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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第五章
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もう一つの戦い

 今回の災厄狼との戦いを離れた位置から見ていたエルフェリアは、その結果に歓喜して満面の笑みを浮かべる。


「素晴らしい結果です、鬼人達の力を借りたとは言えあの魔獣を倒す事が出来るなんて、流石は悠魔さん」


 今回の騒動はすべて彼女が原因で、悠魔が黒狼の討伐の依頼を受けたのを知った彼女は、彼が向かった山に彼女は()()していた災厄狼を放った。


「部分的とは言え龍の姿になれるとは、やはり強敵との戦いは貴方を龍に近づけますね」


 どうやら今回の彼女の目的は、強敵と戦う事で龍の力を悠魔の体に馴染ませる事で、今回の成果は彼女の思惑通りに事が運んだ様でその結果に満足する。


「それにしても思いのほか早い成長ですね、すでに体を変化させる事が出来るとは、これは帝国での事が思いのほか彼を成長させたのでしょうね……そして今回の戦いでも……」


 満足したエルフェリアはその場を去ろうと踵を返したと同時に、彼女の体に無数の魔剣が刺さりガラスの様に砕け散る。


 砕け散った彼女は、先程の立ち位置から僅かにずれた場所に出現する。


「おやおやアリスさん、こんにちは」


 彼女は先ほど自分を殺した相手に、満面の笑みを浮かべ挨拶をする、そんな彼女を見てアリスは不機嫌そうに尋ねる。


「今回の騒動の狂言は君なのかい?」


「はい」


 全く悪びれもなく頷く彼女を見て、アリスは敵意を剥き出しにして魔剣を構える。


「いいですね、久しぶりに貴方と戦うのも楽しいかもしれませんね……ですが、私もあまり暇ではないのですよ、ですので少しだけ遊びましょうか」


 エルフェリアの周辺に幾つもの魔法陣が出現し、魔法陣から黒い球体が次々放たれていく、アリスは黒い球体を魔剣で防ぎながら彼女に接近し首目掛けて剣を振るう。


 何の抵抗もなくエルフェリアの首は刎ねらるが、やはり彼女の体はガラスの様に砕けてしまい、アリスの後方に出現する。


「芸がないね」


――氷塊の棺(アイスコフィン)


 アリスはエルフェリアの出現先が分かっていた様で、彼女目掛けて準備してあった魔法を放つ、エルフェリアの体を氷の中に閉じ込め一息つく。


「死なないなら、それなりの対処法はある」


 アリスは今まで何度もエルフェリアを殺してきたが、目の前の魔女を殺す事は出来なく、すぐに薄気味悪い笑みを浮かべ現れる。


 それなら殺さず動きを止めればいいのだと思って、何度か今と同じ方法を使おうと思ったが、奥の手は最後まで取っておくものだと思い使用を控えていた。


「まぁ、この程度で倒せる相手なら僕も苦労はしないんだけどね」


 上手くは行ったがアリス自身この程度で、エルフェリアを無効化出来るとは到底思えなく、彼女の予想はすぐに当たり氷が軋みひび割れる。


「中々いい線を行ってますが、この程度の魔法では私は止められませんよ」


 体に付く氷の破片を払い、歩いて来るエルフェリアを見てアリスはどう対処しようか考える、物理的に殺しても彼女は死なない、長い付き合いだが今だにそのネタが分からなく、何か特別な彼女特有の魔法だと思うが、自分が知ってる限りその様な魔法は存在しない、しかしアリスが知ってる魔法が全てではなく、世界には自分が知らない魔法があるのだと思う。


「さて、どうします、まだしますか?」


「当たり前だ、あの子――悠魔に余計なちょっかいを出す害虫は排除するよ!」


――氷の槍(アイスランス)


 無数の氷の槍がエルフェリアに襲い掛かるが、彼女はその場に止まり手を前に向け魔法を発動させる。


――収束(コンバージェンス)する重力(グラビティ)


