お弁当!
日曜日の朝は……
の誤字を修正しました。
ご報告ありがとうございました。
その日のお昼休み。
「…………」僕は不機嫌な表情を隠そうともしないで、自作のお弁当を食べていた。
保健室であんなことされた後、すぐにケロッ出来る程、器用な人間では無いのだ。
「ええと、雪、そろそろ機嫌直してくれよ」いつのまにか右隣に来た遥が愛想笑いを浮かべている。
ぷいっ、僕は左を向いて知らん顔する。
「ねーねー、雪ちゃん。悪気があった訳じゃないんだから。許してよぉ」左側面から楓ちゃんが話し掛けてきた。
残された場所は下しかないので、机の上にあるお弁当を眺めることにした。
さすが、僕が作っただけあって好きなものだけを詰め込んだお弁当は、食欲をソソルものがある。
冷凍食品を考えた人は、本当に凄いと関心する。
朝の短い時間で、手間をかけずに美味しいものが食べれるのだから、素直に頭が下がる思いだ。
「雪ちゃーん。そろそろ無視するのやめてよー。雪ちゃんの胸が魅力的過ぎたのが悪いんだからぁ」
それ何か違う!
「そそ、雪が悪いんだって、あれを一人で独占しとくなんて、人類の損失だって!」
僕のモノを僕だけで扱って何が悪いのだろう……
というか、揉むのが辺り前というのがおかしいんだって!
ハムッ、から揚げを口の中に放り込む。
うーーん。美味しいよー。
「ああ、もう判った。じゃーこうしよう。アタシの胸も揉んでいいからさ、それでお相子ってことにしよう」
「うんうん。わたしの胸も触っていいからね。雪ちゃんが笑ってくれないと嫌だよー」
僕はチラリと遥を見る。
制服上からも判る豊満な胸は、確かに柔らかそうだし揉み心地もよさそうだ。
次に楓ちゃんを見る。
――ええとコメントした方がいいのかなぁ……
「雪ちゃん。その哀れむ目、傷つくものがあるのだけど……」楓ちゃんが涙ぐんでいる。
「バカ楓! お前のそのビート版なんて、どこを触るっていうんだ。あれか? あれなのか? ロリを労われと訴えてるのかそれは?」
「遥ちゃんどういう意味よそれ! 女はね胸じゃないんだよ胸じゃ! 昔から、男は度胸女は愛嬌っていうぐらいなんだから、わたしのスペシャルな笑顔さえあれば胸なんて無くても問題ないの!」
「へぇ。その笑顔も雪に比べたら、マーメイドとウツボぐらいの差があるじゃないか」
「ウツボって! 酷いよ」
「おお、自分をウツボと思うぐらいまでは自覚してるのな。少し見直したぞ楓」
「そうやってすぐ馬鹿にして! だいたい遥ちゃんのは、胸じゃなくて筋肉でしょ! そんなものは偽者なんだよ。雪ちゃんの、あのとろけるような極上の触り心地と比べたら、車のタイヤみたいなものだよ!」
あまり大きな声で生々しいこと言わないで、恥かしいから……
「はいはい、楓の羨ましい気持ちはよーく判ったから、そんなことより雪とさっさと仲直りしような」
「うううう、別に羨ましくないもん。でも、そうだよね。雪ちゃんと仲直りしないと」
うん、二人とも落ち着いて良かった良かった。
焼き春巻きを口の中に放り込む。
うー! 肉汁がいい感じだよ!
丁度その時、太一が声を掛けてきた。
「おーい雪ちょっとええかぁ?」
遥と楓ちゃんは太一の出現に驚いた顔をしたかと思いきや、僕が応じるよりも先にすぐ太一を問い詰めた。
「ちょっと矢神君、聞きたいことがあるんだけど!」
「矢神君、聞きたいことがあるの!」
「急になんやねん?」太一は目を丸くしている。
それはそうだろう。僕に話しかけたと思ったら、他の二人に問い詰められるなんて思っている訳がない。
「確か、矢神君って雪の幼馴染よね。ちょっとコッチきて」
遥はそう言うと、太一の腕を持って教室の隅まで連れていってしまった。
勿論、楓ちゃんも一緒だ。
残された僕は、玉子焼きを食べる。
今日のはいい感じで出来てるかも。我ながら上達したなぁ。えへへ。
しばらくしてから戻ってきたのは太一のみだった。
「あれ? 太一だけなんだ?」
「ああ、ちょっと急用が出来たみたいやで」太一は思わせぶりな表情をしてから返事した。
その態度が少し気になるけど、聞いても太一のことだから言ってくれないだろう。
「ふーん、そうなんだぁ。そういえば太一は何の用なの?」
「そうそう、すっかり本題を忘れるところやったわ。これを聞きに来たんや――身長は伸びたのか?」
ああああ、すっかり忘れてたのに、思い出させてくれたよ。このアホは!
「…………」
「どうしたん? まさか縮んだというオチやないやろな」
コイツはエスパーか!
