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第8話 サクリファイス

 

 夜になった。招集されたのは5人。

 僕、ダークドラゴネス、フロスト、アビス、ミラージュ。


「あれ?シューティングスターは?」

「流星くんは、一応ヒーロー機関所属だから見られたらマズイでしょ。」

「え?それなら烏きゅんもダメじゃない?」

「僕はこれがあるから大丈夫。」


 そういってドラゴネスに見せたのは黒い変身具。腕に装着するタイプのものだ。


「なにそれ?いつもとは別の変身具?」

「うん、僕は闇も扱えるからね。ダークナイトって聞いたことない?」

「あ!ある!アレって烏きゅんなの?かわいくないー……。」


 ぶれねぇなぁ、こいつ。

 ダークナイト。前身ホーリーナイトを黒くしたような、防具。暗黒騎士。

 今のホーリーナイトのように魔法少女化はしてないので、大変貴重な変身具だ。うん、貴重。


「集まったな、有志諸君。招集するときに言ったが、今宵、サクリファイスの基地のひとつと思われる所に突入する。」

「まだ使われているかは分からないけどな。」

「いや、斥候に確認させた。人の出入りはあるようだ。」


 そういってお爺ちゃんは僕らに向き直る。


「まず、ミラージュ」

「はあい。」


 ミラージュは銀髪をストレートに伸ばして、スタイル抜群のお姉さん的な人だ。幻影魔術を得意とし、広域的に幻をかけることができる。


「お前は目撃者を減らすために、目的地の周囲に幻を掛けろ。いつも通りの風景を映すんだ。」

「わかりましたぁ。」

「アビス。」

「ヒヒ、俺様はなんだ?」


 アビス。根暗な見た目。黒ずくめで長髪で顔を隠す。闇を司る能力者だ。


「お前は目的地の周辺を闇に沈めろ。誰一人として逃がすな。ミラージュの幻と合わせろ。」

「了解〜」

「次、フロスト。」


 フロスト。ヒーロー性別転換計画の初陣を担った氷雪系の能力者。非常に強力な拘束能力を持つ。


「お前は言わずもがな、拘束担当だ。アビスと協力して敵を捕らえろ。」

「わかった。任せろ。」

「ドラゴネス。」

「はい、ボス」


 ダークドラゴネス。クライシス幹部。拘束系は持たないが、非常にタフで、且つ強力な攻撃性能を持つ。近距離、中距離、遠距離とともにこなす直接戦闘においてはオールラウンダー。


