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第5話 作戦

 

「ではこれから詳しく話していく。まず…」

 と一通り説明をして昨日の会議は終わった。


 今日は土曜日。楽しい楽しいお休みの日である。

 そして実際に楽しいことが起こる。今日は早速、シューティングスターのいる隣の地区で「全ヒーロー性別転換計画」が執行される。


 僕はワクワクしながらテレビを付ける。このテレビ、普通のテレビではなく、ヴァイス御用達の監視テレビ。ヴァイス、及びその傘下の挙動を映してくれる。


 隣にはお爺ちゃん。ニヤニヤしながらテレビを眺めている。


 テレビの中では、ヴァイス幹部の、「フロスト」が暴れている。

 フロストはその名通り、氷雪系を司るアンフェアで、今回の作戦第1号に選ばれたのも、氷雪で相手を拘束できるから。シューティングスターの意見も入っていたが。


『ははは、どうした、ヒーロー!お前はこの程度か!』

『くそっ、なんでお前が直接出てくるんだよ!いつもは雑魚兵使ってるだろ!』


「アレがブロードだ」とお爺ちゃんが言う。

 なるほど、おっさんだ。革ジャケで若さに必死にしがみついてるおっさんだ。


「ブロードは変身後も顔出しするタイプだな。自己顕示欲の激しい奴め」とお爺ちゃんがゴチる。

「だがまぁそのほうがダメージデカい。ふふん、楽しみだな」

 おお、お爺ちゃんが悪い顔をしている!僕もニヤニヤしてるけど!


 その時だった。


『そこまでだ悪党!シューティング☆スター、見参!』

「お、予定通りに来たな。」

『シューティングスター……!お前も纏めて凍れ!』


 フロストの発言をキーに、ブロードとシューティングスターの体躯が凍る。

 フロストの異能。対象を凍らせることもできる、拘束性の技だ。


『なっ……くそっ、こんなもの!』

 シューティングスターが呻く。ブロードに至っては声も出ず、必死にもがいている。


「流星くんって演技の才能あるよね」

「おう。ヴァイスで教育したからな。だからスパイに抜擢されたんだ」


 フロストが動く。とうとう始まる。

 フロストはまず、シューティングスターの変身具に、続いてブロードの変身具に手をやる。

 デバイスを取り付けてるのだ。


『な、なんだこれは!すぐ外せ!』シューティングスターが叫ぶ。

『くくっ、安心しろ、直接ダメージはねぇよ』


 そういいながらフロストは二人のヒーローから離れる。

 その瞬間、シューティングスターが体躯に張り付いた氷の拘束から脱出する。すぐさまブロードに張り付いた氷も壊しにかかる。

 自由になった二人のヒーローは、フロストに取り付けられたデバイスを外そうと躍起になる。


『そう簡単には外れねぇよ。それにもう遅い』

 フロストが右手に持つスイッチを掲げる。


 く、くるぞ!!ごくり。


 フロストがスイッチを押す。二人のヒーローのデバイスから光がほとばしる。



「ぶっ!ははははは!あはははは!」

「ぎゃははははは!こりゃ傑作だ!」

『ワハハハハ!!腹いてぇ!ひー!』

『き、きさま、よくも……くっ……こんな仕打ち……ぅくっ……を……くく……っ!』


 シューティングスター。全身スーツに胸が膨らんでスカート姿に。シューティングスカート。

 こいつはいい。イケメンヒーローは何をしてもイケメンなんだから。


 問題はブロード。

 壮年漂うおっさんの顔に、フリルのついたスカート。ゴスロリ。

 気持ち悪いにもほどがある。

 当のブロード本人は何が起きたのか分からない顔で唖然としている。

 わかっているのかブロード。その数秒の停止が全国ネットでお前の憐れな姿を放映する時間になっているんだぞ。


 あ!逃げた!


