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第6話 アンノウン

 

「諸星、このアンノウンについて説明しろ。」


 僕、諸星烏は今ヒーロー育成校にて授業を受けてる最中だ。

 この時間は、アンノウンについて。人ならざる怪物アンノウンにも生物のように種類があり、ジャンル分けされている。

 今、目前に提示されたアンノウンの画像は、哺乳類のような、動物型のアンノウンだ。


「このアンノウンはAタイプ。理性のない、ヒトではない生物系のアンノウンです。主にスタンダード型と呼ばれるもので、無機質系のアンノウンと並んで個体数が最も多いアンノウンの一種です。」

「うむ。これは牛型のアンノウンだな。頭部の大きな角が特徴的で、注意しなければならない部分だな。見た目から分かるように、突進して角で突き刺してくるぞ。」


 Aタイプ。タイプは他に、B〜Hタイプとアルファベット順に並んで8種類存在する。一応、Xタイプというのも存在するらしいが、これまでに目撃情報が無い為、形だけのものになっている。

 タイプ分けは、A〜Dを生物系、無機質系、人系、現象系などで分けられる。その中でさらに理性の有無でE〜Hと振り分けられている。

 簡単に言えばAが一番弱く、Hが一番強いと思えばいいかもしれない。実際はそうとは限らないが。

 型は、スタンダード、進化個体、特異個体、特異進化個体と分けられてるが、これはあくまで書類上簡潔化したものであって、そこまでメジャーな呼称ではない。


「アンノウンは最近姿を減らしているから、突然対峙するようなことには滅多にならないだろうが、それでも知ることは大切だ。巷では「サクリファイス」という組織がアンノウンを使って何やら企んでいるという話があるからな。」


 サクリファイス。ヴァイスやクライシスのように、悪の組織の一つとして認識されている。が、ヴァイスなどと違いサクリファイスには、「アンノウンの活きる世界」を目標に掲げている。そのため、ヴァイスやクライシスより危険視されている組織だ。

 僕はサクリファイスとは対峙したことがないが。


「人型のアンノウンとアンフェア、違いを分けるものは何かわかるか?」

 教師が他の生徒を指名し、そう聞いた。


 アンノウンとアンフェア。人型となると、場合によっては見分けが付かない事もある。

 結局指名された生徒の答えは「わからない」だった。当然だろう、まだ習っていない。が知ってる人は知ってるだろう。


「ふむ。アンノウンとアンフェアの違いは、コアだ。」


 コア。アンノウンやアンフェアの体内に必ず存在する物質。この世の中で最大のエネルギー源にもなっているものだ。主にアンノウンから採取するが。その理由が。


「コアにも種類があって、それぞれの種類で起こせるエネルギーの種類も変わる。アンフェアのコアは大体1種類のエネルギーしか貯蔵されていない。多くても2〜3種類だな。しかしアンノウンのコアには平均して5〜6種類のエネルギーが貯蔵されている。過去最大のものだと、実に9種類のエネルギーが貯蔵されていたらしい。そしてエネルギー量も、アンフェアよりアンノウンのコアの方が、はるかに大きい。2〜4倍ほどだな。もっと明確に分ける違いは、アンノウン特有のエネルギーコアがある。そういう種類の、ってことだな。」


 そう、アンノウンのエネルギーはアンフェアをはるかに超えている。だからアンノウンから採取するわけだ。人道的な意味合いもあるが。

 タイプがHに近づくにつれて貯蔵エネルギーも大きくなっていくらしい。


「チャイムが鳴ったな。今日はここまで。」


 授業が終わる。

 今日も非番ではない。育成校を出て、ヒーロー機関へと足を向ける。そのとき、流星くんと出会った。


「よう烏。いまからヒーロー機関か?」

「あ、流星くん。うん、いまから」

「それなら俺も一緒に行くわ。」


 シューティングスターの担当地区は隣だが、拠点の機関は同じ場所である。地区ごとに拠点はあるが、小さい駐屯地のような所がほとんどで、大きな拠点がある所は限られている。

