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魔界な人々

魔貴公子な私と魔貴族令嬢な姉。

電波が来てしまいました。

よろしくお願いいたします。

 い、胃がいたい……く、薬……

 私はヨロヨロと屋敷の廊下を医務室に向かって進んだ。


 「こちらがよろしゅうございます」

 正妻(ツマ)の嫁入りとともに来た白い(ハネ)の妖精族の薬師(クスシ)が薬剤棚からマンドラゴラ印の胃薬を出した。


 見習いらしい水色の(ハネ)の少年がなぜか震えながら薬師から粉薬の包みを受取り、水道からコップにくんだ水とともにどうぞと差し出した。

 「そうか」

 薬を受取り包みを開けると緑々しい粉が結構はいってる。

 口に一気に入れると青臭い苦いかおりが口いっぱいに広がり慌てて水で飲み下した。


 ここは(トウ)の一族の屋敷の医務室で何に使うか判らない薬品がところ狭しとならべられている。

 ベッドが何台もあるのはすぐ近くに修練場があるからだろう、一族のものたちが魔力を使って修練しているのが窓から見えた。


 最近、私はここの常連だ……原因はわかってるんだが……

 少しため息をつきながら窓の外で薄オレンジ色髪の筋肉質な青年が地面をツルハシでえぐり相手の黄色い髪の青年にまいったと言わせてるのをなんとなくみてると、薬師が大きな薬袋(ヤクタイ)を私に渡した。


 一日三回食前にと妙な迫力で言われて頷いて受け取った。


 見習いが薬師にしがみついて震えてた。


 見習いをおびやかしたことはないと思うんだが……


 そんなことを思ってると医務室のガラス扉が勢い良く開いた。


 「シルフィスくーん、遊ぼ……あ、お父ちゃまなの〜」

 私の可愛い幼い娘、ヘルリアナが医務室の入り口から突進して私にとびついた。

 「ヘルリアナ、元気だなぁ」

 足に抱きつくヘルリアナの顔を覗き込むと娘はうん、シルフィスくんと遊びに来たの〜と笑った。


 見習いがブルブル震えてるのが横目で見えた。

 ヘルリアナに怯えてる?


 シルフィスくん、遊ぼと可愛く小首をかしげる娘にひいっと怯える見習い……うちの娘のどこが怖いんだと半眼になったところで息を切らして乳母が飛び込んできた。

 「若旦那様、申し訳ございません」

 乳母があわててヘルリアナの手を握ろうとしたので静止して私が抱き上げた。

 改めて乳母を見る、ヘルリアナの母親の正妻と同じ緑の一族の薄い緑の髪に緑の(ハネ)の女で……名前はオーガシスだったか? 我が娘に振り回されてどうする。

 「いや、ヘルリアナと少し一緒に過ごそう」

 「わーいお父ちゃまうれしいの〜」

 明らかにホッとした見習いを冷たい目でちらっとみて乳母を従えて薬くさい医務室をあとにした、もちろん薬袋はしっかり握っている。


 ヤヘツーサ・(トウ)・オーランジャス、それが私の名前だ、(トウ)家の次期当主と言うことになる。


 下級人型魔族の母親から産まれた時から、高位の魔貴族の習いとして(トウ)家の次期当主と決まっている、そのために産まれたのだからな。


 ヘルリアナは、緑本家(リョクホンケ)から嫁いだの正妻との間出来た娘で、いずれどこかに政略で嫁ぐことになる……魔王にならない限りは、まあ例外もいるしヘルリアナも嫁がなくてもいいかもしれん。


 胃痛の原因……わかってる、あれだ、あれ。


 「今日は伯母ちゃま、いるの? 」

 ヘルリアナはウキウキとキョロキョロ周りを見回した。

 胃に痛みを感じた。

 「……ヘルリアナは伯母上が好きか? 」

 私は視線を彷徨わせた。


 せっかく胃薬が効いてきたのにまた、胃が、胃が……


 「ヘル、伯母ちゃま、大好きなの〜」

 ヘルリアナが満面の笑みで拳を突き上げた。

 「そうか、お父様は? 」

 胃痛を感じながら聞かずにいられない。

 「お父ちゃま? 好きなの」

 ヘルリアナが小首をかしげた。


 そうか、私は好きで姉上は大好きなのか?

