球技大会 1
たぶん、2部構成です。
でも、3部かなぁ……
こないだ自信を持って宣言しただけにちょっと弱気です。
そして、これで第一章と話数が並びました。
いやー良く書いたもんです。
ここまで長い話を読んで頂いた方に感謝です。
4月下旬になると、星桜学園では全校球技大会が開かれる。
サッカー、ソフトボール、バスケ、バレーの4種目を全学年男女混合で戦うのだ。
勿論、1年が3年に勝つのは至難の業だろう。
そこで各競技毎に、ハンデというものが加算され、バランスを取っているのである。
その球技大会の話し合いが1-Aの教室で行われていた。
「さて、オレらの狙うのは優勝一つや!」太一が教壇で熱弁を振るっている。
その横には阿部君も居て太一の主張をサポートしていた。
この二人、以前の1発ギャグで決まった学級委員達なのだ。
「優勝はしてーけど、どうやってすんだよ?」
「今年の優勝は2-Cと3-Aが候補らしいぞ?」
「うちのクラスなんて、まるでノーマークってことは可能性無いってことだろ」
「所詮は球技大会なんだから、そんなに熱くなっても仕方ねーって」
「そうよね。どうせなら流す感じで適当にやりましょうよ」
「異議なーし」
クラス中で賛否両論、概ね反対の意見の方に傾いている。
「はぁ。馬鹿やなぁ。そんな台詞は今年の優勝商品を聞いてから言うんや」
太一のその意味深な一言で、全員押し黙って次の言葉を待つ。
「なんと! 学食の食券一ヶ月分やで!!」
「嘘! マジで!」
「それって、カナリ凄くね?」
「1カ月分ってことは約1万円相当よね。うわ、売っても儲かるじゃない!」
「それは、優勝狙うしかないよ!」
現金なもので、モノが賭かると皆の目付きが変った。
「まぁ、お前ら落ち着くんや。普通にやったらオレらに優勝は無いだろう。そこで、作戦を考えた。この大会男女混同という処も難しいが、それを踏まえて狙うは、一番ポイントの高いサッカーや。競技人数が一番多いから、その分ポイントも高いのやろう。つまりは、サッカーを制すものが球技大会を制すと言っても過言ではない!」
「「「「おお」」」」」と感心する声が広がる。
「そして、我がクラスには秘密兵器が居るやろ? それをぶつけようと思う」
へぇ。そんな人居たかなぁ?
僕のクラスにもサッカー部は数人居る。
だけど、それを秘密兵器っていうのは変だよね。
常套手段だもん。
「雪、頑張るんやぞ! お前にうちのクラスは掛かっている!」
太一は人差し指をピッと伸ばして僕を指し示した。
一斉に僕に向かって拍手が沸き起こる。
どういうこと!
「ちょっと待った。なんでボクが秘密兵器なんだよ! 確かにサッカーは得意だけど、秘密兵器って程じゃないって、余り期待されても困るよ!」
思わず立ち上がって抗議する。
言ってる内容は嘘じゃない。
太一と遊んでると、大抵氷兄が構ってくるので必然的にサッカーで遊ぶことが多かったのだ。
「ふふふ。それは秘密ってところやな。まぁ見てろってなもんや。大会の台風の目にしてみせるがな」
どこから来るんだその自信は!
そして、僕のサッカーというものは確定したらしい。
メンバーは僕、太一がサッカーに入ることになる。
遥はバレー、楓ちゃんはバスケに回された。
あの身長だし、遥のバレーは判らなくもない。
楓ちゃんは……うん、がんばろうね!
阿部君は、ソフトボールらしい。
本番の、球技大会を迎えた。
雲ひとつ無い晴天、スポーツをするのにもってこいだろう。
天気予報によると午後には気温が22度まで上がり、汗ばむぐらいかもしれない。
校長先生の開始の宣言を皮切りに各自専用の場所に散っていく。
そんな中、僕と太一はサッカーグラウンドに向かっていた。
全15クラス対抗のトーナメント戦になるが、初戦の相手はまだ決まっていない。
太一の悪運か何かしらないけど、抽選で我がクラス1-Aはシード権を引き当てたのだ。
よって、1回戦の勝者が決まるまで僕らは待機となる。
移動に余裕があった。
「雪さぁ。もうちょっと色気のあるような服とかないんかぁ?」
僕の着ている服は学校指定のジャージだった。
というより、他の服を着てる人なんて居ないのだけど。
「この服以外の何を着ろっていうのさ!」
「この作戦は雪が秘密兵器言うたやろが、その主役がそれじゃイマイチ盛り上がらんて」
「そんなんで理解しろって言われても無理だって。いい加減その作戦っての教えてよ」
「ふむ。どうせ次の試合でバレルことやからいいか。ほな教えてやるわ」
太一の作戦はこうだ。
僕を1トップで相手陣内深くに配置する。
すると女子にはオフサイドが適用されないので、相手は深く守らなくてはいけない。
更に、僕にタックルを仕掛けられる猛者等、男子はおろか、女子も居ないというのだ。
男子は単純に僕に対する好意らしい、女子は氷室様効果で僕に何かあると氷兄が怒るという理由だ。
良く此処まで悪巧みをしたと感心する。
でも、本当にそう上手く行くのだろうか? 僕にそれほど人気があるとも思えないし、そもそもボールが来なかったら意味が無い気もするけど。
しかし、それは杞憂に終わった。
何故なら、ゴールキーパーからのボールを直接僕に放りこめば、僕がボールをキープしただけで得点が入るのだ。まさにインチキ縦ポンプレイ。
1-Aの快進撃を止めれるクラスはなく、決勝まで圧勝が続く。
負けたクラスには卑怯だとか散々言われたけど、太一は逆に喜んでいた。
決勝の相手は、下馬評通りの3-Aである。
ちなみに氷兄のクラスだ。
サッカー部のエースといわれる氷兄は勿論相手チームに加わっていた。
まだ決勝をする迄時間があり、サッカーグランド近くの少し離れた場所で、僕と太一が休憩していると、そこに氷兄が姿を現した。
座っていた為に、見上げる形になる。
「おーい、今平気かぁ?」
「忙しいから平気じゃないよ」
素っ気無く返答してあげる。
「…………」
「太一、今暇か?」
ちっ、メゲナイなぁ。
太一、言うんだ言ってやるんだ!
