MMOをやってみよう! 後
章タイトル 外伝を番外編に変えました。
合流したということで、以後はゲーム内チャットで話すことにした。
太一からパーティー申請が飛んできたので、パーティーに入ることにする。
画面左下隅に、太一のキャラのHPとMPが表示された。
話すときはチャット欄のPTボタンに切り替えて入力することも教わる。
『トール:てかさ。その、☆剣聖にゃん姫☆って名前どうなの? すごい痛い感じ一杯なんだけど』
『☆剣聖にゃん姫☆:どこがやねん。めっちゃ可愛い感じするやんか。猫を嫌いな人はいないやろ? そして姫がつくことで可愛さ2倍増しやろが!!』
以後 トール ト ☆剣聖にゃん姫☆ 剣
『ト:……本人がそれでいいなら……止めないけど。じゃなんで剣聖なのさ。そのキャラどう見てもヒーラーじゃん! 俺TUEEEとか言ってなかったっけ?』
『剣:ふははは、甘いがな。名前だけみたら剣士に見えるやろ? 襲われ難いやろが。それに装備を整うまではヒーラー最強がデフォやで』
このゲームにはPKシステムが導入されているので、プレイヤーから襲われる可能性があるのだ。
『ト:僕なら、そのフザケタ名前を見たら、凄く襲いたくなるけどね……』
『剣:雪は鬼畜やなぁ。こんないたいけな少女を襲うってどういう発想ねん』
『ト:ちょ、まさかそれも考えての幼女なの?』
そこまでの意図なら、少し感心しちゃうね。
『剣:それはちゃうがな。やっぱり見てて和むやろうが』
僕の感心を返して欲しい……
『剣:てかさ。さっきから色々言われたけど、雪のキャラもありえんやろ?』
『ト:どこがさ、ファンタジー世界のベテラン傭兵って感じが出てていい感じじゃないか』
『剣:いやいやいや。普通女の子なら女キャラ使うことが多いやん。それに男なら大体は金髪イケメンとかやろ? なんで親父やねん』
『ト:女の子や体が細い男が重い武器なんて持てる訳ないでしょ? 違和感ありすぎだよ』
『剣:それさ、見た目ファンタジーな雪に言われても説得力がないがな』
『ト:む、それはこの際関係ないと思うんだけど!』
『剣:それはそうやな悪かった。まぁ、ゲームなんやし、リアル重視じゃなくてもええと思うんやが』
『ト:洋げーではこれが当たり前なんだって、日本だけなんだよそんなのは』
『剣:これ日本のゲームやん……』
太一と合流してから、そこそこの時間が経ち、僕らのLVは10になる。
前衛とヒーラーのコンビは相性が良いらしく、サクサク狩りが進むのも楽しかった。
しかし、此処で問題が発生する。
次の場所に行く為には、このエリアのボスを倒さなくてはならない。
そのボスが2人では大変そうなのだ。
『ト:どうしようか? あれ強そうだよね?』
画面上には、巨大な亀の敵が見えた。
『剣:そやなぁ。とりあえず雪、死んでこいや』
『ト:はぁ? なんで死なないといけないのさ、太一が死んできてよ』
『剣:ヒーラーはどんな時でも生き残るのが仕事や、前衛は踏まれて死ぬのが役目やろうが』
確かに一理ある。
『ト:って待ってよ。なんで両方とも死ぬことになってるの。やっぱりPTの人数を増やして戦う方がいいんじゃない?』
『剣:それもそうやなぁ。ちょっと周りを見てみるか、同じボス倒そうとする人いるかもしれんしな』
『ト:そだね。僕も探してみる』
画面の視点を変えて、この付近のプレイヤーを捜してみる。
すると1人の魔法少女キャラを見つけることが出来た。
『ト:うわっ、太一以上に痛い名前の人見つけたよ』
『剣:失礼なこと言うなや。でどんな名前の人なん?』
『ト:ほらっ、あのボス部屋後ろの壁の方に居る人』