 ますます胃痛を感じた。


 「あら、いいわねぇ、ヘルちゃん」

 胃痛の原因、諸悪の根元がのほほんと廊下の向こうから現れた、隣は今話題の魔王妃様か?

 父上が排斥したがってるという……滅したところで我が家にはあんな姉上しかいないんだが?


 茶色のセミロングの髪に緑の眼の小動物系の下級人型魔族の女が振るえながら姉上に手を繋がれてブルブル震えながら歩いているのが見えた。


 たしかに下級人型魔族の典型だが私の好みではないな……いずれ娶らないといけないが、もっとこう出るとこがでてて……


 「爆殺される……」

 魔王妃らしきもんが真っ青な顔で私を見てつぶやいた。


 たしかに爆破はわが(トウ)の一族の得意分野だが、地の一族だからな、魔王妃爆殺なぞ面倒なことするか! 魔王様に滅されるわ! あー、胃が、胃が……。


 私はヘルリアナを抱いたまま腹を押さえた。


 「伯母様! こんにちは! 」

 嬉しそうにヘルリアナが手をブンブンふった。

 「ヘルちゃん、魔王様になる練習してますの? 」

 姉上がとんでもないことをうっすら微笑みながらのたまった。


 魔王様になる練習だと? 私の可愛い娘に何を教えてる〜


 「今日もしゅうれんしたの〜」

 ヘルリアナが嬉しそうに手をあげた。

 後ろについてきてる乳母に視線をむけるとオーガシスが困った顔をした。


 ヘルリアナが医務室に来たのは修練場の帰りか……昼寝の後の散歩ではなくて……幼い娘に何と言う事を……胃が、胃が痛い〜


 「姉上、どういうことです? 」

 思わず姉上を睨み付けた。


 いくら温厚な私でも娘を修羅の道に進めたくはない。

 ヘルリアナが魔王になるためにはまず、イルギス魔王を滅しなければならないが……妖精族の緑本家の血を引く娘に攻撃能力があるとはおもえん。


 事実、緑本家特有の青緑の髪に青紫の翅を持った華奢な身体だぞ、まあ、体色はオレンジがかっていて眼はオレンジ色だが

 そういえば魔王城に正妻の従兄弟がコンビニとやらを出したとか……胃薬おいてるなら買い物に行こうか、ともかく今はヘルリアナだ。


 魔王になるなら姉上がなれば良いだろう〜事実イルギス様よりお強いのにめんどくさがって挑戦しないくせに〜


 ああ、もう胃が、胃が、胃が〜痛すぎる〜


 「ヘルちゃんは魔王様になってケーキをいっぱい食べたいんですよね」

 姉上がのほほんと笑った。


ケーキが沢山食べたいから魔王になるだと胃が……いた……いたたた。


 「ヤヘツーサ顔色が悪いですわ? 大丈夫ですの?」

 姉上がのほほんと近づいてきた。


 どなたのせいだと思ってるんだ!


 「大丈夫です」

 「そう? 医師に見てもらったほうがいいわ」

 どこの病院がいいかしらねぇと姉上は人差し指を頬に当てて小首をかしげた。


 その隣で引きづられた魔王妃がブルブル震えている。


小動物なペットを無理矢理引きずって来たみたいだぞ……だ、大丈夫だろうか? 早死にさせる原因に姉上……まずい不味すぎる……胃が、胃が……


 空間が歪んで麗しくも恐ろしい金髪碧眼の魔王陛下が現れた。


 「アールセイル! ミゼルをかえせ! 」

 「あら、もう来ましたの? 三人でケーキを人界に食べにいこうと思いましたのに。」

 凄まじい剣幕の魔王陛下に姉上がのほほんと答えた。

 「伯母様~! ヘルが魔王ちゃまになったらケーキ食べにつれていってあげるの~」

 ヘルリアナが両手を上げた。


 魔王陛下の前で恐ろしい事を!


 「おゆるしください!幼い娘のいうことですので!」

 私は娘を抱えてひれ伏した……胃が胃が引っくり返りそうだー

「ヤヘツーサ、そんなところで障害物になるな! 」

 魔王陛下はズンズン早足で魔王妃様と姉上に近づいていく。

 「ヤヘツーサ、お腹が冷えるわよ、炎の魔人出力アップですわ! 」

 姉上が後ろでフワフワ浮いていた丸っこい炎の魔人が赤みを増した。

 「姉上、それどころでは……」

 お父ちゃまヘルはーとヘルリアナがなんかもぞもぞしてるが気にしてられん。

 ヘルリアナの失言で(トウ)本家を滅ぼすわけにいかん!

