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すのーでいず   作者: まる太
第二章
22/84

携帯、携帯!

前話で、前フリしといた携帯購入のお話です。


なんで、作者が書くとこんな感じになっちゃうんでしょうね?


うーん。他の作者様がうらやましい限りです。

7/5 誤字修正をいたしました。

 翌日、土曜日の午後、約束通り父さんと冬耶の3人で並木駅前にある家電量販店に携帯を見に来ている。

 普通に携帯ショップで買うものかと思っていたら、家電量販店で買った方が安く、更にポイントも付くという父さんのたっての願いによるものだ。

 原資がどの辺にあるのか判らないし、得をするならその方が良いよね。


 

 店内に入ると、一番目立つところに様々な携帯の機種がディスプレーされていた。

 最近ではスマートフォンが主流らしく、蓋の出来るタイプのモノより設置範囲が多い処を見ると、この辺りから選ぶ方が無難なのかもしれない。


   

「うーん。どれを選ぶのが良いのかなぁ?」

「雪くんが好きなモノで良いと思いますよ。大きさや見た目、性能の差もありますが、やはり持ち歩くものですし、一番シックリくるものを選ぶと良いです」

 僕の呟きに父さんが答えてくれる。

 こういう時は、本当に良い父さんなのに、なんで変態なんだろうね。

 現に、デジカメがいつでもスタンバイの状態で胸ポケットに入っているのだから……

 冬耶も携帯に興味がありそうだけど、僕が迷ってる間に飽きてきたみたいで、今はゲームコーナーの方に注意が向いていた。

「冬くん、別にゲームコーナーで遊んでてもいいですよ?」

 それに気付いてたのだろう、父さんが促した。

「本当? それならゲームコーナーに居るから、終わったら来てねー」

「はい、いってらっしゃい」

 この光景、どこからどうみても、普通の親子だよね……外面だけはいいんだから。 



「お客様、何かお探しのモノでもありますか?」

 冬耶の後姿が見えなくなった頃、女性の販売員さんが僕たちに声を掛けてきた。

「はい。携帯を探しているのですが、迷っているようでして……」

「ということは、お嬢様のでよろしいですか?」

「そうです」


 

 すんなり見抜くとは! さすが本業の人は鋭い。



 現在の格好は、縞の丸首シャツの上に、薄めのパーカー、大きめのジーンズという。

 男だった時のモノに加え、帽子まで被っていたからだ。

 母さんとの約束が過ぎ、自由を取り戻した僕に敵は無いのである。

 何も好き好んで女モノの服を着る訳がない。制服は仕方ないけどね……

 胸出てるし、腰括れてる。そしてお尻も出ている。

 誰でも一目で判るとか言っちゃダメ!



「お嬢様はどのような商品をお求めですか?」販売員さんが僕に注意を向けた。

 一瞬目を丸くしたけど、すぐ表情を隠したのはプロのなせる業だろう。

「ええとですね。一番高性能で、見た目も良くて、電池も長持ちで、象が踏んでも壊れないのを探してるんですよ」

「そうなりますと、此方と此方の機種等いかがでしょう?」

 ううう、最後のはスルーですか、父さんは笑っているのに……  

 店員さんの指し示したものはSa03DとFu04Dというものだった。

「どう違うのですか?」僕的には見た目はSa03Dの方が好みだけど。

「そうですねぇ。どちらも今年の春モデルとなりますし、性能もそれ程差は無いのです。Saの方が薄くて、Fuの方は横幅が短いという処でしょうか? 後若干Saの方が電池の持ちが良いと思われます。ああ、象が踏んだら両方共壊れますよ♪」

「で、デスヨネ……」ちゃんと聞いてたんだ。ちょっと赤面してしまった。   


 

