勝負の日
6/4 本文の一部を修正致しました。
7/5 誤字修正致しました。
入学して、初めての休日を控える金曜日。
星桜学園ではお決まりともいえる身体測定が実地されていた。
各クラス男女別に集計が開始され、体重、身長、座高を測り、最後に内科検診で終了となるあれだ。
勿論ボクはどこからどう見ても女な訳で、女の子と一緒に廻るのだけど……
男の時はなんとも思わなかったこの行事、女になってみるとこんなに恥かしいこととは思ってもみなかった。
保険室横の空き教室に移動後、上半身は下着不可となり、ここから終わるまでノーブラにTシャツ一枚という不安な格好で長時間過ごさないといけないのだ。
下手をすると胸の突起がTシャツ越しに浮かんでいたりする。
僕もそうだし、周りが女子だけだから問題無い、と言われても、やはりまだ同性のモノなんて見慣れてない訳で、罪悪感のようなものが沸いてくるのは仕方ないのである。
嫌がっていても時間は経過してしまう。
僕たちクラスの番が来て、保健室の横の空き教室で指示されていた格好になった。
そして、此処からはペアとなりこの場に置かれた体重、身長、座高の器具で測定を開始するのだ。
これが男の時だったら迷うことなく太一で済んだのだけど、今の状態になっては無理な為、楓ちゃんに頼むことにした。
楓ちゃんも僕が頼んだら二つ返事でオッケーしてくれたので助かった。
何故楓ちゃんを選んだか?
まぁなんというか、身長がね、うん、僕より低いからなんて、ことじゃないよ?
ちょっと顔が緩んじゃうのは内緒です。
「それじゃ楓ちゃん始めようかぁ、先ずは体重からだね」
「はいです。最初に雪ちゃんから乗ってね。わたしが書くから」
「了解」速やかに体重計に乗って、楓ちゃんが記入するのを待つ。
楓ちゃんが動きを止めた針を見て筆記用具を動かしていった。
記録は、40キロ。
こんなもんかなって感じだね。
そして、楓ちゃんと交替する。
楓ちゃんはそろりそろりと体重計に上がって祈るように目を瞑った。
仕草が可愛い。やっぱり女の子は気にするものなんだろうねぇ。
現に周りでは、
「1キロ増えたーーー」
「ちゃんとご飯抜いてきたのに何故に!」
「あれか、あのスイーツがいけなかったのか」
「これは、運動しなくなったからなのよ……部活を開始すればすぐ取り戻せるわ!」
みたいな阿鼻叫喚の声が広がっている。
ちなみに楓ちゃんの結果は、3@キロ……軽いなぁ。
(楓ちゃんのプライバシーの為モザイクがかかります。)
僕はそれを記入用紙に入力して声を掛ける。
「楓ちゃん終わったからもういいよー」
「はいです。うぅ――どうだったぁ?」
「うーん――」記入した紙を見せてあげる。
楓ちゃんの表情がホッとしているところを見ると、悪くは無かったみたいだ。
「ええとぉ、次は身長だよね」楓ちゃんの目線の先に奴が居た。
そう宿命のライバルこと、身長計だ。
毎回憂鬱にさせるこの敵は、まさに最強の名を冠してもおかしくないだろう。
「ちょっと、雪ちゃん恐いよ。どうしたの?」
僕が睨みながら黒いオーラを放出しているせいで、楓ちゃんを怯えさせてしまった。
「あっ、ごめんね。なんでもないよ。ただコイツには恨みがね――」又黒くなっていく僕。
「…………」
「――こ、今度はわたしから計るよ……」
楓ちゃんが気を利かせてくれたようで、先に身長計に乗ってくれた。本当良い娘だよね。
楓ちゃんが背筋をピンと伸ばし、僕が頭に当たるようにメモリのバーを下げていく。
そして、頭に当たる瞬間にリボンに当たって止まってしまった。
「あ、楓ちゃんそれじゃ計れないから、リボンとって」
「そんなものはないよ?」真顔で返される。
「え、でもリボンが頭に付いたままじゃない。正確に計れないって」
「これは頭の一部なの! 取り外すとわたしは死んでしまうの。なのでこのまま計ってね!」鬼気迫る顔をして力説された。
気持ちは判るんだけどねぇ。ここは心を鬼にするしかないよね。
「しょうがないなぁ」
楓ちゃんはその一言に少し安堵した表情を見せる――が甘い!
