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すのーでいず   作者: まる太
第三章
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副賞を行使しよう 3

 お昼ご飯は太一たってのお願いにより、イタリア料理の食べ放題のお店になった。

 定額料金で、ピザとパスタ、サラダ等を好きなだけ食べれるお得なお店だ。


 

 会計を済ませてトレーを貰い、混雑が予想されることから席を確保しようとした時だった。

「おーい! 雪、こっちこっち!」

 僕を呼ぶ声が聞こえた。1発で誰だか判る聞き馴染んだ声だ。

 聞かなかったことにすべきか……

「太一、どういうことなのかな?」ジトーと目を細め、横にいる明らかに気まずい様子の太一を責め立てる。

「いやな、アレやねん。朝、お昼は此処にするよう氷兄ちゃんに言われたんや。後々のこと考えたら、お昼ぐらいは一緒してもええんちゃうか……なんて思うわけ……やわ」 

 つまり、あの2人だけの時に、氷兄から脅迫された訳ね。

 ……偶には反抗するぐらいの気概を見せて欲しいよ。

「おーい! 雪、雪ちゃーん。こっちのテーブルだよー」

「ああ、もう煩いな! 恥かしいから叫ばないでよ!」  

 僕が怒鳴り返すと店内の注目が僕達に集まってしまった。

 ……なんでこうなるの!

 ムッとして、少し赤くなった顔を氷兄に向ける。

 氷兄はそんなの全く気にせず、僕を見て喜んでいるのだから始末に負えない。

 どんな思考回路なんだろうね……

 そのテーブルには、当初から4人で座る予定だったのだろう、空いてる席が2つあった。

 氷兄の正面の椅子に遥が腰掛けている。

 僕達が近付くと、遥の肩から力が抜けていくのが判った。まだ緊張してたんだね。

 僕は軽く氷兄を睨んだ。

「まったく、どうしてこういう馬鹿なことだけ頭が回るかなぁ……」

「馬鹿なことだけは酷いだろ。お兄ちゃん♪ は狼から妹を守る責務があるのだ」

 氷兄の方がよっぽど危険だと思うけどね。

 はぁ……疲れてくるよ。

「……太一、氷兄の隣ね」

「「え!」」

 氷兄は判るけど、なんで太一まで意外そうな顔してるんだろ?

「当然でしょ。遥の横に太一が座るの?」

「いや、そう言われたらそうなんやが、氷兄ちゃんの隣は恐れ多いやん」

「うーん、それならこうしようか。氷兄だけ別の席にしちゃえばいいんじゃない」

「待て、なんでそうなる!」氷兄が慌てて文句言う。

「だって、太一は氷兄の横は嫌みたいだし、それに、今日ボクは太一と遊びに来てるんだもん。ご飯を食べる為には氷兄が邪魔だよね。氷兄が居なくなれば全て丸く収まるよ」

「……雪、氷室さんが可哀想だって、皆で一緒に食べよーよ。アタシの隣は別に矢神君でも構わないしさ」

 遥がいじらしい。これがギャップ萌えってやつか!