『剣:うん、どれどれ?』
金髪ロリが僕の言う方向に向けて歩いていく。
『剣:ぶははは、ええわあのネームセンス。ちょっと誘ってみようや』
『ト:ええええ、お兄ちゃん♪LOVE100%とか名付ける人、絶対頭おかしいって近付かない方がいいよ』
『剣:いやいや、これこそがネトゲの醍醐味やんか。一期一会いうやろ。誘ってみるべ』
『ト:本当に? 後で後悔することになったら太一恨むからね!』
『剣:あいあい、判った判った』
太一は、怪しい人と何か交渉しだした。
Tel機能を使って個別に話しているのだろう、何も文字が表示されない。
しばらくすると、僕の画面左下にお兄ちゃん♪LOVE100%というキャラ名が現れ、PTに加わりましたというログが流れた。
うわ、本当に入れたし、太一めぇ
※ 以後 お兄ちゃん♪LOVE100% お
『剣:それではよろしくですよ。ボス一緒に倒すの手伝ってくださいなぁ』
『ト:はじめして。頑張りましょ!』
『お:こちらこそ助かりました。どうやって倒すか困ってたので……』
あれ? 思ったより礼儀正しい人なのかもしれない。うーん。人は見かけによらないもんだね。
『剣:すごーく、頼りにしてますよぉ♪』
そして、これは誰?
Tel機能を使って太一に問いただす。
【ト:その喋り方何? 太一きもいよ!】
【剣:アホか、ネカマキャラには漢の夢が詰まってるねん。その夢を崩さないのが礼儀ってもんや、後、ここからはゲーム名で呼ぶんやで、それも常識や】
【ト:……判ったよ】
よく僕の前でやれるよ……恥かしくないのかな?
『剣:3人でいけるかなぁあれ? すごーく強そうだよね!』
『お:うーん。どうだろう。確かに強そうだけど、いけそうな気はするかな。戦士、魔法使い、ヒーラー居るし、バランスがいい気もする』
『ト:それもそうですね。一回試してみましょうか。駄目なら又PT増やす方向で』
『剣:うんうん、頑張ろうよ。勝てる勝てる♪』
太一、熱入ってるなぁ……
『お:了解、それじゃ頑張ろう!』
そして、僕たち3人による討伐が始まった。
戦いは熾烈を極め。僕がヘイトを稼いで亀の攻撃に耐えながら大金槌を振るう。
その間にお兄ちゃん……なんか呼びたくないなぁこのキャラ名、が遠距離火力魔法で敵HPゲージを削っていく。
僕のHPが減ると太一が回復をくれ、その間に背後から殴るというコンビネーションで攻撃。
この作戦は良かったようで5分もしないうちに、亀は地面に横倒れた。
「ふぅ」画面を見ながら一呼吸つく。
『剣:やったぁ、勝った勝った♪』
『ト:やれば出来るもんだね♪』
『お:俺たち相性がいいのかもしれないね』
即席パーティーだったのに、破綻もしなかったのはそうなのかもしれない。
このボスは推奨5人以上とクエストに載っていたからだ。
ここで、一安心して気が緩んだのだろう。太一が馬鹿な事を書き込んでくれた。
『剣:でもお兄ちゃん♪ってすごい名前だね。はじめ危ない人かと思ったよぉ』
『お:ああこの名前? やっぱりそう思うかぁ。実は、うちに可愛い妹がいるんんだけど、その娘がすごい照れ屋で中々呼んでくれないのさ。このゲームを始めるみたいだから、どこかで遭って名前なら呼んでくれるかなぁって思ったんだよ』
そんな意味があったのね。そこまで思われる妹さんってある意味幸せかもなぁ。
『剣:なるなるです。でも、思いはその内通じると思いますよぉ。お兄ちゃん♪って誠実そうじゃないですか』
『お:そっ、そうかな? そうだといいんだけど』
頑張れお兄ちゃん♪……何か嫌な名前だ。頑張れ! 100%さん応援してるよ!
