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すのーでいず   作者: まる太
第一章
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制服と再会 2

 太一は僕に気付きリビングのソファーから凄い勢いで立ち上がった。



 僕はというと、衝撃のあまり一歩も動けなくなっていた。

 ――な、何故! 太一が此処に……


  

 太一は生意気にも170cm程の身長の持ち主で、温厚な性格と愛嬌のある顔をしている。

 父親が関西人な為、喋り方が変な関西弁なのも特徴と言えるかもしれない。

 どこら辺が変なのかというと、本人は標準語で話すように努力していたのだが、上手くいかずに関西弁と混ざってしまったのだ。

 名付けるなら似非関西弁というものだろうか。


 

「雪なん……?」太一は信じられなそうに、目を上下に動かして僕を見ている。

 髪、顔、胸、腰、太もも、腰、胸、顔、胸、胸、胸、胸、胸のように。

 胸を見てる回数が多い気がする。

 さりげなく、胸を腕で隠すようにしたら、今度は太もも、太もも、太もも、太ももという感じで目が固定された。

 そちらもスカートの裾を引っ張り視線を遮ると、やっと僕の顔を見て視線があった。

 恥かしいとかより、ムカっとくるのは何故だろう?

「太一君言った通りでしょ。うちの雪ちゃん可愛いわよねぇ?」

「ええ。ここまでとは思わなかったですよ。桜子おばはん」

 待て、どういうことだ? 

 此処に居るだけでもオカシイのに、なんで今の話しが成立する。

 混乱してる頭を整理する。 

 だが、考える間もなく先程の発言に答えは出ていた。

 母さんが教えたんだ!

 じゃなかったら太一が僕の正体を知る訳がない。

 氷兄や、冬耶ですら見分けがつかなかったのだから。

「母さん! なんで太一にばらしたんだよ!!」

「ママでしょ?」母さん纏う空気が数度下がった気がする。

「マ……マ」

 こんな時ぐらいどうでも良いじゃないか!

「とりあえず座って落ち着きながら話しましょうか――」

 母さんに僕は背中を押されるようにして導かれ、太一の前のソファーに座らされる。

 その隣に母さんが腰を掛けた。太一も素直に従った。

 母さんは一呼吸置いてから、急に真面目な表情をした。

 しかし、目だけは優しく僕を見ている。

「雪ちゃん? 一生太一君を騙しておくつもりだったのかしら?」

「…………………」僕は首を左右に振る。

「そうよね。だったらママの行動を信じなさい。雪ちゃんに悪いことはしてないと胸を張って言えるから――こういう事は、なるべく早く真実を打ち明けた方が良いのよ。時間を掛ければかける程言い難くなるものなの。後になって後悔しても遅いのよ。それが親しい人なら尚のこと、太一君と離れ離れにはなりたくないでしょ?」

「……それはそうだけど――」

 こんな姿……親友だからこそ見られたくないんだ!

 それに、幾らなんでも早すぎる……まだ心構えすら出来てなかったのだから。

「太一君、今の話しを聞いて判ると思うけど、雪ちゃんも悪気がある訳じゃないのよ。ただ――そうねぇ困惑してるだけなの。隠してたこと許して貰えないかな?」

「いえいえ、許すも何も無いですわ。確かにショックだと思いますし、気持ちが判らへんでもないですから」

「太一君は良い子ね。ほら、そう言ってくれてるんだし、雪ちゃんも太一君に何か言いなさいな」

 何かって何さ?

 話すことなんて見つかりそうもない……

「…………」

「もぉ、しょうがないわねぇ」母さんが見かねたように助け舟に入る。

「じゅー太一君に質問するわね」

「あーはい。どうぞ」

「雪ちゃんのこの姿、正直なところどう思う?」

 チラリと太一が僕の方を見た。

「そうやねぇ。美少女過ぎて、ちょっとアホかいうレベルかと?」

「やっぱりそう思うわよねぇ? 本人だけが自分の価値が判ってないみたいなのよ」

「はぁ、めっちゃ勿体ないですね。男なんてイチコロやろうに」  

「うんうん。よく判るわ。じゃー次に雪ちゃんは女の子になったことを気にしてるみたいだけど、太一君はどう感じてるのかしら?」

 聞きたくない……体が震えるのを必死に抑える。

 もし、気持ち悪いとか言われたら。

 嫌だ。……そんなの嫌過ぎる。

「うーん。似合ってるから全然問題ないと思いますわ」

「は?」

 悩んでたのも忘れ、思わず間の抜けた声で聞き返してしまう。

「……太一、それどういう意味?」

「ああ、その言葉の通りやで。雪ってさ昔から女の子にしか見えなかったやん。それが本当に女の子になったからってそれ程違和感沸かんのやわ」

 こいつはこういう奴でした。

 悩んでいた僕が馬鹿じゃないか!