「井波さんもそう言ってるじゃないか。お兄ちゃん♪ だけノケ者は無いだろ?」

「うーん。それなら太一が隣でもいい? それ以外なら何処か遠く異次元にでも消えてもらうしかないけど」

「判った……それでいい。雪と食べれないよりマシだしな」

 氷兄はとりあえず納得したようだ。不満そうな顔してるけどね。

「太一も文句ないよね?」

「……オレは別にええで」

 こっちは、氷兄さえ我慢するなら問題無いみたいだね。

 ご飯を食べるだけでこんなに疲弊するとは思わなかったよ。

 席が決まったとなると、座る前に食べ物を確保することにした。

 小さなショルダーバックと、カリ○様のぬいぐるみを遥の横の椅子に置き、太一と2人で料理を取りに出掛けた。



「太一貸し10ね!」

 マルゲリータとロマーナのピザを、1ピースずつ小皿に取りながら太一を半眼で見る。

「高! どっちかというとオレは巻き添えやないか」

 太一はナポリタンとミートソースのパスタを1枚ずつ小皿に盛っていた。

「氷兄が居るなら来なかったもん。今日は、遥を応援してあげようと思ってたんだからね。その邪魔のツケは大きいんだよ」

「そうは言うけどな。井波さんいまだに緊張してるみたいやん。雪が来てホッとした顔してたやんか」

 へぇーさっきの見てたんだ。やるな太一!

「普段の遥とは全然違うよね。氷兄なんてそんな大層な者じゃないのに、どうして皆ああなるんだろ。太一もだけどね」

「オレを一緒にするのはお門違いやって。オレの場合は幼い頃からの付き合いやからな、弱味を全部握られてるんや。逆らったら後が恐いねん!」

「ふーん、その台詞良く聞くよね。太一の弱味って何なの? 僕も大抵知ってると思うんだけど」

「アホか! 言えないから弱味言うねん!」

 おお、その通りかもしれない。

「ちぇ、どうせなら教えてくれればいいのに、面白そうなんだからさ」

「それが本音か! 酷いわほんま」

「あはは冗談だよ。てか、まだパスタ食べるの?」

 太一は、更にカルボナーラとぺペロンチーノを別の小皿に盛っている。

「ちゃうちゃう、これは雪の分ねん。この2つ好きやろ?」

「あ、ありがと。太一はピザ何か取る?」

 太一はこれだけ気を使えるのに、何処かずれてるんだよね……

「そやな、そのツナとコーンの奴2ピース。雪と同じのを1ピースずつやな」

「了解」太一に言われたピザを小皿2枚に載せていく。

 そして、サラダと烏龍茶を取ると一緒に席へ戻っていった。


 

「ただいま」テーブルの上にトレイを置いて腰掛ける。

 僕の前には太一が震えながら座った。氷兄が軽く威圧してるせいだけどね。

 その氷兄達のトレイには僕達同様の小皿があり、まだ殆ど手を付けられた様子は無かった。

「お帰り、アイスは良いのか?」氷兄が僕のトレイを見て尋ねてきた。太一に対する時と違いニコニコしている。

「うん、さっき抹茶アイス食べたしね。まだ、いいかな」

「そっか、まぁ食べたくなったら言うといい。お兄ちゃん♪ がとって来てあげるぞ。井波さんも何かあったら言ってくれな」

「あっ、はい、有難う御座います」

 遥が恐縮したようにお礼をしている。気を使いすぎだよね。

 ――暫く持ってきた料理を減らし、お替り等を食べて殆どの小皿が空になった頃、

「なぁ、その大事そうにしてるぬいぐるみどうしたんだ?」

「うん? これのこと?」

 氷兄が僕の膝元にあるカリ○様に疑問の目を向けてきたので、カリン様をテーブルの上に置いて見せてあげた。

 この佇まいが愛らしく、思わず笑みが零れ出ちゃうよ!

「そう、それだ。買ったのか?」

「ううん違うよ。UFOキャッチャーで太一が入手してくれたんだ――いいでしょ!」

「へぇ……太一がな?」

 あれ? 氷兄、不機嫌そうだ。

「そそ、結構簡単に取ってくれたんだよね。太一と一緒じゃなかったら無理だったかもしれないよ」

「そうか。よ、か、っ、た、な……」

 うわ、更に悪化した。変な殺気を出してるんだけど?

「ちょ、雪その辺でええやろ!」太一が急に割り込んできた。少し怯えてるのは気のせい? 

