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第7話 エル

 

「進化したての個体、と?」


 進化したて。進化というより、理性が宿ったばかり、といったほうがいいのか?

 言語を理解はしているが、闘い方がCタイプのそれだった。


「恐らく。」

「理性のある個体は久々だな。わかった。上に報告しておく。ありがとう、ホーリーナイト、シューティングスター。危険の芽を早く摘めてよかった。」


 サブのヒーローはそういって引き上げていった。


「アレで進化したてか。……長年生きた奴とは戦いたくねぇな」

「本当にね。でも違和感があるなぁ。」


 違和感?とシューティングスターが聞く。

 闘い方があまりにも進化してなさすぎるように感じた。攻撃してきた相手にすぐ敵意を向ける。敵の攻撃を鑑みないで、だ。

 本来、あの少女はシューティングスターを先に狙うべきだった。しかし矢を放った僕にすぐ攻撃対象を変更した辺り、稚拙すぎる。いくら進化したてでも、もう少し賢い闘い方をするはず。そう告げる。


「確かに……。というか、よく分かったな?烏、Eタイプ以上のアンノウンとは戦ったこと無いんじゃなかったか?」

「ないよ。だけれどうちがヴァイスだからね……。お爺ちゃんから嫌でも聞く。」

「ああ……なるほど。」


 さて、Bタイプアンノウンの残骸を回収と行きますか。

 鉄塊と化したアンノウンを解体して行く。少しずつ解体し、仕分けし、コアを取り出す。

 持参した専用のケースに必要な部分とコアを入れていく。

 ケースはアンノウン一体分しかないので、もし先ほどのGタイプアンノウンの残骸が残っていたら少々面倒くさい事になっていただろう。回収したかったであろう機関には悪いが、消し去れてよかったと思う。

 やがて回収作業を終えた。


「あー疲れた」

「報告よりはマシだと思う、面倒な手続きがあるからねぇ」


 そういいながら僕たちは変身を解く。

 まぁ、僕らも報告はしないといけないけど。それでもサブの彼らが、必要なところは補完してくれてるはずだから、僕らは確認作業だけかな。


 ぺろん。


「ひゃん?!」


 あ、突然の刺激に変な声出てしまった。すごく恥ずかしい。


「どうした?!ドラゴネスが絶叫しそうな艶な……ゥオオオ?!?!」


 ドラゴネスではなくシューティングスターが絶叫した。僕も絶叫したい。金玉が縮み上がってる。漏らしそう。

 僕の腰にはさきほど倒したと思っていた少女がしがみ付いていた。

 ヤバい。かつてないほどヤバい。このまま攻撃されたら跡形も残らない。

 油断した。僕とシューティングスターに冷たい汗が流れる。

 だが少女はというと。


「えへへ、かわいいおにいちゃん、きにいっちゃった」


 気に入られてた。どうしろと。


「かっこいいおにいちゃん、へんなことしないでね」

「かっこいいのは知ってる。わかった、そっちも変なことするなよ」


 知るな、死ね。助けろ。


「それで、君の目的はなんなんだ?」そう問う。いつまでも腰にしがみつかれてたら僕の膀胱が臨界線を迎える。冷や汗も込めて脱水症になりそうだ。


「かわいいおにいちゃん、ぼくとおなじにおいがする。こども、つくろ?」

「なんだって?童貞ですがよろしくお願いします」

「烏?!?!」


 はっ!つい本音が!

 ちがうんだ!可愛い少女にそんなこと言われたら断れない!


「ロリコンだったのか?!俺は年上フェチと思ってたんだけど!」


 そっち?!てかロリコンじゃない!男の反応!

 落ち着いて、落ち着いて……。


「な、なんで子供を作りたいの?」

「えっとね、さいきんさくりなんとかってひとがなかまたちにわるさをするの。だけどわたしじゃかてないから、もっとつよいしそんをのこすの」


 さくり……っ、サクリファイス……!

 一気に冷静になった。それはシューティングスターも同様のようだ。


「烏。」

「わかってるよ流星くん。ヴァイス本部に連れて帰ろう。そこで話を聞こう。」

 場所を変えるけどいいね?と少女に伝える。こくん、と頷く。


 再びサブに来てもらい、Bタイプアンノウンの対処をお願いする。僕は少女と隠れていた。見られるわけにはいかない。

 シューティングスターがサブと対応して、どうやらうまいこと丸めてくれたようだ。Bタイプアンノウンを入れたケースを移動させ引き上げていった。


 それを見届けた僕たちは変身し、少女を抱え飛び立つ。


「ぺろり」

「あんっ……隙間から首を舐めるな!」

「烏は生まれてきた性別を間違えている」

 失礼なことゥオー!!


 ♢


「烏、ウチはアンノウンでも誘拐は禁忌だ。出頭してこい」

「ちがうんだお爺ちゃん、話を聞いてくれ!」


 本当に聞いてくれ。

 かくかくじかじか。


「なるほど……わからん。」


 僕らもわからない。だからこれから話を聞くんだい!


「お嬢ちゃん、そういうことだ。儂も同席するが構わないね?」


 こくん。

 よし、詳しく話してくれ。


「あのね。」


 舌足らずのかわいい言語が繰り出されていく。要約すると、「サクリファイスがアンノウンを集めている。」「サクリファイスに捕まったアンノウンは凶暴化してしまう」「凶暴化した仲間を対処していったが、どんどん増えていく。」


 サクリファイス。アンノウンを操る組織。操ってどうしたいのかは未だ不明。

「アンノウンの活きる世界」、それの実現のために戦争でも起こすつもりか?


