63 雨降る王都
おかしい、と思ったことがある。
それは、俺がロロターナを発って王都へ戻る間の数日間のことなんだけど…魔族を全く見かけなかったんだ。
確かにロロターナの町でも魔族は見かけなかったよな、あ、ロランドは別として。前のシャムロック三兄弟とか、結局正体が分からずじまいの『黒頭巾』とか、町に着く前には遭遇してたのに。
街で見かけなかったのは単純に、あの広い町の中だからたまたま遭わずに済んだのかもしれない。けど、そうだとしたら町を出たときなんて絶対に狙われるに決まってる。
俺も多少は襲われる覚悟をして、いつでも戦闘に入れるようにピリピリしてた。馬車を操ってるとは言え、ニコラだってすぐに戦えるよう準備をしてたに違いない…。
そんな俺たちは肩透かしを食らったように、本当にあっさりと!何事もなくスムーズに!…王都に辿り着いちゃったんだ。
まぁ魔物は出たよ?それぐらいならもう俺でもビビらず戦えるし、なんだったら新しい力の『ラエア』の火力を調べるために散ってくれた魔物たちだっていたんだぞ?ニコラに頼らず、ちゃんと俺が!俺が魔物を倒したんだからな!
…え?魔物が弱かっただけだろって?………。…うん、俺が戦おうと立ち上がった瞬間、ニコラが一睨みしただけで魔物が逃げていって、あ、こいつら弱い魔物だったんだ…って思うこともあったさ…って、違う違う!
魔物はさておき、強盗や山賊たちに襲われることもなく、魔族にも全く遭わず…とにかく王都に俺たちは帰ってきた。今までのことを考えて、こんなにあっさりと事が進むなんて…逆に想像してなかった。
今日の王都はしっとりぽつぽつと雨が降ってる。今はちょうど馬車が門をくぐって、関所に一旦止めたところだ。ここは屋根があるから濡れずに済んでるけど、町を巡回する騎士の鎧はびたびたに濡れて寒そうだな。
雨は王都でも珍しいものじゃないし、王都民たちも「今日は洗濯物の渇きが悪いなー」ぐらいにしか考えてないだろ。けど、俺はあまり雨が好きじゃない。
外を出歩くのにも雨粒が体中に張り付いて鬱陶しいし、なにより、市場の方から漂ってくる町の匂いや音が雨に消されてしまうからだ。あの焼けるパンの匂いも、商人たちの声も、町のおばちゃんたちの井戸端会議も。
雨が降るだけで王都は俺の知らない王都に顔を変えてしまうようだ。
関所に勤めている町警備隊の騎士がニコラと話をしているのを見ながら、俺は雨の王都を眺めてため息をつく。…なにも朝からこんなしとしと降らなくたっていいじゃねーかよ。もう頃は日が昇り始める時間なのに。
朝早いわけじゃない、きっと晴れてるなら今頃この目の前の道にも人がいっぱい歩いてるし、少し近い広場から賑やかな声が聞こえてるはず…そんな時間。俺のいる前に広がる通りは、雨の足音だけが響いて猫一匹歩いてない。
つまんねーの、と俺がぼやいたとき。ちょうどニコラが隣に来た。
「今から城へ行くぞ。王へ報告だ………、どうかしたのか?」
「あぁ、分かった。いや、さ…。あんまりにもスムーズに王都に着いちまったから、呆気ねーなと思って」
少し強くなってきた雨を見つめながら、俺は関所の壁にもたれかかった。ニコラが少し黙り、ぽつりと返す。
「…嵐の前の静けさ、か?」
「へ?」
「いや、気にするな。…俺は雨も好きだが、どうも今日の雨は寒いな。今まで暖かいロロターナで過ごしたから余計に寒く感じる」
珍しい。ニコラ、暑がりなのに。ぱっと俺が顔を上げると、冗談っぽくニコラが口角を上げたのが見えた。
「お前も風邪をひくなよ。…あぁ、バカは風邪をひかないんだったか?」
「じゃあニコラはヨーウェンさんの風邪特効薬には無縁だな。だってバカニコラだし…いてぇ!」
ゴイン、と落とされるゲンコツは何度目なんですかね?つか、さっきのは絶対にお前が悪いから、バカニコラこの野郎!俺がイヤミ言われて反撃しないわけないだろうが!