 「どけ! ヤヘツーサ! 」

 魔王陛下がさけんだのでひれ伏した場所から少し移動した。


 私がいた場所にスライディングして魔王陛下が転んだ。

 ま、不味い……ああ、もう胃が胃が溶けそうなくらいいたい。


 「魔王ちゃま、大変なの!」

 ヘルリアナが私の腕の中から脱走した。

 う、動けない……


「治してあげるの、えーい」

 ヘルリアナが魔力を使い、緑家特有の治癒再生の魔力が爆発的に放たれた。


 胃が……胃が……治った?


 恐る恐る魔王陛下の方をみると金の髪が異様に伸びていた。

 むくりとイルギス様が起き上がった。


 け、けうけげん?モップワンコ?


 長い髪の間から緑の眼が爛々と輝いている。

 金の髪は足元よりながく引きずってる。


 「ミゼル、かえるぞ」

 魔王陛下妙な迫力でせまりひっと魔王妃が怯えて後ずさった。

 「イルギス様、ミゼル様が怯えてますわ」

 姉上がさりげなく魔王妃を後ろに庇った。

 「アールセイル!」

 魔王陛下の魔力が長い髪とともに宙に浮いた。

 不味い退避しないと屋敷が壊れる。

 

 ヘルリアナをもう一度抱え込む。

 軽い足音がして小柄な下級人型魔族が魔王陛下に近づいた。


 「い、イルギス、帰ろう」

 魔王妃様が長くなった金の髪をツンっと震えながら引っ張った、イルギス様が魔王妃を抱きこんだ。


 「ミゼル」

 まるで宝物のように抱き上げてイルギス様があるきだした。

 「あの、ありがとうございました」

 小動物な魔王妃が振るえながら振り返った。


 いや、小動物な勇敢な魔王妃様と呼ぼうかな?


 「魔王陛下、どうかヘルリアナをおゆるしください!」

 一族も大事だが娘の方がもっと大事だ。

 「コブは消えた、気にするな」

 魔王陛下は長髪をひきづりながらいそいそと転移していった。


 た、助かった……


 「ヘルリアナ、お父様は寿命が縮んだ」

 私は再びヘルリアナを抱き上げて目をあわせた。

 「まだ、お腹が痛いの? 」

 ヘルリアナがちっちゃい手で私の腹を撫でた。


 ああ、なんてかわいいんだ、だが姉上のようになる前にしっかりいっておかないとな。


 「いいか、魔王様になると忙しくてケーキはいっぱい食べられない……お母様みたいにお嫁さんになったほうが食べられるぞ」

 いつも近所の魔貴族の奥方と交流お茶会と称してお菓子と噂話ばかりの正妻を思い出した。


 なんか、胃がまた痛くなってきた。

 最近、下級人型魔族の妻をめとれとうるさいんだよな。

 ヘルリアナがもう少し大きくなってからでいいと思うが……


「娘の潜在能力を潰したらいけないわ、イルギス様のお子様といいライバルになるかもしれないわ」

 姉上がのほほんと笑った。


 胃痛の原因は主に姉上なんだが。 


 この姉は実力者だけあって能力を見抜く力は無駄にある、つまり、ヘルリアナは魔王クラスの能力があるというわけか?


 私は思わず、娘を見つめた……い、胃がいたい……


「あらあら、お父様は胃痛のようね、ヤヘツーサ、医師にみてもらいなさいね、ヘルちゃんは伯母様と人界にケーキでも食べにいきましょうか? 」

姉上はそういってヘルリアナを奪い取った。

「わーい、いく!」

ヘルリアナが嬉しそうに両手を上げたところで転移した。


 この胃痛の原因の姉上がぁ〜


 ああ、それにしても……また胃がいたい……本当に早死にしそうだ。


 せめて、跡取りをつくるまで頑張らないと……

 私はため息をついて医務室への道を逆戻りした。

けうけげん…髪がわさわさ生えてる妖怪。

モップワンコ…毛がわさわさ生えてる犬?


読んでいただきありがとうございます♪

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