測定②
よくわからず開始された恵梨香と一花の戦いは両者とも運動能力は負けず劣らず。
ただ身長の面で恵梨香が圧倒的に有利だった。
「きゃー!陽の王子素敵ですっ!」
「女子のレベルじゃねぇー…」
「あの小柄な女の子も凄いわね」
女子からの応援や男子からの羨ましそうな声で体力測定は例年より騒がしかった。
円は溜め息を吐く。
竜田はそんな円を見てわたわたしている。
「おやおや、風紀委員は騒がしくするのが仕事のようですね」
そこには皮肉な笑顔を浮かべるあの人、生徒会副会長の叶真がいた。
円は眉間に皺を寄せ胃が痛むような気がしてきた。
「これは…不可抗力だ」
「そうですか?では今回は今後に期待して差し上げます」
叶真は眼鏡を指で押し上げ笑顔で去っていった。
去っていったと言うよりは自分のクラスで集合がかかっただけとも言える。
だが円にして見れば一難去った。
仲良くしたい…出来たらそれ以上と気持ちがあるものの過去を思うと複雑なのだ。
「円ー!勝ったよー!」
爽やかに汗をかいた恵梨香が良い笑顔で円の暗い気持ちが少し晴れた。
一花を見ればあからさまに凹んでいる格好で「わ、妾は間違ってないのに…」と呟いていた。
「一花先輩っ。やりますね」
「…陽の王子…」
恵梨香が差し出した手を一花が掴む。
まるで青春の一頁の様な雰囲気を醸し出していた。
が一花は誰かが見えたようでハッとして恵梨香の手を離し立ち上がる。
「今回はこの様な結果になって残念じゃが妾は間違ってはおらぬからな!」
と言い「ゼンー!」と叫びながら黒髪の男の子に飛び付き一花は去った。
「嵐の様な先輩だったねー」
「恵梨香も嵐の一部だ。反省文書きたくてたまらないだろう」
円が冷やかな視線を恵梨香に向ければ乾いた笑いをし誤魔化す様に竜田の紹介を始めた。
それで誤魔化される円ではないので恵梨香はきっちり反省文を2枚書いて提出した。
もちろん一花にも反省文の提出を通達した。
一花は「何故、妾がこの様な…」と言っていたが恵梨香が「一緒に勝負した仲じゃないですか!」と押しきっていたとかいないとか。