「お前とダークナイトは突撃だ。直接戦闘は任せた。」

「承知しました。」

「ダークナイト。」

「うん。」


 僕、ダークナイト。闇を扱い、堅牢な防具と魔剣で近距離戦闘を担当する。敵の攻撃をブロックするいわばタンクに近い戦い方。


「お前が指示しろ。」

「わかったよ。」

「よし。細心の注意を払えよ。では頼んだ。」


 こうして、僕たちはサクリファイスの基地に向かう。


 ♢


「ミラージュさん」

「はいはーい。」


 ミラージュが幻影魔術を発動させる。

 今はまだ見た目は変わらないが、これで中で暴れても外側からは何の変わりもないように見えるはずだ。

 場所は住宅街から少し離れた、小さなビル。周辺は道路や畑ばかりなので、少々やりやすい。


「アビスさん、頼む」

「キヒ、任せろ烏くん」


 アビスがミラージュの幻影魔術の内側に闇を放つ。ビルが闇に囲まれる。


「よし、行くぞドラゴネス、フロストさん!」

「おう!」「よし」


 ビルのドアを蹴飛ばし、突入する。そこには二人の男。唖然としている。


「サクリファイスだな?」

「な、なんだお前たち!」

「ヴァイスだ。もう一度聞く、サクリファイスだな?」

「く……、だとしたらなんだ!」


 もうすこし誤魔化すとかしろよ、こいつら。まぁ手間が省けて楽だが。

 フロストに指示を出す。すぐさま氷結。二人の男は足を凍らせられ、身動きを封じられる。


「ここにはお前たちだけか?」


 そう問うたとき。

 ビル2階から階段で一人の男が降りてくる。


「元気いいね、ヴァイス。」


 スーツ姿の男。いや違った。上半身はスーツだが、下半身はパンツだ。なんだこいつ。


「なんだこの変態」


 ドラゴネス、お前が言うな。


「変態とはひどいじゃないか。これが僕の正装だよ。」


 正装なのかよ。やっぱり変態だ。


「さて、君たちは何の用かな?」

「お前たちに聞きたいことがあってな。悪いが付いてきてもらうぞ」

「君はダークナイトだね?うーん、断るよ」

「断らせはしない。いくぞ」


 闇の槍を放つ。ダークランス。僕の手から発射されたそれは変態に向かっていく。

 しかし変態、股を開いてそれを回避。避け方まで変態じみて気持ち悪い。

 魔剣を抜く。盾を構え、変態に突撃する。


「援護するぜ」


 ドラゴネスも回り込む。

 変態はそれを見て、変身具を発動させる。淡いピンクの光に包まれ、出て来たのはレオタード。死ね。


「はっはー、このレオタード仮面、そう簡単に倒せるとは思わないことだ!」


 ふん、このダークナイトからそう簡単に逃げられるとは思わないことだ。魔剣を肉迫させる。ドラゴネスも追撃。

 レオタード仮面はレイピアを抜き、魔剣とドラゴネスの爪を防ぐ。


「く、なかなかやるじゃないか!」とレオタード仮面。

 この男、口がでかい割にはそんなに強くない。


「やばい、逃げなきゃ……レオタードフラッシュ!」


 レオタード仮面が股間を光らせる。

 しかし目くらましは効かない。闇で僕とドラゴネスを覆う。

 焦ったレオタード仮面が方向転換し、出口へ向かう。だがそれは悪手だ。


「はっはー、凍らせてやるよ!」

 フロストが待ち構える。


「くそ……仕方ない。Aタイプ!」


 レオタード仮面がそう叫ぶ。その瞬間、天井が崩れて、Aタイプのアンノウンが降ってくる。


「ちっちゃ!」


 ドラゴネスが言う。小さい。30センチくらいのリス型のアンノウンだ。無言で叩き切る。それだけであっさり絶命した。


「な、なんだと!小型とは言えアンノウンだぞ!くそっ!レオタードレイン!」


 ぐおお?!レオタードが大量に降ってきた!なんなんだこいつは!


「はっはっは、逃げさせてもらうぜ!バイビー!」


 そう言い残して、レオタード仮面は窓の外へ消えていった。


「くそっ、すまねぇ!呆気にとられて逃しちまった!」


 フロストが言う。大丈夫だ、外にはあいつがいる。

 すぐに「うわぁ」という叫び声が聞こえる。


「キヒヒ、なんか変態を捕まえたぞ?」

「やぁーねぇ、なにこれ気持ち悪いわぁ……」

 変態が闇に絡まっていた。


 ♢


「なんだこの変態」

「サクリファイス」


 ヴァイス本部に帰還。あの後ビルの中をくまなく探索したが、他の人員やアンノウンは居なかった。めぼしい書類だけ持ち帰る。

 本部にて捕らえた三人をお爺ちゃんに引き渡す。非常に嫌そうな顔をしていたが、なんとか引き取ってくれた。


「なんだかラクな仕事だったわねぇ」

「変態と戦ったこっちは楽じゃなかったがな。レオタードが降ってきたんだぜ?」


 ミラージュとドラゴネスが喋ってる。

 確かに色んな意味で楽じゃなかった。なんだよレオタードを降らす能力って。


「キヒ、しかしサクリファイスも弱えな」


 ヴァイスが強すぎるんだよ!ドラゴネスでさえ下から数えたほうが早いくらいだぜ!どうやったらこんなに強くなれるんだ、って言ってたぞ!