「別に謙遜しなくてもいいのに、でも太一にあんな秘技があったとは知らなかったよ」

「秘技は大事な場面で出すもんや。だから効果があるねん――じゃなくてや、ほら、井波さんは何も貰ってないかもしれないやろ? 自慢するのはよくないってことや」

「あっ、そっか」僕が頷くと、何故か太一が助かったみたいな表情をしていた。

 どうしたのかな? でも、太一の意見には一理あると思う。

 遥はその手のモノを持っている様子が無さそうだしね。

 ――となると、

「氷兄は遥に何かプレゼントしたの? まさかしてないなんてこと無いよね?」

「え、ええと、それはな」氷兄が目を逸らした。

 先程の殺気なんてあっという間に霧散してしまったよ。

「雪、別にそんなの要らないって!」遥が僕のブラウスを引っ張った。

「遥は優しいね――氷兄、どうするのかな?」ジトーと氷兄を見る。

「ええと……遥ちゃんどんなもの欲しいのかな?」

 少し氷兄の顔が引き攣っている。

「ほ、本当に何も要らないですから……気にしないで下さい」

「…………」

 僕は困ってる氷兄に見えるように、顎で何か言えと催促した。  

「それなら、ゆ、雪と一緒でぬいぐるみとかは、どうだろう?」

「……いえ、本当に、ぬいぐるみとか高いですし」

 うーん、遠慮なんて要らないのにね。氷兄からは『貰えるなら貰う』が鉄則なんだよ。

 どうせ後で「交換条件だ!」とか言い出すから損するだけだもん。

「遥、折角なんだから貰っときなよ。氷兄が女の子にプレゼントするのなんて、珍しいから貴重だよ?」

「え、本当?」

 その僕の一言は効いたらしく、遥の心を揺さぶったみたいだ。

「うんうん、ボクの記憶上無いね」    

「そやな、確かに氷室兄ちゃんって、雪には黙ってても物買ってあげるんやけど、他の女の子とかにプレゼントとか無いんちゃうかな?」

 僕の部分が余計なんだよ! 太一の足を踏ん付ける。

「ぎゃ! 何するねん!」

「何だろね?」

 更に踏む力を強くして、黙るように目線に力を入れた。

「……悪い、なんでもないねん――気にせんでええで」

 太一が誤魔化したので、足をどかしてあげた。

 少し非難するような目を僕に向けている。どうみても太一が悪い!

 僕の心配を他所に、遥が少し目を輝かせた。

「なら、雪以外はじめてになるのかな?」

「うーん。そうなの氷兄?」

「当然だ。俺が雪以外に上げる訳が無いだろうが!」

 ……胸を張って言う台詞じゃないよね……頭が痛くなる。

「よ、良かったね。遥……」

「うん、凄い嬉しいかも!」

 遥が気にしてないからいいけど、ある意味変態だと宣言してる気がする。

 でも今更か、うちの学校で氷兄が僕を猫可愛がってるのは有名になってしまったしね。

 ……まっ、いいや。買ってくれるみたいだし、このまま僕離れするきっかけになればいいしね。

 そろそろ頃合かな。

「それじゃ太一、ボク達は遊びに戻ろうか?」

「そやな。もうお腹いっぱいやで」

 太一がお腹をさすっている。

 食べすぎなんだよ……太一はなんだかんだで、初めに持ってきた分と同じ量をもう1セットお腹に入れていたのだ。

「な! まだ早いだろ!」氷兄は驚いた顔をして、すぐに制止する声を出した。

 うん、聞こえなーい。

 気にしてると際限なく引き止めようとして、いつまえでたっても出れないからね。

「太一、ちゃんと動けるの?」

「ああ、問題ないねん。ほな行こか」

 太一の合図で立ち上がろうとした時だった。

「雪、お願いだ! 午後はアタシ達と一緒に回ってくれないかな?」

「「へ?」」

 僕と太一は思わず間の抜けた顔をしてしまった。

こんな遙なんて遙じゃなーい、という遙ファンの人には申し訳ない展開になってます。地味に影が薄いで、少しは今回の話で思い出してやって下さい。

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