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異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第一章
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人助け

 悠魔の目の前には、土下座をしたリウスがいて、その後ろには、テーブルに突っ伏してる、ナナとクラウがおり、頭痛い、気持ち悪い、水と呟いていた。


 そんな二人を、レイラが、この二人は、と言う顔をして見つめていた。


「悠魔、その何というか……すまない」


「まぁ、昨日の惨状を見たら、こうなってるじゃないかと思っていたので」


「悠魔っち、心広いよね、私なら張り倒してるよ」


「仕方ない、今日は薬草採取でも行ってきます、森の入り口付近なら、一人でも大丈夫そうですから」


「それなら、あたしもついて行く!」


 流石に、二日続けて、酔っ払い達の介抱は嫌なのか、大して金にならなくても、レイラは付いて行くと言い出した。


「いいんですか? お金になりませんよ」


「いいよ、どうせ暇だし、そう言う訳でリウスっち、二人をお願い」


「まぁ、いいが気をつけろよ」


 仕方ないと、リウスが了承して、それを確認すると、レイラは悠魔の手を掴んで走り出した。


「悠魔っち、薬草あったよ!」


「ありがとうございます」


「結構な量が集まったね、こんなに集めてどうするの?」


 レイラの両手には、大量の薬草が積まれており、それを悠魔の傍に下ろす。


「ポーションを作ろうかと思いまして」


「ポーション作れるの⁉」


「まぁ、知り合いにちょっとだけ教えてもらったので」


「ほぇ」


「取り合えず、森から出ましょう」


「そうだねぇ」


 集めた薬草をローブの中にしまい、森を出て見晴らしのいい、開けた丘まで移動して、集めた薬草や色々な器具を取り出した。


「色んな道具持ってるんだね」


「全部貰い物ですけどね」


 レイラは興味深そうに、器具を手に取り、観察を始める。


「何か手伝う事ない?」


「そうですね、それなら水を沸かしてもらえますか?」


「わかった」


 悠魔が取り出した、小型のコンロと小さな鉄鍋を使い、レイラは水を沸かし始める、その間に悠魔は、すり鉢を取り出し、薬草の葉の部分だけを千切り、数枚入れてすり潰し始めた。


「こんな物かな……レイラさんお湯、沸きました?」


「沸いたよ」


 お湯が沸いた事を、悠魔に伝え、彼のする事を、後ろから見ているレイラだった。 


「それじゃあ、このすり潰して、ペースト状にした薬草を入れて煮詰める」


「この臭い」


 レイラが鼻をつまんで、少し離れた所まで歩いて行く、どうやら彼女は、この匂いが苦手なようだ。


「さて、後は、冷ましてポーション瓶に入れて、出来上がりです」


「よく、その臭いに耐えれるね」


「僕は、この匂い結構好きですけどね」


「それで、これで出来上がりなの?」


 彼女は、鼻を摘まんだまま、近寄って来る。


「まぁ、一応」


「何だか、店で売ってる物とは違って……色が薄いね」


「初心者が作ればそうですよ(すり潰してもたいして色濃くならなかったな、ならまず目指すのは、シャルルさんの店の、ポーションくらい濃い色の物を作るのを目指した方がいいか、流石に神様に貰ったものは、シャルルさんの反応を見ても異常な物だって事は分かるしな、まぁ、何事も地道にだな)」