「…………」
言いたくなさそうな僕の表情で太一は悟ったようだ。さすが幼馴染という奴だろう。
「うわ、ホンマにそうなんか。ひょっとして140ぐらいなったんか?」
「なるか! 152! 本当に太一は人が気にしてることをズバズバ言ってくれるよね」
「いやぁ。そんなに誉められても困るがな」頭をぽりぽり掻いている。
「誉めてないわ!」
「まぁそう拗ねるなや。152ぐらいなら可愛いもんやん。女子だったら全然問題ないやろ? さっきのええと江藤さんやっけ? あの娘に比べたら普通やん」
「そうなんだけど……なんというか僕のプライドが……ってああもう、で――何の用なんだよ? 次馬鹿なこといったら殴るからね」
「たく、短気なんやから、カルシウム補給の為に牛乳飲むねん。身長が育たないもそのせいちゃうか?」
「……だ、か、ら、何?」半眼になって暗い声を出す。
「悪かった、本当に悪かった。心から謝るのでその殺気を消してくれ。ただ明日の用事を聞きに来ただけなんやって!」
「用事?」意外な言葉に少し気が抜ける。
「そやそや、明日折角の休みやし、冬休み色々あって遊べんかったから、二人でどっか出かけようってことや」
「ああ、そういうこと、だったら素直にそう言えばいいのに――うーん。でも明日はちょっとなぁ……」
「あれ? 明日予定でもあったんか? 自宅を外敵から守るのが日常の癖に」
「それ、むちゃくちゃ誤解を招く言い方だろ。此処の処は、料理にはまってたから出掛けなかったけど、明日はちゃんとした理由があるんだって」
「ほぉどんな用事があるん? オレの誘いを断るぐらいなんやし、さぞ凄い内容なんやろ?」
「まぁ凄いかどうか微妙だけど、明日は念願の携帯を買って貰えるんだよ」
「ああ! そういえばそんな事言ってたなぁ。休み中言う事聞いてたら買って貰えるとかなんとか」
「そそ、それが明日。今から結構ワクワクしてたりするんだよね」
「そかそか、そなしゃーないなぁ。でもどんな機種にするとか決めてあるん?」
「うーん。それがねぇ、イマイチ僕は詳しくないから困ってるんだよねぇ」
「普通に氷室兄ちゃんに聞けばええやん。詳しそうやし」
「聞いてみたんだけど、イマイチな反応なんだよね。どちらかというと止めた方が良いみたいな感じかな」
「へぇ。珍しいこともあるもんやなぁ。絶対、雪とメールしまくるとか燃えそうやのに」
「だよねぇ? だから相談する相手もいなくってさぁ。店頭で選んで決めようかと思ってる」
「なるほどなぁ」
「という訳だから、明日は無理だから又次遊びいこ」
「あいあい――でも、オレの誘いを断った報いをするべきやと思うんやわ」
太一の雰囲気が変った。まるで獲物を狙う獣の目だ。
「な、何んだよ?」少し警戒した声を出す。
数秒の駆け引き後、
「隙アリ!」太一は僕の弁当箱から、から揚げを2個、海老フライ1尾を手に取って、それを口の中放りこんだ。
「ああああああ、それ僕が大事に取ってた奴、から揚げはまだしも海老フライは酷い!」
「ふゃぅふぁあひゃ、ゆぁうすりゅほうぁわりゅいんやぁ(ふぁふぁふぁ、油断する方が悪いんや)」
むきーーー!!
そうこうしていると、視線の片隅に遥と楓ちゃんの姿を捉えた。
太一もそれに気付いたようで、食べ物を飲み込んだ後に、
「オレに感謝するんやで」と言い残して去っていった。
何処の世界に、食べ物を取られて感謝する奴がいるんだ!
僕のから揚げ、エビフライ! かむばーーーく!!
「雪! これで許せ!」
「雪ちゃん! これで許して!」
そう言って、二人が僕に突き出したモノは、学校近くにあるコンビニのシュークリームだった!
「え? どうしたのこれ?」
「いやさ、矢神君が教えてくれたのさ。雪はシュークリームに目がないって」
「うんうん。だからお詫びに今買ってきたの」
そういう意味だったのか太一めぇ。
だったら先に教えてくれれればいいのに。
「で、許してもらえないかな?」
「お願い!」
必死に頭を下げる二人に遂に僕も折れた。
決してモノに釣られた訳じゃないよ!
「はぁ……しょうがないなぁ。二度としないなら許してあげるよ」
「やったー♪」楓ちゃんが抱きついてきた。
そして、何故か遥は僕の頭をなでている。
「判った、判ったから、離れてよー。シュークリーム食べれないよー」
二人が、離れたことでシュークリームを一口食べてみる。
コンビニのモノでもシュークリームはシュークリーム、格別な味だった。
はぅ……おいしいよー。なんでこんな美味しいものがこの世にあるんだろう。
今回、作者ノリノリでした!
以前もそんなこと後書きで書いたかもですが……
遥、楓の二人組、なんて書いてて楽しいのでしょう。
※ 誤字、脱字、修正点などがあれば指摘ください。
評価や感想、コメントも是非にです。