「という訳だから、あんまり気にすんな。良かったら俺が彼氏に立候補してやってもええねんぞ? お前なら大歓迎や」

「あら、太一君たら大胆ね。私の前なのに♪」

 母さんがうきうきしだしましたよ……

「あはは、まぁそう苛めんといてくださいな――って、そういえばなんで制服着てるんや? 俺に見せる為に着たんか?」太一がジーッと僕を見ていく。

 ここに来て、自分の姿をやっと理解した。

 瞬時に顔が真っ赤になる。

 見るなー。見るなーー。

「なんで、僕が太一の為にそんなことしないといけないんだよ!」

「そうか? ほななんでや? 制服フェチなん?」

「……アホか! これは、今日届いたから、サイズが合ってるか確かめてただけ」

「ああ、確かに家にも今日届いたわ」太一はポンと手を叩いた。

「太一は調べなかったのかよ?」

「別にM、L、LLとかそんな大雑把なもんやろ? 特に気にせんでもええわ。生真面目に届いたその日に着てる雪が変なんやって」

 あれ? 僕の方が間違ってるのか?

「母さんが脅すから着たのに、なんか酷いこと言われてるんだけど?」ジトーと母さんを見る。

「男の子と、女の子は違います」しかし、母さんにはさも当然とばかりにきっぱり言い切られた。

「ああ、雪は女の子やもんなぁ。そういうものかもしれんわな。こりゃ一本取られたわ」

「女の子ゆーな!」

「いや、だって、女の子やん? 自分で鏡とか見て、可愛いとか思わんの? 滅多に居ないレベルやぞ? あっ、別に可愛いとかいうのはからかってへんからな」

 太一は以前の僕を知ってるだけに、慌てているようだ。

「まぁ、多少は可愛いとは思うけど大げさだって。それとそんなに『可愛い』についても気にしなくていい。この容姿でキレてたら変人に思われるからな」 

「ほぉ。雪も進化してるんやなぁ。お父さんうれしいわ」

「誰がお父さんじゃ!」

「ナイス突っ込みや」太一は右手の親指を上げてグーポーズをしている。

「それにしても、恥じいる制服美少女の図か、漢心をくすぐられるわ」

 げっ! またその単語か……

「漢心って、まさか太一もスク水とかブルマが好きなのか?」

「はぁ……雪ってたまに変なこと言うよな」

 すごい深い溜息をつかれたんですけど?

「どこが変なんだよ!」

「その質問が駄目駄目や。夢と書いてロマンと呼ぶもんやろがぁああああああ!!」

 氷兄が二人に増えたよ……

 なんで僕の周りにはこんなのばっかりなのだろうか?

「ああ、もう煩いなぁ。で、今日何しに来たの?」

「お前なぁ、親友が何週間も寝込んでるって知ったら見舞いの一つも来るのは辺り前やろが。これで来たの5度目やぞ?」

「そ、そうなんだ……ごめん」

 逆の立場だったら僕もそうするだろうし、悪いことしてたんだと今は素直に思う。

 そして、母さんに感謝していた。

 このタイミングでばらしてくれたからこそ笑い話で済んだのだろう。

 真摯に心配してくれる相手を騙すなんて、もうしたくない。

「まぁ、さっきも言った気がするけど、その件で責めるつもりは無いから安心せい。元気な雪の姿がみれたからそれで充分や」

「太一ありがと、そう言ってくれると助かるよ」自然と笑みが零れ出ていた。

「やっと笑ったか。ほな折角ルクレールのミルクシュー買ってきてやったんだから、それでも食べようぜ。美味しいものは皆を幸福にするいうしな」 

「嘘! それってまさか、一日限定100個のアレ?」

「そそ、そのまさかや、雪が食いたい食いたい喚いてたやつや。あの店舗の中に入るの結構勇気いるんやぞ!」


 

 洋菓子店ルクレールはレースとパステルカラーをふんだんに使った少女趣味みたいな内装のお店だ。



「ぷくくくく」太一がルクレールに居るのを想像してつい笑いだしてしまった。

「笑うなや!」

「いや、だって、あのお店に太一が並んだのだろ? ちょっと写真でも一枚撮っときたかったな」

「お前なぁ。誰の為に苦労した思ってるんや。笑うより先に感謝せーや」

「ごめん。悪かったって。でもなぁ。あはははは」

 駄目、笑いとまらない。

「はぁ、ホンマ割に合わんわ」

 母さんはそんな僕達を微笑みながら見ていた。

これで第一章が終了です!


ここまで読んで頂きありがとうございます。

次回からは遂に学校偏スタート(の予定)です。


※ 誤字、脱字、修正点などがあれば指摘ください。

評価、コメントも是非にです。


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