蜂蜜に砂糖を入れて、練乳とシロップを混ぜたぐらい大甘だ。
「じゃー計るねぇ」
バーを思いっきり下げて、リボンを潰して頭上に付けさせる、
更に、良く見ると踵を軽く浮かせているので、そのまま力を込めて踵が落ちるの確認してから、計ってあげた。
結果、14@センチ。
うんうん。楓ちゃんの身長はこうでないとね。
「うー。雪ちゃんが苛める。酷いよぉ」
恨めしそうに頬を膨らましているさまが母性本能をくすぐらせる。
遂、頭をなでなでしてしまう。
「むぅ、なんで頭なでてるの?」
「……なんとなく?」なでなでする。
「子供扱いされてる気がするのはきのせいかな……次、雪ちゃんの番ね。交替!」
僕の手から逃げて身長計から降りてしまった。
折角、楓ちゃんのお陰で忘れてたいたのに……
「はぅ……やっぱり計らないと駄目?」オネダリするように言ってみる?
「当然だよ! わたしにした仕打ちを忘れたとは言わせないもん!」
だよね……これが因果応報という奴なのか、昔の人は本当に賢いなぁ……
「ううう」諦めて身長計の上に乗った。
「はい、踵はちゃんとつけるんですよ」
見逃してよ楓ちゃん!
……踵をつけて天命が下るのを待つしか無かった。
「ええとねぇ――」
あれ? 言う前に楓ちゃんが落ち込んじゃったよ。
いくらなんでも、楓ちゃんより小さいことは無いからね、甘い期待はしちゃ駄目だと思うんだ。うん。
沈没した楓ちゃんの記入した紙を見て、今度は僕が沈没する。
152センチだと!
どうみても縮んでるじゃないか!
何度見直しても、数字は変らない。
これ2じゃなくて7の間違いとか……
だって、中学3年の時に155センチだったのに、どうして高校1年になって下がる!
まさか、女になった弊害か! 確かに筋力とかが減り、洋服が大きくなったけど身長まで下がっているなんて……
その後二人して、お通夜ムードのまま座高を計り、保健室が空くのを待っている。
此処からの内科検診は保健室で行われる。
スペースの関係で大量に入れ無い為、5人一組で入るのだ。
そんな時、僕たち二人の背中を軽く叩きながら遥が声を掛けてきた。
「ちょっと二人共、暗すぎない?」
「ふん。遥ちゃんにはわからないんだよこの気持ちは……いいよねグリー○ジャイアントは」楓ちゃんがすぐ反応した。
「ああ、そういうこと――ひょっとして成長打ち止めで、前と変らなかったのかなぁ?」 遥は皮肉をもろともせず逆にニヤニヤしている。
「ち、違うもん! ちゃんと1センチは伸びてたもん!」
「うわ、1センチ? たったの? もう楓はさ、そのままロリ路線でいけばいいんじゃない? 今そっちの需要多いらしいし、良かったじゃない」
一応伸びてたのね楓ちゃん。
僕なんて縮んだのに……
「そういう、遥ちゃんはどうだったの? ちょっと見せて」楓ちゃんは素早く遥の持ってる記入用紙を奪い取って確認しだした。
「うわ、16@センチで、5@キロ! 今日からゴジ○に名前変えた方がいいよ。あっ!でも折角出来たばっかりなんだから、スカイ○リーは壊しちゃだめだよ」
「こら大声で叫ぶな! 後、そこまででかくねー!」遥は楓ちゃんの口を手で塞いだ。
楓ちゃんがふもふも言ってるところをみると、まだ言い足りないみたいだ。
「で? 楓は判ったけど、なんで雪まで沈んでるんだ?」
ここでやっと遥が手を離したことで、楓ちゃんの口が自由になった。
「うーん。身長を計った辺りからこんな感じだよ。わたしよりも高かったのに……」
「そっかぁ、というか楓より小さいのなんて幼稚園児ぐらいだろ? そんなのと一緒にするのは失礼ってものだろ?」
「それ、退化してるよ!」
「まぁ、それは置いといてと」ひょいと遥が僕の記録用紙を奪いとった。
「あっ!」
(置いとかないでよ)という楓ちゃんの声はスルーされた。
「ふむふむって、確かにちょっと身長は低めの気もするけど、大したことないなぁ。ってこの座高、あたしと1@センチ以上離れてるじゃないか!」
「ということは、遥ちゃんって短足胴長星人なのね!」
「ちゃうわ!」ポカリと遥が楓ちゃんの頭をどつく。
「うー。やっぱり暴力魔だよー」
「雪のスタイルが良過ぎるんだって、本当に日本人か?」
遥が僕の体を触ってきた。
「ちょ、何するの!」
「いやなんとなく、うーーん。世の中って不公平だよな……」
「だよね……x2」
「だから、なんで雪まで言ってるんだよ! いやみか!」
だって、身長が……うううう。
しばらく無駄話に花を咲かせていると、係りの人が入ってきて、保健室に入るように指示された。
ここからは出席番号順になるので、僕、遥、楓ちゃんを含む5人が今居る教室から出て、保健室に入っていく。
保健室の中には、まだ前のクラスの女子が残っていた。
医師の触診を待つ間に、カーテンで遮られた此方側でスリーサイズを計ることになる。
「それじゃ、ちゃっちゃとやっちゃうか」遥が隣に居た楓ちゃんを拉致して開始しだした。
残された二人の女子もそれに釣られて計り始める。
僕はというと……目を逸らしながら隅の方に逃げていた。少し赤面している。
だって、いきなりTシャツを捲くりあげて、上半身丸出しの状態で計り出すんだよ?
