表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すのーでいず   作者: まる太
第三章
79/84

MMOと言えば 1

 僕のノートパソコンが高熱を発し、冷房の効いた部屋の温度を押し上げている。

 MMO、FSCCは上質のグラフィックと操作性が売りの作品、ノートパソコンを酷使するゲームで有名だった。

 ほんのりとキーボードまで暖められている画面の中では、太一と仲の良い友達で作ったギルド、『杏仁豆腐』の木造ギルドハウスが映っていた。

 ギルドの面々でお金を稼ぎ、やっと手に入れたいわばマイホームのようなものである。

『剣聖にゃん姫:やっと買えたよね。皆の努力の結晶だよぉ!』    

 太一操る、剣聖にゃん姫がギルドハウスの中央で感動のエモートを出している。

 ネカマの技術に磨きをかけ、今では女子高生と名乗っているぐらいだ。

 その周りには主要、ギルドメンバーが囲んでいた。

 勿論僕の操るキャラ、大鎚使いのナイスミドル、トールも居る。

『トール:でも、さすがに家具とかがないから寂しいものがあるね』

 買ったばかりのギルドハウスは、テーブルや椅子すらなく、只の箱状態だ。 

『夢王:それは仕方ないですね、コツコツそろえるしかでしょう』

『シャム:そうそう、手に入れたばっかりだもの。後で買いに行きましょうよ』 

『愛染:てか誰かクラフトで作れないの?』

 夢王、エルフ男性の魔術師キャラと、シャム、獣人族の女アサシンが僕の意見に反応し、愛染、前衛の盾キャラ、皆の頼れる壁である巨人族の親父が疑問を提示した。

『トール:クラフトかぁ……自慢じゃないけど、僕は無いよ!』

『『『『本当に自慢にもならない(ねぇ)』』』』

 全員にツッコミを入れられた。

『トール:ふーん、だったら誰か作れるの?』   

『…………』

 その僕の皮肉の後、沈黙が流れた。 

 脳筋ギルドと言われるだけあって、生産スキルなんて存在しないのだ。

『剣聖にゃん姫:じゃー皆で買いに行こうよ!』 

 結局、太一の号令の下、お金を出して買いにいくことになった。


 

 各々好みの品を買い求め、ギルドハウスに戻ってきた。

 僕が買ったのは敷物、ムートン風の絨毯を選んだきたのだ。

 床にも座れるしこれさえあれば雰囲気が良くなるよね。

 太一が買ったのはテーブル、予想外に趣味が良く大理石のような白い円卓だった。

 僕の買ったカーペットの上に置かれた円卓は趣があって、一気にギルドハウスの見栄えが上昇する。 

 続いてシャムは壁画を買ってきた。

 猫が顔を洗っている写真みたいな壁画でとても和む。

 夢王が何故かコタツを買い、皆を笑わせたのは愛嬌であった。

 しかし、此処で問題が浮かび上がる……椅子が無いのだ。

 太一のテーブルは椅子に座るのが前提の高さであるので、このままだとオブジェにしかならない。

 椅子とテーブルは誰かが買うだろうと思って、誰も手を出さなかったのである。

 と、まだ諦めてはいけなかった。一人帰ってきてないではないか。

 僕達は残された巨人族の親父に期待することにした。

 彼は頭を使わなそうだし、定番の品を買ってくるに違いないよ。

 ちなみに、はじめから打ち合わせして買ってくればよかったなんて考えては駄目だよね。

 こういうのはノリが大事なのだ!

 数分の後、愛染が戻ってくる。

『愛染:お待たせ! 真打は最後に登場だよな!』

『『『『そうですね……』』』』

 愛染のいつもの様子に、皆は冷たくあしらった。

『愛染:お前等ノリが悪いなぁ……』

『『『『そうですね……』』』』

『愛染:中国の昔の国だよな』

『『『『宋ですね……』』』』

『愛染:はいっ! チャンチャンチャン!』

 ……微妙な間が生じる。

『剣聖にゃん姫:拍手が無いと判らないよぉ!』

『シャム:タ○さんのつもりなの?』

『夢王:優しく生暖かく見守ってあげましょう』

 愛染のネタをすぐに判った三人が各々反応する。

 僕は……

『トール:それで、何買ってきたの?』

 無かったことにした。

 敢えて触れない優しさ、僕って本当に出来た人間だよね。

『愛染:トールさんだけだよ、俺を理解してくれてるのは!』

 愛染が泣くのエモートをしている。

『トール:ははは、そんなことないよ』

 実際、軽く流しただけだしね。

『剣聖にゃん姫:トールさんは天然だから、私達とは違うんだよ!』

『『『それもそうか!』』』

 太一の発言に、エモート、頷く付きで全員に肯定された。

 酷い……というより、

『トール:なんで愛染さんまで頷いてるの!』    

『愛染:なんとなくぅ?』

 どうやら、味方は居ないようだ。

 ふん、いいもん! 

