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AT『アベルとテツの』冒険譚 if 異世界転生したおっさんが普通に生きる  作者: カジキカジキ


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王都へ6

 アル達と別れた私とお祖父様は、王都にある屋敷へと到着してやっと一息(ひといき)ついた所だった。


「リズ〜、リズちゃ〜ん。帰ってきたんでしょ?」


 そう言ってメイドが開けた扉から顔を出したのは……。


 私は、座ったばかりの席から立ち上がり膝を曲げて挨拶をする。


「お母様、ただいま帰りました」


「お帰りなさい、リズちゃん。何だか体の動かし方が洗練されたかしら?」


 これだ。私が今回の旅でダンジョンに入り、レベルが上がった効果をこの挨拶の動作だけで感じ取れる人物。神槍槍術しんそうそうじゅつマエタ流免許皆伝、現マエタ流当主かつ現在の剣聖、リスリラお母様。


 見た目は。ドラゴニア族としては小柄で、私から見ても可愛らしい女性。一緒にいると妹と勘違いされる事も多い。年齢不詳、剣術オタク、剣聖よりもかわいいもの好き、家族大好き、etc……。


「お父様も、お久しぶりです。お母様はお元気かしら?」


 お祖父様はさすがに疲れているのか、椅子に座ったまま。


「ああ、ウリスラも元気にしとるよ。お前は……変わらないなあ」


 お母様は、部屋の中を見回してから。


「あら? お客様はご一緒ではないのかしら?」


「アベルとテツは、アル……ガルバルド王子が引き留めたので、今日はあちらに泊まる事になりました」


「そうなの……ざんねん」


 この「ざんねん」は、お客様が来ない残念ではなく、せっかく手合わせ出来る相手が来ると思ったのに残念……の「ざんねん」だ。


「じゃあ、しょうがないからリザリスがどれ程成長したのか見てあげましょう。後で稽古場に来なさい」


 そう言うと、お母様はメイドを連れて部屋を出て行った。


「はぁ……」


 私はため息を吐くと、着替える為に自室へと移動する事にした。


「お祖父様すみません。私は数日、動けなくなるかも知れないので、後はよろしくお願いします」


「仕方なかろう、任せておきなさい」


 お祖母様との手合わせは、厳しさの中に楽しさがあるのだが。お母様との手合わせになると……。


 ・

 ・

 ・


「!!」


 カラーン。


「ほらあ、足下(あしもと)見過ぎよリズちゃん」


「はい!」


 落ちた木槍を拾って、もう一度構える。


 テツに教えて貰った足運びや腕の振り、ダンジョンでの奮闘。先日のお祖母様との免許皆伝の試練、全てを思い出せ! 五感を全て使い、お母様の動きを感じろ! お母様の考えを読め、お母様の娘だ、ずっと習って来たのだろ!


 スッ……。


 お母様の動きに合わせ先を読み、木槍を振る。


 ヒュッ!


 それは、私の気持ちと木槍が一つになったかのような一振りだった。

 

「すごーい! リズちゃん今の何? 木槍なのに、本当に斬られちゃったかと思った!」


「……」


「どうしたの?」


「お母様! もう一度! もう一度お願い致します! 今の感覚を忘れたくないのです!」


 フッと、優しい眼差しをしたかと思うと木槍を構え、物凄い威圧を飛ばしてきた。


「やるのなら本気でもう一度だけ、手加減はしませんよ」


「はい!」


 ・

 ・

 ・


「!?」

 

 気がつくと、メイドが私の額のタオルを替えてくれている所だった。


「気が付かれましたか?」


 私は床に寝かされているのに気がついて、起き上がろうとしたが。


「もう少し、このままの方が宜しいかと思います」


 言われて。そのまま横になった状態で、私はお母様との最後の立ち会いを思い出していた。


 物凄い威圧に押し潰されそうになりながらも、足を進め。間合いに入った瞬間に、先ほどと同じように木槍を振ろうと。


「よそ見しちゃダメよ」


 お母様の木槍が、さっきの私の軌道をなぞって私の目前に迫り。咄嗟に出た木槍ごと、私の首が飛んだ……。


「私の首……」


「大丈夫です。ちゃんと付いたままですよ」


 首が飛んだのは錯覚だったようで、何事もなく繋がっていた……が、木槍はキレイな断面で二つになっていた。


 先ほどの手合わせ、私の時はお母様の木槍を切るだけの感覚だったが。お母様の木槍は、私の木槍を切った上で私の首まで落とす何かがあった。


 実際に私は首を斬られたと感じたし、今でも……手が震えている。


 あの感覚、あれと同じように出来れば。対人戦では相手を殺さずに死んだと感じさせ。魔物であっても怯ませるくらいは出来るだろう。


 もう一度……は無理だろう。お母様は一度だけのつもりでアレを見せてくれたのだ「あとは自分で考えなさい」がお母様の口ぐせだった。


 すまないアル、私がしおらしく出来るのは。まだまだ先になりそうだ。


◀▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶︎ ◀︎▶


「ふふふふふふっ!」


 ここは、リスリラ様の自室。手合わせから戻ったリスリラ様のお着替えをさせて頂いている最中も、ずっとリスリラ様はご機嫌のご様子でした。


「楽しそうですね」


「それは勿論! リズちゃんが強くなって帰って来たのよ! アイシャには、この嬉しさが分からないかしら?」


 お洋服の腰にリボンを付け、形を整える。相変わらず可愛らしいお方です。


「私は、リザリス様とガルバルド王子が御婚約なさった話の方が嬉しく思います」


「それももちろん嬉しいけれど、やっぱり私はリズちゃんが強くなってるのが嬉しいの!」


「ふふふふふふふ」


 こんなに機嫌の良いリスリラ様は久しぶりです。最近では、大奥様公認で旦那様をお叱りになられていた時も楽しそうでしたけど、今日のは嬉しいという感じでしょう。


「これだったら、一緒に旅をした冒険者の二人はどれだけお強いのか楽しみだわ!」


 そこですか?!


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