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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

普段、泣き寝入りしている女が大人しいとは限らない~異世界拉致 編~

嘉納莉彩という派遣社員は、大人しく文句一つ言わないから上司や同僚たちから残業を押しつけられている。

押しの弱い彼女が、内心どんな悪態をついているのかを知らずに。

そんな様子を異世界の頭のネジ一本飛んで緩すぎる神が見ている。

自分の世界の住人の願いを叶えるために表面上は大人しく従っている彼女に目をつけているためだ。


そんなある日、頭の緩すぎる異世界の神は自分の世界の人間たちが勇者召喚を自分に願っていることをすぐさま感じ取った。

何も考えずに、呼吸をすると同じ感覚で、本来自分が果たすべき役目を何の関係もない義務すらない異世界人に押しつけた。

アホである。

バカである。

もしも、嘉納莉彩の住む世界の神様が見ていたら、「滅亡願望を持ってるのかよっ!?」と思うことだろう。


嘉納莉彩は、平凡よりちょっと上くらいの容姿である。

異世界召喚小説だったら、イケメン幼なじみに巻き込まれる損な役割と言えばいいだろうか。

だが、今回は平凡よりちょっと上がイケメン幼なじみを巻き込んだ。

ちゃんと、設定を守れよと言いたい。

今回のような場合は、たいてい誰かを巻き込まないだろう。多分。


実は、この嘉納莉彩。

もう一人の幼なじみが、陰陽師なのである。

嘉納莉彩は好きなアニメの影響で、厨二力を発揮して陰陽師になってしまった変わり種だ。

そのもう一人の幼なじみは、斎藤明音。

マイナスイオンを溢れさせている癒やし系幼なじみ。

まあ、何が言いたいかというと嘉納莉彩は陰陽師業をしている時は日頃ストレス発散とばかりに悪霊・生き霊問わず殴り倒す勢いで、退治しているからだ。

その現場を見ていたとある陰陽師Sさんは言った。

「俺より、アイツの方がドSじゃん」と。

世の中、そんなもんである。


嘉納莉彩が、現在の会社に派遣社員として勤めている理由は、イケメン幼なじみにある。

今更だが、イケメン幼なじみの名前は田中徹。

斎藤明音の婚約者である。

斎藤明音の祖父、つまり陰陽師斎藤流派の現当主はこのイケメン幼なじみを全くと言っていいほど信用しておらず、自分の教育スパルタに耐えきった嘉納莉彩に彼の監視を命じた。

この時、嘉納莉彩の顔は引き攣っていたであろう。

この日を境に、嘉納莉彩が退治した悪霊・生き霊たちはなぜか血みどろになっていたという。

陰陽師Sさんは、その現実を見なかったことにしたようだ。


嘉納莉彩は、異世界に拉致られた。

そして、イケメン幼なじみを巻き込んだ。

頭が緩みすぎて脳みそがペースト状になった異世界の神は、嘉納莉彩を拉致ってドヤ顔をした。

だがしかし、何の手違いか嘉納莉彩は異世界に落ちる前に異世界の神の元に現れた。

そして、嘉納莉彩はすぐに悟った。

この頭が緩すぎて脳みそが液状になった異世界の神が、これから自分に起こる面倒くさいことの元凶だと。

嘉納莉彩はこの頭が緩すぎて脳みそが腐りかけの神が何か言葉を発する前に、陰陽師斎藤派禁術オリジナルアレンジ『×××』を発動した。

いくら自分が被害者だといっても、これは酷すぎる。

嘉納莉彩なら、『自業自得』の一言で終わらせるだろうが。


異世界召喚小説の定番通りに、可憐で超絶美少女なお姫様が湧いて出てきて嘘八百なこの国の、人間が住む世界の現状を涙ながらに語った。

それに騙される、イケメン幼なじみ。

この時、嘉納莉彩の表情が抜け落ちていることにここにいる人たちの中で一人でも気付いていれば違った結末になったであろう。

それはともかく、仕方なしに魔王退治を了承する嘉納莉彩。

嬉々として加わる、きっと足手まといになるイケメン幼なじみ。

旅のための訓練をしていると、イケメン幼なじみは城の年若い女性たちにモテた。

イケメンがモテるというのは、世界を違えても共通なのだろう。

十日たち、旅を出発することになる。

旅の仲間たち(嗤)は、イケメンで揃えられていた。


旅の途中、イケメンたちは嘉納莉彩を狭い部屋に閉じ込めて自分たちは最上級の部屋に泊まっていた。

そして、娼館通いした。

お貴族様だからといって、国家予算を娼館に使うとは何事か。

バレたら、横領の罪に問われると気付かないのだろうか?

