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ドSな幼女と下僕な俺は

作者: 金木犀

 劇場を出た後、少年は映画の余韻に浸りながらショッピングモールの中をうろうろとしていた。


「はあ~面白かった。さすが古山監督の作品だぜ」


 携帯で時間を確認してみるとちょうど12時を少し回ったところだった。


「せかっく久々に家から出たんだし飯でも食っていくか」


 少年は極度の引きこもりの為、家から出たのは実に1年ぶりになる。

 フードコートへと向かうために店内の地図を確認する。


「うっわ、ここに来るの久々過ぎて地図見てもよくわかんね」


 とりあえずフードコートは一階らしいのでエスカレーターで一階まで降りる。


「ま、適当に歩いてたらそのうち着くだろ」


 少年がぶらぶらとショッピングモールの一階を歩いていると、後ろからとすんっと誰かにぶつかられた。


「ん?」


 後ろを振り向くが少年の視界には誰も映らなかった。しかし足を掴まれている感覚があったので視線を足元に向けるとそこには、


「えっと……」


 ピカピカの赤いランドセルに黄色い帽子を被った小学一年生くらいの幼女がいた。


(いやいやいやいや! 久々に外出したら幼女に掴まれるとか誰に予想できるか! ただでさえ引きこもりのコミュ障なのに幼女相手とか無理があるだろ!)


「……い」


 幼女が何かを呟いたようだがその声はくぐもっていて少年には聞き取れなかった。


「えっと、なにかな?」


 少年はとりあえずしゃがんで幼女と目線を合わせる。


(小さい子相手には目線を合わせるといいとか聞いたことあったからやってみたけど、よく見るとこの幼女めっさ可愛いな! ……って、いかんいかん俺に幼女趣味は無い!)


「ど、どうしたの? 迷子かな?」


 少年の声に幼女は何の反応も見せず視線を右へ左へと彷徨わせる。そして意を決したように幼女を少年と目を合わせた。


「あのね。おにいちゃん……」


(幼女にお兄ちゃんと呼ばれるのはなかなかどうして悪くないな!)


「…うごかないで」

「!!」


 幼女は右手に持った防犯ブザー(・・・・・)をチラつかせ少年にそう警告した。


(なに? なになになに? どういうこと!?)


 幼女の行動の意味が分からず少年の頭の中を困惑が埋め尽くす。

 

「おにいちゃんはこれからわたしのげぼくです。さもないとこのブザーをならしてさけびます。きっとこころやさしいおとなのひとはわたしをまもってくれるでしょう」


 少年は尚も混乱した様子だが少女の言っている意味についいて理解する。


(逆らえばブザー鳴らして俺が捕まるって訳ね。…………今時の幼女こえ~~!!!! なんだよ防犯ブザー使って大人脅すとか! もう最悪だあ)


「それじゃあおにいちゃん。わたしのいうことをきいてくれますか?」

「……はい」


(なんかもう獲物を狩る狩人の目だよこの幼女)


「そっか! ありがとうおにいちゃん!」


 この時見せた幼女の笑顔は年相応のキラキラしたものだった。


   ✤


「それで、次はどこに行きたいの?」


 少年は幼女に手を引かれながら次なる目的地へと向かっていた。服屋におもちゃ屋、ゲームセンターと散々連れまわされたので少年の財布はだいぶ寂しくなっている。


「んっとねー、こっちこっち」


(この状況はたから見ると犯罪臭ハンパないんだけどだいじょぶか)


 と、少年が現状について考えているとどうやら目的地に着いたようだ。


「ここ! わたしクレープたべたい!」

「はいはいわかりました」

「むー。たいどわるいこにはおしおきだよ」


 そういって幼女は防犯ブザーの紐に指を掛ける。


「すいませんでした! 直ちに買ってまいります!」


 少年はビシッと敬礼を決めると早速クレープ屋の列に並びに向かった。


(幼女相手に全力で謝るとか俺カッコ悪すぎだろ)


「わたしなにたべたいかいってないのにだいじょぶかな~おにいちゃん」


 幼女はそう呟きながらベンチで足をぱたぱたさせながら少年の背中を見送った。


 5分ほど並ぶと少年の番が回ってきた。


「えっと……」


 メニューを見た瞬間少年の動きが止まる。


(やばい。幼女ちゃんに何食べたいか聞いてくるの忘れた。ここで下手なチョイスをすると鳴らされてしまうのでは……?)


