表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/13

竜王様の愚痴8

 これほどの効果が出るとは思わなかった。

 ローリーがおねだりしてくれるなんて!!

 我としては、ベッドで少々情熱的に愛し合えるかナー的な?その程度の期待だったのに。


 ローリーもよくわかってきたではないか。

 我は嬉しいぞ!! 

 子竜を産んで、竜族に近い習性になったのかな? 


 なにはともあれ、想定以上の展開に少しばかり狼狽えてしまったが、もちろん我に否はない。

 番いの雌が発情したら、雄がそれを鎮めてやるのは当然のこと。

 大空で睦み合う事は叶わぬが、務めをしっかり果たすべく我はローリーを木の陰に引っ張り込んだ。

 ところが、ころんと押し倒して、口付けようとすると、


「ちょっと、アル! 背中にゼファーを張り付けたまま何するつもり?!」


 ローリーに下から怪訝な顔で咎められる。

 

「何って、ナニ(・・)だろう? 興奮して我慢できないと言ったのは、そなたではないか!」


 我は雄の務めを果たそうとしたまで。

 きっぱり反論すると、ローリーはきょとんとする。

 そして、しばらくの沈黙の後、


「やだ、もうアルったら~。そうじゃなくって~、私が興奮して我慢出来ないって言ったのは、あなたの錬金術よ」


 と言った。

 さっぱり訳が分からない。


「錬金術?!」


 おかしい。

 つい先ほどまで、我らは愛を語り合っていたはず。

 どこからそんな話になったけ?

 首をひねって考えていると、ちょっと重いからどいてと言われた。


 ・・・・・・


 しぶしぶ体を起こす。

 と、ローリーは瞳を煌めかせて熱く説くのだった。 


「竜族のデタラメな魔法はね、実は人間で言うところの幻の錬金術だったの! それが降って湧いたように目の前にひょっこり現れたのよ、興奮するに決まってるじゃない! アルがお湯を魔法で出した時、もしかしたらとは疑ってはいたの。だけど、まさかこんなものを再現してみせるなんて! 私の想像をはるかに超えていたわ。これまで数多の魔法使いが挑んできた最高ランクの錬金術よ。ああ、なんてことかしら、夫なら研究し放題だし、私には時間もある。錬金術が解明出来れば・・・フフフフフフ」 


 ひとりほくそ笑むローリーに、我が言葉を失っていると、ローリーはバツが悪そうに慌てて言葉を繕う。


「えっと、アル、ありがとう。プレゼントももちろん嬉しかったけど、アルがそんなふうに考えてくれてた事がすごく嬉しかった。私ね、ずっと結婚した限りは自分は魔法使いである前に、あなたの妻であり王妃でなければならないと思い込んでたの。でも、そうじゃないんだね」


 

 熱い抱擁と口付けで互いの愛情を確かめ合った後、ローリーに乞われるまま、我は金塊を作って見せた。


「素晴らしいわ! じゃあ、銀は?」


 ローリーに熱い眼差しを向けられるのはとても気分が良かったし、瞳を輝かせて喜ぶローリーは可愛いかった。

 それで、つい調子に乗ってしまったのだ。

 気付いた時には、魔力が底をついていた。


「ローリー、日も暮れてきたし、そろそろ終わりにしよう」


 学校建設で、すでに多くの魔力を消費していた。


「あ、うん、そうだね。じゃあ、これで最後にする」


 ところが、最後にすると言ったにもかかわらず、ローリーはそれをなかなか口にしようとしない。


「ローリー?」


「あのね、・・・たとえばだけど、・・・でも、やっぱりこういうのは駄目よね。ああ、でも聞いてみるくらいなら・・・」


 我は早く城に帰りたかった。


「ローリー、今でなくとも城に帰って」


「ネズミとかは?! 虫でもいい! 生き物は作れたりする?」

 

 我が驚いた顔を見せると、ローリーはハッとしたように口を押さえた。


「ごめんなさい。やっぱりこんなことお願いしちゃ駄目だよね。忘れて! 決して、命を軽んじてるつもりはないの! ただ研究者ってね、純粋な探求心に抗えないっていうか、・・・でも、無神経よね、ごめんなさい」


「作れぬ」


「え?」


 ローリーが驚いた顔を我に向けたが、それ以上に強い口調で即答した己自身に驚いた。


「命は宿らぬ・・・おそらくな」


 





 作戦は大成功だった。

 ローリーは食事中も我を熱っぽく見つめている。

 今夜ならば、明かりを灯したまましても文句を言われないような気がする。

 絆されたローリーにあんなことやこんなことをして、じっくりゆっくり、ムフフフフ。

 


「ある?」


「うっかりしていた。えるにだいじなよーじがあったのだ」


「え? こんな時間に?」


 ローリーのいるベッドから、慌てて逃げ出した。

 なんでこんなことに?!

 なんでなんでどうしてどうして?!


 一目散に向かった場所はエルの寝室。

 

「エルランド! エルランド! 一大事なのだ! 起きてくれ!」


 扉を叩くと、エルが慌てて飛び出して来る。


「どうされたのですか?! 王妃様に何か?!」


「いや、ローリーは大事ない」


「では、一大事とは一体、」


「そもそも、」


「そもそも?」


「そもそも、そなたがローリーにプレゼントを渡せと言ったから、こんなことになったのだ!!」


「はぁ?」


 





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