ったく、なんか不安になって損した気分だ。魔族に遭わずに済んでラッキー、それぐらいでいいよな。気にしてた俺がバカだった!やっぱ俺、風邪ひかないかもしれない。
馬車を城前まで走らせ、近くにいた城のお手伝いさんに馬車を任せてから俺とニコラは階段を上った。少しずつ強くなってきた雨に、俺たちは言葉も交わさず黙々と階段を踏んでいく。城の入り口の扉の前に着くと、城警備隊の騎士が待っていた。
ニコラと俺を一瞥した二人の騎士は、すぐに事情を察したのか素早く扉を開く。ギィ、と重い音を立てて開いた扉をくぐると相変わらず真っ赤な絨毯が真っ先に目に飛び込んできた。
ずーっと視線を上げ、奥のステンドグラスの大きな窓と玉座を見つめる。謁見の間…そして、玉座の間でもあるここに王がいるはずなんだけど…。…うーん、誰の姿もここにはない。
普段ならここに王やその側近たちがいるんだけど、今日はここには誰もいない。どうしたんだろう、と見回すとちょうど廊下からジギスさんが現れた。
「まーったく、最近は忙しくてかなわんのう…………、おぉ?シフィルハイド、ステイト!戻ったんじゃな!」
俺とニコラが声をかける前に、その派手な青年がこっちに気づいて手を振る。体のいたるところにあるド派手な装飾品、金髪ポニーテール、あと顔の不思議な模様。ジギスムントさん、このシエゼ・ルキスの若き王だ。
けどそんな偉さを感じさせないお茶目な性格や、その爽やかで人懐っこい声にミスマッチな話し言葉、と何かと王らしさを感じさせないところがアレなんだよ…つまりは変人だと俺は思ってる。
疲れているように見えたジギスさんが嬉しそうな顔で言い、俺たちを手招きする。まずニコラが報告を始めようと、ピシッと背筋を伸ばす。が、首を横に振ってジギスさんが手をひらひらと振った。
「いいのじゃいいのじゃ、堅苦しいことは。公式に送り出した任務ではないからの」
「い、いえ、そういうわけには…」
「シフィルハイド、そちは肩に力が入りすぎじゃ。ほれ、ステイトを見るのじゃ。体が緩みきっておる」
「なんか失礼な言い方だな、ジギスさん」
思わずツッコんだ俺にジギスさんが笑いながら、ばさっと長いポニーテールを揺らした。ステンドグラスの窓を背景に、堂々と立ち振る舞うジギスさんには確かに風格があるんだけど…、王にはやっぱり見えないよな。
ニコラがジギスさんの言葉に少し息をつき、表情を緩めた。
「…報告書をまとめてあります」
「お疲れさまじゃ。して、ステイト。目的は達成できたのかのう?」
「あ、うん。…なんだけど、また調べたいことができてさ」
ふむ、と俺の言葉にジギスさんが手を口元に置いて何かを考え込む。今からいちいち報告するのは面倒だけど、ちゃんと言わなきゃいけないことだし…俺には知らないといけないことがある。ジギスさんが顔を上げた。
「申し訳ないんじゃが、少し今急いでおってな。…ここ数日、近隣諸国の代表者を招き、会議をしておる。この現状を受け、各国がどのように動くつもりなのかを、のう。
簡単にまとめると、聖セレネとコットリア、いくつかの小国はシエゼ・ルキスと協力して聖剣の捜索、奪還に全力を尽くすとの返事をもらったのじゃ。ミュリオ・ハユド国は邪魔も手伝いもしない、つまり不干渉の返事を寄越した。
北のネーディヤ帝国に至っては、手紙を送っても返事がないんじゃが…。…あとは、アルギークじゃな。そちは気になるのではないかの?」
アルギーク…!もちろんだ!バッと顔を上げた俺にジギスさんがゆっくりと頷く。
「アルギークの軍派と王派による諍いは聞いておる。…王と王妃が拘束されて牢に繋がれたそうじゃが、酷い扱いは受けておらんという。主権は軍に移ったと思われたのじゃが、その最中にこの聖剣盗難騒動じゃ。
また、シエゼ・ルキスや他国よりも、アルギークの地には魔物がたくさん沸いておるそうじゃ。しかも、なかなか手強いと聞く。軍は今その討伐に必死で、政治どころの話ではないそうじゃ」
「何でアルギークに魔物が集中してるんだ…?」
「それは調査中じゃ。…まぁ、そのような状況でのう。軍部も決して民を見殺しにしたいわけではない。全員が魔物討伐に力を尽くすことになり、それが落ち着くまでは前の政治に任せることになったのだというのじゃ。
魔物の発生が静まれば、再び軍部が国の舵取りをするのじゃと。…じゃが、儂は個人的には王の政治に戻ってもらいたくての。どうもアルギークの軍部は頭に血が上りやすいようで…侵略されてはかなわぬからの」
