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すのーでいず   作者: まる太
第三章
43/84

体育祭です! 3

 まったく……アリ○の服のままご飯を食べてた自分に文句が言いたいよ!

 あの後すぐ父さんが帰ってきてしまったのだ。

 父さんの目の輝く様、今思い出しても溜息しか出てこない。

 変な声出しつつ写真を撮りまくるから、妙に目立ってしまったのだ。

 挙句の果てに周りの人からも撮られる始末。可愛いとか散々言われたよ。うううう。

 最後には此処ってコスプレ会場? みたいな状況になっていた。 

 こうして――僕の悪名が一つ増えるんだろうね。 

 はぁ……溜息が出るけど、それは置いとこう。

 別に現実逃避じゃないからね!

 問題は1位の白組と30点離れていることなのだ。

 更に午後の部の競技は棒倒し、騎馬戦、玉入れ、男女混合リレーの4つである。

 その中の玉入れしか僕は参加出来ないから、目立つチャンスはとても少ない。

 つまり、球入れで、僕のMVPを印象付けるしかないのだ!

 その前に逆転が最優先事項だけどね。


 

 ――点差は縮まることなく、玉入れの種目が迫ってきた。

 僕も体操服に着替え、赤組の鉢巻をして合図を待っている。

 ……数分の後、明るい音楽が会場に流れた。

「次は1年生による玉入れです。参加選手は入場して下さい」

 そのアナウンスに従い1年生全員がグラウンドに散っていく。

 そして、開始場所にチームごと固まり準備に取り掛かった。



 僕の役目は篭を担いで、敵チームから球を入れられなくするものだ。

 いくら味方が敵チームの篭に玉を入れても、僕が大量に入れられたら意味が無い為、結構重要なポジションなのである。 

 この配置は太一の考えだ。

 僕が篭担いでたら、ぶつけてくる勇者は居ないと自信たっぷり気だった。 

 体育祭だからそこまで甘くないと思うけど、これで勝てるなら楽だし言う事を聞いたよ。

 本当太一は僕を利用しまくるよね。優しさとか無いんだろうか?



「パーン!」スターターピストルの音が流れ、競技が開始された。

 その瞬間、

「赤組、その作戦は詐欺だろ!」

「汚ねーぞ!」

「悪魔の知恵かよ!」

「卑怯過ぎだろうが!」

「考えた奴出して!」

「雪ちゃんに嫌われたらどうするのよ!」

「篭持ちを変更しろ!」

 他の組から怒号が飛んできた。

 本当に効果があるみたい。

 その間、容赦の無い赤組は他のチームの篭に玉を入れていく。

 一方の僕は――トコトコ歩いていた。

 他チームの篭持ちは必死に逃げ回っているのに……

 これでいいんだろうかと少し罪悪感が沸いてくるぐらいだよ。

 当初は僕の篭に入れようとする人も居たのだ。

 だけど、素早く入れられないように投げる人の正面を向き、小首を傾げて相手の目を見たら、

「くそぉ! 俺には出来ねーーーー!」とか叫んで他の篭に向かっていくんだもん。

 それは、男子だけでは無く女子にも同様だった。

「ううう、雪ちゃんにぶつけるなんて私には無理よ!」

 みたいな感じで去っていってしまう。

 暇だから、球を拾って投げるのもありなんじゃと思うぐらいだよ。

 グラウンドに絵でも描いているのもアリかもしれない。

 なんて、新しい遊びを考えていると、

「パーン!」終了の音が流れた。

 集計の結果――赤組78個、他の組の平均が50個ぐらい。

 5個しかない篭のうち4個をフル活用出来る赤組、3個しか使えない他の組の差が顕著に出たとも言える。

 敢えて言おう! これって僕目立ってたの? ううう。 


 

