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すのーでいず   作者: まる太
第二章
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高校生活スタート 2.5

ちょっとした息抜きで、太一視点で書いてみました。


大阪弁難しい……

 オレが1-Aの教室に入ると、異様な光景が展開されていた。

 クラスメイトがある一点を見て固まっているんや。

 誰もオレ、矢神太一に興味無いのは少し寂しいもんやが、原因が判れば納得ってもんやった。

 そこには、オレの親友である雪が居たからや。

 新入生の白髪の少女なんて、そうは居ない思うから間違いないやろう。

 初めて雪の家で当人を見た瞬間、オレもこんなだった気もするし、周りの反応は判らなくもない。

 白銀を思わせる美しい髪に、活動的に輝く青い瞳、整ったパーツが小さな顔に程よく配置され、それを包むのが、穂のかにピンク色に染まる滑らかな白い肌。

 まるで御伽話のお姫様が抜け出してきたのかと錯覚してしまったもんや。



 雪は恥かしそうに机に突っ伏しているから判らないやろが、そのポーズもどうなん? と言いたい。

 まるで、ウサギがプルプルと震えている様子を想像させるのや。

 そんな気が無い自分ですら、ちょっと襲いたくなってくるやろが。

 まぁ、丁度担任のおっさんが入ってきたから、うやむやになってもうたけどな。



 入学式は、剥げたおっさんが祝辞を延べ、それをだらーとしながら聞いていた。

 途中、注意の声が聞こえてそこを見ると、雪の親父さんが叱られていた。

 雪がどんな顔をしてるのか伺うと、殴りたそうに右拳を握りしめているのが見えた。

 からかいたい処やが、式中やし我慢しよう。

 本当、雪と居ると退屈せぇへん。

 この学校に入れて良かったって心から思うわ。

 それにしても、いまだにオレに気付かないって、雪はどんだけテンパってるんやろな。

 此処まできたら気付くまでほっとくのが面白いかもしれへん。


 

 入学式が終わり、担任のおっさんの自己紹介を聞き終えた。

 あだ名がムッチーパンダで、パンダと呼ぶなみたいなこと言ってたが、オレにしたら呼んでくれと言ってるように聞こえる。

 呼ぶときは期待の通りパンダと呼んでやることにしよう。



 そのまま、パンダが話しを続ける。

「ええと、それでだ。俺の自己紹介が終わったことだし、今度はお前達の自己紹介をして貰おうと思う。だがそれだけじゃつまらんだろ? よって各自1発ギャグを必ず入れるように。一番つまらんことした二人が学級委員と、副委員な。どうせ立候補なんて居ない雑用係なんだし、俺のクラスは毎年これで決めているから伝統だと思ってくれ」

 このパンダ、只者ではない。

 こんな緊張する場面で、1発ギャグやれなんて言う無茶振り初めて見たわ。

 まぁ、自分は親父が関西人やし、このノリは判らんでもないからアリといえばアリやろう。

 そして、オレの出席番号は最後の方、慌てふためく先人達を見ながら傾向と対策が出来るんやから、問題は無い。

 雪は、毎度のことながら初めの方やな、精々笑かせて欲しいもんやね。



 しょうもないギャグが続き、雪の番がすぐ来た。

 席を立った雪は一瞬戸惑うような素振りを見せた。

 まぁ、あからさまな好意や探られる目をされたら、そんなもんやろうな。

 気の早い男子なんて、一目惚れしたような目付きをしてやがる――って、女子の何人かも怪しい目付きしてるがな! 大体あの無防備そうな顔が良くないんや。

 すぐ言うこと聞いてくれそうに見えて、勘違いする奴が出るんやから。

 昔は男に告白されて笑わせくれたのに、今度は女に告白されるのを見せてくれるかもしれん。

 気の毒なやっちゃっな本当。

 そうこう考えてると雪が話しだした。

「エリカ ツェペッシュです……」ハッとした顔をして、すぐに言い直す。

「すいません違います。阿南 雪です。こんな容姿してますが普通の日本人です――」

「ああ、確かに名前は阿南だな、中々面白かったぞ」パンダがご丁寧にツッコミまで入れた。

「ぶぶぶ」誰やねんっエリカって、思わず噴出してもうたがな。

 まぁ、他の連中も笑ってるし、雪の癖にやりやがるなぁ。 

 あれ? でもあの慌てっぷりって、ひょっとしていつもの天然やろか? 

 その予想を肯定するように、

「趣味は、料理です。一発ギャグやります」雪がこう言葉を続けた。

 馬鹿な奴やなぁ、さっきのを一発ギャグにしとけばええのに、あれ以上のモノがあるのかって驚嘆されてるがな。


 

 咳払いをした後に雪の1発ギャグが始まった。

「くくく、我は始祖のヴァンパイアの血縁に連なる者、エリカ、ツェペェッシュじゃ、我と共に過ごせる栄誉に感謝し、頭を垂れるがよいわ。おーほっほほほほほ」小ぶりな胸を張ってポーズまで決めている。

 思わず頭を下げてしまった。何故やろ?

 まぁそれだけ堂の入った演技やったのやろう。元ネタはわからんけどな。

 しかし、これってギャグというよりは1発芸なんじゃないか?

 そう思っていると、

「おしまいです」雪がペコッと頭を下げて座り、赤面した顔を隠すように机に突っ伏してしまった。

 よくやった雪、お前の死は無駄にしないと心で誓った。

 良いネタが手に入ってほくそ笑みそうなのは内緒や。


 

 雪の自爆のおかげやろうか、結構雰囲気が和んだみたいや。

 その後の自己紹介という名の1発ギャグ大会は順調に消化されていった。

 オレの番はもう目の前やな。

 まだ雪は机の住人と化しているようやが、オレがこれを言った時どんな表情を見せるか今から楽しみなものや。



 やっとオレの番が回ってきた。

 誰かにネタを先にやられたらと、ヒヤヒヤさせられたがな。

 早速、我慢していた言葉を解き放つ。

「ええ、エリカ、ツェペッシュいいます。あっすんまへん間違えました」ドヤ顔を浮べる。

 反応は上々、爆笑が沸き起こった。

 雪の反応をみると、むくりと起き上がりオレの方に顔を向けた。

 膨れた面をしている感じが可愛いもんや。

 やっと此処でオレに気付いたようやな。

 全く遅いわ。まぁ前座ありがとさんって馬鹿にしてやろう。 

 その後のギャグも手堅い笑いを取り、オレの自己紹介は終わった。

 未だに非難する雪の視線には、気付かなかったお前が悪いんや、いう目で返事をしておいた。


 

 最終的にパンダの評定により、オレが副委員にされてしまう。

 笑いをちゃんと取ったのに酷いで本当。

 たかが雪のネタ? を利用しただけやがな!!


※ 誤字、脱字、修正点などがあれば指摘ください。

評価、コメントも是非にです。

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