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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第五章
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勝利とは……

 昼頃になり二日酔いがだいぶ良くなり、悠魔は一枚のメモを頼りに鬼人の里のある場所を訪れていて、ある一軒の室内に入ると熱風に襲われる。


「おや、よく来たねぇ紅に話は聞いてるよ、何でも頼みたい事があるみたいだね」


「はい、忙しい所すいません」


「いやいや、里を救ってくれた英雄の頼みだ無下には出来んよ、それで何だい?」


 この大柄で筋肉質の男性の鬼人は黒鉄と言い、この里内で鍛冶屋をしており、あるお願いがあり紅に紹介してもらった。


「これを刀に加工してもらいたいんですけど……可能ですか?」


 悠魔は黒い手甲を取り出し黒鉄に見てもらうが、難しい顔をして手甲を見てしばらく考える様に唸る。


「難しいですか?」


 この手甲の素材は普通の鉄ではなく、魔消鉄という特別なもので、この鉄の特性上魔法での加工は不可能でこの里の鍛冶屋を頼る事にした。


「いや、可能だ……難しいが何とかしてみよう、ただ少し時間をくれ、そうだな一日……いや、半日今晩までには仕上げて見せる」


 難しそうな顔をしてると思いきや急に何かやる気を見せだし、ハンマーを振り上げ工房の奥に入って行く。




 あのまま一人鍛冶屋に居ても出来る事が無い為に、悠魔は里内部で何か出来る事が無いかを探すために散策をし始めが、何処に行っても鬼人族に囲まれてもてはやされてしまう。


「なんだか沢山貰ってしまったな……」


 彼の両手には沢山の木の実、野菜、獣の肉などがあり、これらすべては彼が行く先々でもらったもので、彼自身そんなつもりはなくても次々と物が集まって行く。


「……紅さんの家に帰ろう」


 これ以上里内を歩き回ると、また何かを貰うような予感がしてしまい紅の家に帰る事にした。




 家に帰りつき一番に悠魔が目についたのは、居間に置かれていた宝石、大量の薬草類、魔獣の牙や角などの素材、そして大量の米だった。


「……」


「これ全て里の皆さんが悠魔さんにと」


 満面の笑みを浮かべて真白がこの大量の荷物の説明をしてくれるが、悠魔には苦笑いしか出来なかった。


 現在彼の両手には沢山の野菜や獣の肉などの食材があり、別に食べ物自体はローブ内に入れておけば時間が停止して腐敗する事は無い、宝石や魔獣の素材はお金や魔道具の素材になる。