「悠魔っち!」


「うぁ! びっくりした」


 突然彼女に声を掛けられ、驚く悠魔に、レイラは掴みかかる。


「もう、何度も話しかけてるのに!」


「すいません考え事してました」


 レイラの声で、悠魔が考え事から意識を、慌てたレイラに向け。


「どうしたんですか?」


「何か聞こえる、これは悲鳴⁉」


 どうやら、レイラは何かを聞き取ったらしく、慌てだす。


「どっちですか?」


「丘の向こう側から!」


 レイラは、丘の向こうを指さして、方向を指し示す。


「行きましょう」


「うん!」


 悠魔がは手早く道具だけを、ローブの中にしまい、レイラと共に走り出した。


「ポーション置いて着ちゃったけどよかったの?」


「仕方ないですよ、冷まさないと瓶には入れれませんから、それに大した品質でもないので、誰かに持っていかれるとも思いませんし」


「そっか」


 丘の向こう側が見える位置まで来ると、二人は体を屈め様子を伺う、そこには、一台の馬車が止まっており、馬車のそばには、一人の血まみれの青年が倒れている。


 その青年の隣には、涙を浮かべた少女がいて、その二人を守るように、二人の男性が剣を持って五体の人骨の様な、魔物と戦っていた。


「骨?」


「そうだね、正確にはスケルトンだねぇ、近くには……他に気配はない所を見ると、あれだけかな……悠魔っち、この距離から魔法でスケルトン倒せる?」


「ちょっと距離があるので、もう少し近づけたら、何とか」


「それなら、私が援護するから、魔法の射程距離まで近づいて倒して」


「わかりました」


 悠魔が立ち上がり、強化の魔法を発動して、飛び出し走り出す、それに気づいた二体のスケルトンが、刃こぼれのした、ボロボロの剣を構えて走り出す。


しかし、その内の一体が、レイラの放った矢によって、頭蓋骨を砕かれ動かなくなり崩れ落ちる。


 悠魔が魔法の射程距離まで近付くと、魔弾の魔法を放ち、同じ様に頭蓋骨を貫き破壊する、その後、残りのスケルトンに向けて、魔弾を放ち頭蓋骨を破壊して行く、頭蓋骨の砕かれたスケルトンは、体が崩れ去り、辺りが静寂に包まれた。


「ナイス、悠魔っち!」


「はい」


 悠魔とレイラが、パチーンとハイタッチをするが、悠魔とレイラはケガ人がいる事を思い出し、慌てて馬車の方に走り出した。


「大丈夫ですか⁉」


「あ、ああ、き、君達は、ギ、ギルドの冒険者か助かったよ……」


「兄様喋ってはダメです!」


 腹部を切り裂かれて、大量の出血をしている青年が、かすれた声で悠魔とレイラの二人に、助けられたお礼を言う。


「メル……すまない……僕はもうダメの様だ……母さんと父さんに、すまないと……言っておいてくれ」


「嫌です!」


 メルと呼ばれた少女は、青年の手を両手で包み泣き崩れた。


「悠魔っち……さっき作ってたポーションで助けられないの?」


「……無理です、僕の作ったポーションじゃ、あんな傷治せません(致命傷だ、それに出血が酷い、神様に貰ったポーションなら、傷は治せるかもしれないけどでも、治せなかったら……)」


「悠魔っち?」


「……あぁぁ、もう、考えても仕方ない!」


 悠魔が、青年を何とか助けられないか思考していたが、碌な考えが浮かばずに思考するのをやめ、ローブの中から、透明な液体の入った小瓶を取り出し、青年の近くにいた、少女に小瓶を渡した。


「これ飲ませてください!」


「そ、それは?」


「いいから早く!」


「は、はい!」


 少女は困惑したが、悠魔の剣幕に驚いて、小瓶の蓋を開けて、青年の口に近づけた流し込んだ。


「うぐっ……メル……傷が! 僕は助かったのか⁉」


「お兄様!」


 少女は泣きながら、青年に抱き着き、青年は、そんな少女をあやすように頭を撫で、しばらくは、そんな光景が続き、少女が泣き止むと、青年は悠魔とレイラを見て。


「すまない助かった、僕はサレーナ公爵家の、フェレクス・ブリッツ・サレーナで、こっちが妹の――」


「メルジュ・ブリッツ・サレーナです、お兄様を助けていただき、ありがとうございます」


 白銀の髪をした爽やかな青年がフェレクスで、緩いウェーブのかかった白銀の髪の毛を、腰辺りまで伸ばし、おっとりとした感じの少女がメルジュと名乗り、それを聞いたレイラが固まる。