ふぅー、と疲れた表情でジギスさんが言う。…つまり今、アルギークは軍部が国のトップに躍り出たものの、魔物がドワッと出現しててんてこ舞いなんだな。だから今だけ、前の王たちに政治を任せて…落ち着けば再び頂点へ、ってことか。
それじゃ、シルのお父さんやお母さん…王様たちは生きてる。…良かった、と思わずにはいられない。シルがこれを聞いたら、どう思うだろう…。
ほっとしたのが表情にそのまま出たらしく、ジギスさんがにっこりと笑った。
「…それでの…、タイミングが悪いのう、ステイト。昨日は聖セレネから大神官殿とシルヴェスタ殿がこっちに来ていたのじゃが。そちがまだ帰っておらんと聞いて残念がっておったぞ」
「え!?うわー、惜しいことした!ニコラ、なんでもっと馬車速く走らせなかったんだよー!」
「かなり急いだんだが」
うわーっ!なんてことだ!エリネヴィステさんと…シル!久しぶりに会いたかったのに!きっとコットリアの話をしたら喜んだだろうな、エルマノスの皆にも会わせてやりたい…っ!…元気かな、シル。
俺がぽかぽかと拳をぶつけてニコラに八つ当たりしてる横でジギスさんが笑う。
「じゃが、そちが自分のやりたいことを見つけて一生懸命だと知り、嬉しそうじゃった。また近く、会いに行くとよいぞ。アルギークの情勢を教えたときも、随分落ち着いておったようじゃ。
ちょうど今、シエゼ・ルキスに滞在しておるアルギークの使者は王派の者でのう。彼もまた、シルヴェスタ王子の無事を自分の目で確かめることが叶い、涙を流しておった。…アルギークの内部事情はまだ我が国は介入できんのじゃ。
儂も恩のあるアルギーク王家を助けることができないのは心苦しいんじゃが、まずは聖剣騒動をなんとかせねばのう」
そうだ、喜ぶのは早いんだ。…聖剣騒動で各地に魔物が発生し、その強さと勢いは日々増している。もしロランドみたいに人間に危害を加えても何も感じない魔族たちがこの世界に増えたら…もっと大変なことになる。
それに、聖剣が封じていた境界戦争の時の強い魔物や魔族が復活しても困るし、…何より放っておけない災厄が静かに迫っている。
ノイモント。このことを、俺は早く知らなきゃならない。
ちょうど王が続きを言おうと口を開いたとき、見つけましたよ!と響く声が!あの声は、と振り向くと。眼鏡、ローブ、帽子、といかにも文官という姿の男の人が…って、フェイさんか。あの、俺にいつも冷たい視線を投げてくる…。
やっぱり俺の姿に気づいたフェイさんは、キッと目が僅かに鋭くなった。今日も嫌われてるな俺、と能天気に思いながら俺は黙って成り行きを見守ることにする。
「王!そろそろ休憩時間も終わりです、会議にお戻りください」
「むっ、もうそんな時間なのか…。残念じゃ、すぐにでも南国の話を聞きたかったんじゃが…。シフィルハイド、そちは騎士団長や副団長に挨拶をしてくるとよいぞ。…ステイトは、何か調べたいことがあるんじゃったのう?」
「あ、うん。…大事な話なんだ。だから…」
今は口にするのを躊躇った。ニコラにはまだ言ってないし、王には伝えたいけど…フェイさんの前だし。苦手だな、と思うと少し遠慮しちまうというか…。俺は言い淀んで少し視線を落とした。
視界の端でニコラが怪訝な顔をしたけど、俺はそっちを見ないようにした。王は、ふーむ、と唸ってからぽつりと言った。
「フェイ」
「はい」
「ステイトの話を、儂の代わりに聞いてやってくれないかのう。そちなら知識もあるし、儂にも整理して伝えてくれる。儂の会議の方は案ずるな、目付はいらぬぞ」
「は!?し、しかし、」
「そちを見込んで言っておるのじゃ。…そちの事情を知ったうえで言っておる」
…ちょい待って!え!?王様何を言ってるんですかね!?フェイさんを、フェイさんを俺に!?ちょい待って!二人きり!?ダメだ、なんか殺される気がする俺!突然の申し出にフェイさんはやっぱりその表情を失くした。
不満そうなのをありありと顔に浮かべ、フェイさんが王を見る。フェイさんの方が王より少し年上なんだろうけど、ジギスさんはあくまで落ち着き払ってフェイさんに視線を向けている。
俺が不満を言えなかったのは、王の言葉…『そちの事情を知ったうえで言っておる』。何かこれが引っ掛かって考えているうちに文句を言うタイミングを逃してしまった。助けを求めるようにニコラを見ると、黙って首を横に振られた。ううっ!
