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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第四章
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コレットと悠魔

 呪詛を吐き続けるクリルから、逃げる様に離れ、再びサリアを捜すのを再開する。


 しかし中々見つからなく、一度ダイヤス帝国の貴族らしき男に声を掛けて、行先を教えてもらったのだが、悠魔がそこに着くころには、すでに彼女は別の所に移動していて、再び探し回る。


「ダメだな、このままじゃ入れ違いばかりだ……」


 先ほどから入れ違いばかりで、中々会えなくそんな事をしていると、時刻はすっかり昼食時期になり、休憩がてら王宮の食堂を訪れていた。


 食堂に入ると、暇そうに昼食を食べてるアリスに出くわす、彼女はすぐに悠魔に気がつき、手を振って来る。


「どうしたんだい? 浮かない顔をしてるみたいだけど」


「えっと……サリアさんに会えなくて……」


「今の彼女は大忙しだからね」


「一度ちゃんと話をしたいのですが……」


「まぁ、気長にする事だね」


 アリスの言う事は最もだ、取り合えず会えるまでは、探すつもりだった。


「そう言えば、いつまで此処に居るんだい、一応やる事はやったんだ、一度エストアに戻ってもいいんじゃないか?」


 それもありだと考える、今のダイヤス帝国は混乱が激しい、一度帰り落ち着いた時を見計らって再び来るのも悪くはない、エストア王のクランドやアリテールの王のリボーズなどに頼めば、サリアと連絡は取れるだろうと考える。


 よく考えれば、今は特別急いでする話などないと思い、何も忙しい時に無理をする必要はないと思った。


「僕は好きにすればいいと思うよ、君について行くだけだからね」


 アリスはそう言い、食べた食器を片付けて、食堂を出て行く。




 昼食を終えた悠魔は、一人王宮の城壁から街を見下ろしていた。


「街の方もだいぶ騒がしいな……やっぱい今は忙しいよな」


 何も忙しい時にするような話はないし、此処に居ても何も手伝えないし、それなら落ち着いてからゆっくり話をした方がいいと思い、一度エストアに戻る事を悠魔は決める。


 荷物を纏め様と部屋に戻ろうとするが、息を切らして城壁へ上がって来る人物に気がつく。


「悠魔さん! すいません時間が中々取れなくて、少しお話いいですか?」


 息を切らし、寝不足からか少し顔色の悪いサリアが現れる、どうやら彼女は彼女なりに悠魔と話をする為に、時間を作ろうとしていた様で、何とか時間が出来たようで、慌てて来たようだった。


「サリアさん」


「――本当にすいません、昨日から忙しくて――時間が中々出来なくて、いろんな人から、悠魔さんが私を捜してるのは聞いてたのですが――」


 慌てて彼女は謝罪をしてくるが、別にそんなのは良かった、それよりも少し顔色が悪いのが悠魔は気になった。


「大丈夫ですか⁉ 何か顔色が悪い様ですけど……」


「だ、大丈夫です、少し寝不足なだけで、昨日からやる事が色々ありまして、睡眠がとれなくて」


「僕の事なんかいいですから、少し眠って来てください、まだまだやる事はあるんでしょ!」


 こうやって来れたのも、多分睡眠をする時間を削ったのだと思い、早く休む様に言うが、彼女は決して譲らなく、仕方なく悠魔が折れるしかなかった、


「この度はありがとうございます、本当にありがとうございます」


 何度もお礼を言い頭を下げて来るサリアを見て、慌てる悠魔だった、流石にこの様な場面を他の人に見られるのは不味い、いくら今回の立役者である彼だが、それを知ってるのは一部の人達だけで、この国の貴族なんかは殆ど知らなく、悠魔の事は暴食の悪魔と戦ったくらいの認識だった。