「レイラさん、どうしたんですか?」


「悠魔っち、何でそんな平然としてるの⁉ 公爵だよ公爵! 爵位の一番上なんだよ、しかも公爵は基本的に、王族くらいしかいないんだよ!」


「王族⁉」


「そうだね、僕達の父さん……トレイン・ブリッツ・サレーナ公爵は国王陛下のクランド・ブリッツ・エストアの弟だよ」


「えっと、と言う事は、お二方は国王陛下の甥と姪と言う事ですか? ……フェレクス様とメルジュ様?」


 流石に、言葉を選んだ方がいいと思い、様付で呼ぶが、フェレクスに手で制止される。


「僕の事はフェレでいいよ、此処は公式の場でもないしね」


「私もメルでいいです」


「えっと、わかりました。僕は悠魔で彼女がパーティ仲間のレイラさんです」


 迷う悠魔だったが、本人達が、良いと言うなら、別に良いかと思い、自己紹介をする。


「よろしく、悠魔さんレイラさん」


 フェレクスが爽やかに笑い、素直に納得する悠魔と、困惑して視線を、キョロキョロさせてるレイラを順番に見て、立ち上がった。


「体の方は大丈夫ですか?」


「うん、すごい効く薬だね、怪我をする前より調子がいいよ」


「そうですか」


 フェレクスの体調を聞いて、悠魔はホッとする、他には、怪我人はいないか尋ねると、二人を護衛していた男性二人が、スケルトンの戦いで、小さいが切り傷を負っているのがわかったので、作りかけのポーションを持って来て、二人に渡す。


 ポーションを自作するんだね、とフェレクスが感心する、悠魔は、ええ、物を作るのは好きなもんで、と言って、でも、まだまだですけど、と言い、苦笑して残ったポーションを、小瓶に注いでいった。


「悠魔っち、スケルトンの魔導核と素材取れたよ!」


「はぁい、此方も、もうすぐ終わるので!」


「わかったよ!」


「……」


「フェレさん?」


 離れた所で、スケルトンの魔導核と素材を集めていたレイラが、大声で集め終わった事を、報告して来た。


 悠魔の方も、もうすぐ終わる事を告げると、レイラは護衛の二人と話し始める、悠魔は少し、気になった事をフェレクスに聞きたかったが、フェレクスはレイラをジッと見ていた。


「……」


「フェレクスさん!」


「す、すまない、何だい?」


 どうやら、声に気がついた様で、悠魔の方に視線を合わせる。


「フェレさん、こんな所にスケルトンなんて、普通出るんですか?」


「普通は出ないはずだ……」


 彼は、一瞬何かを考える、あの、スケルトン達は、急に目の前に現れたような気がした。


「どうしたんですか?」


「いや、何でもない、多分僕の考えすぎだと思うから」


 自分の考えすぎだと、頭を振り今考えた事を、頭から振り払う。


「そうですか(何か事情ありだな、まぁ、貴族だし色々あるんだろうな)」


 フェレクスが苦虫を噛み潰した様な顔をしていたので、悠魔は深く追求しない方がいいのだと思い、詳しく聞くのをやめ、黙々とポーションを注いでいった。


「それでは、僕らはこれで行きます」


「待ってくれ! 二人共何かお礼をしないと!」


「いいですよ、困った時はお互い様ですから」


「だが!」


 何とか二人に、お礼をしようと引き止めるが、悠魔もやる事がある。


「こちらも、もう少し薬草とか採取して、他のパーティーメンバーに。薬を届けたいので」


「ちょっと待ってくれ!」


 悠魔とレイラが、その場から立ち去ろうとするが、フェレクスは、慌てて指輪を外し悠魔に渡した。


「これは?」


「サレーナ公爵家の家紋が入ってる指輪だ、これを貴族街の入り口で見せれば通れるから、家に来てくれ、正式にお礼をしたい、何時でも良いので来てくれ! いいね、絶対だよ!」


 フェレクスの剣幕に思わず、指輪を受け取ってしまい念を押される、馬車が動き走り去ってしまう。


「これ、どうしたらいいんですか?」


「し、知らないよあ、あたしに言われても……」


 困った様に、手に乗せられた指輪を見て、どうした物か二人は途方に暮れる。


「一緒に来てくれます?」


「絶対嫌! 貴族の、それも王族の家なんて、絶対行きたくない!」


 試しに、彼女に頼んでみるが、ここまで強く断られると思えなかった。


「ですよねぇ……ハァ、どうしたものか……」


 悠魔はため息を吐き、仕方ないから、この問題は後にして、今は二日酔いに聞く、薬草を摘んで帰ろうと思った。

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