 結局、僕が選んだのはSa03Dの方だった。

 ファーストインプレッションを大事にした結果だ。

 携帯の料金プラン等を契約し、受け渡しまで1時間程かかるということなので、その間に店内を見て回ろうと思っていたのだが、父さんに阻まれる。

「さて、雪くん♪ 約束ですよ」

 う、やはり覚えていたか……

 出かけてる間、いつもの調子で写真を取り捲られたら色んなお店に迷惑だし、尚且つ僕が恥かしいので、終わったら撮影に付き合ってあげることにして止めてもらったのだ。

「でも、まだ店内に居るし、冬耶もゲームコーナーで遊んでるのだから、放置するのは不味いよ」

 苦しい抵抗と思いつつ足掻いてみる。

「それなら問題はないでしょう。今からすぐ近くの公園に移動しますから。勿論冬くんも一緒につれていきますので、助手が居てはかどりそうです」

 はぅ、冬耶にまで見られるのか……

 このまま放置の方がいいんじゃないかと思ってくる。

 でもいきなり消えたら心配かけるだろうし、どうせ声を掛けたら一緒に来ると言うだろうから、結果は同じなんだろうな。

 がんばれ僕! 負けるな僕! 最近こんなのばっかり……



「はい、雪くん。雌豹のポーズ!」

 父さんの指示通りに動く僕。そして、何故それを知ってる僕!

「雪姉ちゃん、なんでも出来るよねぇ」変なことに関心する冬耶。

 そして、遠くから此方を観察してる人達の生暖かい視線。

 なんですかこれ? 罰ゲームですか? 


 

 並木駅の西側にある公園はそこそこの規模があり、子供を連れた家族連れ等がスポーツや、キャンピングシートを芝生の上に敷いて寛いでいる。

 その一角で、居様な光景が繰り広げられている最中だ……

 救いなのは、まだジーンズにシャツという格好だというところだろう。

 これで、女物の可愛い服とかだったら、僕の黒歴史に又一つ刻み込まれるところだったよ!

 普通はこれでも充分……と思うだろうけど、阿南家で生きてる僕にとってはこれぐらい……あれ? 自然と涙が零れそうになるのは何故?


   

「うーん。その潤んだ瞳もキュートですよー♪」逆に父さんは喜んでいる。

「雪姉ちゃん、演技も出来るんだぁ」

 冬耶これは違うから……


 

 丁度、その時3時の鐘が鳴り響いた。 

 お、終わった! 1時間が遂に経ったのだ。



「もう、こんな時間ですか。仕方ないですね」

「思ったよりも早かったねぇ」

 充分長かったってば!

「それじゃ、約束も果たしたし、携帯受け取りに行こうよ」

「では、ラスト1枚ですね」僕の意見はあっさりと父さんに覆された。

 え? 話が違う!

「ちょっと、父さん約束の時間過ぎたし、恥ずかしいからもう嫌だよ!」

「確かにそうなんですが、どうも決定的なコレ! ってモノがないのですよねぇ」

「いやいやいや、雌豹のポーズで充分じゃん。心が折れかかったよ!」 

「そうですか? うーん」渋る父さん。

「じゃー、お父さんこんなのどう?」冬耶が怪しいモノを取り出した。

 どこに隠しもってたそれ!

「こ、これは! 伝説のマジックアイテムと言われる、猫耳カチューシャじゃないですか。冬くんどうしたのです?」

「えへへ。これ、そんなレアアイテムなんだぁ。さっきの電気屋さんで待ってる間、ゲームの勝負したら貰えたんだよねぇ」

「おお、さすが冬くんです。父さんの息子だけありますね」

 すごい、嫌な予感全開なんですけど……

 もう時間なったし、向かってもいいよね?

 盛り上がってる二人が、レアアイテムに気を取られてる間に逃げ出すことにした。

「ああ、雪くん? 逃げてもいいですけど、引換券はパパが持ってるので、貰えませんよ?」

 ギギギギと、錆びた鉄のように振り返る。

「……は、早く貰い行こう、よ?」

「ええ、ですから、後1枚撮ってからですね」

 父さんの張り付いた笑みが拒否を許さない雰囲気をかもし出している。

「はい、ピース!」Vの字サインを出して、写真を催促する僕。

「ピースです」「ぶぃ!」父さんと冬耶が同じ仕草を返してくれた。

「……………」

「さて、雪くん、これを付けましょうか♪ 良く似合いそうです」

「うんうん。雪姉ちゃんなら絶対可愛くなると思うよ!」

 風に揺れる猫耳がどこか哀愁を漂わせている。

 ああ、これが四面楚歌っていうアレか。

 昔の人も、こんな心境だったのかな。


 

 父さんにより、僕の頭に猫耳が生えた。


 

 雪は防御力+1 精神力に-100のダメージを受けた。 


  

「では、撮影しましょうか。雪くん両拳を胸の前にくるって感じで出して、甘えるように、『にゃーん♪』と言ってくださいね」

「…………」

「はい、『にゃ~ん♪』」

「…………」

「それじゃ冬くんも一緒に、せーの」

「『にゃ~ん♪』」

「『にゃ~ん♪』」

 変態親子が居る……そして冬耶、少しは人を疑うことを覚えよう。

「うーん。困りましたねぇ。これではいつまでたっても終わりそうにないです」

「雪姉ちゃん! 我が侭は良くないよ!」

 えええええ。僕が悪いの? 何この流れ。

 冬耶、お前は僕の味方じゃないのか!

