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すのーでいず   作者: まる太
第三章
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副賞を行使しよう 1

「雪、今大丈夫かぁ?」

 体育祭から5日程経っていた。

 翌日は休日なので夜ご飯を食べ終えた僕は、FSCCをやり込為にPCを起動させた。

 準備万端に画面を眺めていると、太一から電話が掛かってきたのだ。

「うーん。大丈夫といえば大丈夫な気もするし、忙しいと言えば忙しいんだよね」

「どっちやねん。まぁ問題ないってことやな?」

「違うよ! 忙しいの!」

「はいはい、冗談は置いといてやな、明日のデートの打ち合わせをしとこう思ってな」

「まだ言ってたんだ……それって、MVPの副賞だよね? 他の女の子でも誘えばいいじゃない。何なら西条さんとかどう? 滅多に味わえない体験を得れそうだよ?」

「……その選択だけはあり得へん! 西条先輩なら江藤さんとかの方が120万倍マシやんか!」

「うわ、酷い言い方。でも楓ちゃんでいいなら問題ないね。いってらっしゃ~い」

「だ、か、ら、オレは雪がええねん! これは決定事項やからな。オレと遊び行くのがそんなに嫌なんか?」

「別に嫌じゃないんだけどね……ちょっとやりたい事があるんだよ――」

「へぇ。そのやりたいことってなんや?」

 FSCCがやりたいからとは言い辛い。

「ええと……あ、そうだ! 僕もやりたいことが出来るし、太一ともデートが出来る。一石二鳥な手があったよ」

「……なんや?」太一の口調からどうせ下らないことなんだろ? みたいなものを感じ取れる。

 実際そうなんだけど、こればっかりは譲れない。

「明日のデートの場所をウェルディールにするってどう? 何これ完璧じゃない」

「……FSCCの世界やろが! 全然デートになってへんがな!」

「そうは言うけどさぁ、折角オープンベータが始まったのだからスタートダッシュしたいんだよね」

「はぁ……どこのネトゲ廃人やねん。学校から特別にデート費用3000円出てるんやしさ、外に遊びに行こうや」

「おお、それは初耳だよ。だったら並木駅前商店街に行くのがいいかもね。2000円の商品券もあるし、合わせれば5000円のモノが買えるよ」

「ちょい待て、それおかしいやろが。3500円やろ?」

「そう? 太一の気のせいじゃないかなぁ?」

「全然ちゃうがな。でも、並木駅前商店街は賛成やな。1人3500円としたらリッチなもんや」

「そだよねぇ5000円なら好きなモノ買えるよね!」

「……3500円な。ということで明日の10時に並木駅のロータリーで待ち合わせや。遅れたら○に代わってお仕置きやぞ」

「太一が美少女ソルジャーの格好で来るなら、それでもいいよ」

「アホか、どうせなら雪が着ればええんや。女子高生やしぴったりや」

 しまった薮蛇だったかも……

「僕みたいな人間には無理だね。太一ならお笑いだから着れると思うよ」

「だれがお笑いやねん。てかア○スの格好も評判良かったやないか、絶対似合うと思うねん」

 くぅ、この話題は不味い。誰だよこんな話にしたの。

 僕か、僕だった気がする。

「もぉ、判ったよ。行けばいいんだろ。スタートダッシュ遅れる分は、後で太一がなんとかしてよね」

「あいあい、ルミナハンマーでええやろ?」

「おおおお、どしたのそれ?」

「さっきヘルプでPT入ったらボスがポロッと落としたんや。雪が欲しそうやから倉庫に入れてあるわ」

「うわぁー。そのユニークアイテム狙ってたんだよねぇ。太一えらい!」

「そやそや、もっと崇めるがええねん」

「ははぁ、太一様ありがとうごぜーますだぁ」

「どこの村人その1やねん。まっ、詳しいことはオレもそろそろログインするから、そっちで話そうや」

「うん判った。早くインしてね!」

「了解や」

 ふふふ、ルミナハンマーかぁ。LV20のユニーク武器でLV30のレアより強いんだよねぇ。今LV22だから当分使えそう。

 ルミナハンマーの為ならお出掛けの一つや二つ安いものだよね!


 

 翌朝、玄関で靴を履いていると氷兄と顔を合わせた。

「雪、その格好どうしたんだ?」

「うん? どこか変かな?」


  

 本日の服装は、白のブラウスに紺のキュロットスカート、胸元に黒のリボンタイとベージュの帽子を被っている。  


 