「サクリファイスか。」


 お爺ちゃんが頭を抱える。

 突然、少女が立ち上がった。ぺろり。


「やんっ……やめろ!いきなり舐めるな!」


 首を舐められた。

 なんで事あるごとに舐めてくるのさ!


「かわいいから?」

「か、かわいくない!」

「かわいいよ?」

「かわいくないよ!」

「いやいやかわいいよ」さわり。

「さわるな!かわいく…ドラゴネスゥアー!!」


 殴った。


「は、鼻にはいった、待って」


 またらいでか!

 いつから居やがった!

「結構初めからいたぞ」とシューティングスター。まさかの。


「とりあえず話は偶然聞かせてもらった!」

「はなぢー」


 うわ、鼻血出てる。引くわ。

 あ、僕のせいか。いやいや元はドラゴネスが悪い


「実はサクリファイスに勧誘された事があるのです!」

 とドラゴネスから衝撃の真実が。


「なんだと、いつの事だ?」

「半年前ですよ、ボス。当然断りましたがね。その時、あいつらの基地まで案内させてもらったんですよ。もっとも、捨て基地でしょうが……。」

「いや、それでもいい、よくやった。うまくいけば斥候や見張りを捕らえる事ができるかもしれん」


 よし、そいつらを捕らえて、サクリファイスがなにをしようとしてるか聞き出せるかもしれないな。

 そういえば。


「君、名前あるの?」

「んー、える、くる、ろう!」


 エル・クル・ロウ……か?……エル、でいいか。


「エル、君はこれからどうする?」

「かわいいおにいちゃんとこどもつくる、ぺろん」

「んぃっ……耳舐めないで」

「ェェェエエクスタシィィィィイ!!!!烏きゅん!僕とも子供を作ろう!」


 できねーよ!黙ってろドラゴネス!


「とりあえず子供は作れない。ごめんね。」

「つくってくれないの……?しんらいがたりない?」


 しんらい?


「こどもつくるのにはしんらいかんけいがたいせつだってママがいってた!」


 信頼か。ママと言ったな。


「ママ、は?どうしてる?」

「さくりふぁいすにころされちゃった。」

「っ……。そうか……。ごめんな。」

「いいよ」

「そっか……。強いんだな。」

「うん、える、つよい!だからね」

 うん?

「えるがかわいいおにいちゃんといっしょにたたかってあげる!それでしんらいかんけいをつくる!」


 え?


「いいじゃねえか、烏。お前のそばにおいてやれ。」


 お爺ちゃんが言う。マジか。この子アンノウンなんだけど。


「アンノウンに懐かれるってのはない事ではないぞ。まぁ滅多にないがな」


 まぁ。そこで悶えてるドラゴネスもドラゴン型のアンノウンを従えてるしな……。これはあまり知られてはないが。


「エル。僕の名前は烏だ。かわいいおにいちゃんじゃなくて烏とよんでくれ。」

「わかった、からすおにいちゃん!」


 おにいちゃんは外さないのね。まぁいいか……。

 ぺろり。艶声が出る。だから舐めないで!


「えー……える、むらむらしちゃうもん」


 そんな事言わないでぇ!!


「お嬢ちゃん、アンノウンにも性欲はあるのかい?」

 お爺ちゃん?!


「烏、大切なことだ。」


 お爺ちゃんが睨む。う……わかったよ。


「どうなんだ、お嬢ちゃん?」

「せいよく? ??」

「わからないか。子供を作る、ってのはどうやる?具体的にな」

「えーっとね、〈ピー〉を〈ピー〉に〈ピー〉するの!」

「なるほど、人間と同じか……。」

「あ、あのボス?一体……」


 異様な雰囲気に耐え切れずシューティングスターが聞く。


「いや、サクリファイスに関してな、そこにヒントがあるんじゃないかと思ってな。なぁ、お嬢ちゃん」

「なに?」

「それは、アンフェアとアンノウンの間でも子供を作る事ができるのか?」

「……そうか、アンフェアとアンノウンの混血……!まさかそんな事が?」

「わからねぇよ。あくまで可能性のひとつだ。」


 お爺ちゃんはエルに向き直る。


「わかんない。けどからすおにいちゃんはおなじにおいがするの。だからつくれるの。」

「同じ匂いとは……?「お嬢ちゃん」


 お爺ちゃんが、シューティングスターの言葉を遮る。


「過去にいたのか?混血が。それとも混血ではなくアンノウンになるのか?」


 そういう事かお爺ちゃん。初めからそれが聞きたかったのか。


「うー、わからない!」

「……そうか、すまねぇな、お嬢ちゃん。ありがとよ。」


 そういってお爺ちゃんはエルの頭をくしゃりと撫でた。


「そういえばエルちゃん。俺のアサルトフレアーからどうやって逃げたの?」

「えっとね、えるは、さいせいがたのアンノウンなの!」


 再生型。つまりコアが無事なら再生できるタイプか。

 あの炎の塊の中で再生したのか。計り知れないな。


「さいせいしたあと、ほのおがきえるまえにかくれたの!あのままならこあもとけちゃう……。」

 なるほどな。


「そういうことか。わかったぜ。ありがとよエルちゃん。」

「しかし同じ匂いってどういうことなんだろう?」とドラゴネス。


 ……。


「まぁ、そこはおいおい、だな。お嬢ちゃんも疲れているだろうし。」

「そうだな。ボス、サクリファイスはどうする?」

「うん……。招集をかけるか。」




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