 ……さて、尋問待ちか。そのあたりはお爺ちゃんたちに任せよう。エルを迎えに行くか。


 ♢


「からすおにいちゃん!どうしてつれていってくれなかったの!」

「ごめんな、相手がサクリファイスだったからあまり危険にさらしたくなかったんだ。」


 エルには僕の部屋で待機してもらっていた。シューティングスターに子守を任せてたはずだが……?


「エル、流星くんは?」

「りゅうせいおにいちゃん?おかしもってくるっていってた!」


 シューティングスターもおにいちゃんなのね。


「お、烏帰ってたのか。おかえり。」


 流星くんがお菓子を抱えて戻ってきた。


「ただいま流星お兄ちゃん」

「やめろ」


「からすおにいちゃん、つぎはえるもつれていってね?」

「んん……わかったよ。」


 まぁ、この子も充分強いし、大丈夫、かな?一応Gタイプのアンノウンだし。

 この子用の変身具作れないかな。Gタイプのアンノウンとはいえ、エルは肌も髪も白く、外見は目立つ。


「ヴァイスのヒーローとして扱うってことか。いいと思うぜ。ボスに掛け合ってみよう」


「エル専用のヒーローデバイスか。いいじゃねぇか。」

「ヒーローデバイス?」

「変身具のことだよ。なんだよ変身具って。安直すぎるわ」


 それもそうね。


「アンフェアとして扱うって案はいいと思うぜ。」お爺ちゃんが言う。

「なんのはなし?」

 エルをヒーローにする話。首をかしげるエル。


「どんなのが好み?」

「かっこいいの。しろいのがいいの」


 ホーリーナイトに感化されたのかな。


「おし、お嬢ちゃん、今から技術んとこ行くぜ。烏も来い。」

「わかった。」「うんー」「俺も行くぜ。」


 とりあえず全員で技術さんのところに行くらしい。向かう。到着。

 お爺ちゃんが技術さんの1人に説明をする。技術さんの顔が青くなる。そりゃもうこんな時間だし。23時だよ。そろそろ眠い頃。

 エルは眠くないみたい。アンノウンだからかな?


「あの……デザインだけはしときますから、制作だけはあしたでお願いします……」


 技術さんはきついらしい。そりゃそうだ。お爺ちゃんが頷き、「すまんな。」という。昇給フラグ。


「それじゃー、えっと、エルちゃん?どんな外見がいいかな?」

「うーんと、しろくてかっこいいの!」


 そういうと、様々な資料を持ってくる技術さん。どうやらアイデアデザインは豊富のようだ。今までにデザインしたヒーロースーツが描かれている。


「これ!」


 一枚、気に入った物があったようだ。


「おや、これは……」と技術さん。

「こりゃ、ダークナイトの初期プロットだな。」お爺ちゃんが言う。ダークナイトの初期プロットか。どれどれ……。

「女性タイプじゃねーか!」


 憤慨した。

 ここでもそんなもの着せようとしてたのかよ!ヒーロー機関にクレーム入れたのこいつらじゃねぇよな?!


「まぁ、とりあえずこれをエルちゃん用に書き直してみるよ。」


 そう言うと技術さんは裏へ引っ込んでいった。


「続きは明日だな。今日は解散だ。」

「あの、ボス」

「なんだ?」

「俺にもヴァイス用の姿をくれませんか?その方が動きやすいので」

「安心しろ、ハナっからそのつもりだ。まぁまだ出来てないからもう少し待て。」

「本当ですか!ありがとうございます!」


 シューティングスターにも、ヴァイス用の姿を渡すつもりらしい。黒い星になるのかな。名前はなんて言うんだろう。


「ブラックスター」

 安直ゥ!




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