 ――点差が10点差に縮まり、後すのは男女混合リレーのみとなった。

 応援するだけになった僕の前には、何故か赤組のリレー選手が列を成していた。

 皆、期待するような顔をして言葉を待っている。

 マスコットなんてするものじゃ無いとしみじみ思うね。

「頑張って下さいね」

「雪ちゃんに次の勝利を捧げるぜ!」

「あはは、期待してます」

 そう、白い歯を見せて男子の先輩が去って行った。

 ……次の人

「ガンバですよ!」

「俺の活躍を見ててね雪ちゃん!」

「はい、応援してますね」

 鼻息を荒くして男子の先輩が列から抜けていく。

 はぅ、疲れるよー。     

 代わりの人が前に出る。変態だった。

 これは放置でいいかな。

「はい、忙しいからさっさと行って!」

「ちょ、折角並んだのになんでだよ。少しはお兄ちゃん♪ にも優しくしてくれよ」

「……煩いなぁ。じゃー何て言って欲しいの?」

「そうだな。お兄ちゃん♪ 頑張って、愛してるの! こんな感じ?」

 はぁ……寝言は寝てから言って欲しいね。

「カマ○ウマ頑張れー、さっさと消えて! こんな感じだよね?」ニッコリ笑顔を向けてあげた。僕って優しいね。

「ちょっ! 酷す――」

 氷兄はその台詞の途中で横に蹴られて列からどかされた。

 代わりに僕の前に居るのは西条さんだった。

「何しやがる!」氷兄は西条さんに噛み付く。

「長すぎ。皆平等に一言だけ貰ってるのだから、黒いのはサッサとどく。ちゃんと応援して貰ったでしょ!」

「あんなの違う! 雪、まだ終わってないよな?」

 氷兄が僕に確認取ってきたので、シッシッと手で追い払う。

「ひ、ひでー! だがそんな冷たい雪も好きだからな!」訳のわからないこと抜かして去っていった。結局言葉はなんでも良いみたいだね。

「さて、雪ちゃん。馬鹿も消えたし、私にも一言頂戴な。多賀子お姉ちゃん♪ て混ぜてね」

 ……まぁ、氷兄をどかしてくれたし、そ、それぐらいはいいかな。

「多賀子お姉ちゃん♪ 頑張って!」愛想笑いを浮べる。

 今日だけで、何回したんだろう。

「す……凄く心が震えたわ。お姉ちゃん♪ 頑張るから!」

「あぅ」

 西条さんに軽く抱きつかれて変な声を出してしまった。 

 すぐ離してくれたので、今の何? という感じだ。

 その後手を振りながら笑顔で歩いていったのだが、

「雪ちゃんとのデート、これがずっと続くのね!」とか黒いモノ出していたのは見なったことにしよう。これは、深く考えたら駄目な気がするよ。

 そのまま数人激励すると、次に来たのは太一だった。

「ああ、太一もリレーの選手だっけ? どんなズルしたの?」

「……雪の見る目がどんなのかよー判ったわ!」

「そうかなぁ。太一を知る者なら皆言うと思うんだけど」

「……これって応援してくれるんや無かったのか? 逆にやる気がどんどん減っていくんやが」

「ああ、そうだった。太一のせいで忘れるところだったよ」ポンと手を叩く。

「どんな理屈やねん!」       

「はいはい、それでどんな言葉がいいの?」

「パ……」

 冷たい目をすると、太一の口が止まった。

「ど、ん、な、言葉がいいのかな?」

「む……」

 氷点下の目をすると、再び太一の口が止まる。

 パンツ見せろ、胸触らせて以外言えないのかこの馬鹿は!

「用件は終わりみたいだね。さっさとどいて邪魔だよ」

「じょ、冗談やがな、ゆ、雪をリラックスさせる為に、やったんや!」

「フーン? ソウナンダ?」 

 それだけ慌ててたら1発で嘘なのが判るんだけどね。

「うわ、信じてへんし、そんなんだから身長が伸びへんのや」

「…………」シベリア級の目を向けてみた。バナナで釘も打てちゃうね。

「……冗談や、スマイル、スマイル」

 全然面白くない。というより喧嘩売られてる気がする。

「ああ、なんだ、そう、あれや。雪が笑ってくれたらオレも頑張れる気がするんやけどなぁ……」

「冷笑、失笑、嘲笑のどれがいいのかな?」

「鬼か! オレと雪との仲やないか、あんまりやがな」

「もう後つかえてるんだから、さっさとしてよ」

「じゃー。『頑張って』って言って微笑んでくれや」

「初めから素直にそう言えばいいのに……太一頑張ってね。応援してるよ」リクエスト通りに微笑んであげる。太一は妙に嬉しそうな表情になった。

「おう、任せとけ。MVPはオレに任せるんや!」ポンポンと頭を叩かれて列から離れていった。

 考えてみれば、太一がMVPを取るのは問題ないんだよね。

 僕が取れなかった時の保険に丁度いいかもしれない。頑張ってもらおうじゃないの。

 ――やっと応援が終わると思った時に遥まで来た。

「やほー雪元気してるかぁ?」

「もう疲れたよー。遥の裏切りのせいでこうなったんだからね!」

「まだ言ってるのか、悪かったって謝っただろ。それに、某シュミレーションRPGみたいに、雪が応援したら2回攻撃になりそうだし、そっちのほうが有利だろ」

「何それ。それならボクが勇者になって、会心連打で倒したいんだけど」

「あはは、無理だろ。雪ってさ鈍くて天然だからなぁ」   

「む……遥はボクをカラカイに来たの?」

「違う違う。ほら、縁起物みたいだから、アタシも一言貰おうかなぁって思ってさ」

「ふーん。別に良いけどね……頑張ってね! ボクのMVPの為に」

「なんじゃそら。まぁいいや、行って来る!」

 遥は小気味良い返事を残して、入場口に歩いて行った。

ええと、4部です!


玉入れが無ければ3部だったのですが、ほら主人公活躍させてあげたいじゃないじゃいですか!

ということで4部になりました。

本来省いても良かった話なんですけどね。


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