帰国2
「さて、そろそろ昼ご飯かな?」
さっきから、室内にまで良い匂いが漂ってきていた。テツにぃやアルも少し前から鼻をヒクヒクさせている。
実は、少し前に外で大騒ぎがあったのだけれど、かなり大きなの魚が船に近寄ってきて、危ないからと船員達で釣り上げたそうなんだ。
そして、その魚を見た船の料理人さんが「コイツはオオクロマグロじゃないか! とても美味い魚だが、泳ぐのも早くてなかなか釣れる物じゃない、滅多に食べられないぞ!」
と言って、自信満々に料理を始めたんだって。
釣り上げた船員さんは、普段から釣り好きを自慢していたので、この時ばかりは皆んなから凄く褒められていた。
「昼メシだぞー! 今日はオオクロマグロのステーキだ! 大量にあるから、皆んな好きなだけ食べていいぞ!」
ステーキだと言われて出てきたそれは、本当に元が魚とは思えない大きさで、とても良い匂いがしていた。フォークで刺してガブッと口にすると、香辛料の香りと魚の脂がジュワッと滲み出て、肉のような歯応えの後にサッパリとした後味がとても美味しい。
皆んなも無言でモリモリ食べていたよ。
途中で、ステーキをパンに挟んで、特製のタレ? を付けて食べたら。また凄く美味しくて二つも食べちゃった。
そんな風に、釣りをしたり、船員さん達と腕相撲をしたり、ゴドスさんやアル達と手合わせをして過ごしていると。あっという間に四日が過ぎて、ヴァルスガルド王国の港へ到着する日になった。
「ロウさん、もうすぐ港に着きますよ。地面ですよー」
結局ロウさんは、四日間ずっと船室で寝たままだったよ。船長さんや船員さんも「四日間も慣れなかった人は初めてだ」と言っていた。
船の外が騒がしくなってきた、いよいよ港が近いのかな。アルやゴドスさんも荷物を纏めている。僕らも殆どの荷物はマジックバックに入れたり背負い袋に入れて纏めてある。
ゴゴン!!
軽い衝撃と共に、何かにぶつかった音が聞こえた。港に到着したんだね。ロウさんが、待ってましたとばかりに起き上がって出口へと向かう。
流石にゴドスさんがロウさんを支えてはいるけれど、本当に到着が待ち遠しかったんだろうね。真っ青だった顔が、今は笑顔も見えている。
桟橋を渡り陸へ上がると、ロウさんがバンザイをして大地に頬ずりをしていた。流石に今日はここに泊まり、明日から出発となったので宿屋の手配と明日の馬車を手配した。
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僕たちは二台の馬車に、三人ずつ乗って移動していた。王都までは馬車で三日だ、久しぶりの王都の景色を楽しみながら移動する。およそ半年ぶりに帰ってきたら、こっちの国も本格的に寒い季節になっていた。
王都に着き、門兵の確認を済ますと「さあ貴方たち、ついて来なさい」と言って、グルガンさんが先頭になって歩き始めた。
「待って、アル達の宿を取らなきゃ」
「大丈夫よ! アベル達はガングルの所へ行くのでしょ? だったら六人くらい泊まれるわよ」
グルガンさんはどんどん先に進むので、僕たちは黙ってついて行き、ガングルさんのお店に到着した。
「ちょっとそこのお兄さん、ガングルは居るかしら?」
グルガンさんが、お店の前を掃除していた人に声を掛ける。
「何だあ、親方を呼び捨て!……」怒鳴りながら顔を上げたお兄さんが固まる。
「ミドさん! お久しぶりです! ガングルさんは居ますか?」
固まっていたミドさんが、僕の声を聞いて復活した。
「おう! アベルにテツじゃないか! 帰って来たのか!?」
「はい、それで親方は居ますか?」
復活したミドさんは、親方を呼んでくると言って店の中へ入って行った。
そして直ぐに。
ドン、ガン、ガガン!
激しい音を立ててガングルさんが出て来た。そして、一番前に立っていたグルガンさんの顔を見て……。
「お前は……」
グルガンさんは、パッと腕を広げて。
「ガングルぅ、お姉ちゃんよ!」
「誰がオネェちゃんだ! お前は弟だろうが!」
抱きつこうとするグルガンさんを、振り解くガングルさん。
「だったら可愛い弟をハグしなさいよー」
「誰がするか!」
ひと騒動あったけれど、無事に? 皆が店の中に入って三階の食堂に集まった。そして、船の中でも相談していた、これからの予定をガングルさんに説明した。
「状況は分かった。で、ゴドスはアスラに連絡を取ってそっちに世話になるつもりなんだな?」
ゴドスさんは頷いて肯定する。
「では、アスラ宛に手紙を書いておけ、ワシも身元保証人として一筆入れてやるから、まあ大丈夫だろう。そっちの王子と騎士も一緒ならアスラの所の方が過ごしやすいだろうからな」
「さすがガングル! 頼りになるわね」
グルガンさんがすかさず茶化す。
「煩い! お前は黙ってろ」
その後は、やっぱり宴会になり皆がお酒を飲んで騒いだ。グルガンさんとゴドスさんは凄い飲んでいる。
僕たちは、マジックバックに残っていた最後のポタタを出して、ポタタチップスや茹でたポタタを作り皆で宴会を楽しんだ。




