員は秤を取り出しこの都市で使われてる金貨と重さを測り、購入をさせてくれた。
手際がよいなと思ったが、通りを歩く人を見ると冒険者の様に鎧を付けた者達が何人か歩いており、どうやらこの都市にはくる方法があるようで、完全に閉鎖された都市ではないのだと悠魔は思った。
「一応くる方法はあるんですよ、地上の幾つかの大きな街にはこの都市に転移する魔法陣がありますから」
ただ、その魔法陣を使用出来るのは限られた者だけで、年に数回ぐらいしか人は訪れなく、それもあり閉鎖された都市のイメージが世界に伝わってる。
「さて、皆さんと合流しましょうか」
色々買い店の外で待っていたユミナと合流して、他の三人と合流するために歩いて行くと、どうやらそれなりに買い物したのか荷物を思った女性三人に出くわす。
「意外に買い物しましたね」
「えへへ……なんだか珍しい物があった物だから」
「美味しそうな酒があったものだから……つい」
ナナは変わった植物の苗を持っており、この苗なら地上でも無事に育つと言う事で購入したようで、アリスは地上では売ってないお酒を購入しており、どうやら二人は買い物に満足したみたいだった。
「それじゃあ、次に向かいましょう」
次にミルクに案内された場所は、街が一望できる丘で此処には家族連れや男女二人の人達が多く、どうやら憩いの場になってるようで、此処で休憩がてら昼食にする事になった。
昼食のメニューは、露店で購入した魚の焼き物や悠魔が持っていたパンで質素なものだが、たったそれだけの物でも綺麗な風景を見て食べる食事は美味しいものだった。
「綺麗な景色ですね」
悠魔は空を見上げてパンを頬張る、空はキラキラ光っており様々な魚が泳いでいた。
「此処は光が届かない程深い所なのに、どうやってこの光が生み出されているんですか?」
「この都市を覆ってる結界は、外の世界と同じで昼夜を発生させてるんです」
ユミナの説明を聞き納得する、通りで時間が過ぎた事で此処に来た時より少し薄暗くなっているのだっと、この都市の構造を理解する。
悠魔は焼き魚を食べようと思い、手を伸ばすとパンを食べるミルクを見て驚く、ただ彼女がパンを食べてるだけなら驚かなかったのだが、彼女は何と悠魔が作ったフランスパンを丸々一本丸かじりしていた。
「……ユミナ様」
「……すいません」
流石のユミナも恥ずかしいのか顔を若干赤くして誤ってくる、別にパンは沢山あるので問題ないが、年頃の女の子がフランスパンの丸かじりしている光景は、何と言うか恥じらいは無いのかと思うが、ミルクは悠魔のそんな心配を気にぜずフランスパンをかじり続けて、最後はハムスターの様に両頬を膨らませていた。
結局ミルクはフランスパンをを丸々三本食べてしまい、その小さな体の何処に入るのかという謎を残して昼食を終了する。
昼食後に向かった所は、ミルクのお勧めで毛玉亀と言う動物の牧場に向かう、そこには名前の通り甲羅に、フワフワな毛を生やして羊見たいな亀が飼育されていた。
「おぉ、おぉぉ!」
ミルクは毛玉亀を見て興奮して、柵を越えてフワフワな毛玉に抱き着きだす。
「あれっていいんですか?」
「いつもの事なので……」
どうやらこの彼女の奇行はいつもの事なのか、ユミナも亀の世話をしている人も微笑ましく笑みを彼女に向けているだけで、別に止めるそぶりはなくユミナの姿を見つけると挨拶をしてくる。
「ユミナ様ようこそ、よろしければ皆様もどうぞ」
彼の行為に甘えナナと悠魔は、毛玉亀に近づき手を伸ばして撫で始めると、その毛は見た目通りフワフワしており気持ちがよく、これはミルクが抱き着く気持ちは分かるなと思うが、流石に恥ずかしくて彼女の用には出来なかった。
「この毛って何かに使うんですか?」
「主に服やソファーなどですね、特にこの毛で作った防寒具は人気ですね」
そう言い刈り取った毛を悠魔に見せてくれる、しっかりと洗浄され整えられた毛は肌触りがさらに良くなっており、欲しいと思い購入出来ないかと交渉するが、少し困った様に牧場の男は微笑する。
どうやら直接の販売はしてないらしく、しかし、ユミナの客人だと無下には出来ないと思い頭を悩ます。
「すいません無理を言ってしまったようで……」
彼の反応で悠魔は直接販売はしてないのを察して、無理を言って困らせた事を謝るが、そこで牧場の男は提案をしてくる、外の世界の物と交換するのなら毛を分けてもいいと言ってくれた。
いくつかの持っていた、外の魔獣の素材や食べ物と交換して、悠魔は毛玉亀の毛を手に入れる事が出来た。
「何でそんな物が欲しいだい?」
アリスが毛の塊を抱えてる悠魔に聞いてくると、ここ最近は寒い為に防寒着が欲しいなと思い、何か良い物はないかと探していたら、ちょうど良い物が目の前にあったもので、欲しかっただけだと言われ納得する。
「まぁ、確かにここ最近は寒いからね」
「これで、温かい寝具が作れる」
「そうか……なら僕のも頼む」
「私のも!」
アリスに便乗するようにナナも声を上げて来る、初めから作ってあげるつもりだったが、何だか納得できなく苦悩する。