『剣:お兄ちゃん♪の見た目も可愛いですねぇ。アタシもそれにすればよかったなぁ。白髪、青目の女の子って素敵な感じがするよぉ』
『お:これね、妹の見た目に合わせて作ったんだ。でも実物の方がもっと可愛いいけどなぁ」
へぇ……それは凄いね――って……白髪に青目? 今いやーな予感がしたんだけど。
じーっと、100%さんのキャラを見る。深い帽子をかぶっていて気付かなかったのだ。
『ト:あの100%さん。つかぬことを聞きますけど、妹さんって何歳なんですか?』
『お:うん? 今年高校に入ったばかりだね。急にどうしたのトールさん?』
……ああ、更に悪寒がしてきた。
まぁ、待て僕。このゲームは日本に居る人ならだれでもプレイ出来る。
外国人の兄妹が遊んでても何の不思議も無いじゃないか。
『ト:いえなんとなく知ってる人にそっくりだったので聞いてみたのです。ひょっとして100%さんって、サッカー部に所属していて氷室様とか呼ばれてたりします?』
『お:なんでそれを! ひょっとして俺の知り合いなのかな? 世間は狭いねぇ』
ああ、もう駄目。
太一もやっと判ったみたいでさっきからTelで
【剣:うわ、どうする?】とか聞いてきてる。
『ト:本当に世間は狭いね……』PT解除ボタンを押す。
そして、氷兄のキャラに向かって素早く移動し、油断してる相手の脳天に僕の大金槌を炸裂させた。
血飛沫を出してお兄ちゃん♪100%は倒れて動かなくなる。
僕のキャラの名前が赤くなったけど気にしない。
そのまま手近にあった何かを握り締め、部屋から外に飛び出した。
2Fの廊下を素早く移動し、氷兄の部屋のドアをノックもしないでバンと開け放つ。
中には、FSCCの画面に向かい、頭を抱えている氷兄。
勿論、キャラは死体になっていた。
「やっぱりお前かぁ!!」
それを見た瞬間、僕は右手に握っていたモノを氷兄目掛けて投げていた。
氷兄は僕の声に驚いて振り返る。そして、そのすぐ真横を僕の投げたモノが通り過ぎ、壁に当たって下に落ちた。
投げたモノに此処で気付いた。グングニルだ。惜しいぞ最強の槍!
「ちょ、な、急にどうした雪?」
氷兄が青い顔をしている。まぁいきなり現れて武器が飛んできたらそうなるだろう。
怒りを必死に抑えながら中に入る。
「ええとさ……お兄ちゃん♪100%ってキャラを今すぐ消そうね? ――それと僕の猫耳写真も消してもらおうかなぁ……」
「え、何で知ってるんだ? ――ってマサカ! 今のPTにいたの雪か!」
「……ふーん。良く判ったねぇ。それじゃ言い残す言葉はある?」
「ええと……」氷兄が目を泳がした。
僕は指でツンツンと床を指す。
「それは、どうしろってことかな? 雪ちゃん」氷兄の顔が引き攣っている。
「いいから! さっさとする」ツンツンと床を指し続ける。
氷兄が怯えたように床に正座した。
「それで言うことは?」
「俺は悪くない!」
「……ち、が、う、よね?」冷たい目で睨みつける。雪女だけに効果は2倍増しだろう。
氷兄は慌てて、口を開いた。
「モウシマセン。ユルシテクダサイ。オレガワルカッタデス」
「良く出来ました。では次にやることは判るよね♪」今度は天使の微笑みを浮べる。
「いや、その、でも、それは……」
「あれあれ、良く聞こえないなぁ? まさか、出来ないなんてことはないよね?」
「……………」
その後、氷兄の作ったキャラを消去させ、PCは全部フォーマットさせた。
どこに画像を隠し持ってるかわからないからね。
本当にどうしてこんな馬鹿なんだろうと思うよ。
普通にやってればバレル事も無いのに、ひょっとしてマゾなんじゃとか思う時がある。
だから変態なのか! うん、少し僕も賢くなったよ。
これで番外編終了です。
今度こそ3章まで少し休憩を……
作者の言うことはあてにならないですけどね。