 例えば変身具などの調整や、会議とかはこの地区辺りだと烏の所属する第五本部にて行われる。


「今日は何を学んだんだ?」

「アンノウンについて。」

「アンノウンか。最近見てないな。烏は対峙したことあるか?」

「あるよ。A〜Dまでだけど。」

「Dか。Dは強いからキツイな。」

「僕が戦ったDは、炎の体だったから当時のホーリーナイトだと結構キツかった。」

「そう考えると、いまの姿になってよかったんじゃないか?」

「うーん……」


 そうこう話してるうちにヒーロー機関に到着する。


「んじゃ俺は調整してきなくちゃならないからまたあとで」


 身長か。身長が伸びたのか。僕はシューティングスターに呪詛を送る。


 僕はトレーニング室で体動かすかな。階段を登り、トレーニング室を目指そう。

 トレーニング室。スポーツジムのように、体を鍛える施設で、様々な器具が置かれている。とくにヒーロー機関の施設は最高級品ばかりで、非常に効率よく鍛えることができる。

 だけど今日は筋力ではなく、シミュレーション。ヒーロー機関のトレーニング室には、「幻影のコア」を使用した、シミュレーション室なるものがある。


 シミュレーション室とは、敵の幻と対峙し、戦闘経験を積むというお爺ちゃん曰く「テンプレトレーニング」。

 シミュレーション室のスイッチを入れ、レベルなどを設定。部屋に入り、仮想戦闘を開始する。


 しばらくトレーニングを続け、一息つこうとシミュレーション室から出ると、シューティングスターが待っていた。


「あ、ごめん、待ってた?」

「いや、いま来た所。ちょうど良かったみたいだな。」


 そのときだった。

『機関内に存在する手の空いてるヒーローはA-3会議室に集合してください。繰り返します−−』


「なんだろう?敵かな?」

「いや、敵ならそう言うだろ。とりあえず行ってみようぜ。」


 ♢


「御足労、ヒーロー諸君。」


 会議室の中心の男が言う。ヒーロー上層部の一人だ。


「早速だが本題に入らせていただく。エリア13にアンノウンが出現した。タイプはB。対処できるヒーローは捕縛に向かっていただきたい。」


 タイプB。それなら対処できる。行こう。そうシューティングスターに告げる。


「いいね、久々の共闘だ。」


 シューティングスターも乗り気のようだ。

 概要を聞いた僕たちは早速、変身具を発動させ、ホーリーナイト、シューティングスターの姿で飛び立つ。

 位置情報に従い、目的地を目指す。警戒しながら、黙々と飛んでいく。


 結局、対処するヒーローはメインに僕とシューティングスター。サブとして5人のヒーローが付いてくる。尤も、飛べるヒーローは僕とシューティングスターだけで、サブの皆は地上から向かうそうだ。


 やがて目的地に近づく。ゆっくりと滑空し、目標を探す。


「おい烏、アレじゃないか?」


 シューティングスターが言う。視線の先を辿り、鉄の塊を見つける。


「歪だな……?」


 全体的に丸く、所々ひしゃげて凹みが目立つ。鉄の塊のアンノウンとは聞いていたが、ここまで歪なものなのか?

 まるで無造作に転がされてるような……。


「……っ!スター!!下だ!」

「っ!!」


 僕の叫びにすぐさま反応したシューティングスターが避ける。先ほどまでシューティングスターの存在した所に、紫の光線が通り過ぎる。

 シューティングスターの下。鉄くずのアンノウンの手前。

 そこには、白い少女が居た。


「Cタイプか……?」


 シューティングスターが呟く。その時、白い少女の口が動く。


「ヒーロー……」


 喋った。声を発するだけじゃなく、言語を操った。僕らを「ヒーロー」としっかり認識した。確定だ。理性がある。


「Gタイプだ!」


 動きのないBタイプのアンノウンはこいつと出会ってしまった結果、歪な残骸と成り果ててしまったのだろう。


「烏!すぐにサブに連絡!」

「ああ!『……こちらホーリーナイト。聞こえるか。』」

『こちらサブ隊。どうかしたか』

『Gタイプの襲撃を受けた。Bタイプはすでに絶命してる可能性。Gタイプの手によるものだと思われる。僕とシューティングスターで対処する。』

『承知した。本部に連絡する。……無理するなよ、烏。』


 連絡を終える。そのタイミングを見計らったように、白い少女、Gタイプが突っ込んでくる。


「トワイライトムーン!」


 シューティングスターが技を放つ。三日月状の斬撃系光線技。少女が僕に到達する前に、その技は少女に直撃する。しかし。


「……じゃま」


 少女は無傷だ。凍えるように白い腕を、シューティングスターに向ける。瞬間、指先から紫の閃光が迸る。初めにシューティングスターを攻撃した時と同じ技だ。


「くっ……!」


 ギリギリ躱す。その攻防を黙って見てるわけにはいかない。

 両手から光の矢を形成し、少女に放つ。

 少女はその矢を、ひらり、と綺麗な足捌きで躱す。

 少女が口を開く。喋るわけではない。口から光線を放つ。その赤い瞳孔は、僕に向けられている。

 直線上から逃げ、もう一度矢を形成。


「スターライト!」


 シューティングスターが技を放つ。迸る閃光。シューティングスターの光は少女に届く。口からの攻撃を中断させられ、たじろぐ少女に僕は形成した矢を放つ。


「っ……!」


 少女の体躯を貫く。

 貫通した矢は消え、残ったのは少女の胴に空いた穴のみ。


「とどめだ!アサルトフレアー!!!」


 シューティングスターの右手から陽光。火の塊は少女に向かって落下していく。


「つよいね……。」

 少女の、口からそう聞こえた。


「……終わった、か。」シューティングスターが呟く。

 少女はもう居ない。シューティングスターの炎に焼かれたようだ。コアすら残っていない。

 なんとか速攻で片付けられた。

 シューティングスターが居なければ、と思うとぞっとする。


「……お前が居なかったらと思うとぞっとするぜ。」

「まさか、僕はほとんど何もしてないよ」

「アレは俺一人じゃ無理だ。あいつの攻撃を躱せたのはたまたまだ。食らってたらひとたまりもなかったぜ。」


 たしかに、すごい質量の攻撃だった。理性のあるタイプは初めて見たけど、理性のないタイプと比べて段違いで強かった。

 でも、アレは……。


「ホーリーナイト、シューティングスター!Gタイプは?」

 サブが到着したようだ。辺りを窺うサブに、終わった、と告げる。


「詳しく聞かせてもらえるか?」

「うん。まず……」




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