表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界でのセカンドライフ  作者: サイン
第一章
1/227

黒の世界にて

 青年が目を覚ますと、その視界に入って来たのは、一面黒い世界でその場所は上も下も分からずに、何処までも黒い風景が続いていた。


「僕は確か……」


 青年は男性にしては少々低い身長に、長い栗色の髪をルーズサイドテールまとめており、一見女性にしか見えなく、そんな彼は考えた今の状況を、そして思い出した。


「そうだ、確か車に轢かれそうな猫を助けて、車の前に飛び出して⁉」


「そうじゃよ、それで君はその車に轢かれたんじゃ」


 彼は声に驚き、声の聞こえて来た方を振り向く、そこには和服を着て、白い立派な髭を伸ばした老人が立っていた。


 青年は疑問に思う事が沢山あり、この場所、目の前の老人、自分はどうなったのか、など疑問が次々頭に浮かび上がって来た。


 そんな彼の様子を見てか、老人はまずは自己紹介を始める。


「儂は、そうじゃなぁ、君達が言う所の神様的な存在?」


「いや、僕に聞かれましても、困るんですが」


 この自己紹介には流石に青年も呆れてしまう、しかし自称でも神様だと言うのであれば、今の状況の説明をしてくれるだろうと思い、老人を見かえした。


「それで、どうなったんですか?」


 老人は言いにくそうに、言葉を詰まらすが、覚悟を決めたのか事実を伝えた。


「……君は死んでしまったよ」


 それを聞いた青年は頭を振るう、彼が気になっていたのは、自分の事ではなく、助けようとした猫の方だった。


 そんな彼の様子を見て、老人は素直に驚き声を上げた。


「いやいやいや、こう普通自分が、死んだとか言われたら、もう少し慌てんか⁉」


「そんな事より、猫はどうなったんですか? 無事なんですか自称神様?」


 どうやら彼の興味は、現在猫にしか向いてなく、そんな彼を見ていた老人は、慌ててるのが自分だけ見たいで、アホらしくなって来た。


「自分の事よりも、猫の事を心配する人間は珍しいのぉ、あと自称じゃなく、正真正銘の神様じゃ」


「過ぎた事を言っても、仕方ないですからね、それで猫はどうなったんですか? 助かったのなら良いのですけど……」


 青年は気になっていた――自分が助けた猫がちゃんと助かったのかを、それこそ自分の命よりも。


「安心せい、お前さんが助けた猫は無事じゃよ、ただお前さんは死んでしまったがのぅ、儂も長い事神様やってるが、猫を助ける為に死ぬ人間は初めてじゃのぅ」


 老人は呆れていたが、その声は何処か嬉しそうな表情をして、青年を見た。


 最近の人間は、自分の事ばかりで、老人は少々悲しかった、彼自身別にそれが悪いとは言わないが、やはり悲しく嘆いていた。


 そこで目についたのは、この青年だった、この青年は迷わず車に轢かれそうな猫を、助ける為に飛び出した。


「助かったのなら良いです、それで僕はこれからどうなるんですか? 天国や地獄に行くんですか? 流石に地獄とかは嫌だなぁ」


「安心せい、君のこれまでの生き方を見る限り、このまま天国でもいいんじゃが、儂は前さんが猫を助ける為に命をなげうったのを見て感動した、だからこうしてお前さんの前に現れたんじゃ」


 青年は妙な奴に目を付けられたなと思う、なかなか話が進まなく、老人は一体何をしたいのか予想が付かなかった。


「それでどうなるんですか? 僕を生きかえらしてくれたりしてくれるんですか? 神様的な力を使って」


「そうしてやりたいんじゃが、お前さんの世界で頭の潰れた人間が、何事もなく起き上がったら、大騒ぎになるじゃろ?」


 それには彼も同意だった、まず間違いなく、その場に自分が居たら声を上げて走って逃げだすだろう、その光景を想像したのか、青年の顔色は少し悪くなっていた。


「そういう訳じゃから、あの世界で生き返らせるのは、無理なんじゃ、すまんのぅ」


 心の底から申し訳ないように、頭を下げる老人を見て、別にそこまで気にするような事でもないと、説明する。


「そこでじゃ!」


 突如老人はテンションを上げ、青年を指さす。


「お前さんには、別の世界で蘇ってもらおうと思ってな、どうじゃ?」


 青年は急に、そんな事を言われても困るだけだった、確かに生き返れるのなら、生き返りたい気持ちがあるが、よく知る世界でない別の世界なら、天国の方が彼にはマシに思えた。


「どうと言われましても、もう天国行けるなら、それでいいですよ」


「いやいやいや、お前さん、異世界転生じゃよ! こうアニメや漫画であるわくわく、ドキドキはないのかのぅ!」


 そんな事を言われても、彼には知り合いもいない、始めて行く場所には不安しかなかった。


 青年の不安を聞いた老人は、彼を安心させるように、言葉をつづけた。


「その辺は安心せい、漫画やアニメの様に、お前さんの身体能力やチートな道具を与えよう」


 それを聞いた青年は、再び顔を顰める、この青年は生きてた頃はそれなりに勤勉で、楽をする事をしなかった。


「それはそれで、人生がつまらなさそうですね、どうせなら二度目の人生はゆっくり働き、のんびりと暮らしたいですから、チート能力や道具を貰うと、面倒事に巻き込まれそうですしね、アニメや漫画みたいに」


 徐々に老人はめんどくさくなって来た、逆に今度は老人が、青年をジト目で見かえした。


 そこで老人の提案は簡単なものだった、それは、青年の要望を三つまで聞く事だ。


 この時、青年は、自分が異世界に転生するのは決まりなのかと思い、思考するが、一つ疑問に思った。


「あのぅ、これから僕が転生する世界って、どんな世界なんですか?」


 これを聞かないと、要望を上げる所ではなかった。


 その世界に合った要望を言わないと、無駄になると思い、老人に尋ねた。


 老人は、すまん、すまんと言いながら、これから青年が転生する、世界について説明し始めた。


「お前さんが行く世界は、機械文明は、お前さんの居た世界に比べれば、かなり劣る世界だが、何と! 魔法がある世界じゃ!」


 魔法と聞き、青年の目は少し輝きを増す、どうやら魔法には興味があるようで、一安心する老人だった。


「魔法て言うと、アニメや漫画の世界の、あの、魔法ですか?」


「そうじゃ、炎や水を出したりするあれじゃ!」


 青年は詳しく聞いた話を、頭の中で整理する、どうやら機械文明は発展してないが、魔法文明は相当発展してると思い、老人に三つの要望を伝えた、光の中に消えて行った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