2話
それにしても自分の機体の尾翼を敵機に引っ掛けた撃墜王がいるらしいですが、考えてみたら凄いですよね。
2021年3月25日午前7時、中国は南西諸島の電撃占領に成功。
同日午前8時には日本国防空軍に緊急出撃命令が下った。
沖縄方面防空部隊所属のF-15戦闘機は中国軍のSu-27相手に善戦するも、中国軍は数によって犠牲を出しつつも沖縄本土への侵入を成功。
「緊急出撃命令が下った、総員戦闘配置に就け・・・・・・」
第4代艦長の西村大佐がそう言うと扶桑の船内を乗員たちが走り、自らの配置場所に就く。
私は艦橋の最上部で立っていた、無論、それは横須賀港に居並ぶ僚艦たちの出港を見るためである。
やがて横須賀港の奥である逸見桟橋に停泊していた私に曳船が横付けされるとゆっくりと外洋の近くまで引っ張り出される。
「出撃ね・・・・・・皆さんも気を引き締めなきゃね」
「あぁ、の言うとおりだ、艦隊の旗艦である私が臆するなんてあってはならんし・・・・・・良いか扶桑、お前もだ!」
日向がそう言うと私はそれに頷く。
高波さんや村雨さんは私が出港する前に東京湾へ出ていた。
合流予定場所は相模湾だ。
既に佐世保の第2国防艦隊群が出撃したと言う情報も聞いた。
「日向さんの対潜能力が頼りだから、みんなの耳として頼むよ」
私がそう言うと日向が頷き、相模湾へ向けて航行を続ける。
数時間後、相模湾で横須賀港を母港とする各艦艇が集結し、多数の艦艇が対潜攻撃に有効な輪形陣を広範囲に形成していた。
そして太平洋を航行し、鹿児島の沖合に到着したのは3日後である。
この時点で中国軍は沖縄本島で国防陸軍と死闘を交え、鹿児島の上空には中国軍爆撃機が侵入し、それを空軍新田原基地や海軍大村基地のF-35A/B/C戦闘機に、空軍新田原のF-15やF-2が迎え撃つ。
無論、中国軍の爆撃機に護衛は付いており、それの排除に時間を食われたものの、ベテランパイロットたちが戦闘機を相手取っている間に新米や中堅若手のパイロットが爆撃機を撃墜する方式で撃墜数を増やしていた。
日本防空軍は3機のF-15と5機のF-35を喪失したが、飛行教導部隊から参加した4機のF-15は全く無被害で中国軍のJ-11を8機を撃墜する戦果を挙げた。
無論、中国軍爆撃機は選りすぐりの護衛戦闘機と邀撃に上がった日本側の戦闘機が死闘を交える間にも護衛を伴って屋久島方面へと接近していた。
一方、これを迎え撃つ日本側も戦闘機を既に佐多岬上空に待機させていた。
鹿児島県佐多岬上空
「デーモン1よりデーモン中隊各機、レインクラウドが目標を感知!これより空対空戦闘準備に備えよ!」
『デーモン2、了解!』『デーモン5、了解!』
『ファルコン1より各機、デーモン隊同様空対空戦闘に備えよ!』
『ファルコン2、了解』『ファルコン5、了解!』
各6機のF-15J改ⅡとF-2C/D戦闘機は搭載していた増槽を次々に切り離し、一斉にアフターバーナーを炊いて加速する。
「ターゲット捕捉・・・・・・先手必勝!!デーモン1、フォックス1!」
デーモン1こと原田中佐がそう叫ぶと彼の愛機であるF-15J改Ⅱの胴体から2発のAAM-4Cが放たれる。
AAM-4CはAAM-4の最終進化形態で、最大射程170km、有効射程は120㎞と推測されており、機動力も従来型中射程ミサイルと赤外線誘導弾の中間くらいに位置するなど日本らしい変態兵器でもある。
AAM-4に気が付いた中国軍のJ-11は即座に爆撃機の前に立ちはだかり、PL-12空対空誘導弾を放ち、更に爆撃機に退避するように命じる。
「衛戦1より各爆撃機部隊に告ぐ、これより我々が敵戦闘機を排除する、貴隊の退避を願う!」
『爆撃機隊了解、貴隊の無事と奮戦を願う!』
「衛戦1了解、我期待に背かないよう努力する!」
張大佐がそう言うと彼は愛機のアフターバーナーを焚いて加速させて日本の戦闘機のミサイルの誘導電波やレーダー波を自らとその僚機へ向けさせる。
「嵌ったな・・・・・・」
レーダースコープで見て原田はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「戦術情報共有システムでミサイルに最新情報を送信、目標をJ-11へ変更!爆撃機は厄介な連中を排除してからでも良い!」
『飛んで火に入る何とやら・・・・・・と言う事ですね、隊長!』
デーモン隊5号機でお調子者の堀少尉がそう言う。
「デーモン5、お喋りは基地に還ってからにしろ!」
『了解、了解!ん!?敵編隊から小型飛行物体分離!』
「タイミングを計ってチャフを撃てば回避できる、そう言えば最近のロシア製ミサイルには耐ジャミング用機能としてジャミング源を狙う機能があったな、だからジャミングをするな、ファルコン隊各機も良いか?」
原田はそう言うと愛機の操縦桿を傾け、回避機動に入った。
30分後、空中戦が終結すると日本側は合わせて2機のF-2とF-15が撃墜されたのに対し、模擬空戦で飛行教導隊撃破の経験がある杉野大尉が先制攻撃で1機のJ-11を撃墜し、格闘戦でJ-10を撃墜した。
そして杉野は爆撃機部隊に対して正面反航戦を挑んで、彼はミサイルではなく機銃によって2機のH-6戦略爆撃機を撃墜する戦果を挙げ、急速な加速によって引き起こされた衝撃波で1機を操縦不能にして墜落へ追い込んだ。
それは兎も角、日本の戦意低下を狙った鹿児島空爆作戦は頓挫した。