「それで、悠魔さんの用て何でしょうか?」


 悠魔の用は他人から見たら大したものでもなく、国を取り戻したからには、コレットのお墓をこちらに移した方が、いいのではないかというものだった。


「そうですねぇ……」


 サリアは少し考える、彼女自身もちろんコレットのお墓をこちらに移したい気持ちはあったが、しかしそれは本当にいいのか、目の前の少年を見て迷う……。


「居ました! 悠魔君やっと見つけましたよ!」


 二人は、その声に釣られて視線を動かすと、そこにはコトナが居た。


「どうかしたんですか?」


「ちょっと聞きたい事があっ……て……すいませんサリア様、邪魔でしたか?」


 どうやら、彼女はサリアの存在に気がつき、態度を委縮させる。


「前のままでいいですよ」


「あはは……私の立場上そういう訳にもいきません」


 苦笑しながら困った様に笑うコトナに、サリアは何か思い付いた様に話しかける。


「少しお願いがあるのですがよろしいでしょうか?」


「……私で出来る事なら構いませんが」


 サリアは悠魔をチラッと見て、彼女にコレットの墓の事を話し始める。


「もうしばらく、コレットをエストア王国に置いてもらってもよろしいですか?」


「……それは大丈夫だと思いますけど」


 今度はコトナが悠魔をチラッと見る、その時の悠魔の顔は困った様に眉を顰めていた。


「もちろんいずれは、帝国で埋葬しますが、今はまだ彼の傍に居た方があの子も喜ぶと思うんです」


 二人の視線が悠魔に集まる、悠魔は何か言いたそうだが、言葉に出来ないようで、眉を顰めたままだった。


「それはそうかもしれませんね、分かりました……陛下の方には私から言っておきます」


「ありがとうございます」


「ま、待ってください!」


 慌てて我に返り、声を上げる悠魔だった、確かにコレットのお墓が近い方が、頻繁におは構えりも出来る、しかし、それは悠魔の我が儘で、彼女が望んだとおりダイヤス帝国は平和になりつつある、なら此方に移した方が、彼女も喜ぶはずだと思った。


「悠魔さん、もうしばらくあの子を傍に置いてあげてください、せめて貴方の心の整理がつくまでは……」


 今も悠魔はコレットの事を引きずってる、短い時間いしかいられなかった二人だったが、確かな絆が二人の間にはあった。


 だから、せめて悠魔の心の整理がつき、コレットの事を思い出と出来るまでは、彼の傍に置いておきたいとサリアは考えた。


「もちろん、悠魔さん考えも分かりますが、今の貴方から、彼女を取り上げるような事はしたくないのです」


 そう言われると何も言い返せない、今の彼女には何を言っても引く事は無いと思う、家に居た時の彼女からは、考えられない程の強気な態度で悠魔は後ずさる。


「あの子の事お願いします」


「……ありがとうございます」


 お礼を言う悠魔に、サリアは満足したように笑みを浮かべる、あの子をこの地に戻すのは遅れるが、それでも彼にはあの子が必要だ、だからもう少しだけ一緒に居てもらおうと思った彼女だった。


「あの子に伝言をお願いします、本当は私が直に伝えたいのですが、今はこの国を立て直すのが最優先なので」


「わかりました」


 そう言いサリアは、城壁から降りて行った、残された悠魔はその場に座り込む、コトナもそんな彼の傍に腰を下ろし、言葉を選ぶように会話を始める。


「大丈夫ですか?」


「平気ですよ、前に進まなくちゃいけないと思って、あの悪魔と戦いました、倒せれば前に進めると思ってました、仇を取れればと、でも僕は何も出来なかった……嫌ですね弱いのは」


 空を見上げて独り言の様に呟く、そんな悠魔の姿はとても痛々しく見てられなかったが、彼女にはどうする事も出来なかった。


 悠魔は立ち上がり、土ぼこりを払いコトナに視線を向け、呟くように口を開く。


「明日帰ります」


 一言そう言い残し、城壁を下りて行く、残されたコトナはどうしたものかと空を見上げて、流れて行く雲を見て途方に暮れる。

これにて四章は終わりになります。急いでまとめすぎた感があり反省……

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