ラージダンジョンへの挑戦3
「ギルドマスターはいるか?!」
冒険者ギルドの入り口を開けると、アスラさんは態と大きな声でギルドマスターを呼んだ。ギルドにいる他の冒険者達にも何かあったと思わせる為だ。
ギルドの職員に呼ばれて、ギルドマスターが慌てたように奥から出てきた。
「アスラ卿、何事ですか!?」
「王家からギルドへ要請だ、三十層以降の魔物を出来るだけ多く倒して貰いたい。報酬もいつもより多く出す! 三十層より下に行ける冒険者達を集めてくれ」
ギルドマスターは職員と顔を見合わせている。
話を聞いていた冒険者は、慌てて外へ飛び出して行った者もいる。
「どうした?! 王家直接の依頼だぞ! 受けるのか? 受けないのか?」
「お待ちくださいアスラ卿! 内容を聞きもせずに決められません! とにかく奥へお願い致します」
ギルドマスターの返答に納得したのか、アスラさんが頷いて奥へ行くので、僕たちも後に続いた。
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「と、言う事で三十層以降の魔物の数が増えておる。このままではスタンピートもあり得るぞ」
淡々と語るアスラさんの言葉に、ギルドマスターと一緒に聞いていた職員さんの顔も真っ青になっている。
「そんな……間引きを頼んだ冒険者達からは、そんな報告は上がって無かったはず」
「手を抜いていたか、事の重要性が分かっていなかったかだな……」
アスラさんがそう言うと、職員さんがあるリストを渡して来た。
「これが、この一年でラージダンジョンの三十層より下に進んだパーティのリストです」
そこには、たった一枚の紙で数組のパーティの名前が書いてあるだけだった。
「これだけ……」
僕たちでも分かる、絶対に少な過ぎる。
「これは、冒険者ギルドの落ち度でもあるぞ、魔物の状況が把握できず。冒険者達との関係も良好ではないとなれば、お主達管理者の首はみなすげ替えになる事だろうな」
ギルドマスターの顔が真っ青になる、王都の真ん中にあるラージダンジョンが溢れたなんてなると、どれだけの被害になるか。もちろん防壁は三重に構えてあるし、それなりの装備も整えてあるはずだけど、どれだけの魔物が出て来るのか、また三十層より下の魔物が出てくるとなれば、それに対応できる冒険者も数多く必要になる。それだけの冒険者が、この王都にいったい何人いるのだろう。
さっき、三十層で聞いた冒険者の人は、数組みのパーティしか下りて来ていないと言っていた。それが全てではないにしても、たとえばミドルダンジョンを生業にしている冒険者に来て貰ってもラージダンジョン三十層より下で戦える冒険者って……。
とにかく、冒険者ギルドで把握している三十層以降でも戦える冒険者を集める事。アスラさんは騎士団にも参加させると言っている。
決行は三日後、それまでに準備を進め、人を集める事になった。
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「大変な事になったね」
僕らはアスラさんの屋敷に戻って待機となった。元々六十層までの準備をしていたので、今更準備する物もない。アスラさんは、王に掛け合ってダンジョンに潜らせる騎士団のメンバーを集めさせると言って出て行った。
六十層まで到達してアースドラゴンを倒したパーティの話は、もう十年近く前の事だ。その後、すぐに無謀な挑戦をする冒険者を制限する為に規制をかけた事が今回のキッカケになっている。
今いるメンバー、アルとロウさん、僕とテツにぃの四人にアスラさんとゴドスさんも居れば六十層まで行けると思う。けれど、途中の魔物を間引くほどの戦力にはならない、もっと多くの力が必要だ。
一体どれだけの冒険者が集まるのかな。アスラさんが騎士団を集めると言ったけれど、それだって国を守る貴重な人材だから、無闇には集められないと思うけど。
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いよいよラージダンジョンへ再び入る。
集まった冒険者パーティは主力が六組、三十五人、騎士団からは百二十人が集められた。冒険者パーティの六組は最低でも五十層まで進んで貰う主力組で、四十層まで進むサブ組も十組のパーティが集められている。
騎士団の人たちは、隊列を組んで魔物を倒して進み。冒険者の人たちはそれぞれが得意とする方法で各自対応してもらう事となった。
僕たちは、最前線を任されたので騎士団より前に出て進む事になっているけれど、アスラさんとゴドスさんがいるので、騎士団の人達からの文句も出ない。
最初に僕たちがダンジョン三十層まで移動ポータルで移動、続いて騎士団の人たちが次々と移動して来て、組になって揃った部隊から三十一層へと進んで行く。騎士団と冒険者ギルドからは、三十層の他に四十層、五十層と順次拠点を作る予定だ。
騎士団の人達が全員移動が終わり、最後に騎士団長さんがアスラさんの所にやって来た。
「アスラ卿、この度の演習についてだが。我らは五十層までを掌握し、冒険者達と連携を取って魔物を減らすと言う事で良いのだな?」
「騎士団長。先日打ち合わせした通り、その手筈でお願い致します。冒険者と言っても最前線を任される者たちですので、ある程度は連携も取れるかと思いますが」
騎士団長はアスラさんの言葉に頷いて。
「先ほど、冒険者パーティのトップと話をしたのだが、かなり気の良い感じの青年であったぞ。ガイラと言ったか、彼が他の冒険者パーティも纏めると言っていたので任せる事にした」
ちょうどその時、新たに移動ポータルから現れたのが、話に上がったガイラ率いるパーティ蒼の星だった。
騎士団長さんも、ガイラさん達が移動して来たのに気が付いて。アスラさんに挨拶した後、ガイラさんの方へと向かって行った。
「では、我らも先に進もうか」
アスラさんの言葉にゴドスが頷き。僕たち六人も、三十一層への階段へと進んだ。




