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すのーでいず   作者: まる太
第三章
42/84

体育祭です! 2

 体育祭当日がやってきた。

 本日の天気は、雨! 朝からシトシト振る雨に体育祭は翌日に順延となった。

 天は僕に味方してるに違いないね。 

 このイベント、良く考えると僕にメリットが少ないことに気付いたのだ。

 2000円の商品券は確かに欲しい。後少し足せば、MGのガン○ラが買えるのだから狙わないといけないだろう。お金は幾らあっても足りないのだ!

 しかし、MVPの副賞がどうしても気に入らない。氷兄なんて、数日前から訳の判らないトレーニングまでする気合の入用である。

 更に、マスコットの役目が心に暗雲をもたらしている。

 2年と3年の先輩と話し合った結果、とても恥かしい格好をさせられる羽目になってしまったのだ。ちなみに、3-Aのマスコットは西条さんでは無かった。

 なんでも、西条さんは女子からは推薦されたものの、男子から猛反対があった為になることは無かったらしい。その気持ちもある程度は理解出来る。

 あの性格だから、男子は応援されるというより逆に罵倒されそうだもんね。

 という訳で、このまま体育祭が無くなればいいと思うのが本音なのだ。


 

 そして翌日、曇り空。僕の祈りは通じなかったらしい……

 しかし、ある意味好都合かもしれない。

 日中ずっと校庭に居るのだから、涼しい方が有り難いってものだしね。

 こうなったら腹をくくるしかないよ! 



 ――体育祭開催の宣言が校長先生から出され、僕たち生徒は自分達のチーム席に散っていく。

 ここで、僕は別行動を取ることになる。

 マスコット用の衣装に着替えるからだ。凄い気が重いです、はい。

 時間が余りないので、嫌々だけど衣装に着替え、赤チームの席に向かう。

 目当ての場所には、頭にチームカラーである赤い鉢巻を巻いた、3クラス分の生徒が集まっていた。

 僕達赤組マスコット陣が到着したその瞬間、場の空気が固まってしまう。

 全員が僕達を見てただ唖然としているのだ。

 それもその筈で僕達の格好は、不思議の国のア○ス風、レースのふんだんに使われた空色のワンピースと白いエプロン姿なのだ。

 頭には黒いカチューシャの念の押しよう。僕の髪は白、妙に1人だけ映えているのは気のせいだろうか。

「ちょ、何それ!」

「うは……」

「可愛過ぎだろ!」

「てかさ、雪ちゃん反則じゃね?」

「そだよな。3人の中で1人飛び抜けてるものな」

「くぅ、毎回あの衣装で応援してもらえるのかぁ!」

「俺、A組になって良かったわ」

「やはり、雪は最高だな!」

「さすが雪や、お前は出来る娘やと思ってたわ」

「ちょっと男子達。私の雪ちゃんを変な目でみないでくれないかしら?」

「そうよ! いくら雪ちゃんが可愛いからって、手を出しちゃ駄目なんだからね!」

「雪ちゃんはあたし達女子のマスコットなのよ!」

「はぁ? 3人共赤組のマスコットだろ。なんで雪ちゃんだけ女子のなんだよ!」

「あんな可愛い娘、狼の群れに放り出せるわけないでしょ!」

「誰が狼じゃ!」

「あんたらよ!」

 静かだと思ったのも塚の間、大量の叫びが矢継ぎ早に起こった。

 まるで溜め込んでいた水が溢れ出たような感じだ。      

 というか、途中から僕に関してだけだった気がするのはなんでだろうね。

 この反応に、僕以外の先輩2人は概ね満足気な顔をしている。

 嫌がる僕の反対を押し切ってこの衣装にしたのだから好感触と捉えたのかもしれない。

 僕の中では又新たな黒歴史が生まれたと思っているんだけどね……


    

 その後の僕達は大忙しだった。

 自分の出場する演目の時には体操着に着替え、終わると又この格好に戻るの繰り返しだ。 尚且つ、何故か参加種目の前に赤組の人が来るもんだから、笑顔を見せて手を振って応援しないといけなくなり、休む暇が無かった。