「変なことあるか! 可愛すぎるだろ。何処に行くんだ?」

「ああ、問題無いならいいよ。今日は太一と遊びに行くんだよね」

「た、い、ち、ね……」氷兄が黒いものを出し始めた。

「ほら、MVPの副賞あるでしょ、あれの消化かな。氷兄も出掛けるんでしょ?」

 氷兄はどう見てもお出掛け用という感じのシャツとチノパンを履いていた。

「お、俺か? 俺はそう、あれだ。学校行事の延長かな」氷兄は妙に慌てている。

 その所為で黒いモノがあっさり霧散したよ。

「そっか頑張ってね。それじゃ僕は行くよ、間に合わなくなっちゃうから」

「待て待て、どうせなら途中まで一緒に行こうぜ」

「氷兄は学校行くんでしょ? 僕は駅前に用があるから反対じゃない」

「いや、俺も駅前に用があるんだ……」

「ああ、な~んだ。遥とデートね。遥は良い娘だから大事にしてあげてよ」

 別に隠すこともないと思うけどね。

「そうなんだが、これはあれだぞ学校行事だからな。俺は雪が好きなんだからな!」

「はいはい、朝から無駄に元気だね。このまま遥と付き合うようになることを祈るよ」

 その後、あーだこーだ言いながら自転車で駅前まで一緒に行くことになった。

 どうせ体力的に追いつかれるのが判ってるし、逃げるなんて無駄なことはしないよ。



 駅の公園側にある自転車場に自転車を置くと9時45分だった。約束の15分前、少し早足で駅のロータリーを目指す。

「氷兄、いつまでついてくるの?」

「俺の向かってる場所と同じなだけだぞ」

「ふーん。氷兄の目的地ってどこ?」

「駅のロータリーだな」

「僕達と同じなんだ。遥とも会えそうだね、泣かしたら許さないから!」

「雪の友達だから大事にするけど……本当は雪とデートがしたい! 太一めー覚えてろ!」

「氷兄煩い。目障りだから離れて歩いてよ」

「それは駄目だ。俺が離れたら雪はすぐナンパされるからな。さっきから雪を見てる視線に気付いてるか? 凄い数だぞ」

「またかぁ。最近この手の視線が多すぎて気にしないことにしてるんだよね。例えるならイージスの盾を装備してる感じかな」

「例えが変な気がするけど、雪が言うから納得してやるぞ。俺って優しいなぁ」

「軽く馬鹿にしてる? ほらもう到着するしあっち行って」

「いや、た、い、ち、に一言釘を刺す必要があるから一緒に行く!」

 どうやら、離れてくれる気は無いらしい。この際全部太一に任せることにした。


 

 現地に着くと、太一と遥が談笑している最中だった。

 僕に気付いて太一が手を上げてくれる。隣の氷兄を見て顔が強張ってるけどね。

 遥は普段と違い、清楚なワンピースを着て緊張した顔をしてるのがどこか可愛いかもしれない。

「太一おまたせー、まだ5分前だし大丈夫だよね」

「おう、よく守ったな偉いぞ。雪だけに雪が降るかもな!」

「………………」6月なのに冷たい空気が流れた。

 太一は放置しよう。

「遥も氷兄とデートなんだね。好きなもの奢らせちゃっていいよ。そのまま恋人になっちゃえば尚素敵かもね」

「雪、それは無理……」

 遥が顔を赤くして照れている。おお、なんだこの殊勝な態度は。 

 氷兄から痛い視線を感じるけど、明るい僕の未来の為にここはプッシュしなくては。

「ほら遥。腕とか組んでいきなよ、記念になるよー」

「え、でも……」遥はチラッと氷兄の顔を見ている。

 氷兄は顔を引き攣らせていた。女の子が好意をしめしてるのに駄目駄目だよね。

「ボクの大事な友達なんだから、氷兄もちゃんとリードしてあげてよね」

「あ、ああ……」

 氷兄、余り乗り気じゃない感じだなぁ。

 まぁ、それでも年上だしなんとかしてくれるだろう。

「それじゃ太一、ボク達は行こうか?」

「ああ、そうやな」

 さっきの件を無かったことにした太一が、すぐに返事を返す。この場所に居たくないのが丸判りだ。

「ちょと待て!」氷兄が慌てて呼び止めた。

「何?」

「雪じゃない。太一に用がある!」

 太一は一瞬ビクッと体を震わした。

「ふーん。それってすぐ済むの?」

「ああ、すぐ終わるから安心しろ。太一こっちこい」

「はいな……」

 太一は渋々氷兄の側に向かった。

 めっちゃ嫌そうだね。 

 氷兄が太一にひそひそ話をしてる間に、僕は遥と話すことにした。

「今日の遥可愛い格好してるね。うんうん、デートって感じだよ」

「たはは、氷室様とだしな。でもさ、雪を見たら自信が無くなった」

「どうして? 僕なんてやる気ない格好だと思うけど?」

「いやいや、雪の私服姿は同性のアタシでも可愛いと思うからな」

「そう? 僕は遥の女の子っぽい格好初めて見るし、すごい新鮮だけどねぇ」

「似合ってるかな?」遥がワンピースの裾を引いて聞いてくる。

「うんとっても似合ってる。今日中に氷兄を攻略してね!」

「いや、そんな恐れ多いことなんて出来ないって、デートしてもらえるだけでも十分だから」

 それじゃ、僕が困るんだよ!

「まぁまぁ、2人はお似合いだし僕は応援するよ!」

「そうか? でも氷室様って雪が大好きだろ?」

「そうなんだよね……アレのブ――コホン、シスコン直らないものかな? なんとかしてよ!」

「無理……今日はデートだけで精一杯。多くを望めないって!」

 氷兄なんてそんな大したもんじゃないんだけどね。どうしてこう皆の評価が高いのか謎だよ。 

 そうこうしてると、氷兄達の話は終わったみたいだ。

 太一が少しげっそりしてるのは気のせいだろうか?

「それじゃ、氷兄、遥またね。太一行くよ!」

 太一の腕を引っ張って連れ出すことにした。

「そや……な」

 太一の目が泳いでるのは氷兄が恐いのかな?

 さっさとこの場所から離れた方が正解っぽい。急いだ方がいいよね。

「ああああ、何腕組んでんだ!」

 氷兄の喚き声が聞こえるけど無視! 聞こえない。聞こえない。


予定では2……3、いや2部にしたいなです。

最近自信ないです。

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