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すのーでいず   作者: まる太
第二章
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高校生活スタート 1

第二章スタートです。



 爽やかな春の風が満開の桜の木々を揺らしている。

 ピンクの花びらが空に舞い、穂のかに香る甘い匂いはどこか儚く切ない気分にさせた。

 一面の青空に浮かぶ白い雲は雄大に流れ、まるで今の窮状なんてちっぽけなモノだと思わせる程だった。


 

 現在の僕を例えるなら『不幸』という二文字が一番適しているかもしれない。


 

 入学式に向かう道。

 真新しい制服に身を包んだ僕を、スーツ姿の母さんと、制服を着た妙に嬉しそうな氷兄が挟んで歩き、その側をカメラマンスタイルの父さんがパシャパシャ音をさせながらうろついている。

 こんな怪しい集団が歩いてたら、否が応でも注目を集めてしまう。

 普段でさえ目立つ容姿で苦労してるのに、更に悪化させる状況なのである。

 これを不幸と言わずに何と言うのだろう!

 唯一の救いは、星桜学園の外からでも見れる、美しい桜の木々だろう。

 学校の名前の由来である、内庭の樹齢200年を越える桜の木を中心に、数多くの桜が点在し、多くの人達がそれに目を奪われていたのだった。



「氷兄、場所変わってよ」

 一番校舎寄を歩いている氷兄に頼んでみる。

「ああ、いいぞ」

 氷兄は素直に僕のお願いを聞いてくれ、場所を入れ替えてくれた。

「ちょっと雪ちゃん。勝手に場所変えちゃ駄目でしょ!」それを見た母さんがすぐに非難する。

「だって氷兄が邪魔で桜の花が見えないんだもん」  

「雪ちゃんはママの側より、桜の花の方が良いっていうの? そんなに薄情なの?」

 どうみても桜の方が良いに決まってる……

「もう。ママ煩いよ。周りに迷惑でしょ。それだったら氷兄と交換してもらえばいいじゃない」

「そうね、その通りね。氷君、場所交換しなさい」

 母さんは僕の意見に納得したみたいだ。

「…………」氷兄は聞こえない振りをしている。

 無駄なことを……

「氷君、何故黙ってるのかしら?」

「…………」

「あら? そういう態度取っちゃうんだぁ。ふーん。別にママは良いのよ? だけど後で謝っても許してあげないけど、それでも良いのよね?」母さんの目が半眼になった。

 氷兄はチラリとその目を見ると、すぐ悲鳴を上げる。

「――母さん脅すの卑怯! 俺の二年越しの夢が今叶ったんだぞ? 中学を卒業してからの、灰色の登校生活からやっとおさらば出来るんだから邪魔しないでくれよ!」

「何よその夢って?」

「毎日、雪と一緒に学校行くことに決まってるだろ! ついでに、手とか腕を組めれば尚ベストだ」

 はぁ……又始まった。

 絶対しないのに毎度のことながらよく馬鹿なこと言えるよ。

「だったら明日からにしなさい。ママは今日しか一緒に歩けないんだから。女子高生の娘と肩を寄せ合って歩きたいのよ!」

「それ横暴だって!」

「どこが横暴なのよ。そもそも親の言うことを聞くのは子供の務めです」

「くぅ、いくら親だからってあんまりだろ!」

「まぁまぁ、二人とも揉めてはいけませんよ。それなら私が雪くんの横にいけば問題ないのでは?」

「「隆彦さん」「父さん」は黙ってて」

「はい……」二人に言われた父さんはシュンと肩を落とした。

 うわ、父さん可哀想……

 そもそも、僕の意思は何処に行ったんだと言いたいのだけど、どうせ言っても無視されるんだろうなぁ……

 付き合ってられないし、桜の花を愛でることにした。

 桜は本当に綺麗だよね。


    

 このやかましい集団から解放されたのは校門だった。

 ちなみに、位置を交換させられた氷兄がずっと仏張面を浮べていたのは言うまでもない。



 父さんと、母さんが保護者用の控え席に向かい、残された僕と氷兄は本館校舎に進んでいた。

 本館校舎入り口には受け付けがあり、そこには新一年生と思われる、まだ着慣れてない制服を纏った男女が胸に花をつけてもらっている。 

「雪もあそこで自分のクラスの情報と花付けてもらいな。俺は此処で待ってるからさ」

 氷兄が指差した。

「うん、ちょっと行ってくるね」

 あれ? 別に待ってる必要は無いんじゃないか?