折れたのはフェイさんだった。はぁ、とため息をついてから眼鏡を上げ、目を閉じて苦々しく言葉を吐き出す。
「…分かりました。王の仰せのままに。……来なさい、トルメル。書庫へ行きましょう」
フェイさんは俺に一度だけ目を向け、すぐに先に書庫へと歩き去って行った。その背中を見送りながら、ジギスさんが小さい声で俺に囁いてきた。
「…ステイト、そちはフェイから学ぶこともあるはずじゃ。彼を嫌うな…、確かにつんけんしておるが悪い奴ではない」
「…でも俺、よく睨まれる」
「……そういう人間もいるのじゃ。誰も彼もが好意的な世などない」
その言葉はまるで、ジギスさんが自分に言い聞かせているようだった。俺はその様子に思わず頷き、そのまま歩き始めたジギスさんの背を見つめた。
…背負うものの背だ。ニコラと同じ、シルと同じ…大きなものを背負う背中。言葉を失って立ち尽くす俺に一度振り返り、明るい表情で手を振るジギスさん。
「後でまた、ゆっくりと旅の土産話を聞かせてくれんかのう」
「もちろんだ!」
俺の返事は広い謁見の間にウワンウワンと響き、廊下を突き抜けていく。ジギスさんは満足げに笑い、また歩を進めて曲がり角の向こうに消えていった。俺とニコラは黙り込んだままそこに残される。
ニコラに何か聞かれるかな、と思った。そうなったら説明をどうはぐらかそうか…。…今、ノイモントのことでニコラを心配させたくなかった。ニコラに話してもどうにもならないし、こいつの性格だ。…きっと深く考えるだろ。
けれど。予想に反して、ニコラは何も俺に尋ねなかった。ただ、早く行け、と急かした。
「文官殿が書庫で待っている。あまり待たせるな」
「…うん。…あ、あのさ!…」
「何だ、どうした」
突然寂しくなったとか、そんなんじゃない。ただ、どうしてか今言わないといけない気がして俺はニコラに向き直った。ニコラ、ちょっとびっくりしてる。少し優しい表情になったニコラが俺の言葉を待っている。
俺はふぅ、と息をついてからニコラを見上げた。
「…明日でもいい。…また俺と戦ってくれ」
「勝てる自信でもついたか?」
「…そ、そうだよっ!今なら秒殺即殺大打撃だっ!覚悟してろ!」
な、なんでこいつはいっつも馬鹿にしたように言ってくるのか!ニコラの目を指さして叫ぶと、あぁ、とニコラが笑った。
「明日の朝、お前の家に迎えに行く。寝てたらどうなるか分かってるだろうな?」
「あーはいはい!ちゃんと起きるから!」
そうか、とニコラが明るく笑った。まだ聖剣事件の前の、王都で過ごしていたときのように冗談っぽくて陽気で少し皮肉屋で、俺を馬鹿にしてばかりのニコラだ。一緒に旅をするようになって、思ったよりもこいつが真面目な奴だとも知った。
それで、思ったよりも…俺のことを考えてくれてた。…ヨーウェンさんとは違うけど、俺の兄貴分のように振る舞ってくれる…いや、こんなのが兄なんてヤだけど!俺の前に立ちふさがり続ける壁だ。
ムスッとしてるとニコラが一度だけ俺の頭に手をポンと置いた。そのまますぐ手を離し、俺の向いている方向とは反対の、城の出口にニコラは歩いて行く。外の騎士団宿舎へ行って団長たちを探すのか、と頭の端で理解した。
「ステイト、お前がどれだけ強くなったのか…楽しみにしている」
それだけ言い残してニコラは城の外へ出て行く。俺はニコラが外に姿を消してしまう前に一度だけ振り返ってその背を見送った。…けど、どうしてだろう。遠ざかるその背に俺が漠然と感じたこと。
―――もう、ニコラに会えなくなる気がした。
**
フェイさんは書庫で一人、机に座っていて書類に向き直っていた。俺が来たのを一瞥し、静かに言った。
「遅い。何をしていたのですか」
「ちょっと話して…ました」
「咎めているのです、実際に何をしていたのか聞いたわけではありませんよ。…本題に入りましょう、私も暇ではありませんので」
や、やっぱ感じ悪い!俺に冷たく視線を送って、一刻も早く用件を終わらせたい、って感じの態度を隠そうともしない。ちょっと腹が立つけど押さえろ、俺!俺だってこんなヤな感じの人とずっと一緒にいたくないし!