『剣聖にゃん姫:トールさんはいいから、愛染さん何買ってきたの?』

『愛染:そうだった! 今から出すから待ってくれ!』

 全員が愛染の動作に注目する。放置された僕も当然横目で見ていた。

 そして――

 ぽんと音がした後、6つの座布団が現れた

『『『『おお!』』』』

 全員から歓声があがった。

『夢王:これってコタツフラグですか?』 

 端に片したコタツに、全員のキャラの視線が向く。

 確かに、コタツに座布団があれば問題なさそうだ。

 ならば! さっきの仕返しをするべきだろう。

『トール:にゃん姫、そのテーブル邪魔だから片して!』 

『剣聖にゃん姫:な、なんで! 私のテーブルがネタに負けたって言うの!』

『トール:ふっ、にゃん姫のセンスは天然だから、僕達と違うんだよ!』

 決まった! 完璧だね。

『剣聖にゃん姫:トールさんにだけは言われたくないよぉ!』

『『『それもそうだ(ね)』』』

 再び頷き付きのエモートで納得された。

 全員僕の扱いがおかしいと思うんだ。


    

 暫く狩りやトークで盛り上がり深夜帯になった頃、僕達のギルドパーティも解散することになった。

 太一が女子高生と名乗っているだけあって、学生には辛い時間になるからだ。

 ちなみに僕は未だに名乗っていない。

 少し秘密が在る方が魅力度がアップするよね。

 そして、終わりを告げる時、

『シャム:ねぇみんな、折角ギルドハウスも手にいれたし、長い時間一緒に遊んでるんだからこれを機会にオフ会でもしてみない?』

 シャムが爆弾発言を投下した。

『剣聖にゃん姫:オフ会は恥かしいよぉ』

 太一がすぐに反論する。 

 もし、参加したらネカマがバレルから必死になるのは良く判るよ。

『シャム:あら、私はにゃん姫ちゃんに会ってみたいわ。同じ女性同士だしもっと仲良くなりたいもの』

 シャムはOLと自分で口外しているぐらいだから、年上の女性なのだろう。

 これで太一と一緒でネカマだったら見事に騙されていたことになるが……

『剣聖にゃん姫:はぅううう』

 太一が困っている。ネカマだから会えませんとは言えないしね。

 心の暖かい僕は助け舟を出してあげることにした。

『トール:うーん、オフ会はいいとは思うんだけど、にゃん姫は女子高生・・・・だから、余り遠くまでは行けないじゃないかなぁ?』

 僕もだけどね! いや、僕こそが女子高生なのでは?

『夢王:それはありますね。皆さん何処ら辺に住んでるのですか? 私は豊名ですけど』

『シャム:桜塚よん』 

『愛染:俺は朝倉だな』     

『夢王:おお、皆さん結構近い場所に住んでるのですね。トールさんと、にゃん姫ちゃんはどうでしょう?』   全員、真面目に答えているし、嘘は良くないよね?

『トール:並木ですよ』   

『シャム:あっ素敵! トールさんが並木ってことはにゃん姫ちゃんもそうなのでしょ? 二人は昔っからの知り合いって話だものね。全員桐木辺りで会えそうじゃないの!』

 シャムさんが言うように、いつも一緒につるんでいるのを疑問視されたことがあり、僕と太一がリアル友達で、幼馴染というのは知れていた。

『剣聖にゃん姫:そ、そうですね。えへ』

 太一が可愛いエモートを出している。 

 芸が細かいよね!

『愛染:桐木なら問題ないな、学生だから俺はいつでもいいよ』 

『夢王:僕も問題ないですね』 

『シャム:二人は問題ないと――私は土、日が良いわね。ギルドマスターのにゃん姫ちゃんは絶対参加で、夜遅くなる訳にもいかないし、休日のお昼でどうかしら?』 

『剣聖にゃん姫:え、え? 私の意思は無いのぉ?』  

『『『無いよ!』』』

 ぴったり合わさった台詞が連帯感バッチリだ。

 きっと顔が見れたら皆イイ笑顔を浮べていることだろう。

 それにしても……此処で僕に話が振られないのはとても素敵だと思う。

 皆には会ってみたいけど、僕も太一と同じで折角作ったダンディなイメージを失くしたくないからね。

『剣聖にゃん姫:トールさんも行くよね!!』

 そう僕が油断していると、太一が余計な一言を放ってくれた。

『トール:僕も行きたいけど、この夏は忙しいから無理かなぁ……』

 だが僕はめげないよ! 嘘も方便っていうしね。

『シャム:あら? トールさん無理なの? にゃん姫ちゃんを桐木まで連れてきて欲しかったのに』  

『愛染:えええ、トールさんと会えないのか、それはツマラナイなぁ』

『夢王:……天然なトールさんの素顔に興味があったのですが』

 そこまで言われるとちょっと罪悪感が……  

『シャム:あはは、トールさんってキャラはあれだけど、可愛らしい人だと思うわよね』 

『愛染:俺もそんな気がするなぁ』

『夢王:私もそう思います』

 って! いつの間にか好き勝手言われてるよ。

 僕の外見なんてどうでもいいのに!

『トール:そんなことないよ! 僕ぐらい紳士な人もいないからね!』

『『『はいはい』』』

 なんですかこの反応は!

『剣聖にゃん姫:トールさんが行かないなら私も無理かも……』

 すると之幸いと太一も便乗しようとした。

 こら、太一! 責任をなすりつけるな!

 大人しく謎の関西弁使いと認識されるのだ!

『トール:別に僕は気にすることないから、にゃん姫は楽しんできなよ』

『剣聖にゃん姫:でもでも、幼馴染を置いていくのは気が引けるよぉ!』  

『シャム:うーん、それなら皆、トールさんが暇な日に合わせましょうか? 一日ぐらいは何とかなるでしょ?』

『トール:え?』

『『『『異議なし!』』』』   

 なんでこうなるの! 僕のダンディなイメージが無くなるよ。

 それに、こんな暑いんだもの、クーラーの効いた部屋でゆっくりまったりしてたいよ!


 

 その後、全員による懐柔工作により僕のオフ会参加が決まるのにそう時間は掛からなかった。


本当は </G 名前:文章>とかの方がよりらしく見えるのでしょうが、今回も排除してあります。

会話文に名前が入って見難いかもしれませんが雰囲気を出す為ですのでご容赦下さい。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