「仕方ないですね。あまり遅くなると桜子ちゃんに僕がどんな仕置きを受けるか判りませんし、後10秒のうちにしなかったら、尻尾もつけてもらいます!」

 なんだその条件は! というより、全然譲歩してないよ!

 そして、尻尾? どこにあるのそれ? 

 でも、父さんなら持ってても不思議は無いし……

 やるしかないの?

「はい、10、9――2、1」

 はわわ、本気だよ!

「『にゃ~ん♪』」言った途端、瞬間湯沸かし器の様に真っ赤になった。

「それです。さすが雪くん! もうたまりません」、

 パシャパシャとカメラの連射撮り音が公園に響いた。

「はぅ。雪姉ちゃん。なんだろこれ、すごいモヤモヤするよ」

 冬耶が、どんどん変態道に堕ちていくー。

 変態ズに冬耶も加わる日が来るのだろうか?

 それだけはさせない! 僕の唯一の味方が居なくなるじゃないか。

 お前だけは、守ってみせるからな!   

 ちなみに、何故か見ていた人達から拍手されたのが謎です。



 無事? 携帯を受け取り家に帰ると、母さんがとても素晴らしい、そう例えるならば満開の紫陽花のような笑顔で迎えてくれた。

 近くに居た氷兄は悟ったような表情でポンと僕の肩を叩くと、

「お前も頑張るんだぞ……」そう捨て台詞を残して去っていった。

 意味がさっぱり判らない。

 だが、その意図してたものはすぐ判ることになる。 

「さて、雪ちゃん。大事な話しがあります」

「な、何?」その笑顔恐いよ?

「雪ちゃんは本日携帯を買ったわよね。つまり、ちゃんと私は約束を守りました」

 確かにその通りだよね。父さんのアレはそもそも関係ない訳だし。

「で!」

 嫌なところで切るなぁ。

「此処からが本題なのよ。携帯電話といものはどういう料金システムか判ってるかしら?」

「確か――バケ放題に、基本使用料と電話使用料が別個掛かるんだっけ?」先程の契約内容を思い出しながら答える。

「うんうん。よく覚えてるじゃない、偉いわ。つまり、毎月電話代という名目でお金が掛かる訳なのよ」

 そりゃそうだよね。そういうモノだと思うし。

「はい、問題です。電話代って払わないとどうなるか知ってるかしら?」

「うーん。止められるんじゃないかなぁ?」

「その通りです。それならもう判るかしら、つまり、携帯を買う約束はしたけど、携帯代を支払う約束はしてないのよ!」

 な、何それ! まるで屁理屈じゃん!

「ちょ、ちょっと待ってよ! それじゃ止まっちゃうよ。僕の小遣いで支払うのなんて無理なんだから」

「うんうん。そりゃそうよね~。そこで、携帯代を払う条件があります! ああ、その前に可愛い格好に戻ろうね♪」

 なんじゃそりゃーーーーー!! 


 

 母さんの示した条件とは、こないだ迄行っていたことを継続することだった。

 そして、氷兄がしたあの表情の意味も理解した。

 氷兄も携帯を持っている、つまりは母さんに首輪をされた状態なのだ。

 だから、余り携帯を買う事を薦めなかったのだろう。

 まさに三日天下、そんなのあんまりだよ!



 雪は携帯を手にいれた。精神力に-9999のダメージを受けた。

 雪の自由が死んだ。 

 甦らせますか? YES OR NO。

 YES。

 呪いの携帯を破棄する必要があります。

 ……

 

今回は、影の薄い人達を出してみようという感じで書いてみました。

少しは居たことを思い出してもらえたら……


※ 誤字、脱字、修正点などがあれば指摘ください。

評価や感想、コメントも是非にです。

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