この予算は、旅の最中のストレス発散と性欲処理に使うものではないであろうに。


やはり何の因果か手違いが続き、嘉納莉彩は魔王の元に転送された。

驚く魔王城の住民たち。

キレすぎて、無表情になっている嘉納莉彩。

ここでは、いい子ぶる必要なしと判断した嘉納莉彩は魔王を素敵な笑顔で脅した。

「男性として、大切なモノを無くしたくなければ言うことを聞け」と。

男性として大切なモノを無くす方法としてかの有名な『宦官』。

嘉納莉彩は、無表情で謳うように宦官の方法を語った。

魔王と魔王城の住民たち(男)は、嘉納莉彩なら自らの手でそれを行うと本能で悟り彼女を恐れた。

魔王は泣きながら土下座し、「自分がイケメンたちの男性として大切なモノを無くす手伝いをするから、

その方法を実演しないでくれ」と懇願した。

嘉納莉彩は、自分の手で実行できないことを不満に想いながら渋々了承した。


翌日、旅の仲間たち(嗤)の男性として大切なモノがこの世界から消滅した。

旅の仲間たち(嗤)は、焦った。

本来なら、絶対になくなるはずのないモノを失ってしまった事実に。

もう二度と、取り返せない事実に。


旅の終盤、王城からの使者が大急ぎでやって来た。

『魔王討伐の必要なし』と王様からの言伝を持って。

なんでも、魔王は他の種族の王を従えて人間国にやって来て『和平同盟』を締結しにやって来たそうだ。

このままお互いに争うよりも、友好的な付き合いをし、子孫のためにこの世界の平和を築いていこうと。

そして、魔王と他の種族の王たちは力強く言ったそうだ。

『今代の勇者を恐れたわけではない』と顔を真っ青にして。


嘉納莉彩は、王城に戻り早速元の世界にいる陰陽師斎藤派の現当主に連絡を取った。

コックリさんで。

なぜ、コックリさんかというと世界の干渉を受けないからだ。

コックリさんに使われるのは、低級霊。

低級霊すぎて、神様が干渉する必要なしと判断している。

いわゆる、法律の穴を利用しているというやつだ。

陰陽師斎藤派の現当主と嘉納莉彩は、低級霊から上級霊まで従えているので彼ら二人ならではの連絡方法である。

嘉納莉彩の報告の結果、陰陽師斎藤派の現当主は嘉納莉彩に命じた。

可愛い可愛い孫娘の婚約者である田中徹をこの世界に捨ててくるようにと。

自分の感情はともかく、田中徹が男として重要なモノを無くしたことが決定打であろう。

近い将来、陰陽師の夫としての義務を全うできない者は不要と判断されたということだ。


王城について数日後、旅の仲間たち(嗤)は無事に婚約破棄された。

男として、貴族としての義務を果たせなくなったことがバレたからだ。

王様は、嘉納莉彩からの報告で旅の仲間たち(嗤)が旅の資金を横領したことを知った。

そして、王様とこの場にいる者たちは嘉納莉彩に心からの謝罪を込めて土下座した。

珍しく嘉納莉彩は焦った。

王様やこの場にいる者たちを土下座なんてさせる気がなかったからだ。

『あいつらを処罰して欲しい』と軽い気持ちで言っただけだからである。

王様は、罪悪感いっぱいにして嘉納莉彩の願いを聞くことにした。

その願いを聞いて王様は、『この少女はあんな酷い扱いを受けて、あの馬鹿どもを思いやるなんてなんて心優しい少女なんだ』と心の中で大感動した。


王様はすぐに、旅の仲間たち(嗤)を呼び出した。

『貴族籍を剥奪し追放されるか、それとも貴族として生きるために体の変化を受け入れるか?』

もちろん、旅の仲間たち(嗤)は貴族として生きることを選んだ。

何の疑いもなく。

旅の仲間たち(嗤)は、実家から勘当の猶予を与えられたのでその提案にすぐに飛びついたというわけだ。

王様とこの場にいる者たちと嘉納莉彩は、呆れ返って言葉もなかった。

旅の仲間たち(嗤)が、嘉納莉彩に対してしていた仕打ち他の罪状を考えると、勘当までの猶予なんてものはないはずである。

『この時点で、疑えよ』なんて思っても、下半身で生きてきた彼らには無理な話だ。


田中徹に仲間意識と友情を温めた旅の仲間たち(嗤)は、『体の変化』の話を田中徹にも話した。

田中徹と旅の仲間たち(嗤)は、『体の変化=男として重要なモノの復活』と思い込んでいる。

自分の都合のいいように。

現実で、そんな都合のいいことが起こるはずがない。

そして、田中徹と旅の仲間たち(嗤)は『女体』へと変化した。

実はこれ、魔王と他の種族の王たちが嘉納莉彩にきょう...ではなくお願いされて魔法で女体化させたのだ。

貴族としての義務を果たさないといけない元男の旅の仲間たち(嗤)は勘当を取り消されてめでたし、めでたし、である。

これに激怒したのが、脳みそが発酵してヨーグルト状になったこの異世界の神である。

異世界の神は、嘉納莉彩に『性転換』の魔法をかけようとした。

幸いなことに、嘉納莉彩にその魔法は通じなかった。

嘉納莉彩が異世界の神よりも遥かに強いこと嘉納莉彩があの時にかけた術が発動したこと、陰陽師斉藤流派の現当主が嘉納莉彩に悪意ある術(もしくは魔法)がかけられると、その術(魔法)を相手に跳ね返す術をかけていたためである。

そうして無事に、せっかくヨーグルトになったのにそこからさらに腐った脳みそを持つ異世界の神は男として大切なモノを無くし女体に変化したのである。

よかった、よかった。



田中徹が女体へと変化してショックで寝込んでいるうちに、陰陽師斉藤流派の現当主が嘉納莉彩を迎えに来た。

そして、嘉納莉彩は元の世界へと帰って行った。

・嘉納莉彩の容姿は、この世界では少女に見える。もちろん、田中徹も少年に見られている。

・田中徹はこの後、貴族の養女となる。

・旅の仲間たち(嗤)と田中徹は、美女になっているので貴族の男たちにものすごくものすごくモテる。

・旅の仲間たち(嗤)と田中徹の美女への変化を見た王様とその周囲の者たちは、嘉納莉彩の悪意に気づくことなく嘉納莉彩の好意だと勘違いし、その結果を大変喜んでいる。



ここまで、読んでくださりありがとうございました。

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