 だがどう考えてもこの量は貰いすぎだと思う、初めは米だけの話だったが、何がどうなってこうなったのかと聞きたかった。


「これは貰いすぎだと思います、それにこれも貰ったんですけど」


 両手に持っていた物をテーブルの上に置く、真白は面白そうに笑いお茶を出してくれる。


「よいではないですか、貰える者なら貰って置いたら、皆さんそれだけ悠魔さんを評価してるんですよ」


「そう言われましても、今のこの里には必要なものじゃないですか?」


「大丈夫ですよ、皆さんその程度は分かってると思いますから……皆さん悠魔さんにお礼がしたいんですよ」


 そう言われると悪い気はしないが、この里の事も気になる、これだけの物を貰ってしまってよいのかどうか迷ってしまう。


 取り合えず出されたお茶を飲み一息つくと、何処かに出かけていたアリスと何故が()()()()()()が帰って来る。


「あら、お帰りなさいお兄様、これはまた手ひどく負けたようですね」


「この魔女剣技だけでもありえないくらい強いだが……」


「君は正面からき過ぎだ、別にその戦い方が悪いとは思わないが、それならもう少し剣筋を鋭く早くするようにした方がいいね」


 珍しい光景に悠魔は目を点にする、アリスが自主的に悠魔意外に剣を教えてる所なんて見た事がなかく、意外だなと思う。


 紅の状態を見ると、教え方は厳しいようだが少し彼女も変わったのかと思ったが、それは全く悠魔の見当違いだった。


「はぁ、今回は悠魔が世話になったから一度だけ手合わせをしたけどもう二度目は無いよ、本来ならこんな面倒事は悠魔以外にはしないんだから」


「ああ、そう言う事でしたか、あはは……」


 どうやら悠魔が世話になったため、その見返りとして剣の指導をしていた見たいで、相変わらず彼女は悠魔を中心に動いているようだった。


「わかってるよ、傷薬何処だったかな……」


 痛む体を抑え傷薬を捜しに行く、アリスは悠魔の隣に座り真白のお茶を飲み始めてある事に気がつく、部屋に積まれた大量の悠魔への貢ぎ物だ。


「何だいこの山は?」


「なんだか里の鬼人の人達がくれたみたいで……」


「これは災厄狼の毛皮に角、中々レアな素材だねここ何十年かは出現が確認されてなかった魔獣だからね」


 アリスの話を聞き、それほどの価値があるなら、売りに出すより自分で何かに使用する方が、何か面白い使い方が出来るのではないかと思い、どう加工しようか考える。


「アリスさん何か案はあります?」


「そうだね……毛皮なら防具に角なら武器にするのをお勧めするね」


 防具、武器と聞き考えるが、悠魔自身鎧などを装備しなくても、神様に貰ったローブは鉄の鎧くらいの防御力があり、武器もこの世界にはない拳銃にコレットの大剣に今制作中の刀もあるため、これ以上必要性を感じられなく。


「他に使い道ってありますか?」


「そうだね……ごめん思い付かないね」


「そうですか」


 取り合えず保留にして、真白に刀が出来上がるのが今晩だと伝え、もう一晩泊めてもらえないか聞くと、彼女は笑みを浮かべ泊まるのを了承してくれる。


「私は夕食の用意をし始めますね、お二人は休んでいてください」


 そう言い残して真白も部屋を出て行く、悠魔とアリスは部屋に二人だけになるが、特別会話もなく静かに二人してお茶を飲んでいると、体の至る所に包帯を巻いた紅が入って来る。


「大丈夫ですか? 何か傷がかなり増えてますけど……」


 どう見ても災厄狼討伐で受けた傷より、アリスとの特訓の方が傷が多く、一体どのような事をしたのか心配になる悠魔だったが、アリスは全く紅の様子を気にせずにお茶を飲む。


「なぁ、悠魔お前よくその魔女の特訓耐えれるな、俺はあの魔獣の討伐の時より死ぬかと思ったぜ……」


「……僕の時は寸止めとか、してくれますよ? たまに痛いのを貰いますけど……少なくとも今の紅さん見たいな怪我は負った事ないですね」


 アリスと悠魔の訓練は、本格的な戦闘訓練といっても出来るだけアリスが悠魔を傷つけない様に気を使ってる為、悠魔が目の前の紅の様にボロボロになる事はない。


「僕が君を悠魔と同列に扱う訳ないだろ」


「……ごもっとも、その通りだな」


 彼女の一言にすべて納得したように、自分の分のお茶を入れて飲み始める紅だった。


 悠魔も大分前まだパーティーを組んでいた時に、白い羽根の皆でアリスの訓練を受けた時に、一回の訓練が終わるたびに自分以外のメンバーは気絶した事を思い出す。


 今の紅を見ると、彼らは人間な為アリスは手加減をしていたのだと今更納得する、紅も自分が言い出した事な為文句も言わずお茶を飲んでいる。


「まぁ、今回はよくやったよ君は……本当によくやった、二人から知らせを聞いた時は慌てたが、無事でよかったよ」


「あはは……何度か死ぬかと思いましたけどね」


「どんな手段を使おうとどんなに惨めに地面に倒れようと、例え仲間を犠牲に敵を倒し最後まで生きてた奴が勝者だ」


 アリスの持論は最後に立ってた奴が勝ちで、その過程がどうあれ生き残れば勝者と言う彼女の持論には、紅も納得する。


「その通りだな、確かに俺は仲間を犠牲や卑怯な手は嫌いだが、魔女の言い分には納得だ……悔しいがな」


 真っ直ぐな性格な紅でさえも、納得させてしまうアリスの持論に悠魔は全面的に賛成はしないが、思う所はあり確かに死んでしまえば何も残らない。


「それでも、誰かを犠牲にしての勝利は嫌です……」


「今はそれでいいよ、君は君のままでいれば僕はそれを手伝うし、僕の持論を君に押し付けるつもりはない、でもこれだけは覚え置いてほしい、すべてを拾う事は出来ないんだ……」


 確かに今回の戦いも何人もの鬼人が死に、犠牲が出ない戦いはなく、アリスの顔には彼女には珍しく悲しみの表情が浮かんでおり、悠魔の頭からはその彼女の表情がどうしても消えなく残る事になる。

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