ラージダンジョンへの挑戦
僕たちは、ラージダンジョン六十層へ挑戦する事が決まると早速準備に取り掛かった。
と言っても基本的な準備はいつも出来ているので、新たな食料の調達と、白魔石を含む各魔石の補充だ。食料はアルが持っている時間停止付きのマジックバックへ入れて貰う。こんな時、時間停止付きは羨ましく思うな。
ラージダンジョンへの挑戦は、前回アスラさんと入った時に三十層までは辿り着いていたので、そこから始める事になった。四十層のキングオーガ、五十層のワイバーン、六十層のアースドラゴンを相手にする事になる。勿論、階層の途中で出てくる魔物の相手もしなければならない。
特に。僕たちが未経験の相手、空から襲ってくるワイバーン対策はしっかりと準備した。
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「さて、いよいよ明日からラージダンジョンへ入る事になるのだが。全員準備は良いか?」
アスラさんが集まった皆んなの顔を見回す。
皆、引き締まった表情で明日の準備を終わらせた事を報告する。
「では、我々でダンジョン六十層を突破し、王国ラージダンジョンの謎を明らかにして。かつ、全員無事に地上へ戻る事を願い……乾杯!!」
「「「「応!!」」」」
それぞれが手に持つ杯をぶつけ合い、目的の達成とお互いの無事を願う。
今日は、アスラさんの屋敷で僕らの出発式が行われていた。周りには、僕らを手助けしてくれた人達が集まってくれている。ガングルさんにグルガンさん、そしてガングルさんのお店の職人の人達だ。
「お前たちなら大丈夫だ、六十層まで辿り着けるさ!」
「アースドラゴンよりワイバーンの方が厄介だ、気を付けろよ」
「親方の打った武器だ、ワイバーンだろうがアースドラゴンだろうが輪切りにしてくれるさ」
「なんだ……まぁ、無事に帰ってこいよ」
「ミドさん」
皆、口々にアドバイスや励ましの言葉をくれる。皆んなの期待に応える為にも、六十層まで辿り着ついてアースドラゴンを倒して帰って来るよ!
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ラージダンジョン前ギルドの受付は騒ついていた。
何処からともなく六十層に挑戦する者がいると噂が広がり。今、ギルド受付には豪斬のアスラがいるのだ、その隣には昨年の剣闘大会でアスラと死闘を繰り広げた隣国の使者ゴドスと、若いドラゴニア族の男。それに数日前にギルドの訓練場で豪斬のアスラと手合わせをして、その腕前を見せていた二人の若い冒険者が立っていた。
ギルドマスターが奥から出て来て対応する。
「皆さん、お手数ですが奥の部屋へ来て頂けますか」
「今からダンジョンに挑むのでな、手短に頼む」
ギルドマスターはアスラさんの言葉に「直ぐに終わります」と言って僕らを奥の会議室に案内した。
パタンッ。
会議室の扉を閉じ、テーブルの席へ僕らを案内するギルドマスター。
皆が座った事を確認すると、一緒に入って来た職員さんにお茶を頼むギルドマスター。それを、急いでいるからとアスラさんが断ったので、ギルドマスターは渋い顔をしたけれど、直ぐに話が始まった。
「あなた方が、このダンジョンの六十層に挑むと言う噂が広がっておりますが。本日、ここに来られたと言う事は、噂は事実と言う事ですか?」
アスラさんは、何を聞いているのだコイツは? と言う顔をして。
「既に、三十層以降に入る届けは出していた筈だ。ダンジョンに入らない者が、こんな格好で冒険者ギルドへ来る事があるのか?」
ギルドマスターはもっと渋い顔を見せて。
「届けは受け取っております。ですが、六十層までと言うと話は別です。アスラ卿、貴方はこの国の重鎮、万一の事があると困るのです」
「我が六十層で遅れを取るとでも? まあ心配はごもっともだが、安心されよ。六十層までは付き合うが、六十層でアースドラゴンと戦うのは、こちらの四人のみ、我とゴドス卿は保護者として付いてゆくだけだ」
そう聞いて、ギルドマスターは渋い顔から驚いた顔になり。
「それこそ無謀だ! この青年たちが負けてしまったらどうなさるのですか!?」
「我とゴドス卿は無謀とは思っておらん。それこそ、このダンジョンが深淵かどうかの情報を持って帰ると信じておる」
「はぁ……」
ギルドマスターはため息を吐くと、持っていた書類をアスラさんの方に差し出した。
それは、王都のラージダンジョンで三十層以降まで進むのに必要な書類、最後のギルドマスターの欄にはサインがしっかり入っていた。
「すまぬな、ギルドマスター」
「忠告はさせて頂きました。しかし、基本的にダンジョンに入るのは自己責任です。何があっても我々冒険者ギルドは関与しませんからね」
「それでも、いざとなったら助けに来てくれるのであろう?」
「その六十層まで潜れるメンバーが居ないのですから、我々も困っているのです」
ギルドマスターの表情が曇る。
「最近の冒険者はそんなにか?」
「私の口からは何とも申し上げられませんが、タイガさんがいらしたら悲しまれるでしょうね」
タイガと言う名前を聞いて、アスラさんがピクリと反応する。
「お主、あの時も?」
「まだ一介の職員に過ぎなかったのですが、あの快挙はギルド職員だけでなく、王都の冒険者全員が貴方がたに憧れたものですよ」
ギルドマスターがテーブルに置いた書類を指差し。
「その後、無茶をする冒険者が増える事になって、この様な書類が必要になったのですがね……」




