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すのーでいず   作者: まる太
第三章
44/84

体育祭です! 4

「パーン!」スターターピストルが鳴り、最後の種目、男女混合リレーが始まった。  

 トラックを男女交互に周回するルールは判り易く、観客の歓声や生徒の応援で白熱している。

 僕も応援席の最前列に陣取り、味方である赤組に声援を送っていた。

 現在赤組は4位、抜きつ抜かれつの好競いの最中だ。

 太一の説明だと赤組の戦略は後半追い込み型になっているらしい。

 計算通りと思うけど、見てる方はヤキモキさせられるものがあるね。

 そんな中、遥の番が来た。

 遥は、男子からのバトンを受け取り颯爽と走り抜けていく。

 女子の中では大柄な体、力強く走る様はちょっと羨ましい。

 速度をぐんぐん上げて簡単に2名を抜かし、もう少しで先頭を追い越す勢いだった。

「「「おお!」」」 

 その走りに、チームメイトからも歓声が上がった。

 近くにいる楓ちゃんもぴょんぴょん跳ね、りぼんを揺らして喜んでいる。

 そして、バトンを渡す時には体一つ抜き出て、1位に躍り出ていた。

 流石遥、伊達にお爺さんの古時計と呼ばれてないね!

 そのまま赤組は首位を独走していたが……此処でアクシデントが起きた。

 バトンを落としてしまい、一気に順位が最下位になってしまったのだ。

 4位までの距離もかなり離れている。

 これは終わったかな……絶望感が漂う中、太一の番が来た。

 太一はバトンを貰うと普段見れない全力疾走を開始する。

 赤組、特に1-Aのクラスメイトは呆気にとられていた。

 瞬く間に順位を上げ4位になってしまったのだから当然だろう。

 実際の距離からすると、5位から1位ぐらいの価値はあったに違いないのだ。

 でも僕は驚かない。才能という点だけで見れば、太一は氷兄と互角なのを僕は知っているのだから。

 丁度僕達の前を通り過ぎようとしてたので声援を送った。

「太一! 1位にならなかったら、シュークリーム10個ね!」

「アホか! なんつー応援や。まぁ、任せとき!」

 走ってる時に、よく喋れると関心する。

 だが、不敵な顔をしてたから大丈夫と信じる。

 僕の応援? が効いたのか判らないが、太一はその後も力を抜くことなく完走し、後1個順位を上げることに成功した。

 お陰で希望が繋がった。偉いぞ太一! 久々に役にたったよ! 

 その後は西条さん達が出て奮闘したが、3位を死守するので精一杯だった。

 此処まで来て負けるのは嫌だし、アンカーの氷兄に頑張って貰うことにする。

 しかし、白組のアンカーは陸上部の短距離エースらしい。

 正直氷兄の分が悪いだろう。

 それでも、アンカーは2周しないといけないから追い抜くチャンスは多い筈、あの変態パワーに期待したいよ。

 ――氷兄より先に白組、青組の選手がスタートしていく、それから遅れること数秒、赤組の選手がバトンを持って迫ってきた。

 氷兄は助走をしながらそのバトンを後ろ手に受け取る。

 そして、すぐにトップスピードに達して走り出した。

「氷室さまぁ!」

「がんばって!」

 すぐに黄色い声が飛び交かった。

 確かに真面目な時の氷兄はカッコイイと思う。

 今も長身を生かした大きな走法は、華があると認めるしかない。

 氷兄は半周もしない間に、2位に順位を上げた。1位との距離が縮まって無いところを見ると、白組のアンカーは前評判通りなのだろう。

 仕方ない、本来ならこんな真似は嫌だけど、背に腹は変えられないから応援する。

「お、お兄ちゃん♪ 1位になって!」

 少しどもったのは愛嬌だよね!

「雪、任せとけ!」氷兄は凄いご満悦な顔になった。

 めっちゃ恥かしい。少し頬が赤くなったけど、ブンブンと頭を振って忘れることにする。

 勝たないといけないのだからこれは必要なことと割り切ることにしたのだ。

 それにしても、太一や氷兄って走ってても普通に返答するのが凄いね。

 氷兄は、先程までが嘘みたいに速度を上げていった。

 実は手を抜いてたのだろうか? 声援一つで此処まで変るなんてあり得ない……と思うけど、変態だしなぁ、言い切れないのが微妙なところだね。

 1周が終わり2周目に突入する頃には、白組と氷兄の差は殆ど無くなっていた。

 しかし、そこから前に行くのはチート氷兄状態でもキツイみたいだ。

 素直に声援を送るのは良いけど、どんなのが良いんだろう?

 逆転の発想で白組の人にコケてとは言えないよね。

 ちょっとスポーツマンシップに抵触するしなぁ。

 よし決めた。

「お兄ちゃん♪ 1位になれたら、ご褒美にお弁当1回作ってあげるよ!」

「マジ!?」氷兄の目が血走ってる。

 前からリクエストはされてたけど、そこまで食べたかったのか……

「氷室、コケろ! 俺が許す!」

「「「「コケろ! コケろ! コケろ!」」」」

 一斉にコケろコールが始まった。味方の赤組からも出てるのはなんで?

 僕ですら躊躇したのにね。

「ふふふ、愚民共め、雪の手作り弁当は俺のモノだ!」

 そんな、会話してる余裕があるなら、速度を――って!

 周りに気をとられて油断してたら1位になってるじゃん。 

 少し早まったか……いやいや、優勝しないと駄目だし、お弁当とは言ったけど、中身はバナナでも詰めとけばいいじゃないか。

 僕は嘘付いてない! 完璧だよね!

 そう考えていると、

「パーンパーン!」音が鳴り、氷兄が一位でテープを切っていた。

 優勝だ! 僕の応援で勝ったようなものだし、MVPは僕のものだよね!


 

 そして、長かった体育祭が無事に終了した。



 MVPに輝いたのは――


 

 太一と遥の2名だった。


 

 僕がMVPじゃないのは、あの球入れが卑怯過ぎた為にマイナス加点されたそうだ。

 僕は悪くないのに、発案者の太一が選ばれるってズルイよね。

 そもそも、”男女に”とは聞いてたけど、それが1名ずつという意味だとは知らなかったよ。

 太一めー、僕が勘違いしてるのを判ってて黙ってたなぁ! 

   

やっと体育祭が終わりました。

2大イベントですし、これぐらい長くてもありに違いない。

と言い訳してみます。


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