 自分の危機的状況に背筋を嫌な汗が伝う。


「お客様?」

「ひゃ、ひゃい!」

「ご注文は?」


(やばいやばい! どうする俺! ここはもうスタンダードにいこう!)


「えッと……いちごとチョコバナナお願いします」

「かしこまりました」


 店員からクレープを受け取り、少年は幼女の元へ戻る。


「おまたせ。はいクレープ」

「わあ! ありがとう!」


 幼女は早速クレープを一口頬うばる。


「んー! おいしい! おにいちゃんわたしがいちごすきなのしってたの?」

「いや全然。なんとなくだよ」


(ふーよかったー。これでなんとかなったな)


 そう言って少年は自分のクレープを食べる。


(うま。クレープとか超久々に食ったな。やばいうまいこれ家でも作れっかな)


「おにいちゃん」


 少年が一人クレープの美味しさに感動していると幼女から底冷えするような声が発せられた。


「な、なんですか?」


 その幼女の異様な雰囲気に思わず少年は敬語になってしまう。


「なんでおにいちゃんもクレープをたべているのかな? わたしはわたしのぶんのクレープをかってきてっていっただけでおにいちゃんのぶんをきょかしたつもりはないよ」

「えっとそれはですね……」

「ううん、いいわけはいいの。ただこれはばつゲームものだね」

「ひっ!」


 そして幼女の罰ゲームが執行された。


「これいつまでしてればいい?」

「ずっとー」


 幼女の返事は少年の頭上から聞こえてくる。


「さいですか」


 今、少年は罰ゲームと称して幼女のことを肩車していた。


(ふとももやわらかい。すべすべする。そしてなんかいい香りが……っていかんいかん! このままではロリコンに落ちちまう!)


 気を取り直して少年は幼女に次なる目的地を聞く。


「で、次はどこ行きますかお嬢様」

「んーどこかたのしいところー」

「どんな無茶振りだよ!」

「まかせた! ゆけ! おにいちゃん!」

「ちょ、いたい! 髪引っ張るのだけはやめて! はげるから!」

「あははは!」

「笑ってないで手止めてー!」


   ✤


 その後散々幼女の無茶振りに着き合わされ、時刻はそろそろ22時。閉店間際だ。


「もうちょいでお店閉まっちゃうよ」

「うん。そうだね」

 

 少年は幼女を肩車しながらエスカレーターで一階へと降りていた。


「もう帰る?」

「うん。そうだね」


 幼女の声には元気がない。


「家まで送って行こうか?」

「だいじょうぶ。ママがむかえにくるから」

「そっか」


 一階に着きショッピングモールを出る。


「あ、ママのくるまだ」


 一台のリムジンがこちらに向かって走ってくるのが見えた。


(まじか!? もしかしてこの子マジもんのお嬢様?」)


「そ、それじゃあ俺はこれでバイバイ」

 

 幼女を下ろし手を振る。


「ばいばい」


 幼女も弱弱しく手を振り返してくる。その表情は俯いてしまっていて少年からは見ることができない。


(はあ、らしくないけど)


 少年は幼女の前でしゃがみ視線を合わせる。


「俺は今日散々な目にあった。久々の外出だっていうのに幼女に防犯ブザーで脅されるはいろんなもの買わされて財布空っぽだわで散々だった」


 少年は手を伸ばし幼女の頭を撫でる。


「……でもなそれでも俺は今日楽しかった。だからさまた遊ぼうぜ! 今度は防犯ブザーで脅したりしないでよ」


 少年の言葉に今まで俯いていた幼女が顔を上げる。


「いいの?」

「もちろん。お前だって今日は楽しかっただろ?」

「うん! すっごくたのしかった! ならおにいちゃんまたあしたあそぼう! あした!」

「あ、明日!」

「だめ?」


(そんな瞳を潤ませた上目遣いで断れる男はいるのかね)


「わかったよ。また明日な」

「うん! また明日。ばいばい!」

「おう。気を付けて帰れよ」


 少年は幼女が迎えの車に乗るまで見送り、自分も家路につくのだった。

ギャグって難しいですね。うまく書けてた気がしません。


感想頂けると有り難いですm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] 前回に引き続き、テンポが良く、掛け合いがほのぼのしていて面白いです。 幼女ちゃんの可愛さがしっかり伝わってきてます! [気になる点] 極度の引きこもりの割に結構ハキハキ喋れていて違和感が(…
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