 エルフェリアの手元に螺旋回転をする黒い球体が出現し、アリスの放った氷の槍はすべて黒い球体に吸い込まれていき消滅する。


 それを確認したエルフェリアは、黒い球体を握りつぶす様に消滅させ笑みを浮かべる、その笑みを見て相変わらず何を考えてるのか分からないと思い、ため息をつき剣をしまう。


「おや、もう終わりですか、私はもう少し遊んでもいいのですけど?」


「やめだやめ、やる気のない君を相手にしてもどうせのらりくらり逃げるだけだろ、そんなの労力の無駄だ」


 今だ解明できないエルフェリアの不死性を解明しないと、この魔女は倒せなくそんな彼女が逃げに徹したら倒す事はまず不可能だ。


「おやおや残念です、それでは私は帰りますね」


 相変わらずいつも通りの彼女を見て、このまま帰していいのか疑問だが、今の自分に出来るのは彼女を見送る事だけだった。


「あっ! そうそう一つ悠魔さんに伝言を頼んでよろしいでしょうか?」


「……」


 何と言うか冗談は存在だけにしておけ、図々しいにもほどがある、などと思う所はあるが、少しでも彼女の思想がしれれば、そこから彼女の目的が分かるのではないかと思い無言の肯定をする。


「蒼海の魔王――ユミナ・アルルカントがここ最近不穏な動きをしてます、気を付ける様にと伝えておいてください」


「――ちょっと待て、それはどういう意味だ! 詳しく教えろ!」


「私も詳しく分からなくて、ただ、()()()()と敵対する様な事があれば、今回の様に運よく生き残る事は出来ませんよと、伝えておいてください」


「だからちょっと待て――くそ!」


 エルフェリアは、アリスの話を制止を聞かずにその場から姿を消す、残されたアリスは彼女の残した面倒な情報をどうしたものかと頭を悩ます。


「蒼海の魔王……か」


 彼女自身会った事は無いが世界では自分より沢山の悪名を聞く、たった一人で国を滅ぼす魔王で、文字通り自分なんかとは比較にならない強さを持っている。


「ハァ……面倒事にならないといいんだがな、まぁあの魔王のテリトリーは確かダイヤス帝国から、かなり南に行った海域だったな」


 海中に都市を構える強大な魔王でこの地からはかなり離れている、エルフェリアはああ言ったが、そんなピンポイントにこの場所に現れるとは思えなかった。


「……考えても仕方ないか、さて、悠魔の様子でも見に行くか」


 元々彼女の目的は悠魔を助けに来ただけだったが、助けに来たのはよいが、彼女がこの地に着いた時にはすでに災厄狼は討伐された後で、この場で見かけたエルフェリアを見かけ、不思議に思った彼女は監視していて、今回の黒幕だと言事が発覚したので手を出しただけで、逃走した彼女を追うより悠魔を優先した。



 エルフェリアは自身の屋敷に戻りある部屋を訪れる。


 部屋の四方には魔法陣が描かれており、部屋の中心には巨大なクリスタルが鎮座しており、彼女は愛おしそうにそのクリスタルを見つめ肌を寄せる。


「今回は中々上手く行きましたね、さてさて次は何を悠魔さんにぶつけましょうか……しかし、今蒼海の魔王が動きますか、これは少々面倒ですね」


 魔女教団の全勢力でもあれにはかなわない、それ得程の規格外の相手の事を考えて策を巡らし、何かを思い付いた様に不気味な笑みを浮かべる。


 そして彼女は優雅にダンスを踊る様に、部屋の中を移動して行き狂ったように笑う。


「そうです、そうです! これは良い考えです、アハハハハハ! さてさて、悠魔さん頑張ってください、私の目的の為に――」


 不気味な笑い声は部屋中に響き、少しして彼女は落ち着きを取り戻した様で、静かにいつもの様な笑みを浮かべ、早速自分の思い付いた策を実行に移すために部屋を後にする。

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