 まぁ、ここで言い合うと又注目されそうだし、黙ってることにしよう。 



「お願いします」

「はい、入学おめで――」係りの上級生の男女二人が、僕を見て目を丸くする。

 男子は詰襟の処に校章があり、女子はブレザーの左胸の処に校章がある。

 校章の周りの色が赤ということは、氷兄と同じ三年生らしい。

「…………」 

 二人は一向に動く気配が無い。

 またかぁ。 

 今日だけで何度同じ視線を受けたことか、そろそろ良い加減にして欲しい……

「あの? どうかしましたか?」

「あ、ご、ごめん、ええとお名前は?」

 男の先輩が誤魔化すように会話を続ける。

 女の先輩はどこか呆けた顔をしている。

「阿南雪です」

「あ、あなんさんね。ちょっと待って」

 慌てる仕草でパラパラと台紙のようなものをめくり、僕の名前を探し始めた。

「阿南さん、ちょっとコッチに来てね」先程までと違い、怪しい笑み浮べている女の先輩の顔が恐い。

 正直近付きたくないけど仕方無く、側に近付いた。

「ちょっとジッとしててね」女の先輩は素早くブレザーの上着を引っ張りながら花を付けてくれた。

「うふふ。はいこれでおしまいよ」

 はぅ! 手を戻す時に軽くブラウスの上から胸を触られた。

 業とじゃないよね。でも、視線と口調が怪しかったような……

 やっと男の先輩が調べ終わったみたいで、教えてくれる。

「ええと阿南さんは1ーAになるね。1ーAの下駄箱は入った一番右奥になるから、後は下駄箱に書いてある名前を確認し、そこで上履きに履き替えて、自分のクラスに移動して」

「はい、ありがとうございました」

 頭を下げてそのまま入り口に入っていく。

 まだ後ろから視線を感じる。

 やっぱりこの髪と目で浮いてるんだろなぁ……自分の白髪を掬いながら見て溜息を付く。

 何か忘れてる気がするけど、記憶に残って無いってことは大したことじゃないのだろう。

 考えるのを止めた。



 入り口を入って教えられた方に移動しようとすると呼び止められた。

「こらー。なんで置いていくんだよ!」

 その声で氷兄のことを思い出す。

 やっぱり大したことじゃなかった。

「別に置いていったわけじゃないよ。忘れてただけ」

「もっとひでぇ……めっちゃ傷つく。珠に思うんだけどさ、雪の俺の扱いってすごい冷たくないか?」

「え? そんなこと無いと思うよ。どちらか言えば大甘な気がするもん」

「それは絶対ありえねー。さっきのだってかなりものモノだ。正直俺のことどうおもってるんだ?」

 前もこんなこと聞かれたなぁ? 前回は変態って言ったっけ? 

 うーん。さすがに同じこと言っても芸が無いよねぇ。

「そうだ――カマドウマとかどうかな?」

 カマドウマに失礼だったかも……



 カマドウマとはキリギリスとコウロギに似た容姿を持つ昆虫で、俗称「便所コウロギ」と言われるあれだ。


 

「なんだそれ? 特撮のヒーローか何かか?」

 あら、氷兄は知らないのかぁ。ならこのままでもいっか。

「そそ、結構カッコいいヒーローで、今人気のアニメの登場人物だよ」

 大嘘だけどね。心の中で舌を出す。

「俺って雪の中では英雄なのか! いやぁ照れるなぁ。お兄ちゃんどうしよ」

 本気で喜んでるのを見ると少し心が痛む気もするけど、まぁあれだよね? 

『お茶目』ってことで許される筈。

ちょっと短いです。


※ 誤字、脱字、修正点などがあれば指摘ください。

評価、コメントも是非にです。

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