俺はフェイさんと同じテーブルの、けど少し離れた席に座った。
「ノイモントについて知りたいんです」
「…何故」
「ゆっくりだけど…この世界にノイモントが迫っているからです」
もうこうなったら聞かれたことだけ答えてやる、と俺は心に決めました!…それでもやっぱりフェイさんはノイモントについて知っているらしく、それが何であるかを聞くことはしなかった。
俺の言葉に少し表情が厳しくなったフェイさんは、すっと立ち上がって本棚の影に消えた。すぐに幾つかの本を持ってきてテーブルの上に並べる。
「ノイモントについてはどれだけ知っているのですか」
「世界に力が集中しすぎることで、世界が壊れるとか…」
「大体合っています。…確かに、想像できますね。今現在、この世界では古代の伝説たちが目覚めつつある…一つの時代に集まりノイモントが発生する…。…ノイモントの何を知りたいのですか」
全く取り乱す様子はなく、フェイさんは冷静に考えを整理しているようだった。俺に注意が向いていないときは、ただの生真面目で厳格な文官さんって印象なんだけど…。俺を見る目だけはやっぱり冷たい。
いちいち気にもしてられないから、俺も目を閉じて答える。
「対処法を」
「…かつてノイモントが世界を襲った時のことから話をしましょう。…座り直しなさい、トルメル。面倒なので一度しか話しませんよ」
フェイさんの言葉に大人しく従うと、フェイさんはゆっくりと話し始めた。その低すぎず高すぎない、棘を感じるけど聞きやすい声が静かな書庫に響いた。
「そのときの世界はもっと広く、たくさんの種族の生命に満ち溢れ、神や精霊に愛された地が続いていたと言われています。その全てが調和し、巡っていた、と。ですが、どうやら人間がその平穏を壊してしまったようなのです。
人間は人間の利益だけを考えるようになり、神を忘れ、精霊を地の端にひっそりと追いやった…そして魔族をも排除しようとし、また戦争が起きた。これは境界戦争より以前の、遥か昔のことです。
多大な力がぶつかり、それを止めようとした神や精霊の力さえも衝突し、ノイモントを起こしてしまった…。ノイモントは大陸ではなく、『世界』を呑み込み始めたのです。
古文書によると、以前の世界の半分以上が失われたそうです。ノイモントによって消滅した地の近くは空間が乱れ、分散した魔力が不安定に浮いた場所になり…人間はそのような空間では生きていけませんでした。
人間にとって強すぎる魔力は体の毒です。だが、魔族は違う。そのノイモントに呑み込まれた付近の歪みにできた空間、魔力が浮いたそこへ人間は魔族を追いこんで閉じ込めることにしました」
…魔族を、人間が追いやった…?フェイさんの言葉に驚き、俺は顔を上げてその表情を見た。相変わらず無表情なフェイさんは、俺に目を合わせることなく先を続けた。
「人間はその空間には住めない。魔族は住める。残った人間の生きていける世界は人間の世界に、そして邪魔な異端者の魔族をその『新しい不安定な境界の向こう』に閉じ込める。これが境界戦争以前の大きな歴史の流れです」
「そ、そんなの…人間が悪いんじゃないですか…!」
「そうです。これが残されている古文書が記した歴史です。…ですがこの歴史は人間の世界では闇に葬られました。単純に、人間にとっては都合の悪い歴史だったからです。
やがて時は過ぎ、世界がノイモントに呑み込まれたことも何も知らない人間ばかりが大陸で生きるようになった頃。魔族たちはこの事実を忘れてはいませんでした。機を待ち、『魔界』と呼ばれた空間から飛び出して人間と戦い始めた…」
フェイさんはそこで顔を上げ、俺をちらっと見た。歴史を語ることに思いを馳せてるようで、俺に対する厳しい視線は少しだけ柔らかくなっている。…けど、やっぱりトゲがある視線だな…。
俺がちゃんと話を聞いてることを分かってもらえたらしい。フェイさんは続きを口にした。
「これが境界戦争です。王族も語り部も誰も昔の人間の過ちを知る者はいなくなっていました。人間は魔族の攻撃を単なる侵略だと思い、戦いました。では、今度は何故勇者ルキスが…人間側が勝ったのかを話しましょう。
あくまで推測ですが、ルキスに魔を退ける神の力を備えた聖剣が神から贈られたのは、神がノイモントの再来を恐れたからでしょう。魔族はこの戦争のために力を蓄え、恐ろしい魔力と攻撃能力を持つ『強き魔』を作り上げていたのです。
そんなものが暴れればまたノイモントが世界を襲う…。神は自分の作った世界を壊したくない、だから手助けとして魔を止める聖剣を正直者の青年ルキスに渡したのでしょう。
ルキスは『強き魔』を封じ、境界戦争を終わらせました。ノイモントの兆しが現れる前に、その原因となりうる『強き魔』を封じたのです。魔族は再び『魔界』に追いやられてしまいましたが」
「じゃあ!今魔族が聖剣を盗んだってことは、今度こそ…」
「恐らく、また魔族と人間の戦争になります。…あなたの言う通りなら、もうそうなればノイモントは不可避です。それを止める可能性を持つのは聖剣だけですからね」
眼鏡をくい、と上げる冷静なフェイさんに腹が立った。何でこの人、こんなに冷静なんだよ。…この人も、この世界に住む人なんだろ。王に一生懸命仕えてるのは俺も知ってる。だったら世界を嫌ってる人じゃないのに、なんでこんなに…、
「何故私が淡々としているか、ですか」
「…はい」
いつの間にか俺は強く拳を握ってフェイさんを睨んでいたらしい。フェイさんはまた氷のような冷たい目で俺を見ていた。…心を読まれたのは癪だけど、俺はすぐに頷く。同時にフェイさんは目を閉じた。
「ここで熱くなり、パニックを起こしたところで解決法が一つでも見つかるならばいくらでも取り乱して差し上げましょう。…聞きたいことがあるなら答えましょうか」
「…なんで境界戦争のときに生きてた人間はそんな歴史を知らなかったのに、ここに古文書が残されてるんですか」
「境界戦争が終わってだいぶ時が経った後にある遺跡から見つかったものです。公にはされておらず、この事実を知る者は私と他の一部の上級文官、そして王、……気に入りませんが、あなたもです」
うわ、あからさまにイヤそうに!ま、待て。こんなツンケン文官なんてほっとくんだ俺!そうだ、俺は重大なことを聞いたんだ。ノイモントは神の力を備えた聖剣じゃないと止められない、って。…やっぱ聖剣を取り戻さないと!
