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第2話 ホーリーナイト

 「ホーリーナイト、居ます。行きましょうか?」と告げる。


『ホーリーナイトか、今ファルコンブルーを出撃させた。合流してくれ。位置を送る』


 ファルコンブルー。所謂「戦隊ヒーロー」、ウィングレンジャーという5人組の1人。色で分けられていて、リーダーを赤色の「イーグルレッド」が担い、青の「ファルコンブルー」緑の「コンドルグリーン」白の「スワンホワイト」、そして金色の「ケツァルコアトルス」で編成される。

 金だけ次元が違う?細かいことは気にしちゃいけない。実際は他のところがもっとひどい。どうひどいのかはすぐわかる。


 位置データに従って現場に駆けつけた僕は、真っ赤な男を見つける。

 髪も赤。服も靴も真紅。変身具も赤い。そしてあろうことか名前も「赤矢 紅蓮」という真っ赤さ。全身燃え盛るような赤に染まった男に声をかける。


 「ファルコンブルーさん、ホーリーナイトです。」

 「おう、烏か。聞いてるぜ。よろしくな。」


 ファルコンブルー、青担当その人である。な、ひどい。

 まぁ見た目はともかく。なんでこの人がレッドではないのかもともかく。いい人であることに間違いはない。何を隠そう、正規ヒーローになってから一番世話になった人がこの人なのである。

 実力も、僕と違いルックス云々を完全にねじ伏せる程の力があり、とても頼りになる。


 「あっ!残念な赤!」


 敵を探してると、僕たちに向けて声がかかる。その方向に顔を向けると、一人の怪人が居た。間違いない、あれが今回の敵。


 「げっ」とファルコンブルーが唸る。この敵、僕もファルコンブルーも初対面ではない。


 西洋の竜を模した、黒い鎧。背中には翼が生え、腰からは尾が伸びる。

 「ダークドラゴネス」という、所謂「悪の組織の幹部」ポジションの敵。

 ウィングレンジャーや僕、その他この地区を担当するヒーローと幾たびぶつかり合っている。

 毎回撃退はするが、捕縛はできていない。札付きの実力者。


 顰めっ面を、するのも一瞬。ファルコンブルーはすぐ切り替え、変身具を発動させる。赤い光がファルコンブルーを包み込む。その中で変身が行われているのだ。やがて赤い光が収まり、青一色のヒーローが姿をあらわす。青いファルコンを模した装備。


 「お前のそれどうにかならんの?いい加減レッドぶん殴ってポジション変更しろよ」


 ダークドラゴネスが言う。僕もそう思う。コイツと同意見なのは悔しいけど。


 「うるせえ!烏くんも早く!」

 「はい、変身します!」


 ベルトに手をかざし、バックルをスライドさせる。バックルから「チェンジ!ホーリーナイト!」という耳障りのいい音声が流れ、白い光に包まれる。


 はずだった。

 いま、流れた音は「へーんしん!ホーリーナイト!」。色も淡いピンクが混ざってる。


 僕のホーリーナイトは先も述べたように、純白の鎧騎士タイプ。鎧でガチガチに固めた男らしい装備。右手にはランスを持ち、左手に盾。守りながら攻める、堅牢型だ。そのはずだ。装着される防具がなんだかいつもより軽い気がする。


 「ィィィイヤッホォォォオゥ!最高!最高だよカラスきゅうううん!」

 「か、烏、虐められてるの?!お兄さんになんでも言いなさい!」


 前者の歓喜の叫びはダークドラゴネス。後者の混乱はファルコンブルー。


 僕はスカート姿。大きなランスは小振りなものに変更されて、鎧騎士タイプから、所謂魔法少女タイプの装備に変更されていた。

 僕は初めてヒーロー機関上層部に殺意を抱いた。



 紆余曲折ありつつもなんとかダークドラゴネスを退ける事に成功した。あいつ、「次はカメラ持ってくるからね!ヤダ!メモリーも強化しなきゃ!」って言ってたから、次はそれらしきものを見つけたら全力で破壊しに行く。


