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◆第一章【1】◆

俺はモヤモヤしながら学園への唯一の通学路である“東雲橋”を歩いて渡っていた。


夢のことはほとんど忘れ今は魚の骨が喉に刺さっているような感覚だ。


「おっはよ、ユウ」



「なんか目の前に眼鏡をかけた体躯のいい佐野幹也と言う男がいるけど無視しよう」



「ってユウ!なに語り部口調で無視しようっとか言ってんだよ!僕はこんなにもお前を愛してるのに!」



「俺とコイツはこんな冗談が言い合えるような仲だ」


「だから、その口調止めろって!ちなみに今のは冗談じゃないぞ?」


そんな幹也はウインクをしてなんか可愛くなってみましたみたいになっている。


「………」


俺は無言で目を反らす。


だって気持ち悪かったから。


「ユウ!無視すんなって!」


なんか幹也が言ってるがスルー。


さっきからコイツの言っているユウと言うのは俺のことで、喜神悠斗<キガミユウト>って言うのが本当の名前だ。


そして、コイツこと佐野幹也<サノミキヤ>は俺の小学生からの付き合いでお互いのことを知り尽くしたまぁ幼馴染みってやつだな。


俺はしばらく幹也と他愛のないことを話ながら歩きやっと橋の7割ぐらいまで来た。


「おい、ユウ、あれ!」


と、幹也が指差した先に人が何かを囲んで群がっていた。


いや、俺と幹也の周りにも人が群がってるんだが。


まぁそんなことはいい。


やっぱり人だかりがあるとなにか気になるわけで。


俺はその人だかりの中に入っていく。


その中は━━━真っ赤だった。


真っ赤な髪の毛を後ろで結んだ女の子だった。


そして、気の強そうな目付き可愛いと言うかカッコいいという感じだった。


「だれ……う!」


いきなり鼻がツーンとして目眩がしてきた。


ヤバイ。


あの発作だ。


そう思った俺はすぐにその人だかりから抜ける。


「おい、ユウ!どうしたんだよ?」


幹也も出てくる。


「行こうぜ…」


俺はそう言って学園の方へ歩き出す。


その後数分で学園に着いた。


「なぁ?ユウ。またあの発作か?」


幹也が聞いてきた。


「あぁ…ホント厄介だよな…」


女性恐怖症━━━女性との交流を極度に恐れたり、女性と話すとひどく赤面したり、不快感を覚えるといった病的な心理のことである。


と、本にはそう書いてあった。


まさに俺はそれだ。


俺の場合は女性を強く意識したときに発作が起きる。


発作は軽いときだと目眩や鼻からの出血。


ヒドイと失神する。


「おい、ユウ?」


そう考えていると幹也から声を掛けられた。



「ん?どうした?」


「どうしたじゃねぇよ。クラス表見に行こうぜ」


幹也が指差す先には人だかりが出来ていた。


今日は年度始めの始業式。もちろんクラスも変わってるわけだ。


「えーと…」


俺は貼り出されたクラス表の紙を見て自分の名前を探す。


2年A組

喜神悠斗

佐野幹弥


と、俺はそう書かれているのを発見する。


そのままクラスへと移動を開始した。


「また、一緒か!よろしくな、ユウ」


「また、お前か…」


「なんだよ、嫌そうに…」


「嫌ではないが、ここまで来ると作為的なものを感じるな」


クラス分けってのが始まって以来、幹弥とはクラスが離れた試しが一度もなかった。


「それは言えるけど…何かの運命なんだよ!」


幹弥は背中に星がキラキラと輝いているんではないか、と言う様な感じでそう言った。


「止めろ、気持ち悪い」


そうとも思ったが、男と運命とか精神的に辛いから否定する。


まぁ俺としては女とでも一緒なんだけどな。


そうこう、幹弥とじゃれ合ってるうちに2年A組の教室に着いた。


教室のドアを開けると女子の目が一気に向けられた。


「………」


俺は構わず自分の席へと向かう。


自由席だったので俺は一番後ろの窓側━━━普通ならもう取られていてもおかしくない。


その席が空いていたのでそこにする。


机の横にカバンを掛け、


「「「きゃーっ!」」」


腰を下ろした瞬間。


今まで固まっていた女子から絶叫の様な歓喜の声が上がった。


いつの間にか教室の外にも下級生から上級生までの女子一同が集まっていた。


「相変わらずの人気者だな、ユウ」


「…まったくだよ」


幹弥の言葉に俺は苦笑いで返すしかなかった。

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