目の毒というか、ありがとうございますというかのか、よく判らないけど女子暦1カ月程の僕には刺激が強すぎるんだよ!
「さて、残ってるのは雪だけかな♪」
遥の声に僕はビクリと肩を震わす。
「遥隊長! ターゲットを補足したであります」楓ちゃんの目がキラキラ輝いている。
「楓伍長、ターゲットは逃走する恐れあり、直ちに確保するんだ!」こっちもノリノリだ。
「了解であります。隊長!」
「確保!!」遥の掛け声の元、二人は一斉に動きだす。
「え? え!?」慌てて、注意を楓ちゃんに向けると、その間に背後から近付いた遥に両腕を抱えるようにして拘束されてしまった。
「ちょ、何するの!」
「はーい。雪ちゃんサイズを調べましょうねぇ♪」楓ちゃんの目がとても嬉しそうだ。
「なんで、拘束するの! 普通に計るから!」
「駄目だよ。美しいものは全員で愛でるモノなの。大人しくしようね雪ちゃん」
「な、何その理屈! 遥、放してよ!」
「雪、それは出来ない相談ってモノだ。さっさと計らないといけないだろ♪」
あああ、遥の目もおかしくなってるーーーー
残された女子二人は?
駄目だ。何か興味津々って感じで助けてくれる気配無し。
「それじゃ。シャツ捲るよー♪」楓ちゃんが僕のTシャツを首の近くまで捲くり上げた。
「きれ~~~い♪ 雪ちゃん反則だよぉー」
「どれどれ? うわ、白。なにこれ、男子が見たら鼻血吹くな」
遥の余計な解説に、顔が真っ赤になっていく。
ううう、なんでこんな目に合うんだよー。
「雪ちゃん元が白いから赤くなると更に可愛いよぉ。それじゃ計るねぇ。まずは此処からかな♪」
楓ちゃんの指が腰の辺りの当たった。
「ひゃぁん!」咄嗟に甘い声が出てしまった。
「あれあれ? ひょっとして雪ちゃんって腰が弱いのぉ?」楓ちゃんの目付きがヤバイです! そう母さんを見てるような……
「そ、そんなこと無いと思うから、さっさと計って。こんなの恥かしいよ……」
「うーん。じゃーこんなのはどう?」
「あぅ、あぅううん」楓ちゃんは腰の辺りをなぞるように動かしてきた。
「や、それ、や、やめて」
「うんうん、悶える雪ちゃん可愛いよぉ」全然止めてくれる気配がない。
「遥、お願い。か、楓ちゃんを止めて!」
「いやぁ。何? これが萌えか? 萌えなのか!?」
遥も訳の判らないこと言ってる……
しばらく腰への攻撃が続き、僕は肩で息を吸う程になった頃、
「では、雪ちゃんのオッパイを測定しますー♪」楓ちゃんが妙なテンションで宣言した。
もう僕には何も喋る余裕はなかった。
「あぅん。や……」楓ちゃんの手が僕の胸を揉んでいる。
「うわぁ、柔らかいよー。この掌サイズの触り心地が癖になるかも」
「ちょっと楓ずるいぞ。そろそろアタシにも交替しろよ!」
「えー、わたしもっと触ってたいよー」
「はぅん。あん。や、やだ……」この間も楓ちゃんの攻撃は止まない。
「そういうこと言ってると、後でアイアンクローな!」
「ううう、すぐ暴力に訴える。じゃーちょっとダケだからねぇ」
楓ちゃんと、遥の位置が変った。
もう僕に抵抗する元気など無く、楓ちゃんに支えられているだけのようなものだ。
「うわ、ほんとだ柔らけー。この胸を誰かが揉むのかぁ。うわぁヤバイなぁお持ち帰りしてーなぁ」
「ひゃん! もぅゆ、ゆ、るしてよ……」
この後も、二人の検査? は続き、僕の胸囲が計り終わる頃には、お尻をペタンと地面に付けて動けなくなっていた。
苦笑する女医さんに診察をしてもらった時は、僕のせいでもないのに妙に恥かしい思いをした。
身体測定なんて大嫌いだ!
ええと折角のR15設定してあるんだし……
使わないといけないかなぁと………
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