王都へ4
王都に到着した僕たちは、まずアルを王城へと送り届けたんだけど……。
本来、僕たちが王城に入る事なんて無かった筈だけど、アルがどうしてもと言うので中まで連れられてしまったんだ。あっ、グルガンさんは王都の門の前でサッサと馬車を降りて街中に紛れてしまいました。
「ごめんな、アベル」
申し訳無さそうに謝ってくるアル。
「大丈夫だよ、アル。僕ももう少し話しを続けたかったから」
僕たちは王城の控え室で待たされた後、アルの個室に呼ばれた。それだけでも特別な事なのに、メイドさんもいる場所で「アル」と呼んで良いと言われたんだ。おじいちゃんとリザリスさんは、国王に挨拶した後、王都にある屋敷に帰って行ったよ。
「二人と旅をできた事は僕の一生の思い出だ。僕の悩んでいた事を解決してくれて、僕に前を向かせてくれた。二人にはこのまま国にいて欲しいとも思っているけど、それは無理な願いだと分かっている。だから、今日だけは。今だけは、二人と最後に話をしたかったんだ」
アルは、僕たちの手を取り、真剣な表情で話し始めた。
その間、メイドさんが何度もお茶を入れ、果物やデザートを持って来てくれて。僕たちは何時間も話し続けたんだ。
夕食の時間になり、僕たちはアルと一緒に食堂へと案内された。そして、そこに居たのは……。
「!?」
「お父様!」
アルがそう呼ぶ人物……ドラコーン王国、国王陛下でした。
僕たちは国王への礼とか知らなかったんで、取り敢えず跪こうとしたら。
「よい、二人はガルバルドの友人であろう? この場は家族だけの席、ワシは単にガルバルドの父親として座っているだけだ。礼儀など不要である」
そう言って、アルの隣の席を案内された。
そして、空いているアルの向かいの席だったけど。
「お母様……とケンデュロス?」
食堂の入り口には、アルと顔を合わせなくなっていたと言う母親と弟王子の姿があった。
えっ? あの、僕らここに居ていいの?
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僕の目の前には、四歳の時のあの事故から会わせて貰えなくなっていた弟王子、ケンデュロスの姿があった。
「お母様」
お母様は、僕を警戒した雰囲気を持ったままテーブルへと近寄り。不思議そうに僕やアベル達を見るケンデュロスを促した。
「貴方のお兄様、ガルバルドよ。さあご挨拶なさい」
そう説明されたケンデュロスは、パッと華やかな笑顔を見せると。
「初めましてガルバルドお兄様! お兄様の事はばあややメイド達に聞いて、お会いしたいと思っていました。今日はお会いできて嬉しいです!」
お母様は、ケンデュロスのその言葉にハッとした顔を見せながらも。
「ガルバルド。そちらのお客様は紹介して下さらないのかしら?」
僕も、その言葉にハッとして。
「あっ、こちらは隣国ヴァルスガルド王国から来た使者で冒険者のアベルとテツです。昨日まで僕とシュットガルド侯爵家のリザリス嬢とで王国内を旅して回っていました」
そう説明した後は、また何を話して良いか分からずに固まってしまった。
コンコンと、テーブルを軽く叩く音が響く。
「挨拶が終わったら席に座りなさい。メイド達も困っておるぞ」
王妃様と弟王子さんが席に付くと、静かに夕食が始まった。
静かな室内で、カチャカチャとカトラリーが食器に当たる音だけが響く食堂。
メインの食事が終わり、デザートが運ばれてきた頃になって。
「お兄様、お兄様はこの国を旅して回ったのでしょう? 何かお話を聞かせて貰えませんか?」
僕がお父様の方を見ると、お父様も聞きたかったのか頷いて許可してくれた。
「では、まだ誰にも話していない六十層のボス、アースドラゴンと対峙した時の話を」
その途端、お父様とケンデュロスの瞳が輝いたのを僕は見逃さなかった。
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「その剣を手にした瞬間、僕の体に何かが入り込む感覚があって。それが僕の体全体を回って湧き上がっていた力を吸い取って剣へと戻って行ったんだ」
ゴクリ、と誰かの喉が鳴る音が聞こえた。
「剣が真っ白に光り輝き、僕はまた別の力を感じて、その力のままにアースドラゴンへと剣を叩き付けた」
「アースドラゴンの首が体から切り落とされ、黒いモヤが消えた後に真っ赤な特大魔石が現れたんだ」
ケンデュロスの瞳がキラキラと輝き僕を見る。
お母様は少し胡散臭そうに、お父様は……何を見てる? 僕の腰の辺りをチラチラと見ているようだけど……あっ。
「ご覧になられますか?」
「あるのか!?」
僕が腰のマジックバックから、赤い特大魔石を取り出すと。
「まぁぁぁぁあ!」
お母様の甲高い声が響き、お父様は間の抜けた顔。
ススっとお母様から手が伸びて来たので、特大魔石を渡す。
「重いですよ、気をつけて」
ズシっとくる重さも、お母様の顔は特大魔石に釘付けだ。
「どうですか、お父様?」
と、お父様を見ると。
「いや、あ。素晴らしい魔石だ、さすがアースドラゴンの特大魔石、うん」
何故かキレの悪い返事が返ってきた。
「もしかして、魔剣が見たかったんじゃない」ボソッ。
隣のアベルからそう声が聞こえてきて。
「あっ! 申し訳ありません。魔剣は自室の鍵付きの荷物入れに置いてきてしまいました。宜しければ、後ほどお持ちしますのでご覧になりますか?」
「おお! そうかそうか、では折角なので見せて貰おうか」
「僕も見たい! いいでしょ?」
ケンデュロスも、目をキラキラさせて聞いてきたので、お母様に聞いてみる。
「お母様、ケンデュロスもお父様と一緒に部屋へ行って宜しいですか?」
お母様は、特大魔石から目を離さず。
「え、ええ。よろしくてよ」
お母様からの許可も得たので、ケンデュロスはお父様と書斎へと移動し、僕も自室へ剣を取りに行くつもりでお母様に声を掛けた。
「お母様、すみませんが魔石を返して頂けますか?」
ボーッと魔石を眺めて、返事のないお母様。
「お母様?」
「えっ?」
やっと気がついて貰えたお母様に。
「魔石を収納したいので、返して頂けませんか?」
「あ、ああ、ごめんなさい」
そう言って魔石を返して貰う時も、なかなか手を離して貰えなかった。