まだ魔族は探りを入れにきてる程度で、本格的な攻撃を人間に仕掛けてるわけじゃないんだ。まだ…間に合うだろ…、なんとか聖剣を奪還すれば。
じゃあ俺にできることって何なんだ?この事実を知って俺にできることって何なんだ?………分からない。何も浮かばなかった。きっと俺がフェイさんみたいに淡々として無機質無表情だとしても何も思いついてない。
ぐ、と悔しい声しか出なかった。…けど、フェイさんは教えてくれた。王も、俺の助けになるようにノイモントについて…昔の歴史を教えてもいいと許したんだ。…前進、と考えよう。
書庫の外、窓の向こうは激しい雨だ。ときどき窓に雨が叩きつけられてバタバタと騒がしくなる。フェイさんは俺が何も言わなくなったのを見て本を閉じた。
「満足しましたか?私は自分の仕事に戻ります」
「待って、…待ってください!」
フェイさんが冷たく言った時、俺は思わずフェイさんを引きとめていた。明らかにイラッとしたような表情を一瞬した後、なんです、と低い声で俺に尋ねる。俺は少し静かに、…けど、ずっと気になってたことを聞く。
「フェイさんは…どうして俺を嫌うんですか」
後ろを向いたフェイさんが、本棚の前で一瞬歩を止めた。少しの沈黙、…そしてそのまま振り返ることなく、やっぱり感情のこもっていない声でフェイさんが言う。
「…私の両親は富豪でしたが、ある盗賊の集団に襲われて私が幼いころに死にました。私はすべての盗賊を法の力で滅するために猛勉強し、王の側近の文官に上り詰めました…が、現状はどうです。
あなたのような野蛮な盗賊上がりが、平民よりもぬくぬくと周りに扱われ、王に不敬を働き、世にのさばるばかりです。…あなたが憎いのですよ、盗賊上がり風情が」
「なっ……!…俺じゃない!俺じゃないだろ、あんたの親を殺したのは!確かにそいつらはすっげぇ悪い奴だ、俺だって絶対に許さない!あんたの気持ちも分かるし、努力も認める、けど…!」
「ええ、分かっていますとも。あなたが悪いわけではない。ですが、………私はそこまで、心は広くないし人間はできていません。あなたには分からないでしょう、この気持ちは」
「…分からない。分からないよ。分かるはずねぇよ…。…あんたが俺のことを知らないように、分かりあえるはずなんて…」
声を荒げたのは俺だけだった。激しい雨音にも負けない俺の声が書庫に響くのに、フェイさんは全く叫んだりすることはなかった。けど、静かな口調でもフェイさんの気持ちは伝わってくる。…けど、そんなの…俺が嫌われる理由になんて…。
そう思って俺はやっぱり反論できないことに気づいた。…分かり合えるはずなんてない。フェイさんの悲しみと怒りは深く、俺のことだって憎くて仕方ないんだろう。俺が犯人じゃないと分かっていたって、割り切れないほどの苦しみなんだ。
王が俺に言った言葉。『学ぶこともあるはずじゃ』、って…こんなに悲しいことなのか?フェイさんに嫌われてるのが悲しいんじゃない。…俺は、分からないことが悲しいんだ。
だから、俺は自分で最後に言ったことも意識して言ったわけじゃなかった。気付いたら零れていた言葉、…それにフェイさんが振り返った。一瞬フェイさんの目が揺れ、すぐに前を向いてしまう。
「…ええ、私にもあなたのことは分かりません。…こんなことを話すつもりはありませんでした、忘れなさいトルメル。……見苦しいところを見せましたね」
「…俺こそ、ごめんなさい。…ごめんなさい」
「…こちらこそ。……我が王が信頼したあなたのことを、多少は認めてもいいかもしれません。…ですが、心に留めておくことです。誰もが無条件に甘いわけではない、と」
フェイさんはそれ以上何も言わなかった。俺がぼんやりと見ている前で手早く本を片付け、もう俺には目もくれずに書庫を出て行く。誰もいない書庫に外の雨音だけがザァザァと騒がしく、取り残される俺は苦い気持ちを抱えてしまった。
**
…そんなこと言われたって俺のせいじゃないし、うん、俺は仕方ない!フェイさんが勝手に俺を嫌っておけばいいんだよあのツンケンメガネ文官!と俺はぷんすかすることで苦い気持ちをかき消していた。
城を出て、大雨の中を傘も何も借りずに大股でゆっくり歩いて進む。髪の毛は水も滴るどころか滝の如くで、顔も服も何もかもびしょ濡れだ。明日は風邪引くな、とどこか遠くで冷静に考える。
それでもカバンの中身が濡れないように、雨よけのカバーをお土産の入ったカバンにかけてるのはエライだろ!そりゃもうノイモントのこととか、フェイさんのある意味理不尽なこととか、俺にとっては頭の痛いことばかりでイライラしてんだ。
雨の中を大声で歌いながら帰りたくなるレベルだ!