 でもその甲斐があったようで、現在5チーム中2位を獲得していた。

 このままいけば優勝もあり得るし、僕のMVPの可能性に一歩近付いたとも言える。

 そして、やっと午前のプログラムが終了したことで、僕も一休みすることが出来るようになった。

 母さん達が観覧に来て、レジャーシートで場所を確保しているので、ご飯を食べに向かうことにした。

 もう面倒なのでワンピースの格好のままだ。今更恥かしいとかいう感情は消えたよ。


 

「ふぅ疲れたよー」

 僕は顔の辺りを手で扇ぎながらレジャーシートに座る。そこには母さんと冬耶が談笑している最中だった。変態が2人居ないなんて素晴らしいね。

 母さんと冬耶は僕の姿を眺めている。

「近くで見ると雪ちゃんの格好更に可愛いわね、家でもその格好にする?」

「雪姉ちゃんって何を着ても似合うよね」

 母さんの意見に冬耶が頷いている。

「そうなったら、僕は家出するよ……」  

「そ、そんな。雪ちゃんはママを見捨てるって言うの!」

 大体、普段着てる格好ですら恥かしい格好なんだから、これ以上何を望むんだよ。

「それもありかもね。冬耶は僕と一緒に行こうな」

「あ、うん。雪姉ちゃんが一緒なら楽しそう」

 冬耶は良い子だ。このまま悪の道に染まらないで欲しい。

「そういう事言うのね。雪ちゃんの気持ちはよ~~く判ったわ」

 な、何? 母さんの目が半眼になっている。 

「もし雪ちゃんが家出したら、猫耳の写真で『うちの娘探してます』のポスターを作ってあげますからね!」

「ちょ、そんな恥をばら撒かないでよ! やっと雪にゃん騒動も収まってきたんだから!」

「だったら、ずっとママと一緒に居るの! お嫁には出さないのでお婿さんを貰いましょうね」

「なんでそうなるの。それに僕が結婚とか無いって!」

「あらなんで? 雪ちゃんモテモテじゃない。競技中とか明らかに雪ちゃんの周りだけ雰囲気違って見えてたもの。なんだったら太一君でもいいわよ?」

 太一? 太一だったら……って無い無い。というより僕は男だったんだからね。

 そうすぐに割り切れないって!

「どっちにしても無理なの! それよりうちは氷兄が継ぐんだから、いずれは僕達は出て行かないと駄目でしょ」

 僕と母さんの会話を聞いていた冬耶が少し不安気な顔をした。

「冬耶は大丈夫だぞ。そうなった時は僕と一緒に暮らせばいいんだからな」

 少し冬耶に近付いて頭をなでてやる。

 その甲斐があり、すぐに冬耶は元気な表情を取り戻した。

「うん、雪姉ちゃんがいればいいよ!」

「ねぇ、ママはどうなるのかしら?」

「父さんと一緒に氷兄と暮らすに決まってるじゃない」

 あれ? これって変態ズを隔離出来て悪くないかも……

「ええ~、ママも雪ちゃんと一緒がいいわ!」

「それだったら、俺と雪が結婚すればいいだろ?」急に背後から声がした。

 まぁ振り返らなくても声と内容から誰だか判るんだけどね。

 人物は予想通り氷兄だった。態々僕の隣に座ってくる。

 どうせなら反対に行けばいいのに。

「その手は最終手段だわ」

 母さんの位置からは氷兄の姿が見えていたのだろうすぐに反応した。

「ママ、何納得してるの! 兄弟は結婚出来ないんだよ」

「でもね、雪ちゃんが居なくなるなら、それでも全然OKかなぁって思うのよね」

「マジで! 母さんからの許可もでたぞ。俺と雪の間に最早障害は無い!」

「大有りだよ! 大体氷兄とは結婚とか無いから! 氷兄は『氷室様』って呼んでくれる貴重な女の子と付き合えばいいんだよ」 

「俺は雪一筋だ! 他には目もくれないぞ」

 母さんのせいで余計やる気だしてるし! 

「それなら、僕と雪姉ちゃんも結婚出来るの?」

 冬耶~~~お前までそんなこと言うのか!

