携帯のある日常 2
ええと、この話は3部作です!
誰でしょうね、2部作とか言った人は。
全く計画性がないんだから……
事件は授業中に起きてるんじゃない。休み時間に起きているんだ!
ええと、大げさなフレーズから入るけど、僕のスマフォが凄いことになってます。
授業中は当たり前だけど電源を落としておいた。
そして、休み時間に入ってオンに戻すと大量のメールが着信したのだ。
その殆ど、いや100%がうちの家族からなんだけどね……
一部を抜粋すると、
『雪ちゃん何してるの? ママとっても寂しいわ。 ママより』
『雪くんのJK写真を送って下さい。飢えているのです。 愛しのパパより』
『雪がオレのモノになる方法を考えてみた』
『毎日一回俺に抱きついてくるんだ』
『すると、習慣から俺の体が無いと満足出来なくなる』
『後は、二人でハッピーエンド。 お兄ちゃん♪より』
もうね。空いた口が塞がらないよ。
氷兄も反対してたのが嘘みたいだ。
返信? 一応したよ。
『ママへ。 うさぎに転生すれば?(笑)』
『父さんへ。 真面目に仕事しろ!(怒)』
『氷兄へ。 一回で送れ! そして、キモイ!』
その後も、しつこく送り続けてこられるコレ、どうすればいいの……
はぁ……買った僕より、周りの方が喜んでると思うのは、気のせいなのかな?
さすがにこのままだと電池の無駄だし、圧倒的に鬱陶しいので対策を考えることにした。
そこで、この会社の機種を持っている太一に相談するのが一番だと判断して、廊下側後方の太一の席まで移動する。
太一は膝の上に置きながら本日発売の少年漫画誌を読んでる最中だった。
「太一ちょっといいかな?」
僕の声を聞き、太一が漫画を読むのを止めて視線を上げる。
「ああ、雪か。急にどうしたんや? 胸でも揉ませてくれるんか?」
……ええと、めっちゃ殴りたい!
「いい加減、揉ませないと悟ってくれないかな……」
「ほな、何のようなんや?」
軽く胸の件をスルーするな! でも、ここは下手にでないといけない場面、耐えろ僕。
「ちょっと、スマフォのことで聞きたいことがあるんだよ」
「へぇ。さすが○○製やな、もう壊れたのか? 保証あるから直してもらえばええやん」
「違うって! メールの着信を拒否設定にして欲しいんだって」
太一の顔色が変る。
「な、まさかオレのか! 雪は鬼か? そんなんだからエリカちゃん言われるんや!」
「エリカ言うな!――じゃなくて、うちの家族からのスパムメールが邪魔で、健全なスマフォライフを疎外してるんだよ。だから拒否したいのさ」
「ふーん。ちょっち見せてみ」
太一に僕のスマフォを見せる。
結構恥かしい。内容が酷すぎるよね!
「ぷぷぷぷ。あははは。くくくく」
太一に大爆笑されたよ。くすん……
「もう判ったでしょ!」太一からスマフォを取り返す。
「いや、ほんと雪の家族はおもろいわ。あれやなぁ、天然の雪が何故生まれたのか、よー判るわ」
「ちょっと待ってよ。僕も一緒にしないでよ!」
「まぁ。そういうことにしといたるわ。くくく」
納得できないなぁ。まだ笑ってやがるし!
「それで、どうしたら設定出来るの?」
「ああ、結構簡単やからオレがしたるわ。で、誰のをすればええん?」
「うんとね、父さん、母さん、氷兄に太一をして」太一にスマフォを渡しながらお願いする。
「了解、ちょちょいのちょいや――って待て!」作業途中で太一が止まる。
「うん、どしたの?」
「どしたのやあらへんがな。最後になんでオレの名前が混ざってるんや!」
「だって太一のせいで、ホームルーム後に酷い目に合わされたからねぇ。少し反省して貰おうかなと思って、テヘッ」ペロッと舌を出す。
「テヘッやない。またそのポーズが妙に似合うのが悔しいのやが」
「おお、意外と効果あるんだ。新スキルとして覚えておくのがいいのかな?」
「どんなスキルやねんっ。ほら、雪の家族のメール拒否設定は終わったぞ」
画面を見せて確認させてくれる。
「うんうん。ありがとー。太一は頼りになるね」
「そやそや、もっと頼りにするとええねん。それでお礼――」
僕は、(スキル名、サディスティッククィーン)を使用する。
冷笑を浮べて、半目にするだけとも言う。
「お礼――」
中々手強い、(スキル名、サディステッククイーン改)を追加する。
上記のモノに首を僅かに傾け、上から目線を足すだけ。
「……ええと……何も要りません」
「うん。ありがとう」普通に笑顔を見せてあげた。
「一応、参考の為に聞いとくけど、お礼って何だったの?」
「絶対聞いたら怒るやん」
「怒らない、怒らない。たぶん」
「たぶんってなんやねん、たぶんって」
「ほら、僕って根が正直じゃない? だから嘘をつけないんだよね」
「ああ、確かにそれはあるなぁ。すぐ顔に出るもんな」
あれ? 冗談で言ったのに納得されたよ?