 その後、ヒーロー機関に戻った僕はファルコンブルーこと赤矢さんに部屋へと連れ込まれる。変な意味ではない。何があってあんなコスプレまがいの装備になったのか心配してくれたのだ。


 隠す理由もない僕は正直に、上の指示だと答える。


 「ちょっと待ってて、お電話するから」

と、赤矢さん。席を立ち、スマホにがなり立てる。


 時折、ヒーローにあるまじき「殺すぞ」という発現が飛び出してき、ヒヤヒヤしながら待機する。


 時間にして5分くらいだったか。やがて電話を終了させた赤矢さんが、こちらの顔色を伺いながら遠慮がちに口を開く。


 「えっとね……あの新しい装備、もう映像で流れて凄い絶賛されてるから戻すことは出来ないって……」


 凄い絶賛されてるときた。これはアレだ、お爺ちゃんとかクラスメイトに爆笑される。恥ずかしい。ヒーローやめたい。


 「次上に会ったら必殺技ぶっ放すから我慢して」

 大丈夫責任はレッドが取る、と続ける。なるほど、だからこの人はリーダーであるレッドにならないのか。ごめんレッドさん。始末書頑張ってください。


 そうやって話していたら、結構な時間が経っていたことに気付く。

 改めて赤矢さんにお礼を言い、帰路につく。


 帰り道、磨耗しつつあるイーグルレッドさんの胃を心配しながら、今日ダークドラゴネスを仕留めきれなかったことについて考える。アイツとは色々あるからなぁ。「色々」と。


 「別にこの地区のヒーローが弱いわけじゃないんだけどなぁ……。」


 毎回逃げ果せるダークドラゴネスはなんだかんだ言ってかなりの強さだ。その気になればこの地区のヒーローたちもヤバいんじゃなかろうか、そう思う。


 この地区のヒーローで有名なのは、やっぱりウィングレンジャーだろう。一人一人名乗り上げて、「ウィングレンジャー!」とポーズを決める演出の流れには美しいものがある。敵も思わず最後まで傍観するくらいだ。


 ウィングレンジャーで一番強いのはケツァルコアトルス。次いでファルコンブルー、その次にイーグルレッドと続く。


 「ケツァルコアトルスさんの雷は激しいからなぁ……。」


 この間も味方諸共感電させてた。超怒られてた。


 ちなみに僕の戦い方は、本来ならば盾で攻撃を受け流しながら槍で突く。だけれど、今回の装備変更で光攻撃を余儀なくされた。今までの経験が崩れていく。


 ケツァルコアトルスさんの雷や僕の光みたいな力は、変身具の要である「コア」を作動させ、周囲のエネルギーを変換させてる。メカニズムは知らない。それは所謂「魔法」のようなものらしい。


 実際、イレギュラーの使うそれを「魔法」と呼ぶか「超能力」と呼ぶかその他かと大いに議論されたらしい。


 結局は、「魔術」と「異能」の2つにカテゴライズされた。


 大まかに言うと、周囲のエネルギーを変換させるメカニズムを「魔術」、身体を変質させて使うものを「異能」と分けるらしい。

 実際はもっと細かく分類されてるけど、詳しくはわからない。

 僕の光はコアを作動させて周囲のエネルギーを変換して使ってるから「魔術」にカテゴライズされる。


 話を戻そう。


 ホーリーナイトこと僕もそれなりに有名だ。というかウィングレンジャーとホーリーナイトが有名すぎて、他のヒーローたちが霞む。


 「あ!魔法少女!」と指をさされて逃走したことからわかる。光騎士ホーリーナイトは死んだ。今日から魔法少女ホーリーナイトになってしまった。何だよ魔法少女ホーリーナイトって。

案の定、帰宅したらお爺ちゃんに大笑いされた。


 締めくくろう。


 今日、僕は予期せぬ魔法少女デビューを果たした。




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