厚い雲がどす黒く王都の空を遮り、いつもならさんさんと照らしてくれるはずの昼の光はない。時間感覚も分からなくなってくるよな…、そう思った時にちょうどお昼の鐘が鳴った。なんだ、今昼なのか!
…随分俺は城でゆっくりしちまったみたいだ。早くヨーウェンさんの薬草屋に行って、ただいまを言って、このお土産を渡して…。…やっぱり早足に行こう。
すぐに薬草屋に着くと、俺は慣れた手つきでドアを開けようとした…けど。ガチャガチャ、とドアは反抗の音を上げる。あれ、開かない。…そういや店の中も暗いな。もしかして今、ヨーウェンさんはどっかに行ってるのか?
合い鍵の隠し場所から合い鍵を探すまでもなく、盗賊生活で培った鍵開けの技術でチャカチャカと鍵を勝手に開ける。…え、怒られないかって?あとで閉めなおせば問題ナシだ!
やっぱり店にはヨーウェンさんもアリシアも誰もいない。奥の部屋だろうか、と居住スペースを覗きに行っても誰もいなかった。おっかしいな、…まさか何かあったとかか!?不吉な予感がざわり、と頭によぎる。
冷静になって辺りを見回すと、テーブルの上に一枚の紙があった。何か書いてある、と俺は慌ててその紙を摘み上げた!
『朝6:00…棚の整理
7:00…市場で食料調達
9:00…店の掃除
11:00…アリシアとフィリナまで出かけて薬草を調達
そのまま一週間フィリナに滞在』
日付、今日のだ。……なんてこったい!ヨーウェンさん、つい1時間前に出かけちゃったのか!しかもアリシアも、二人とも一週間戻らないのかよ!そ、そういや入り口のドアに何か張り紙してあった気がする…営業休止のお知らせか!
あちゃ、と薄暗い部屋でため息をついて頭を掻く。あー、ヨーウェンさんに塔守の婆さんからもらった薬草と薬草調合ノート渡したらすっごく喜んでもらえただろうに…アリシアもきっと俺の買った小物を喜んでくれたはず…なのに…。
「…でも、いないなら仕方ないもんな」
ヨーウェンさんたちが一週間帰ってこないなら、俺もこれから一週間は城に入り浸ったりニコラの邪魔したりして過ごそう。…でもまずはお土産だ。俺は薬草やノート、小物類をテーブルの上にどかっと置いて書置きを残す。
書置きといっても、すごくシンプルに短く、『お土産です!』だけ。だって一週間後に会えるんだし、そのときに旅の話をすればいいだろ?アリシアがまた話を聞いてくれるのが楽しみだな。
想像して少しほんわかした気持ちになる。アンダーソン兄妹マジック!俺の癒しだ。…あ、待てよ。ヨーウェンさんがシルの手紙を預かってくれてるだろうから、俺、一週間シルの手紙読めない…!うわぁ、ごめんなシル…!
それにジャッテやエルピスにも会いに行きたいし、そうだ、ユハの双子にも手紙を書いてやろうか…どうせ暇なんだし!なんだ、やることいっぱいあるじゃんか!
ちょっとだけ機嫌のよくなった…いや、だいぶ、かなり、すごく、すっごく上機嫌になった俺は!ふんふーん、と鼻歌交じりに薬草屋を出て再びチョイチョイと鍵を閉めた。雨は攻撃的なほどで、さすがにのんびり歩けそうにはない。
こんな日は王都民は絶対に家から出てこないな…俺もこんな日にはいくら食材がなくなってても動きたくない。慌てて俺は自分の借りてる部屋がある建物を目指して猛ダッシュ!
あででで、雨が痛い痛い痛い!叩きつけるような雨、…こんなの久しぶりじゃね?
大家さんに帰ってきたことを告げる前に、さすがに着替えたい。うん、まずは俺の部屋だ。ひっさしぶりの俺の部屋!今日はぐーっすり寝てやるぜ!