「それで、どんなお願いだったの? 引っ張られると気になるって!」
「うーん。ほな絶対怒らないなら教えてやるわ」
「善処する!」
「まぁ、それでええか。ただちょっと、パンツ見せてく――」
「パン!」僕の平手打ちが太一の頬を捕えた。綺麗に残る赤い手形が美しい。
その勢いで膝の上にあった漫画雑誌も地面に落下した。
「うがぁ! 何するねんいきなり!」太一が何か戯言を言っているけどスルーする。
だって、僕は嘘付いてないもん。
怒らないとは言ったけど、手を出さないとは一言も言ってないしね♪
お昼休み、僕と遥、楓ちゃんの三人で机を寄せ合い、お昼を食べている時のことだった。
教室の外が妙に騒がしいと思ったら、出入り口の近くに居た男子、あの『かっこいい』のギャグの阿部君に呼ばれた。
「阿南さーん。お兄さんが用事あるそうだよー」
遂に来たか、まぁ覚悟はしてたけど。
思ったよりも時間掛かったなぁ、というのが本音だね。
「阿部君。居ないって言っておいて~♪」
「え? でも……」困った顔をする阿部君。
今のやり取りは外からも聞こえてるだろうから仕方ない反応かな。
「相手のことは気にしなくても良いから、居ないと言って。お願~い♪」
「ああ……うん。判ったよ」阿部君は逡巡する素振りを見せたけど、それでも動いてくれた。
僕の中の阿部君の好感度が上がった。
がんばれー阿部君。ふぁいと!
阿部君が外に出て行ってすぐ遥が話し出した。
遥のお昼はサンドイッチで、半分ほど食べ終わっている。
「なぁ、お兄さんってことは氷室様だろ? ちょっと可哀想じゃないか?」
「そうかなぁ――どうせ用事も判ってるから係わり合いたくないんだよねぇ」
「ふーん。用事ってどんなこと?」
さすがに、馬鹿メールとは言えないよね……
「大したことじゃないんだけど、しいていうなら煩すぎるから無視したって感じかな?」 「うわ勿体ねー。全校生徒憧れの氷室様だったら、構って欲しい娘はそこら中に居そうだけどなぁ」
ね! 本当そうだよね。そっちを構って欲しいよ!
「遥ちゃん。雪ちゃんに言っても駄目だよぉ。その価値に気付かないスーパー鈍感だもん。あ、ハイパー鈍感の方がいいかも!」
楓ちゃんが食べていたミートボールを飲み込んでから熱弁した。
うううう、酷い言われよう。
「疑問なんだけど、そのスーパーとハイパーの差は何なの?」
「それはね。気持ちの差かも?」
「ええと……」
ごめん、楓ちゃん理解出来ない。
「雪、あまり楓の言う事を間に受けるな。幼児と思って暖かく見守ってやるといいぞ」
「ちょっと遥ちゃん、最近わたしの扱いが酷すぎだよ。これでも、『見た目は子供、頭脳は高校生――その名は江藤楓!』なんだからね」
「自分で子供って認めてたら世話ねーわな……」
「ああああ、今のは言葉の綾だって!」
「はいはい」
二人を眺めながら、シュウマイを口に入れる。
うん、悪くない。
醤油を別途、用意しないと駄目だけどこれはありかもしれないね。
そんなことしてる間に、阿部君が教室に戻って来る。
そして、今度は太一が外に出ていった。
どうやら、太一を抱きこむ手段に変えたらしい。
氷兄め悪知恵が働くなぁ。
阿部君はそのまま自分の席に戻ろうと僕の近くを横切ったので声を掛けた。
「阿部君ありがと。助かったよ」
「あんなんで良かったのかな? 代わりに矢神が呼ばれてたけど」
「全然構わないよ。すごい助かったから、お礼に何か好きなの1品あげるよ」
僕のお弁当箱をどうぞと指し示した。
「マジで! これって阿南さんのお手製だよね? 本当にいいの!」
阿部君が興奮しだしたけど、それ程のことなのかな?
「そんなすごいモノじゃないって、どれでもいいよ」
その瞬間、周りから怒声が響き渡る。
「てめー阿部ふざけてんのか!」
「雪ちゃんのお弁当を食べるとか死んで詫びろ!」
「そうよ。わたしだってまだ食べたことないんだからね!」
「飛べ、今すぐそこから飛べ!」
ええと、お礼なんだし、どういうこと?
「阿南さん、た、食べても、い、いいんだよね?」阿部君が少し怯えている。
「う……うん。いいけど、気をつけてね……」何故か忠告を口にしていた。
「じゃ、この卵焼き貰うよ――」
「了解、じゃ口開いて」
「へ?」阿部君はキョトンとした顔をしてまるで理解してないようだ。
「だって、手汚れちゃうから、食べさせてあげるよ」
「うそ! うわーー。何これちょっと、はわぁ」慌てる素振りが面白い。
「早くしないと、不味いと思うんだけど……」
さっきから、すごいプレッシャーが僕にも襲って来てるんだよね。
悪いことしてないのに……
「判った、こうでいいかな?」阿部君があーんと口を空けている。
「はい、召し上がれ」その口の中に卵焼きを入れてあげた。
「う、ま~~~い、ぞぉ~~~~~!!」
叫んでる阿部君は、クラスメイト達にそのまま連れ去られていった。
お礼の筈だったのに……これで良かったのかな?
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