『ひー、ひー……あ、まてブロード!逃げるな!くそっ!パンツが見えてるぞ!!くっ!!』

『ブ、ブフォ、ブロードさん!敵前逃走はヒーローにはあるまじき……っく!』


 あ、シューティングスター、蹲った。とっさにフロストが異能を広域に発動する。

 危ない危ない、これでフロストの攻撃をシューティングスターが防いだように見えるはずだ。


『(ひ、ひー、こっちも腹痛いのにてめぇは……)くっ、逃げるとは……

 今日はこのくらいで退散してやらぁ!腰抜けヒーローの相手なぞつまらんからな!』


 フロストが帰っていく。

 それを見たシューティングスターも空に飛び立ち、消えていった。

 なぜ追わなかった、との問いかけも、「あの格好で戦うのは恥ずかしい」といえば誤魔化せる。そう考えての行動だろう。実際怒られるのはブロードだけだろうけど。


「第一陣は大成功だな烏!」

「うん、まさかここまで気持ち悪くなるとは。最高。」

「よし、続けて第二陣行くか」

「えーと次は……と」


 この日、被害に遭ったヒーローは18人。実に18名ものヒーローが全国ネットで恥をさらしたのだ。



 翌日のニュースは、シューティング☆スカートをメインに、様々なヒーローの痴態で一面を飾った。

 今日は僕も出勤だ。僕の地区にはダークドラゴネスが襲来する。そのほか5地区でも様々な幹部が待ち構えてる。

 もちろん、ヒーロー機関も対策を組んでるだろう。実際、ミーティングを行うらしい。


 ♢


 長いミーティングも終わり、敵の出現に備える。


 ミーティングの内容は要約すると、対策としては「敵の拘束技に気をつけろ」だけだった。

 デバイスの解除と無効化はまだ実用化できてないらしい。


 そろそろか、と僕が時計を見ると、照らし合わせたかのように出撃要請が出た。

 ダークドラゴネスだ。僕はウィングレンジャーとともにダークドラゴネスが出現した位置へと移動する。



「よく来たなヒーロー共!さぁ昨日に引き続き痴態を晒してもらうぜ!」

 とダークドラゴネス。

「僕は平気だけどね」とラメゴールドケツァルコアトルス。


 その他のウィングレンジャーも平気そうな顔。ウィングレンジャーは美形揃いだし、被害は少なそう。だが僕には思惑があった。


「(さぁダークドラゴネス、頼むよ)いくぞ!」


 ホーリーナイトに変身し、飛びかかる。


「(さぁ、拘束するんだ!)」

「(ごめん烏くん…僕は拘束技持ってないのよ)」


 ……え?


「ウィングレンジャー!いくぞ!」

 ウィングレンジャーが変身を完了させ、ダークドラゴネスに突撃する。

 まって。ドラゴネスこれどうするの?


「オラァー!」


 殴ったー!!コンドルグリーンを殴ったー!!こいつ物理的にノックダウンさせてデバイス取り付けるつもりだ!


「くっ……重い、だが効かん!」


 コンドルグリーンが羽を広げ、大空に飛び上がる。ドラゴネスも同様に羽を広げる。

 そこにスワンホワイトの追撃。ドラゴネスの飛翔は失敗する。

 その隙を突いてイーグルレッドとファルコンブルーが攻撃を仕掛ける。

 だがドラゴネスも負けていない。バイザー型の口から広範囲炎ブレスを吐き、距離を取る。

 その時、上に上がったコンドルグリーンの猛襲。上から下へ、急降下ダイブを行い、ドラゴネスにダメージを与えていく。


「くっ……やるな、ウィングレンジャー!」

「へいドラゴネス、僕を忘れてないかい?」


 ケツァルコアトルス。両手を空に掲げ、振り落とす。それに呼応するかのように、落雷が発生する。


 直撃した。大丈夫かドラゴネス。

 しかし打たれ強い彼にとっては落雷程度ではダメージは軽いようで、平気そうに雷を振り払う。


「貴様らには無理でも……お前になら!」


 ドラゴネスはこちらに向き直る。なるほど、僕一直線に予定変更か。いいぞ!付き合ってやろう!


「うっ…ホーリーランス!」苦し紛れにホーリーランスを放つ。しかしドラゴネスには難なくかわされる。わざと甘いランスを撃ったんだからね!


「遅い遅い!……そうら、取り付けたぜ……!」

「しまった!烏!」


 ファルコンブルーが叫ぶ。

 そして僕の体をまばゆい光が覆い…

 僕の体に異変は起きなかった。なんで?


「え?なんで?」とドラゴネスも困惑。

「いやホーリーナイト、もともと魔法少女タイプじゃん」とスワンホワイト。


 そうだったー!!!あくまで「男性は女性防具に切り替わる」だけのデバイスだから元々女性防具の僕には変化はないのか!

 くそっ、これを機に男性防具に戻ろうと思ってたのに!そこは汲んでくれよお爺ちゃん!!


「……僕、帰るわ」

 と、ドラゴネスが言う。

 イーグルレッドがホッとしたように「そのほうがいいと思う」と続ける。

 悔しがる僕を後に、とぼとぼと帰っていくドラゴネス。


「……えーと、今雷撃っていいんじゃない?」

「やめてあげなよ…可哀想じゃん」

 ケツァルコアトルスとスワンホワイトの会話が聞こえる。うん、確かに可哀想だ。僕も可哀想だけど……。



 ちなみに失敗したのはドラゴネスだけで、他の幹部は滞りなく成功させたらしい。これで痴態を晒したヒーローは39人になった。

 僕の小さな企みが失敗したその日、ついにデバイス解除に成功したらしい。ただ、即無力化はまだ出来ないようで、しばらくは防具の性転換をさせられる可哀想なヒーローが量産されることになった。


 余談だが、ブロードは辞表を出したらしい。メンタル弱すぎだろ。


 ◇◇◇


「総帥、エリア13にて新たなアンノウンを発見いたしました。Aタイプでございます。」

「Aタイプか……。まぁ操るには丁度いい。捕縛しろ」

「はっ、すでに。」

「うむ、いいぞ……。いつも通りにな。」

「承知いたしました。」

「これでスタンダード型のアンノウンは10体か。せめて進化個体が欲しいものだ」


 ◇◇◇




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