ガチャ、とあっさりドアが開く。うおー、帰ってきた帰ってきた!さっさと服、着替えちまおう。俺はびしょ濡れのまま大きく足を一歩部屋に踏み込み、
―――違和感を感じた。
…どうして、何か…何か変だ。何が?…あれ。ドア、鍵かかってなかった?え!?俺、もしかして空き巣入られてる!?ま、まさかー!このステイト君ですよ?この元天才盗賊少年から盗みを?笑わせるわ!いや待てよ空き巣は…ウオオ!
どうしようどうしよう俺のレシピノートとか無事かな、いやいやいや俺ってばおせっかちだから鍵かけるの忘れてコットリアへの旅に出ちゃったとか?…バカな!
多少なりとも焦った俺は、他には何も疑問に思わなかった。
―――…だからこそ気付けなかったんだろう。
トス、と何かが首元に軽く当たった。いや、刺さったのか?本当に軽く、当たったように。その瞬間だった。ピンと空気が張り詰めるのが分かった。…誰かこの部屋にいる!でもそれが誰かを見ることは叶わなかった。
…なんか、目がかすむ。頭がぼーっとして、あれ、手に、足に、力が…入んね………。
―――ドサッ
**
ずぶ濡れの少年が倒れた。物陰に隠れていた彼は、黒いフードをかぶったままゆらりと立ち上がる。倒れた少年はすっかり気絶していて、どう見ても無力だ。首に刺さる小さな針が少年を昏倒させた…そして針を投げたのは彼である。
魔族の研究者たちは随分便利なものを作った、と彼は伏した少年を見ながら思う。
そのとき、ぴょっと箪笥の陰に隠れていた小さな三つの姿が出てきた。
「や、や、やったのかっ!?」「とうとう!?」「ほ、本当にっ!?」
口々に言う三つのその姿はよく似ていて、クリーム色の髪と丸い目が並んでいる。倒れた少年よりも幼い風貌の3人組は魔族の中では有名な賞金首狩りの三つ子だ。
ぴくりとも倒れた少年が動かないことに顔を見合わせ、やったー!と元気いっぱいに声を上げて跳ねる。
「やったのだ、やったのだ!ついにトルメルを捕獲したのだーっ!」「けど実行したのはオレっち達じゃないぞ!」「それでも情報提供したのはぼくちん達だもの!」
「シャムロック三兄弟…もうちょっと声のトーン下げて…俺には耳がキンキンしてつらい…」
「むっ!すまなかったのだ、黒頭巾!」
黒頭巾と呼ばれた彼は、その見た目通りの呼び名に頷く。黒いフードの下に隠れた顔はいつも覇気がなく、目にはクマ、だるそうな半開きの赤い目。それでも彼も、魔物を自在に召喚して操る魔物使いの中では有名な存在である。
トルメルを探し出せば、一生遊んで暮らせるほどの大金やその他諸々の望むものをくれてやると魔界で言い渡されて数週間。一度このトルメルの少年を説得できそうな機会があったのだが、見事に騙され逃げられた。
その後めげずに行方を探しているところ、またもトルメルに出会ったが返り討ちにあったという魔族…シャムロック三兄弟に出会ったのである。黒頭巾は三兄弟と協力し、トルメルの少年捕獲計画を密かに立てることとなった。
情報を集めると少年が王都で暮らしていたことが分かり、その部屋までもを突き止めることができたのはシャムロック三兄弟の人脈の広さと魔物から情報を引き出せる黒頭巾の連携があってこそだ。
何はともあれ、あっさりとトルメルの少年に『針』を打ちこみ、気絶させることに成功した。特殊な針の効果で、しばらく少年は目覚めないしトルメルの体質も無効化されている。
部屋の端でキャッキャと喜ぶ三兄弟を見ながら、あー、とめんどくさそうに黒頭巾は手を挙げた。
「さっさと魔界まで転送して報酬をもらおうよー?」
「おお!そうだった!ギン、ミィ、魔法の準備なのだー!」
「「了解ー!」」
三兄弟がすぐに魔法の詠唱を始めると、トルメルの少年とその傍に立つ黒頭巾の下に魔法陣が現れる。三兄弟の下にも魔法陣が輝き、その詠唱が終わる。
一際大きく光り輝いた魔法陣は、一瞬でその光を鎮めた。が、光が収まった頃にはもう部屋の中には誰の姿もなくなっていた。
ただ、机の上には薄く埃がかぶったまま。キッチンの流しには何もなく、食器はおとなしく棚の中に納まっている。窓際の造花が、激しく窓を叩く雨にわずかに揺れるだけである。
まるで、何も起きなかったように部屋の中は静まり返っていた。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
ここで第2章は終わりとなり、また番外編を挟んで第3章へと移ります。
第3章は登場人物や環境が大きく変わりますが、よろしければお付き合いください…!