目配せをして訴える。
「ええと……暇じゃないような……暇なような……どっちやろ?」
太一は板ばさみになって目をキョロキョロさせている。
「暇だ、よ、な!」氷兄がギロっと睨んだ。
「暇です。めっさ暇ってもんですわ!」
太一はあっさり屈服してしまった。
役立たず!
「さて、太一も認めたことだし、話があるんだ♪」
うわ、すごい変なこと考えてそう、妙に嬉しそうだもん。
「何? どうせ下らないことなんでしょ。試合前には聞きたくないよ」
「ふふふ。少し話しを聞けって――」
そこまで言うと、氷兄は僕と太一の間に割り込むように座ってきた。
僕は動かなかったけど、太一が気を利かせて避けたようだ。
本当に太一は氷兄に弱いよね!
「氷兄邪魔。どうせなら『氷室様♪』って呼んでる娘達に声でも掛けなよ。きっと喜んで話しを聞いてくれるからさ」
「う……ぐぅ……まぁその話しは置いといてだな」
前も思ったけど、妙にこの話嫌そうだ。
仕方ないなぁ♪ これで攻めるしかないでしょ!
「ねぇ、どうせだから教えてよ。この学校に入学して知ったんだけど、氷兄って妙に女子から人気あるみたいだよね。ファンクラブもあるんだって? モテモテで羨ましいなぁ♪」
「ええと、そのな…………」
おおっ困ってる困ってる。
いいねぇ。氷兄はこうじゃないとね。
このまま去ってくれると尚良しなんだけどなぁ。
「デマだ!」
ここまで潔く無いと、ある意味厚顔というのかな?
「ふーん。デマなんだぁ? 嘘なんだぁ? へぇ? それなら、今度クラスの女の子に『氷室様』を紹介してあげようかな? 皆喜びそうだなぁ」
「こら待て! なんでそうなる――――ってあれ? そういうこと? ああ、そうかそうか。まったく雪は素直じゃないなぁ♪ お兄ちゃん♪は嬉しいぞ!」
ちょっと、途中から気持ち悪い反応に変ったけど、どういうこと?
僕の予想してたのと違う。
顔をこれでもかというぐらい緩めてるよ!
「太一も何か言ってよ。この変態壊れちゃったんだけど」
それまで我関せず、見ざる聞かざる言わざるのように徹していた太一に話しを振る。
「こら! なんでオレを巻き込むんや。氷室兄ちゃんが変態なのは当たり前やろが!」
太一は非常に嫌そうに反応した。
「……ほぉ。太一は俺を変態と思ってるのか、お前の気持ちはよーく判ったぞ――」
先程までの変態氷室は何処へやら、軽く半眼になり体から出すオーラみたいなモノで太一を威圧している。
「そんな殺生な。雪が言った台詞やないですか。文句言うなら雪にしてーな」
「ふふふ。雪が変態言うのは照れているだけ、お前のは悪意を感じる!」
……すごーーーく、都合の良い脳内変換されてるんだけど。
道理で、最近変態って呼んでもなんとも無い筈だよ。
「ああ、もう太一を苛めない! で、さっきのあの気持ち悪い反応何なの」
氷兄の顔を手でコッチに向けて太一を救ってあげる。
「さっきのってどれだ?」
一瞬にして変態氷室に戻った。
「皆に紹介してあげるの後の反応だよ!」
「ああ、あれか! あれは雪が可愛いなぁと思ってさ」
更に意味不明になったよ……
「だ、か、ら、それでは判らないんだって!」
「しょうがないなぁ、本当に雪は照れ屋だよな。だってモテルお兄ちゃん♪に嫉妬したんだろ? 俺が雪一筋なのは知ってるくせに、そんな雪も大好きだぞ!」
あっれぇ? どうしてこうなるのかなぁ。
なんだろう、言葉が噛み合わないんだけど。
「氷兄、悪いこと言わないから病院行きなよ。速めに診てもらったほうが良いと思うんだ」
「病院ってあれか? 産婦人科なら、いつでも雪と行く心構えはあるぞ?」
……ええと、困った。
太一は――チラリと太一を見る。
駄目か……
再び石象のように聞こえない振りしてる。
自分でなんとかしろってことね……
「それで、本当に何しに来たの? そっちだって試合前なんだからあんまり時間ないでしょ?」
この時点で、サッカーの試合をしてた時より疲れているの何故?
「そうだった、雪が余りに可愛いこと言うから忘れるところだった」
我慢しろ僕。こうなったら少しでも早く変態を退散させることだけを考えるんだ。
「余計なことはいいから早く言ってよ。こっちももう時間ないんだし!」
「十分大事なことだと思うんだが……」
ぼやいてる氷兄を、さっさと言えと睨みつける。
氷兄は慌てて、口を開いた。
「どうせ勝負するんだし、賭けでもしようぜ!」
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