「あら、冬くんもしたいの? さすが雪ちゃんね。うーん。氷くんが我慢してくれるなら、それでもいいわよ」

「本当お母さん。じゃー氷兄ちゃん諦めてよ」

「いくら冬耶でも雪だけは譲れんな。雪の居ない人生なんて、まるで母さんだけがいる我が家みたいなものだろうが!」

「あ、判るかも。雪姉ちゃんがいるとホッとするもんね」

「だろ?」

「うんうん」

 氷兄と冬耶が首を振って頷きあっている。

 母さんの方を見ると、目がジトーとなっていた。

 これはあれだね。さよなら、氷兄、冬耶ふぉーえばー。

 あっさり見捨てることにする。

 2人が母さんに絞られているのを横目に、素早く周りを見渡した。

 僕に注意を向けている人は――居なそうだね。

 ならば、アイスストーム! 心の中で叫ぶ。

 その瞬間、僕の手の中に握り拳大の氷が出現した。

 別に意味ないんだから叫ばなくてもとか言うのは駄目だよ。

 何事にもノリは必要なんだからね!

 早速かじりつく、うん! 美味しい。

 冷たくて、火照った体に丁度良いよね。

「あああ、それ雪の氷か?」目敏く氷兄に気付かれた。

 もう母さんから開放されたのか、思ったより早かったね。

「そだよん」

「俺にもくれよ! 雪の出す氷ってめっちゃ美味いよな」

「僕も欲しい!」

「ママも!」

「仕方ないなぁ。手出しておいて」氷兄のせいでめんどいことになったけど、どうせ出すなら一度の方が楽かもしれない。

 再び周りを見渡して安全確認をし、大丈夫そうだと判ると行動に移す。

 いくよ! ブリザード! ヒ○ド! 絶対零度! 心で叫ぶ。

 氷兄、母さん、冬耶の順にその差し出された手の平の上に氷の塊が出現した。

「サンキュ」「ありがと」「わーい」3人に感謝の言葉を貰う。

「うわ、美味いわぁ。絶対金取れるって」氷兄がさっそく齧りついて呟く。

「そうなのよねぇ、市販の氷より雪ちゃんの氷の方が味が一段上なのよね」母さんは直接食べないで、水筒の蓋に塊を置いた。

「うんうん、雪姉ちゃんの氷で一回カキ氷食べたいかも」

 冬耶も母さんと同様で自分のカップの中に入れている。

「そうかなぁ。僕的にはこの必殺技イマイチなんだけど」

「雪は判ってないなぁ。大量の氷を出現させるとして、誰かと戦うつもりなのか? どこかのアニメや漫画じゃないんだし、そんな力いらんだろうに」

 むむむ。確かにそうなんだけど、使えたほうがロマンがあるじゃないか!

「そうだ。氷兄が襲って来た時に使えるよ!」

「馬鹿だなぁ。雪と俺の間には愛があるだろ? 何にも問題ないだろうに」

 ……絶対必要な気がするよね。

「そ、そういえば、父さんはどうしたの?」

 氷兄はほっとくことにしよう。そうしよう。

「隆彦さんね。体育祭ではしゃぎ過ぎて、もうカメラの電池が無くなったらしいのよ。今お家に帰って充電してる頃じゃないかしら」

「ああ、そう……」このまま帰って来なくてもいいかもね。

「それで、雪ちゃん達優勝出来そうなの?」

「うーん。2位だからねぇ。最後の男女混合リレーで勝てばいけるとは思うよ」

「雪ちゃんは出場するのかしら?」

「僕は応援するだけ、氷兄は出るみたいだよ」

「あらそうなの。だったら氷くんには頑張ってもらわないと駄目ね」

「そだね。此処まできたら僕も優勝したいし」   

「ああ、任せておけって、俺もMVPが掛かってるからな。手なんて抜かないぜ!」

 ガッツポーズまで決めている。手に氷を持ってるのが少し間抜けだけど。

 でも氷兄にはMVP取って欲しくないとは言えないなぁ。このやる気を利用しないと勝てそうにないしね。

 うううう、僕って不幸かもしれない。


これで体育祭終了! 


と言いたいところなんですが、もうちょっとだけ続きます。

結局の3部構成。


予定では2部だったのに、駄目だなぁ……

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